8月12日(火)朝8時から、テレビ朝日「モーニングバード!」に出演しました。
タイの首都バンコクで、父親が同じ男性とされる乳幼児9人が保護されました。乳幼児の養育費などに多額の支払をしていたというこの男性の目的は何なのか。なぜ、わざわざ何度も代理出産を繰り返すのか。謎は深まるばかりです。
そのほか、海水浴場を訪れた若者客が付近の商店街で迷惑行為を繰り返しているという話題、古本漫画の販売で知られる「まんだらけ」が万引き犯の写真公開に踏み切ろうとしているニュース、そして「居住実態」がないとされ失職した地方議員の話題についてもコメントしました。
タイ発〜日本人の所有するマンションから9人の乳幼児が発見
タイのバンコクで、日本人男性が所有するマンションから9人の乳幼児が保護されました。現地の警察は12日、DNA鑑定の結果、乳幼児たちの父は同一人物であると発表しました。また、マンションを所有している日本人男性がその父親であるかは、まだ断定できないとしています。当の日本人男性がタイを出国してしまったためです。
父親として浮上しているマンションを所有する日本人は24歳の男性。代理人の弁護士によると、9人の乳幼児はすべて「代理出産」で産ませたといいます。この男性の正体について、裕福な資産家であると代理人は述べ、乳幼児たちに対し、養育費は一人当たり50万円、代理母への報酬は一人当たり65万円が支払われたといいます。そのほかにも、マンション購入や乳幼児の病院通院のために高額の支払をしていたとされます。
男性の代理人の弁護士は、「(父親の男性は)悪い人ではない。人身売買目的ではない」などと語りました。現地タイの報道では、この資産家男性が24歳で、「シゲタ・ミツトキ」という名前であること、顏写真も複数公開されています。日刊ゲンダイは「ITベンチャーの雄として一世を風靡した「光通信」の創業オーナーの御曹司と名前の読み方と年齢がピタリと符合するのだが果たして……?」と報じています。
日本人男性は何者で、どういう意図でたくさんの子供を「代理出産」という方法で生ませたのか。
謎は深まりますが、同時にこうしたことが可能になった背景として、タイでは、貧困ゆえに、報酬を受取って代理母を引き受ける女性が少なくないという事情もあります。商業的な代理出産は、臓器売買を同様の問題をはらむ「貧困ビジネス」となりかねません。
岩上「日本で代理出産が初めて行われたのは2001年5月。私はこれをスクープして、代理出産をした当事者に密着取材をしました。代理出産というものを歪めて見てほしくないのですが、当事者たちは非常に真剣です。子宮に損傷を抱えるなど、他に方法のない方々がいて、それに心から共感した人が代理母の役を買って出る。代理出産とはそのような営みです。身内が名乗りでる場合もありますね。
それに対して、このタイの事件のように乱造するような形で、しかも商業的な代理出産が行われているのは乱暴な話です。
また、財産分与の話や、相続税対策ではないのかといった話も出ていますが、そもそも子供の国籍はどうなっているのでしょうか。きちんとした親子関係を法的に確立させないと、自身の子供として認められない可能性があります。
さらに子供がどの国籍かで、相続上の条件で有利か不利か出てきます。ですから、この線はちょっと考えにくいですね。ただ、一つ指摘しておきたいのは、単なる生殖医療ではなく、敢えて代理出産を選んでいるという点です。
代理母は最終的に子供を手放しますね。男性は子供を受けとりますが、母がいないことになる。つまり男性は、母や妻を必要としない子供を欲しいと思っていた可能性があります。なぜそう思うのかは、また別の話ですが」
子供をたくさん欲しい。事実上の一夫多妻のように複数の女性に子供を生ませれば、当然、トラブルに陥る。それは避けたい。そこで、卵子も、子宮もカネで買って、出産後には、縁を切り、養育もベビーシッターを雇って、カネで縁が切れるようにして、「母親」のいない「子供」を手に入れたかったのではないか——。そんな思惑が浮かび上がってくるように思われます。
【代理出産】
代理出産は、ある男女のカップルの間で受精卵を作り、それを別の女性(代理母)の子宮に着床させる方法をいいます。何らかの理由で女性の子宮の機能が不全である場合でも、カップルと血のつながった子供を授かることができます。日本では現在まで代理出産に関する法律が整備されていない状態が続いていますが、医学界の姿勢は原則として禁止です。
若者が水着で商店街を闊歩
JR須磨駅の周辺で、水着族が増殖しているようです。駅南側には海水浴場があり、年間百万人の海水浴客を集めます。一方、駅北側には商店街があり、ここでも、水着姿の海水浴客が闊歩しているそうです。海の家の半値以下で飲食品が販売されているため、若者客が多く押し寄せるのだといいます。
駅から近いために、自然に足が延びるのでしょうが、街中を水着姿で歩き回るだけでも、常識として首をかしげたくなるものです。さらによくないのは、そのマナーの悪さです。訪れれば無断駐車。果ては、砂がついた体のままで平気で店内に入り込み、トイレで着替えをする。店内は、砂まみれ、水浸し。帰る前には、ゴミを放置していく……。地元商店街の方々を悩ませています。
JR須磨駅ではこの夏から、トイレに外側から鍵をかけることにしました。同駅のトイレは車椅子利用者などによる利用を前提にして、広く設計されていますが、これに目をつけ、勝手に「更衣室」にしていた海水浴客が続出していたといいます。
岩上「須磨というのは、『源氏物語』にも出てくる歴史のある場所ですよね。とても風情のある海岸というイメージです。
しかし実際には、かなり残念な状態にあるようですね。ただこの残念さは須磨だけの話ではないですね。この番組でも、関東の海水浴場での若者客の様子を取り上げました。また先日の隅田川の花火大会でもゴミ捨てのマナーの悪さは『史上最悪』だったそうです。このようなことがドッと出ています。
これは去年までと、まるで様変わりしているようです。その背景にあるのは、若者の懐具合が厳しいという面があるのかもしれません。ちょっとだけコインロッカー代金をケチりたいとかですね。つまり、貧しさや、収入の減少といったことが背景にあるのだろうなと思います」
日本の若者の貧しさは、投げやりな「自由」を野放図に広げさせているのかもしれません。番組内のコメントでは触れませんでしたが、ビーチでのマナーの悪化は、もはやマナーを論じるレベルではなく、人としての基本的な羞恥心の欠如という、今や「一線を超えた」状態にあるのではないか、そう感じさせるレポートが「女性セブン」2014年8月21・28日号に掲載されていました。
「混雑する砂浜では、所狭しとビーチパラソルやシートが広げられている。その混雑にまぎれて本能をむき出しにする若者たちがいる。
『家族4人で神奈川県内の海に行ったときのこと。少し前の方にパラソルを立てて座っているカップルがいたんです。最初のうちはお互い日焼けオイルのようなものを塗りあったりしてたんですが、途中からキスし始めた。ふたりで倒れ込んだと思ったら、彼氏の方が彼女に覆い被さったんです。明らかに“始まった”という感じ。見たくないけど、自然と視界に入っちゃう。なんだかこっちが恥ずかしくなっちゃうし、中学生の娘の目に入らないよう、その場を離れました』(都内在住の50代女性)
岩場や車の陰でこっそりSEXに興じる若者も多いが今や公衆の面前で堂々と交わってしまうのだ」
白昼のビーチ、ごったがえす人波、そんな中、公衆の面前でセックスし始める男女。人々は見て見ぬふり。何かが壊れかけている、と感じます。
結局、こうした荒廃の広がりは人々を海辺から遠ざけます。海水浴がピークだった1985年、全国の海水浴客数は3790万人でした。日本生産性本部がまとめた「レジャー白書」によると、2012年には990万人。4分の1に減少しています。
まんだらけの「私的制裁」に賛否
これも、日本社会に広がる「貧しさ」を象徴する事件かもしれません。
古本漫画や、懐かしいおもちゃのマニアックな品揃えで知られる「まんだらけ」が、万引き犯に対して、顏写真を公開すると警告していることが、話題となっています。
4日の午後、まんだらけ中野店から、野村トーイ製「鉄人28号」のブリキのおもちゃが盗まれました。25万円相当だといいます。まんだらけは5日、万引き犯だとされる男性の写真の自社ウェブサイトで公開。また店頭にも張り出しました。写真の顏部分だけはモザイクがかけられていますが、8月12日24時までに返却しなければ、顏部分も公開すると警告を発しています。
今回のまんだらけの行動は、法律的には脅迫や名誉毀損の罪が成立しかねないものです。しかし、まんだらけ側としては、それでも敢えてする理由があるということでしょう。小売業にとって、万引き被害は、それほど根深く深刻な問題だといえます。
スタジオでは、田中喜代重弁護士が解説をしました。
「非常に難しい。法律的には、盗まれたものを返さないと顔を公開すると警告するのは、恐喝未遂の罪にあたります。また、名誉毀損にも問われる。日本は法治国家ですので、自力救済行為、利的制裁行為が禁止されているからです」
もっともなご指摘です。その田中弁護士の解説のあとにコメントを促された私は、こうつけ加えて話しました。
岩上「近代法治国家では、私的な報復行為が禁止されています。しかし、その禁止には、国家が報復を代行し、国家によって正義が実現されるという大前提があるからです。
ところで、万引きの場合はどうでしょうか。年間15万件もの認知件数があり、そのほとんどを警察が取り締まることができず、国家が機能しているとは言えません。その影響で、小売店などは次々に潰れます。ほとんどネットショッピングに切り替わると、街の小さな小売業はガタガタになります。街がゴーストタウン化していく……。
このような連鎖的な現象を考えてみると、社会には大変なダメージを与えることが分かります。しかし、警察は動かない。何もできないということですね。こうなると、たとえ名誉毀損のおそれがあっても、積極的に訴えようとする人が出てしまうのも当然ですね。
こちらが名誉毀損で訴えられたとしても、少なくとも万引き犯は誰であるか明確になり、刑事罰を受けることになりますから。このような、ぎりぎりのところまで、きているのだと思います。警察の真剣な捜査が求められますね」
「まんだらけ」に対しては、警視庁が「捜査に支障が出る」として公開しないよう指導が入ったとのこと。8月12日24時をもって、返品がない場合は画像を公開するとしていましたが、同社は13日、ホームページでの顔写真の公開を取りやめました。
「居住」とはなんだろう? 失職の西岡恵子町議の一件から考える
徳島県藍住町の西岡恵子町議(64)の失職が、11日の臨時本会議で決定されました。西岡町議の失職はこれで2度目だといいます。失職の理由は「居住実態がない」というもの。当選前の3ヵ月間、西岡町議のガス使用量はゼロ。水道料金も基本料金の500円だけだったといいます。光熱費支出が極めて少ないことを理由に、西岡町議は同町に住んでいると認められない、という判断が下されたことになります。
西岡町議はこれに反論。料理はほとんどせず、食事は半額の惣菜を買ってきて済ませる。お湯を湧かすのには、カセットコンロを使い、だからガス代はゼロなのだと説明します。また、風呂は使わず銭湯に行くのだそう。カメラに向かって、「これでずっと生活ができている」と語りました。
我が身を振り返り、ガスや水道を利用しないと、その場所に「居住」していると認められないのか——。頭をよぎるのは、このような問いです。
岩上「私は家では調理をしませんから、ガス使用量はほとんどありません。『居住』とはなんだろうと考えてしまいますね。寝ている時間のことを指すのだろうか。家には寝に帰るだけで、起きればすぐに仕事に出かけますから。
そうなると、家では寝ているだけということになりますが、では『居住実態』がない、ということになる。また、私も食事は、お惣菜やコンビニ弁当を買ってくるだけです。カセットコンロは使いませんが。
私も『居住実態』がない人間らしい。どうやら私は、町議選挙には出馬できないでしょうね」