2024年1月22日、ロシア・ウクライナ研究の第一人者でありながら、マスメディアに登場することがほぼ皆無の塩原俊彦氏に岩上安身が行ったインタビューの続きである。
ウクライナ東部にユダヤ人として生まれ、ロシア語話者として育ち、生活してきたゼレンスキー大統領が、コロモイスキー氏率いるユダヤ系オリガルヒ(新興財閥)の支援を受けて大統領の座についたのち、当初、国内の親ロシア派(ロシア語話者が大半を占める東部に集住する)と休戦する「ミンスク合意」実現を目指したと、塩原氏は指摘した。
ところが、2019年にウクライナ国内で大規模な反政府運動が起こり、ゼレンスキーを脅迫。これを契機に、大きな力を持つ「超過激なナショナリストの側に乗り換えた」と、政治的スタンスの変化を分かりやすく説明した。
こうしたウクライナ国内での権力闘争の過程など、ウクライナと米国・NATOのプロパガンダ・メディアと化した日本のマスメディアは、まったく伝えることもない。
ゼレンスキー大統領は、ウクライナ紛争を契機に権力を強め、戒厳令下で大統領選挙を延期できるようにした。「自由」と「民主主義」も「法の支配」もあと回しである。戦争をし続けることによって、自身の独裁的権力を強化し、掌握し続けようとしているのである。
しかし、戦争継続を可能にする米国主導のウクライナ支援とは結局、バイデン大統領自身が言うように「アメリカ国内投資」であり、すなわち米国の「軍産複合体への投資」に他ならない。ウクライナに金がいくのではなく、米国の兵器産業が受注するのである。
こうしたウクライナ戦争やウクライナ支援の実態について、マスメディアが見当はずれのことばかりを報じる理由を岩上が尋ねると、塩原氏は「95%の記者が不勉強」であり「無知蒙昧」だと断じた。
2014年のユーロマイダン・クーデターの時も、その前からもウクライナ国内外の動きをウォッチし続けて、その間に著したウクライナ問題の研究書は『ウクライナ2.0 -地政学・通貨・ロビイスト』(2015年)、『「ウクライナ・ゲート」: 危機の本質』(2014年)、『ウクライナ・ゲート――「ネオコン」の情報操作と野望』(2014年)など多数。
さらに、ロシアによるウクライナ侵攻で始まった、ウクライナ紛争最初の1年である2022年の1年間には、3冊のウクライナ研究書籍を出した塩原氏は、間違いなくこのウクライナ紛争についての研究者として、第一人者の1人であろう。
ところが、ウクライナ紛争の2年あまりの間、専門家としてコメントを求めることも含め、問い合わせをしてきたジャーナリストは、わずか2人だという。その1人が岩上安身である。