ヨーロッパは、非ヨーロッパ世界を植民地化し、搾取し、先住民を追放し、虐殺し、奴隷として使い捨て、富を蓄積し、独占して発展してきた! そのイデオロギーは、今日まで一貫して、米国の「明白なる天命(マニフェスト・デスティニー)」と、イスラエルの「シオニズム」として生きている! 欧米諸国政府の対中東政策を批判的に論じる思想家ハミッド・ダバシの新著『イスラエル=アメリカの新植民地主義: ガザ〈10.7〉以後の世界』を読む! 岩上安身によるインタビュー第1208回ゲスト 東京経済大学教授 早尾貴紀氏 第3回(その2) 2025.11.22

記事公開日:2025.11.21取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

特集 中東
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 2025年11月22日、「欧米諸国政府の対中東政策を批判的に論じる思想家ハミッド・ダバシの新著『イスラエル=アメリカの新植民地主義: ガザ〈10.7〉以後の世界』を読む! 岩上安身によるインタビュー第1208回ゲスト 東京経済大学教授 早尾貴紀氏 第3回(その2)」を初配信した。

 インタビュー第3回(その2)では、早尾教授が翻訳した、コロンビア大学のハミッド・ダバシ教授の新著『イスラエル=アメリカの新植民地主義~ ガザ〈10.7〉以後の世界』から、「イスラエルの対ガザ戦争にはヨーロッパ植民地主義の歴史全体が含まれている」と題された章を抜粋して、イスラエルの最大の支援者である米国とイスラエルのシオニズムが共通して持つ、宗教的熱狂と白人至上主義にもとづいた先住民虐殺、植民地征服といった入植植民地主義(セトラー・コロニアリズム)の本質を考察した。

 ダバシ教授は、「シオニズムは、アメリカ合衆国の人種差別的教義である『明白なる天命(マニフェスト・デスティニー)』のユダヤ人バージョンである」と指摘している。

 早尾教授は、欧米諸国がこぞって、イスラエルによるジェノサイドを支持・支援し、正当化している背景について、「経済的・軍事的な利害だけではない」と述べ、ダバシ教授の考えを次のように解説した。

 「ヨーロッパの近代というのは、非ヨーロッパ世界を植民地化し、搾取し、そしてそこの人達を都合が悪ければ追放し、虐殺し、あるいは奴隷労働として動員し、使い捨てにして、ヨーロッパが富を蓄積し、独占し、発展してきた。それが、この21世紀にまで一貫しているんだ、というんですね。

 このイデオロギーを解明するための重要な単語のひとつが、『明白なる天命』です。東部13州で独立したアメリカ合衆国が、西部『開拓』として、領土的な拡張をしていく上で、先住民の土地・文化があるところを奪っていくわけですが、その奪っていくことを正当化するイデオロギーが、『マニフェスト・デスティニー、明白なる天命』です。

 つまり、『これは、神による意志なのだ』と。それは、ヨーロッパの白人が、この土地を支配する。アジア系のアメリカ先住民、ネイティブアメリカンに対し、白人が優越していると。

 そして、『この土地は、白人が独占的に、先住民を追放して所有するということが、天の使命なのだ』というんですね。それが、アメリカの西部『開拓』を支えたイデオロギーです。

 ダバシに言わせると、ガザ攻撃、それも単に攻撃しているということではなくて、ガザを我がものとする。そして、先住民は追放する。虐殺してもいいし、追放してもいい。とにかく一掃する。

 このロジックというのは、アメリカのマニフェスト・デスティニーのイスラエルバージョンで、それをガザで行ってるんだと。そういうイデオロギーが、通底している、ということです」。

 ダバシ教授は、「アメリカの『明白なる天命』には、キリスト教的熱狂があった」と述べ、「それは現在、『聖地』を征服し、救世主(メシア)の再臨に備えようとする福音派シオニズムへと姿を変えている」と指摘した上で、「この救世主は、アメリカの帝国主義的想像力によるまったくの架空の構築物である」と断じている。

 これについて、早尾教授は、次のように述べた。

 「キリスト教の思想の中にもさまざまな宗派があって、パレスチナのキリスト教徒達は、イスラエルの軍事侵攻、占領といったものに、抵抗している。

 福音派の方は、というと、もろに、古典的な植民地主義と結びついている。

 ヨーロッパが、アジア、アフリカ、ラテンアメリカを征服していく時に、自分達の優秀さで、遅れた先住民・野蛮人に伝道し、布教する。自分達が進んでいて優秀であるという、人種主義、あるいは優越意識というものに結びついていると言うのです」。

 さらに早尾教授は、白人が有色人種に対して持つレイシズムの背景について、以下のように指摘した。

 「自分達白人が、人口数で有色人種に追いつかれ、追い越される。だからこそ、それに対して抵抗する、反発をする。

 そもそも、この発想自体が、非常にレイシズム的だし、おかしな議論ではあるんですけれども、感覚的には、『自分達が、地位を取られるのではないか』という焦りだとか、脅威がベースにあって、そして『本来は、自分達が優位なポジションを占め続けなきゃいけないのだ』という不満から、排外主義になっていくんだろうと思いますね」。

 ダバシ教授は、米国の歴史家フレデリック・ジャクソン・ターナーの著書『アメリカ史におけるフロンティアの意義』(1893年)を紹介し、ターナーの考えを次のように論じている。

 「アメリカの入植者植民地主義者達は、自分達が後にしてきたヨーロッパ文明と『新世界』で直面する野蛮(先住民の抵抗)によって、自分達の運命が定められたと考えていた。ターナーは、アメリカ人の性格がそうした信念によって形成されていると信じていた」。

 その上でダバシ教授は、「福音派シオニズムを通じて、そうしたフロンティア、そうした『野蛮』との戦いが、パレスチナの抵抗に対するイスラエルの入植者植民地主義(セトラー・コロニアリズム)プロジェクトの原動力となっている」と指摘している。

 さらにダバシ教授は、「ジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』(1895年)では、アフリカのコンゴ自由国と思われる無名の土地の深奥に、ベルギーの怪しい会社から送り込まれた象牙商人のクルツという登場人物が、『すべての野蛮人を根絶やしにせよ』とささやく」と、紹介している。

 この小説『闇の奥』は、フランシス・フォード・コッポラ監督によって、舞台をベトナムに置き換えられ、映画『地獄の黙示録』となった。

 さらに、スウェーデンの作家スヴェン・リンドクヴィストは、コンラッドの小説『闇の奧』に出てくる言葉をタイトルにした『すべての野蛮人を根絶やしにせよ』(1992年、日本版は2023年)を出版した。

 ダバシ教授は、「この本は、アフリカにおけるヨーロッパの植民地主義、人種差別、大量虐殺の根源について道徳的に考察したものである」と紹介している。

 早尾教授は、ダバシ教授の考えを、以下のように説明した。

 「ダバシは、ガザでのジェノサイドに働くイデオロギーとして、マニフェスト・デスティニーと並んで、この『すべての野蛮人を根絶やしにせよ』という、『闇の奥』の登場人物の言葉の、まさに『根絶やし』というところに、ジェノサイドを正当化する思想が反映されている、そこに根絶やしの思想が貫かれていると。

 (パレスチナの)土地を取ることが、ユダヤ人の『明白なる天命』なのだということ。

 そこにいる先住民を一掃して、根絶やしにするという発想・思想は、どこから来るのか、といった時に、それは、パレスチナという地域の紛争だとか、宗教対立だとか、そういう話では決してない。

 ヨーロッパの植民地主義、しかも、入植者植民地主義、セトラー・コロニアリズムである。先住民は、白人と等しい権利、つまり人権、所有権、そういったものを持ちあわせていない者なので、奪ってよい。殺してよい。

 そういう発想があるから、民族集団として抹消するような政策をしても、何ら恥じるところがない」。

 早尾教授は、さらに次のように続けた。

 「非常に倒錯してると思うんですけども、先住民は野蛮であるで、根絶やしにせよというのは、非常に野蛮な思想なわけですよね。

 歴史もあり、文化もある民族集団を、虐殺して良いという、その発想自体が、非常に野蛮。だから、文明と野蛮というものが、転倒した形になっているというふうに思います。

 この『野蛮人の根絶やし』という思想を、欧米の植民地主義が持っていて、その欧米の植民地主義的なものの一環として、シオニズム、イスラエル建国がある。

 だから、パレスチナの先住民は、野蛮人として根絶やしの対象になる、という発想ですね」。

■ハイライト(その1~その4共通)

  • 日時 2025年11月14日(金)18:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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