2025年11月23日、「欧米諸国政府の対中東政策を批判的に論じる思想家ハミッド・ダバシの新著『イスラエル=アメリカの新植民地主義: ガザ〈10.7〉以後の世界』を読む! 岩上安身によるインタビュー第1208回ゲスト 東京経済大学教授 早尾貴紀氏 第3回(その3)」を初配信した。
インタビュー第3回(その3)では、早尾教授に「入植者植民地主義(セトラー・コロニアリズム)」について、解説していただいた。
早尾教授は、「入植者植民地主義(セトラー・コロニアリズム)」について、「植民地経営とは違う」と述べ、次のように説明した。
「植民地経営というのは、その植民地が、ある豊かさを持っている、そしてそこに住む人々も含めて、そこが持っている文化、生産物、技術、そういったものを宗主国が搾取する、自分達に富をもたらす資源として利用するということですので、その場合は『根絶やしに』ではないんですね。効率よく、自分達の資源として利用していく、ということですから。
入植者植民地主義の場合は、宗主国からどんどん入ってきた入植者が中心の社会に作り替えていく。先住民を完全に絶滅させるということも一つの形ですし、絶滅までいかなくても、入植者がその社会の支配層になる、入植者が中心の国家になれば、セトラー・コロニアル国家ということになります」。
さらに早尾教授は、以下のように続けた。
「宗主国からの移民の集団が入植して入植者共同体を形成し、先住民を虐殺ないし無力化し、その入植者共同体を国家としていく。
そうやってできた国が、セトラー・コロニアル国家で、(先住民が)完全に殲滅されるケースもあれば、非常に無力化し、居留地というようなところに追い込まれて、本来の土地をほとんど奪われ、仕事を奪われ、そして資源のアクセスを奪われる、ということもあるわけです」。
一般的な植民地としては、英領インドが典型例ですが、入植者が入り込んで、先住民を駆逐したセトラー・コロニアル国家としては、米国、豪州、南アフリカ共和国、アルゼンチンなどがあげられる。
早尾教授は「セトラー・コロニアリズムは、我々(日本人)の歴史にもある」と述べ、北海道のアイヌを例としてあげた。
「アイヌから土地を奪い、職業を奪い、狩猟と、河川あるいは海での漁を禁止し、そして土地の所有権という法的な概念をかざして土地を取り上げ、国有化し、そしてそれを和人の入植者に払い下げた。
そんなふうにして、アイヌの地は北海道というふうに改称され、道庁が設置され、これはもう、入植者植民地主義そのものなわけです」。
その上で早尾教授は、植民地が辺境や最前線であることを指摘し、「入植者植民地主義において、宗主国からの入植者は、しばしば、宗主国において迫害されるマイノリティであったり、経済的に苦境にある低い階層であったりする」と解説し、次のように続けた。
「新天地で仕切り直しをする、ということがあるでしょうし、ピューリタンやルター派やユグノー(フランスのカルバン派プロテスタント)といった宗教改革派が、信仰の自由を求めて、英独仏などからアメリカ大陸や、南アフリカに渡ったほか、英国で周辺化されていたスコットランドやアイルランドからの移民が多かった。
ヨーロッパで迫害されたユダヤ人やユダヤ教徒が、迫害を受けた結果として、中東、アフリカ、南北アメリカに対する植民地主義の中で、最前線の移民入植者になった、ということですね」。
「イスラエルは、入植者植民地主義によってできた入植者植民地国家の典型である」と指摘する早尾教授は、以下のように語った。
「しかしそれを隠蔽し、ユダヤ人国家を正当化するために、古代聖書のユダヤ王国の神話が、都合よく切り貼りして悪用され、その結果として、『古代からの複雑な宗教対立』であるかのような語りが捏造されてきた、ということです」。
早尾教授は、「シオニズムの問題というのは、宗教対立の問題ではなく、ヨーロッパの植民地主義の問題だ」と、改めて強調した。






































