【30日までフルオープン!】【第637号-640号】岩上安身のIWJ特報!「クリミア半島が奪われることになれば100%と言っていいぐらい戦術核を使う可能性が高まる! これは確実です!」岩上安身によるロシア・ウクライナ研究の第一人者である評論家 元日本経済新聞記者・元朝日新聞モスクワ特派員・元高知大学大学院准教授・塩原俊彦氏インタビュー(その2) 2024.5.1

記事公開日:2024.5.1 テキスト独自
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(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!ウクライナのネオナチとアゾフ大隊の実態
※6月29日、30日の2日間限定! フルオープンで御覧いただけます。

 2024年1月22日、ロシア・ウクライナ研究の第一人者でありながら、マスメディアに登場することがほぼ皆無の塩原俊彦氏に岩上安身が行ったインタビューの続きである。

▲塩原俊彦氏(IWJ撮影、2024年1月22日)

 ウクライナ東部にユダヤ人として生まれ、ロシア語話者として育ち、生活してきたゼレンスキー大統領が、コロモイスキー氏率いるユダヤ系オリガルヒ(新興財閥)の支援を受けて大統領の座についたのち、当初、国内の親ロシア派(ロシア語話者が大半を占める東部に集住する)と休戦する「ミンスク合意」実現を目指したと、塩原氏は指摘した。

 ところが、2019年にウクライナ国内で大規模な反政府運動が起こり、ゼレンスキーを脅迫。これを契機に、大きな力を持つ「超過激なナショナリストの側に乗り換えた」と、政治的スタンスの変化を分かりやすく説明した。

 こうしたウクライナ国内での権力闘争の過程など、ウクライナと米国・NATOのプロパガンダ・メディアと化した日本のマスメディアは、まったく伝えることもない。

 ゼレンスキー大統領は、ウクライナ紛争を契機に権力を強め、戒厳令下で大統領選挙を延期できるようにした。「自由」と「民主主義」も「法の支配」もあと回しである。戦争をし続けることによって、自身の独裁的権力を強化し、掌握し続けようとしているのである。

 しかし、戦争継続を可能にする米国主導のウクライナ支援とは結局、バイデン大統領自身が言うように「アメリカ国内投資」であり、すなわち米国の「軍産複合体への投資」に他ならない。ウクライナに金がいくのではなく、米国の兵器産業が受注するのである。

 こうしたウクライナ戦争やウクライナ支援の実態について、マスメディアが見当はずれのことばかりを報じる理由を岩上が尋ねると、塩原氏は「95%の記者が不勉強」であり「無知蒙昧」だと断じた。

 2014年のユーロマイダン・クーデターの時も、その前からもウクライナ国内外の動きをウォッチし続けて、その間に著したウクライナ問題の研究書は『ウクライナ2.0 -地政学・通貨・ロビイスト』(2015年)、『「ウクライナ・ゲート」: 危機の本質』(2014年)、『ウクライナ・ゲート――「ネオコン」の情報操作と野望』(2014年)など多数。

 さらに、ロシアによるウクライナ侵攻で始まった、ウクライナ紛争最初の1年である2022年の1年間には、3冊のウクライナ研究書籍を出した塩原氏は、間違いなくこのウクライナ紛争についての研究者として、第一人者の1人であろう。

 ところが、ウクライナ紛争の2年あまりの間、専門家としてコメントを求めることも含め、問い合わせをしてきたジャーナリストは、わずか2人だという。その1人が岩上安身である。

記事目次

ユダヤ人・オリガルヒのコロモイスキー氏のパペット(操り人形)のはずだったのに、相当な力を手にしたゼレンスキー! 戒厳令下でウクライナ大統領選挙は延期、ずっと権力の座に居続けてファッショ化する可能性大! どこが「自由と民主主義」の陣容を代表する国なのか!? デタラメなプロパガンダはいいかげんにしろ!

塩原氏「それから、あと、これから具体的にお話ししていきますが、ウクライナ支援というのは、バイデン大統領は(米国内への)『国内投資』だと言っていて、今年は大統領選挙の年なので、『国内投資』をするのであれば、やめちゃいけない。

 つまり、ウクライナ支援は『国内投資』だから、大統領選挙のある年に『国内投資』をやめるわけにいかないから、ウクライナを支援し続けると。つまり、戦争を続けるという、そういう話をこれからしていきたいと思います」

第637-640号は、「まぐまぐ」にてご購読も可能です。

[※「まぐまぐ」はこちら ]

岩上「『戦争を続けたいウクライナ』の(1)という」

▲戦争をつづけたいウクライナ(1)

塩原氏「ウクライナ側は、じゃあどう思っているかというと、要するに、彼(ゼレンスキー大統領)は今年(2024年)、本当はですね、2024年の3月に、大統領選挙を迎えるはずだったのに、戒厳令が出ている間は憲法によって選挙しなくていい。つまり、彼は、戦争を続ければ続けるほど、戒厳令の状況にあればあるほど、選挙をしなくて済むので、権力を維持することができると」

▲ウォロディミル・ゼレンスキー第6代ウクライナ大統領(Wikimedia Commons、President Of Ukraine from Украiна)https://bit.ly/49c9nDp

岩上「(権力基盤の)強化もできますよね。反対派をどんどん粛清していくことができますから」

塩原氏「というのが、ひとつの理由です」

岩上「ゼレンスキーというのは、ただのコメディアンみたいな人だった(※1)わけじゃないですか。それが、コロモイスキーというオリガルヒ(※2)、ユダヤ人のオリガルヒに見いだされて、『国民の僕(しもべ)』(※3)ですか、というテレビドラマの主人公にされ、(ドラマの)中で大統領になっていってですね、そして、ウクライナにとって、宿痾とも言える、そしてウクライナ国民の困っているのが、汚職だらけってことなんですよね(※4)。

▲ユダヤ人オリガルヒのイーホル・コロモイスキー氏。(Wikimedia Commons、Справедливiсть. Анна Безулик)https://bit.ly/4cqsTie

 その(テレビ番組によって)汚職と戦うというスーパーヒーローになって、ちょうど、その番組が終わる頃、大統領選を迎えて、そして、(番組内でも大統領となり、番組の外でも俳優の枠を)飛び越えて大統領選になってという、メディア選挙みたいな、それにこう、ピックアップされたキャストだったはずなんですよね。

 ところが、このゼレンスキーが権力を持った段階で、コロモイスキーの財産とかを捜査するとか、彼のボスだったはずの連中にも手を出す(※5)。

 だから、気がついたらゼレンスキーは、ただのパペット(操り人形)という以上の権力を、もちろん、アメリカがバックアップしてくれてる、アメリカの言うことを聞かないと、もう話にもならないんですけれども、戦争継続も何もないんですけど、(ウクライナ)国内においては、意外に相当の力を持ってしまったんじゃないか、という気がするんですけれども、この点はいかがでしょうか?」

塩原氏「ゼレンスキーを支持したコロモイスキー達っていうのは、別にウクライナの西部中心の、猛烈な超過激なナショナリストとは違う、普通のロシア語が母語であるような人たちで」

岩上「そうですね。ロシア語話者でしたものね」

塩原氏「ですから、その人たちを、コロモイスキーはゼレンスキーを支持して、うまくだまくらかして、ゼレンスキーを大統領にすることができた。

 それは、どういうことかというと、ロシア語を話していても、ウクライナという国が大切で、ロシアなんか駄目だと(考える人であれば)、ロシア語を話してもいいですよと。

 だから、ゼレンスキーは大統領選挙の時に、ロシア語で、彼は自分でロシア語のほうが上手で、ウクライナ語なんて、別にそんなうまいわけじゃないんですけれど、ロシア語で話しかけて。

 ロシア語を話していても、別にウクライナが大切で、ウクライナのナショナリズムのために頑張れるんですよっていう、そういう人として、多くの人たちの支持を集めて、大統領になれたわけですけれども。

 しかし、彼を支持する人の中には、(ウクライナの)西部で、ロシア語大嫌いで、ウクライナ語を義務化して、ウクライナ語じゃなきゃダメだっていう、恐ろしいぐらいのナショナリストたちがたくさんいて。

 順序としては、ゼレンスキーは本来であれば、コロモイスキーが支持していた勢力とともに、先ほど出てきた、彼自身の公約でもある、ミンスク合意を実現するということに努力していたのに、ある時点から、それを、もう駄目だって気づくんですね。

 それは、いつ気づいたかっていうと、2019年の10月2日か何かに(※6)、キーウで大規模な反政府運動というのが起きて、もう、その当時、ゼレンスキーは大統領だったんですが、彼がミンスク合意を実際に履行するんだったら、俺たちはお前を追い出すぞっていう…」

岩上「ケツをまくられたわけですね」

塩原氏「反政府運動があって、その時点で」

岩上「これは民族主義者の運動ですね、右派セクターやなんかの」

塩原氏「そうです。で、それから先も、つまり、ミンスク合意を本当に実現するっていう、コロモイスキーはそれでよかったんだと僕は思っていますけれども、そういうふうに動くと、イコール、かつてナショナリストによってクーデターを起こされた。

 そうした実力を持った人たちを、その後、処罰しなかった。彼ら(ナショナリスト)は残存していて、アゾフ連隊(※7)が、その典型ですけれども、準軍隊にしながらも、彼らはすごく大きな力を持ち続けていたので。だから結局、ゼレンスキーは、この穏健な人たちではなくて、超過激なナショナリストの側に乗り換えたんです」

岩上「なるほど。非常にわかりやすい説明ですね。

 内部の闘争ですよね。それはまさに、アゾフの元になった連中なんていうのは、スタート点、路上のごろつきのレベルから、フーリガンみたいなところからですからね。

 それが、ユーロマイダン・クーデター直後の動乱から、西から東へ行く過程で、人殺しをし続けながら、膨れ上がっていくわけですね。でも、殺人事件が起こっても、各所各所の警察署長は、彼らを一切咎めることなく、どうぞどうぞと通していき、果ては自警団というふうな名目まで与え、最終的には内務省傘下の、公式の組織のもとに入る。

 そして、軍備とかまで与えられるわけですけれども、アゾフとしての、ナチスへの忠誠心、SS(ナチス親衛隊)のマークをずっと続けているようなことは、何も変わらなかったわけですよね。

 ここらのほうの話というのは、アメリカは独立メディアでもうかなりたくさん出てきてますから、アメリカは簡単には(ひとくくりでまとめて)言えないんですけど、日本は特に統制がひどすぎて、『ウクライナにはネオナチはいないんだ』というですね、でたらめプロパガンダが、まったく、各局全部やるという、恥ずかしいことをやったりして(※8)。一番、理解できてないんじゃないかなと思いますね、これはね。

 でも、すごく、今の先生のお話が重要ですね。あの取り締まりなんか、たとえば早い話が、権力が、暴力の輩といいますか、犯罪者を使うなどということは、往々にして、古今東西あるわけですけれども、しかしその後に、実は切っちゃったりするわけですよ。

 そうしたり、始末したりするわけですね。あるいは、急に法を適用してですね、アウトローに法を適用して、『お前たちはやり過ぎた』とか言って、力を持たせないんだけど、(アゾフは)本当に現実の軍隊としての組織を持つまでに至ってしまった。

 それから、大衆動員能力もある、というようなことで恐れをなしたり、あるいは、こいつらの方が頼もしいなと思ったりということに、ゼレンスキーは気づいていったっていうことなんですね」

塩原氏「そうですね」

岩上「これは非常に重要な、すごく重要な、なかなか普通の人がしてくれない指摘ですよね。

 それで、言ってみれば、ゼレンスキーっていうのは、自ら権力を、今まではパペットだったんだけれど、パペット以上の力を、自分が手に入れたような気持ちになっていったんだっていうことは、ひとつ言えるわけですよね。

 ここはもう、ご説明がありましたね。2023年の11月に署名された覚書で、戒厳令が終了するまで選挙を延期すると。11月16日から90日間に延長。2024年3月にウクライナ大統領選を行う可能性はゼロと。

 まさに、今年ですけれども、3月ってもうすぐなんですが、これはおそらく行われないだろうということですよね。

 行われる可能性が、ある面もあるんですか? たとえば、自由と民主主義の国、ウクライナは善、そして権威主義的なロシアは悪。善と悪との戦い、光の国と闇の国との戦いぐらいの極端な対比でですね、演説を繰り返した人と言えば、欧州委員長のフォン・デア・ライエン(※9)みたいな女性政治家が、すぐに思い浮かぶんですけれども。

 彼女なんか、もう本当に、『自由と民主主義の素晴らしい国であるウクライナがいじめられている』。しかし、ウクライナで大統領選すら行わなかったら、プーチンが(大統領選を)やるのに、(ゼレンスキーが)行わなかったら、もう、このへんのプロパガンダ、全部崩れちゃうわけですよね。形だけでも行わせるという可能性もないんですか?(※10)」

▲ウルズラ・フォン・デア・ライエン第13代欧州委員会委員長(Wikimedia Commons、Etienne Ansotte, European Union, 2021)https://bit.ly/3Tz6g2G

塩原氏「ないですね」

岩上「ない。もう、何て言うか、ファッショむき出しになりそうですね。だとしたらね」


※1)ゼレンスキーというのは、ただのコメディアンみたいな人だった:
 ウォロディミル・オレクサンドロヴィチ・ゼレンスキー。ウクライナの政治家、俳優、コメディアン。第6代ウクライナ大統領。
 1978年1月25日、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国(当時)のクルイヴィーイ・リーフに、ユダヤ系ウクライナ人として生まれた。
 ウクライナ東部出身のため母語はロシア語。ウクライナ語は苦手で、芸能活動ではロシア語を使用してきたが、ウクライナ語の猛特訓を受けて公の場ではウクライナ語を使用する。英語で話すこともある。
 子供の頃から話芸の才能を示し、ロシアのバラエティー番組『KVN(面白い奴らのクラブ)』にウクライナ代表のアマチュア芸人として出演する。
 キーウ国立経済大学クルィヴィーイ・リーフ校で法学の学位を取得したが、大学卒業後はコメディアンの道に進む。
 1997年、コメディ劇団「第95街区」を結成。台本も手掛けて、若くして看板芸人となる。2003年に「第95街区」をコメディ映画・番組・舞台の制作会社へと再編。ウクライナの大手テレビ局「Iнтер」や「1+1」などに番組を提供するようになる。
 ゼレンスキーの才能を見込んでバックアップしたのは、テレビ局「1+1」のオーナーであるイーホル・コロモイスキーである。
 コロモイスキーはソ連崩壊後に公有財産を私物化した新興財閥(オリガルヒ)のユダヤ人で、1000万ドルをかけて創設した私兵部隊のドニプロ大隊を持ち、親ロシア派に対抗する他の民兵隊、有名になったアゾフ大隊などにも資金提供していたとされる。
 2006年、ゼレンスキーはイギリスのダンス番組『ストリクトリー・カム・ダンシング』のウクライナ版に出演、大ブレイクを果たす。ゼレンスキーの出演回は最大瞬間視聴率87パーセントという驚異的な数字を叩き出した。
 2015年、普通の歴史教師がふとしたことから大統領に当選して、権謀術数が渦巻く政界と対決する政治風刺ドラマ『国民の僕(しもべ)』が「1+1」で放映される。ゼレンスキーは主役の教師を演じ、ドラマの中でも大統領にまでのぼりつめて、汚職と戦うヒーローのイメージキャラクターとなった。同作は大ヒットとなる。
 ドラマ『国民の僕』は、2019年3月31日に行われた大統領選挙の直前の、3月28日まで毎週木曜日に放映された。政治的なキャリアのないゼレンスキーは、抜群の知名度と『国民の僕』で演じた腐敗政治を刷新する大統領のイメージを武器に、73.2%の得票率で現役のポロシェンコ大統領を破って当選した。
 2019年5月20日、大統領に就任。同年7月21日に行われた最高議会選挙では、自身の新党「国民の僕」が過半数の議席を獲得する圧勝を果たす。ウクライナ史上初めての単独過半数を上回る勝利で、現有議席ゼロから一気に第1党になった。
 しかし、ウクライナが抱える経済、汚職、紛争といった政治的課題を解決することはできず、当初70パーセント台だったゼレンスキーの支持率は早くも下落。
 外交面でも、ミンスク合意で決められた親ロシア派の分離独立を認めない民族派の猛反発に直面し、方針を転換。ロシアとの関係正常化はなくなった。
 その後、NATO加入のため、西側諸国への根回しに動いたが、成果をあげることはできず、2021年10月には支持率は、25パーセントまで後退した。
 2022年2月、ロシア軍がベラルーシとの合同軍事演習のためウクライナ国境付近に10万人規模の部隊を集結させた。これに対し、米軍の増派部隊が東欧に到着したことで緊張が高まる。
 ロシアは2月21日、ウクライナ東部の親ロシア派が実効支配する地域の独立を承認。2月24日には、ロシア軍によるウクライナへの侵攻が始まった。
 2月25日と26日、ゼレンスキー大統領は国民に呼びかけるビデオ演説を公開。「我々はここにいる。国を守る」と熱弁を振るった。
 その後、ウクライナの調査会社が実施した調査(18歳以上の国民2000人)によれば、91パーセントがゼレンスキーの行動を支持すると回答した。
 12月下旬、ゼレンスキーは初めてウクライナを出て訪米。バイデン大統領との首脳会談で新たな軍事支援を取りつけ、アメリカ連邦議会で演説を行った。この年、米国のTIME誌の「パーソン・オブ・ザ・イヤー2022」に選出されている。
参照:
・ゼレンスキーの「正体」!? 彼が人気を得たドラマのテレビ局オーナーは富豪のコロモイスキー氏。同氏はユダヤ人でオレンジ革命から「親欧米派」活動、今米国滞在。各国は軍事支援で戦闘長引かせず、停戦交渉の場を! 2022.3.23(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3x4zChB
・【IWJ号外】元米国防副次官スティーブン・ブライエン氏が、ウクライナ紛争の天王山の戦いともいうべき、アウディーイウカの陥落というウクライナ軍の壊滅的敗走を受けて、ゼレンスキー政権の失脚を予測し、『ワシントンの政策の中心的要素のほとんどは、失敗した』と指摘! 2024.2.22(IWJ)
【URL】https://bit.ly/4av5pGT
・【IWJ号外】ウクライナの大物政治家が証言! ブリンケン国務長官がキエフでゼレンスキーに対し、『バイデンの汚職関連の解決ができないなら、我々が解決する(証人を消すの意味)』と脅迫!(第1回) 2024.1.17(IWJ)
【URL】https://bit.ly/4a7X6kH
・【IWJ号外】ウクライナの大物政治家デルカッチ氏が驚愕発言!!「ブリズマ事件の幕引きのために使われた600万ドルの賄賂が汚職隠蔽のテロに使われた」!!(第2回) 2024.1.20(IWJ)
【URL】https://bit.ly/4aaEeRU
・【IWJ号外】元米国防副次官スティーブン・ブライエン氏が、ウクライナによるロシア領ベルゴロドへのロケット弾攻撃について、「ゼレンスキーは致命的なミスを犯した可能性がある」と警告! 2024.1.5(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3Tz5fYq
・政治経験のないコメディアンがウクライナ大統領選で圧勝できた理由(DIAMOND ONLINE、2019年4月23日)
【URL】https://bit.ly/4a1czTz
・ゼレンスキー氏がコメディアン時代に出演したドラマを放映した富豪、20億円の詐欺・資金洗浄疑い(読売新聞オンライン、2023年9月4日)
【URL】https://bit.ly/3xdcGNg
・ウォロディミル・ゼレンスキー(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/49ePdJ5

※2)イーホル・コロモイスキー:
 1963年生まれ。ユダヤ系ウクライナの実業家、政治家。ウクライナ・イスラエル・キプロスの三重国籍をもつとされる。2014年3月から2015年3月までドニプロペトロウシク州知事を務めた。リナト・アフメトフ、ヴィクトル・ピンチュクらと並ぶ、ウクライナ有数のオリガルヒの一人である。
 2021年、米国務省は、コロモイスキーとその家族を知事時代の不正蓄財容疑で入国禁止処分とし、コロモイスキーの活動によってウクライナの将来に深刻な脅威をもたらすとして、米国務省のブラックリストに掲載した。
参照:
・イーホル・コロモイスキー(wikipedia)
【URL】bit.ly/4aBqSy9
・Public Designation of Oligarch and Former Ukrainian Public Official Ihor Kolomoyskyy Due to Involvement in Significant Corruption(U.S. Department of State、2021年3月5日)
【URL】https:bit.ly/3PEQeTE
・ゼレンスキーの「正体」!? 彼が人気を得たドラマのテレビ局オーナーは富豪のコロモイスキー氏。同氏はユダヤ人でオレンジ革命から「親欧米派」活動、今米国滞在。各国は軍事支援で戦闘長引かせず、停戦交渉の場を! 2022.3.23
ゼレンスキーの「正体」!? 彼が人気を得たドラマのテレビ局オーナーは富豪のコロモイスキー氏。同氏はユダヤ人でオレンジ革命から「親欧米派」活動、今米国滞在。各国は軍事支援で戦闘長引かせず、停戦交渉の場を! 2022.3.23

※3)『国民の僕(しもべ)』:
 コロモイスキーがの株70%を保有する『1+1メディアグループ』のテレビ局の『1+1』で、ゼレンスキーがウクライナ大統領役を演じたドラマ『国民の僕』が放送された。
 2016年には映画版『国民の僕 第2部』が公開され、ゼレンスキーはウクライナ映画賞に主演男優賞でノミネートされた。同じ頃、バラエティ番組で下半身の衣服を脱ぎ、自身の陰茎を用いてピアノを演奏する芸を披露している。
 2017年に『国民の僕』の第2シーズン全24話が、2019年には『国民の僕』第3シーズンが放映された。
 国民的なスターとなったゼレンスキーは、2018年3月、テレビ番組と同名の政党『国民の僕』を立ち上げた。同年12月31日、「1+1」の放送を通して2019年ウクライナ大統領選挙への立候補を表明した。
 ドラマ『国民の僕』の制作スタッフの一部は、政党『国民の僕』のスタッフに転職しており、ドラマの放映時から、選挙に出ることを想定して大がかりな準備が整えられていたことがうかがわれる。
参照:
・国民の僕 (テレビドラマ)(wikipedia)
【URL】https:bit.ly/3x7P24I

※4)「汚職だらけ」:
 『Transparency International』の調査によると、2024年の腐敗認識指数の各国ランキングで、ウクライナは104位であった。同調査は、政府・政治家・公務員などの公的分野での腐敗度を10~11機関が調査した12~13種類の調査報告にもとづいてスコア化し評価している。
 腐敗認識指数は、公共部門の汚職の認識レベルを「0~100」で評価したもので、ウクライナの腐敗認識指数は、2013年の「25」(144位)から2023年の「36」(104位)まで徐々に改善されている。日本は2023年「73」で、ランキングは16位であった。
参照:
・腐敗認識指数 国別ランキング・推移(Global Note、2024年1月31日)
【URL】https:bit.ly/3TEH1vE
・CORRUPTION PERCEPTIONS INDEX(Transparency International)
【URL】https:bit.ly/3vFUX0t

※5)「ゼレンスキーが権力を持った段階で、コロモイスキーの財産とかを捜査するとか、彼のボスだったはずの連中にも手を出す」:
 ウクライナの富豪イゴール(イホール)・コロモイスキー氏は、2023年9月2日に逮捕され、9月7日にウクライナ国家汚職防止局(NABU)により、横領の罪で起訴された。
 コロモイスキー氏は、自身の支配する銀行から資金を不正に引き出し、銀行の資本における自身の持ち分を増やした容疑で告発されたと報じられた。
 ロシアメディア『RT』は、同年同月7日、以下のように報じた。
 「テレグラムに掲載されたNABUの声明によると、コロモイスキー容疑者は他の5人の容疑者とともに、2015年に取引資金としてウクライナのプリヴァト銀行(IWJ注・コロモイスキー氏が創設したウクライナ最大の銀行)から総額92億フリヴニャ(2億5000万ドル・約364億円)以上を受け取った。声明によると、当時同銀行の実質的な所有者だったこの億万長者は、自社の社債を高額で買い取るという名目で、プリヴァト銀行に対し、自身が管理する特定の企業にこの金額を支払うよう強要したという」。
・はじめに~ウクライナのゼレンスキー大統領の支援者、コロモイスキー氏が、自身が影響力を持つ銀行から資金を不正に引き出させ、自身の管理する企業の社債を買い取らせて資本持ち分を増やした横領の罪で、ウクライナ国家汚職防止局(NABU)に逮捕・起訴される! ゼレンスキー大統領は、同じユダヤ人であるコロモイスキー氏のパペット(操り人形)と見られていた!「ご主人」を逮捕したゼレンスキー氏には、新しい「ご主人」がついたのか!?(日刊IWJガイド、2023.9.12号)
【URL】会員版 https:bit.ly/43ErXmu
【URL】非会員版 https:bit.ly/43zgOTX
・はじめに~EU加盟を目指す、世界最底辺レベルの汚職大国ウクライナで、汚職追放活動が継続中! 捜索は政府当局者以外にも拡大! 2019年ウクライナ大統領選挙でゼレンスキー候補を強力にバックアップした、ウクライナのユダヤ人オリガルヒ、イゴール・コロモイスキー宅にも家宅捜索! 米国からも制裁を受けるコロモイスキーとは何者なのか?(日刊IWJガイド、2023.2.10号)
【URL】会員版 https:bit.ly/3VAbgGH
【URL】非会員版 https:bit.ly/3PCznB2

※6)「2019年の10月2日か何かに、キーウで大規模な反政府運動というのが起きて」:
 2015年2月にウクライナ、ロシア、ドイツ、フランスによる「ノルマンディ・フォーマット」でミンスク合意2が合意された。しかし、ドネツク・ルハンシク州の自治を定めた「ドネツク州及びルハンシク州の特定の地区における地方自治の特別規則に関する法」に、ウクライナは認めていなかった。
 2019年10月1日に開催された三者コンタクト・グループ(TCG、ロシア、ウクライナ、OSCEの3者)会合で、ゼレンスキー大統領は、ドイツのシュタインマイヤー大統領が提示した選挙の運営管理に関わる特別規則法「シュタインマイヤー・フォーミュラ」の受け入れを表明した。
 しかし、キエフではこれに反発する1万人のデモが起こり、ゼレンスキー大統領は、この特別規則法を、「1年のみ」の延長とした。
・ウクライナ危機と政治改革(末澤恵美、ロシア・ユーラシアの社会2020年3-4月号、No.1049)
【URL】bit.ly/43ABzhU
・三者グループ、ウクライナ東部停戦の必要性に同意(ウクルインフォルム、2021年12月22日)
【URL】bit.ly/3xmsI7r

※7)アゾフ連隊:
 極右思想を持つウクライナの軍事組織。アゾフ大隊とも呼ばれる。
 2014年5月、ネオナチ集団「パトリオット・オブ・ウクライナ」と、ネオナチ・グループ「社会国民会議(SNA)」を母体に結成された。
 この2つのグループは、外国人排斥思想を持ち、移民やロマコミュニティ(ジプシー集団)、ウクライナ東南部で独立運動をしている人々(ロシア系住民)などに対し、暴行や虐待、強奪を行っていた。初代司令官は、白人国家主義者で極右政治家のアンドリー・ビレツキー(2014年5月~10月)。
 アゾフ大隊のロゴは、名誉毀損防止同盟(米国最大のユダヤ人団体)によってネオナチのシンボルと認定された「ヴォルフスアンゲル(ウルフフック)」と「ゾンネンラート(黒い太陽)」という2つの紋章で構成されている。

▲アゾフ大隊のエンブレム(2014年夏~2014/2015冬まで使用)(左)、「ヴォルフスアンゲル」を使用したナチス武装親衛隊第2SS装甲師団のエンブレム(中)、黒い太陽(右)。(Wikimedia Commons、Kraftwerkvs

 アゾフ大隊が注目を集めるようになったのは、親ロシア派のヤヌコーヴィチ大統領が、反政府デモの高まりによって国外逃亡に追い込まれた2014年の政変、ユーロマイダン・クーデターの時からである。
 その後、東部の親ロシア派(ロシア語話者中心)と欧米寄りの勢力(ウクライナ語話者が多い)とが衝突を繰り返す中、アゾフは自警団として親ロシア派を弾圧。彼らの暴力は警察にとがめられるどころか、武装して戦闘することも認められ、軍の別動隊のような扱いを受ける。
 内務省傘下の部隊となったアゾフ大隊は、戦略的に重要な港湾都市マリウポリを独立派から奪還し、当時のペトロ・ポロシェンコ大統領から「アゾフ大隊は我々の最良の戦士だ」などと称賛された。
 2014年11月12日、アゾフ大隊はウクライナ国家警備隊(the National Guard of Ukraine)に統合され、国の軍隊となる。正式な所属と名称は、東部作戦地域司令部第12特務旅団所属・アゾフ特殊作戦分遣隊。
 これに伴い、アゾフはネオナチ・イメージの払拭を図り、アンドリー・ビレツキー司令官は辞任。ビレツキーはその後、極右政党「ナショナル・コープス」を創設し、現在もアゾフと深いつながりがあると言われている。
 国連人権高等弁務官事務所は「ウクライナの人権状況に関する報告─2015年11月16日から2016年2月15日─」の中で、アゾフ大隊の国際人権法違反を告発している。
 この報告書は、アゾフ大隊が民間の建物に武器と部隊を配置し、住民を強制退去させて財産を略奪、さらにドンバス地方では拘束した人々に拷問や強姦を行ったと非難している。
 2016年、サイモン・ヴィーゼンタール・センター(ロサンゼルスが本拠の反ユダヤ主義監視団体)は、アゾフがフランスでネオナチを戦闘員として勧誘しようとしたことを摘発している。
 2019年10月16日、米国のニューヨーク州第11選挙区選出の民主党のマックス・ローズ下院議員(当時)ら36名の米国の連邦議会議員が、アゾフ大隊を国務省の海外テロリスト組織(FTO)のリストに入れるよう、当時のポンペオ国務長官に要請文を提出。
 その要請文の中でアゾフ大隊は「海外の暴力的な白人至上主義過激派集団」と表現されている。
 アゾフ大隊を取材した西側のジャーナリストたちは、アゾフの兵士が自分たちはネオナチだと簡単に認めたこと、SS(ナチス親衛隊)のルーン文字や鉤十字、松明行進、ナチス式敬礼を目撃したことを伝えている。米国の雑誌『Nation』は、2019年、「ウクライナは世界で唯一、国軍にネオナチ編隊を持っている」と報じた。
 2022年2月にロシアがウクライナに侵攻すると、ウクライナはアゾフのネオナチ思想を「脱色」してみせる情報工作、いわゆる「ホワイトウォッシュ」を展開。これに西側メディアはさっそく呼応し、キエフまで各国のクルーはお出迎えを受け、通訳付きで、アゾフ司令官の「スクープ」インタビューにありつけるという、ジャーナリストとして最も恥ずべき「パッケージ・ツアー・ジャーナリズム」に次々と乗っかっていった。日本も例外ではない。
 あげく、「創設時のアゾフにはネオナチもいたが、国軍に編入された現在は違う」という論調で、アゾフの存在を美化して各国でプロパガンダを行うようになった。
参照:
・【IWJ号外】ウクライナの戦場がネオナチの培養装置となっている! 外国人志願兵として戦闘に参加し、帰国したネオナチが、世界中にネットワークを作り、テロを拡散!『RT』の検証記事をIWJが全文仮訳! 2023.6.13(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3EUNfk2
・【特集】マスメディアが歪曲して報じるウクライナのネオナチとアゾフ大隊の実態(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3LyDHPq
・アゾフ連隊(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/45ar1W2
・アンドリー・ビレツキー(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/46qozeW
・アゾフ大隊の初代司令官、アンドリー・ビレツキー(2014年撮影)。(Wikimedia Commons、Батальон “Азов”/Battalion “Azov”、My News24)
【URL】https://bit.ly/3PDsNJM

※8)「『ウクライナにはネオナチはいないんだ』というですね、でたらめプロパガンダ」:
 テレビ朝日は2022年3月27日、アゾフ連隊の司令官と名乗る男性のイン
タビューを放送し、その主張を検証も批判も説明もなく、あたかも事実であるかのように、たれ流した。
 「アゾフはネオナチではない。祖国を守っている」という主張をそのままオンエアさせてしまったが、その人物は胸に堂々とナチス親衛隊の紋章「ヴォルフスアンゲル」を使用した隊章をつけていた。IWJはこの番組を批判、その後、番組のアーカイブはYouTube上から消された。
 TBSでは、2022年4月23日の『報道特集』で、金平茂紀キャスターが、アゾフ連隊の司令官にインタビューした。その際、ナレーターが「西側の一部からも、ネオナチとの関係を指摘されたこともある」等と、ネオナチの要素を薄めるような紹介をしたり、流された映像では、アゾフの連隊旗、隊員の腕のワッペン、基地入り口の連隊マークに描かれた、ネオナチの象徴「ヴォルフスアンゲル」にぼかしが入れられていた。
 もし、このシンボルに何の問題もなければ、ぼかしを入れる必要はない。番組側がぼかしを入れなければまずい、という明確な認識をもっていたことを、逆に証明している。
 また、金平氏自身のインタビューも、アゾフがネオナチではなく、ナチスと関係がないことを相手に証言させるように誘導し、アゾフの「ホワイトウォッシュ」をはかるような情報操作まるだしのやり方だった。
 日本の公安調査庁のホームページでは「国際テロリズム要覧2021」の「極右過激主義者の脅威の高まりと国際的なつながり」の項目で、「2014年、ウクライナの親ロシア派武装勢力が、東部・ドンバスの占領を開始したことを受け、『ウクライナの愛国者』を自称するネオナチ組織が『アゾフ大隊』なる部隊を結成した。同部隊は、欧米出身者を中心に白人至上主義やネオナチ思想を有する外国人戦闘員を勧誘したとされ、同部隊を含めウクライナ紛争に参加した欧米出身者は約2000人とされる」と記載していた。
 しかし、2022年春、つまり、ウクライナ戦争が始まり、ロシアのプーチン大統領が特別軍事作戦の目的のひとつとして、ウクライナの「非ナチ化」を掲げていたことに対して、対処するかのように、この部分は丸ごと削除され、公安調査庁は2022年4月8日付で「公安調査庁が『アゾフ大隊』をネオナチ組織と認めたものではありません」という削除理由を掲載している。
・テレ朝「アゾフ連隊」司令官インタビューは「アゾフはネオナチでない」との誤った放送! 岩上安身が批判ツイート連投!「ネオナチではないと。では、この司令官の胸のマークは何だ?」そこにはナチスの紋章が! 2022.5.24(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3rpEiw4
・ツイッター「IWJ_Sokuho」4月24日、ロシア国防省が23日、「米国政府が『ロシア軍が化学兵器、生物兵器、戦術核兵器を使用している』と非難するために、挑発の準備をしているという情報を保有している」と発表! これまでの米国の嘘による他国攻撃を指摘し「責任を問われた者はいない」と批判! TBSは23日放送の『報道特集』で「ロシアの戦争プロパガンダを検証」とナチス親衛隊の紋章であり、アゾフ連隊のシンボルでもある「ヴォルフスアンゲル」にぼかしを入れた上でアゾフ連隊を「ナチスでない」と紹介! これはアゾフのプロパガンダへの加担ではないのか!?(日刊IWJガイド、2022年4月25日号)
【URL】
非会員版 https://bit.ly/46oUoFL
会員版 https://bit.ly/3EYGb60
・「国際テロリズム要覧2021」中の「アゾフ大隊」に関する記載の削除について(公安調査庁)
【URL】https://bit.ly/46mb8Nl

※9)フォン・デア・ライエン:
 ウルズラ・ゲルトルート・フォン・デア・ライエン。欧州連合の政治家。ドイツキリスト教民主同盟(CDU)所属。2019年から第13代欧州委員会(EU)委員長。
 1958年10月8日、ベルギー生まれ。ドイツのハノーファー医科大学を卒業し、医師資格と医学博士号を持つ。
 地方の政界を経て2005年8月、CDU党首アンゲラ・メルケルのドイツ連邦議会選挙の選挙対策チームに、家族・保健政策担当として招聘される。選挙後の2005年11月、第1次メルケル内閣に家族・高齢者・女性・青少年相として入閣。
 2013年に発足した第3次メルケル内閣では、ドイツ史上初の女性国防大臣に就任し、2018年の第4次メルケル内閣でも国防大臣に留任。当初はメルケルの後継者とも目されていたが、ドイツ軍の装備や体制の問題、国防省での相次ぐスキャンダルにより人気が低下。
 その上昇志向が党内でも忌避され、「ポスト・メルケル」のレースからは完全に脱落した。
 メルケルは、国内で不人気のフォン・デア・ライエンに欧州委員長ポストを与えて長年の功に報いることにし、2019年12月1日、フォン・デア・ライエンを委員長とする欧州委員会の新体制が発足した。
 2022年2月24日に、ロシアのウクライナ侵攻が起きると、フォン・デア・ライエンはウクライナ全面支持を強烈に打ち出し、2月27日にはインタビューで「ウクライナは我々の一員。加入してほしい」と述べた。これを受け、翌28日、ウクライナのゼレンスキー大統領は特別手続きで早急に加盟できるようEUに要請を行った。
 しかし、ウクライナの経済状態や基準は、EUへの加入基準を満たしておらず、特別加入は秩序を乱す行為であり、このフォン・デア・ライエン発言はエリック・マメル欧州委員報道官により撤回された。
 これについて孫崎享氏は、2022年3月1日の岩上安身のインタビューの中で、「ここで非常に重要なことは(フォン・デア・ライエン発言の)日にち。ロシアとウクライナが停戦交渉をやろうとしていた時に(EUに)加入してほしいと言った。交渉をまとめようという気持ちは、ない。ウクライナのNATO加盟につながる話なので、本来、触れてはいけないにもかかわらず、わざわざそれを言ったのは(停戦に持ち込ませないための)戦略的発言ではないか」と指摘している。
 これほどウクライナに強く肩入れしていたフォン・デア・ライエンだったが、2024年2月21日のブリュッセルでの記者会見で、手のひらを返したように、「ウクライナのEU加盟への手続が、少なくとも今後3ヶ月間は停滞するだろう」と語っている。『RT』が22日付で報じた。
 『ポリティコEU』も22日付の記事で、「ウクライナのEU加盟手続きはEU議会選挙後になる」というフォン・デア・ライエン発言に、欧州の外交官、政府関係者、ウクライナ政府が、「何を今さら?」と驚いていると報じ、この発言の背景には6月に行われるEU議会選挙があるのではないか、と指摘。「EUのいくつかの国々は、(EU議会)選挙を目前に控えて、ウクライナのEU加盟に関する議論を行うことに神経質になっている」「欧州の農民たちの怒りが一役買っているのは間違いない」と、分析している。
 というのも、フォン・デア・ライエン委員長は、2月19日、欧州委員会委員長2期目への立候補を表明。「欧州連合(EU)を分裂させようとする勢力から守る」ことを誓っているのである。
 そして、2月22日付『ユーラクティブ』によると、フォン・デア・ライエン委員長は、6月の欧州議会選挙後の、右傾化すると予測されている議会運営について問われ、「3つの『レッドライン』(親EU、親ウクライナ、法の支配の尊重)を尊重する勢力と協力する」と述べている。
 しかしながら、ドイツ、フランス、イタリアといったEUの中核国において、反EU的な極右派や新左派が台頭してきている。
 また、欧州外交問題評議会(ECFR)による1月末の世論調査では、「ウクライナが戦場でロシアに勝利すると考えているEU市民はわずか10%」だった。
 そして前出の「欧州の農民たちの怒り」とは、欧州各国で2023年秋から2024年にかけて繰り広げられている、大規模な農民の抗議デモを指す。
 怒りの矛先は、EUの「グリーンディール政策」である。
 EUは「牛のげっぷ」や農薬や化学肥料により「地球温暖化の原因は農業」などと農業を「悪者扱い」し、畜産・酪農家に飼育頭数削減や農場の強制閉鎖を強要。
 また「2030年までに化学肥料や農薬の使用量50%削減」などを法制化し、EU各国の農家に強制しようとしている。他方、関税や規制なしでウクライナや中南米諸国から安価な農産物を大量に輸入しようとしているのである。
 こうしたEU内の様々な動きは、「親EU、親ウクライナ」を旗印に、再選を目指すフォン・デア・ライエン委員長にとって、きわめて都合の悪い状況と言えるだろう。
参照:
・【第2弾! EUにおけるウクライナ支援の象徴的存在であるウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が、「ウクライナのEUへの加盟審議は、EU議会選挙後の6月以降になるだろう」と「手のひら返し」!】駐EUウクライナ大使やEU外交官らは「何を今さら?」と怒り! 欧州委員長選挙で再選を目指すフォン・デア・ライエン委員長、アウディイーウカ陥落、欧州世論調査を受けて後退? 再選されても右傾化が予測されるEU議会の運営には困難が待っている!?(『RT』、2024年2月22日ほか)(日刊IWJガイド、2024.2.24号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/3ISOyC2
非会員版 https://bit.ly/4a5rnAy
・ロシア軍侵攻で世界に衝撃!東の『台湾有事』危機と西の『ウクライナ有事』危機が同時に迫る!(第4回)~岩上安身によるインタビュー 第1069回 ゲスト 元外務省国際情報局長 孫崎享氏 2022.3.3(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3Lrt1Cv
・欧州の農家が怒りの実力行動 多国籍企業の農家潰しに抗議 「欧州グリーンディール」が狙っているもの(長周新聞、2024年2月17日)
【URL】https://bit.ly/4aweQFY
・EU、ウクライナの加盟申請に冷や水(AFP BB News、2022年3月1日)
【URL】https://www.afpbb.com/articles/-/3392536
・ウルズラ・フォン・デア・ライエン(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/4cJKKky

※10)「(ゼレンスキーが大統領選挙を)行わなかったら」:
 2024年3月末に予定されていたウクライナ大統領選は、戒厳令下であることを理由に、実施されなかった。2023年10月に予定されていた議会選挙も、同様の理由で実施されなかった。
 ウクライナ議会は、2024年2月に戒厳令を5月中旬まで延長する法案を可決したため、当面の間、ウクライナ国内の選挙は延期される可能性が高い。
 一方、ロシア大統領選挙は予定通り行われ、3月17日に開票された。プーチン大統領は、87%を超える過去最高の得票率で圧勝した。注目されるのは、ロシアがこれまでに併合したクリミアとウクライナ東部南部4州で、プーチン大統領が9割前後の票を集めたことである。
参照:
・ウクライナ、大統領選実施で賛否の声 侵攻で戒厳令続く(日本経済新聞、2024年3月24日)
【URL】bit.ly/3xc8Y6C
・はじめに~プーチン大統領が87.28%の過去最高の得票率で圧勝! 注目は2022年以降に併合したザポロージエ州、へルソン州、ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国の得票率が、なんと平均を圧倒的に上回っていた! これは、この併合の正当性を「民意」が証明し、「民意」を踏みにじった「侵略」や「違法な占領」、「一方的占拠」といった西側のテンプレがプーチンに「侵略者」というレッテルを貼るためのプロパガンダだったことをはっきり示している!(日刊IWJガイド、2024年3月19日)
【URL】会員版 bit.ly/3VJdy6m
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「ウクライナ支援はアメリカ国内投資」だとするバイデン大統領。民主主義の団結を謳うマスコミ。だが、ウクライナ支援の本質は、ウクライナへの「投資」ではなく、自国米国の「軍産複合体への投資」である!

岩上「『戦争を続けたいウクライナ』(2)ということで、お話をうかがいたいと思います」

塩原氏「ここで申し上げたいのは、要は、これもう、法律上ですね、もう一昨年(2022年)になってしまうんですけれども、9月30日の段階で、プーチン大統領との交渉が不可能であることを表明するっていうことを含む決定というのを、一番、国家安全保障にかかわることを決める、ウクライナ国家安全保障国防評議会で決定し、これをゼレンスキーが大統領令で承認したことによって、要するに和平の話を、ゼレンスキーがすること自体が、法的にできなくなっている、ということがあって。

 何というのか、先ほどの話とつなげると、そうすることで、自分の権力を保持できると。要するに、プーチンと話し合わないで和平なんかできるはずがないので、それをするなって法律で決められたら、動きようがないでしょう、っていう」

岩上「これは、ゼレンスキー自身も含め、たとえば、閣僚や政治家や、識者やメディアや、どんなところからも、交渉するというような動きが出てきたら、『違法行為だよ』ということになるわけですね。処罰されるよ、という。

 したがって、国内から、『もうそろそろ戦争はやめて、話し合いしたらどうでしょうかね』という、言葉のひとつも言えないという状態に、もはや、なっているということですね」

塩原氏「そうですね」

岩上「『「ウクライナ支援」に対する無知蒙昧』」

▲「ウクライナ支援」に対する無知蒙昧(1)

塩原氏「それで、これから、ウクライナ支援って、実はアメリカ国内投資なんだよって」

岩上「軍産複合体に対する投資ということですよね」

塩原氏「バイデン自身が言っている、という話をしていきますが、その前に、ここで皆さん方にわかっていただきたいのは、日本のマスメディアが、ウクライナ支援をしろって一生懸命言っているっていう現実について、まず確認をしておきたいんですね。

 たとえば、ここには『日経(新聞)』が去年、『EUはウクライナ支援で結束を強めよ』というタイトル…」

岩上「『強めよ』、えらい上から命令口調で」

塩原氏「『米国の支援をつなぎとめる意味でも、EUがウクライナへの支援を続ける必要がある』って書かれていたりですね、それから昨年12月18日の読売新聞の社説には、『米国は政争を自制し、超大国としての責任を自覚して支援を最優先してもらいたい』ということを言っているわけです」

▲「ウクライナ支援」に対する無知蒙昧(2)

岩上「これ、一瞬、読み間違え、空目するとですね、『米国は戦争を自制し、超大国としての責任を自覚して和平を優先してもらいたい』と、うっかり読み替えてしまいそうになる。

 で、よく見ると、政争、国内での政争を自制して、とにかく戦争を継続しろということを言っているわけですよね。びっくりしますね。僕、これ一瞬、空目しちゃったんですけど(笑)」

塩原氏「それから、『毎日(新聞)』は『縮むウクライナ支援』ということがあって、『団結の力が試されている』としてですね、要はその、『ロシアの勝利は何を意味するだろうか。「力による現状変更」が世界でまかり通り、民主主義が専制主義に敗北した汚点を歴史に刻むことにもなるだろう』と心配してるんですけれども、要は、これから説明してゆきますが、この人たちは、ウクライナ支援の本質がわかっていないんですね」

▲「ウクライナ支援」に対する無知蒙昧(3)

塩原氏「つまり、バイデン大統領自身が、国内投資だって言ってるわけですから、これは。じゃあウクライナ支援をしろっていうことは、アメリカ国内投資をしろっていうことと同じなわけですよ。

 じゃあ、何で、アメリカ国内投資をする必要があるんですか、ということについて、この人たちはまったく何も答えていなくて、それは、どういうことかというと、要するにウクライナ支援ということについて、まったく知らない。中身を知らない」

岩上「先生、ずっと昔から疑問なんですけれども、新聞が、こうミスリードするような、社説を書くことってあるじゃないですか。何でこんなことを、しゃあしゃあと言えるんだろうというのを疑問に思うんですけれども。

 頭の悪い人たちがやってるんだっていうようなことを言う人もいるんですが、いや相当に、えげつなく頭のいい人が、えげつなさをあわせ持った頭のいい人たちがいて、権力にちゃんと忖度しながら、それで一般大衆に、さも、きれいなね、この『専制主義に敗北した汚点』とか言って。

 いやいや、ロシアは立派な民主主義国家だとは言えないかもしれないけど、一応、大統領選挙やりまっせ、って。ウクライナはやらないらしいですよ、どういうことなんですか、みたいなことは全部ネグってですね、こういう言葉面だけを書いて、結局、アメリカに迎合して、アメリカのバイデン政権に迎合するということが目的の、狡猾なバカを演じているのか。バカなのか、バカを演じた狡猾なずる賢い忖度野郎なのか、どっちなんですか?」

塩原氏「私はよく知りませんけど、私の印象では本来、不勉強なんだと思いますよ」

岩上「本当ですか?」

塩原氏「ええ。本当に不勉強ですよ」

岩上「本当ですか?」

塩原氏「もちろん、多少、勉強している人はいるかもしれませんが、そういう人は黙っているわけですね」

岩上「黙っちゃう。それは書かないってことですか、記事に」

塩原氏「それは、書かないでしょうね」

岩上「書いても潰される。本当のことを書いちゃったら、編集局で切られちゃう」

塩原氏「だから、本当に賢いっていうか、よく勉強している人であれば、これから私が言うようなことを知りながら、黙っていると。でも、多くの人が、本当に不勉強ですから、何も知らないと思いますよ」

ウクライナ研究書籍を2022年だけで3冊も出している塩原氏に問い合わせてきたジャーナリストはわずか2人!? そのうち1人が岩上安身!「日本のマスメディアは本当に不勉強なんです」

岩上「多くの記者はね。で、知ってる記者は、黙っていると。

 アメリカなんかを見てみますとね、独立ジャーナリストになっていくんですよ。独立メディアを作ろうと。そしてそれは、昔、圧倒的な、輪転機だとか販売網とか、それからテレビの力とか、そういうものしかなかった時には、これは勝負にならない。

 あと、出版資本を頼りにして本を書いていくとか、雑誌の一部で、気骨ある雑誌に寄稿するとか。ゲリラ・ジャーナリズムというのは、出版でやるしかなかったんですね。

 それはもちろん、それで十分意味があったと思うし、私は、それらを志した部分もあるんですけれども、今はもう、インターネットもあるわけじゃないですか。マネタイズとか、経営とか、金儲けという話になったら、全然難しいことで、うちもピーピーなわけですけれども、ただ、発信はできますよね。

 その発信することによって、嘘をバラしていくと言いますかね、あるいは、よく物を知っているけど黙ったままの方が、黙らないで書いてくれれば、あるいは発言してくれれば、と思うんですけれども。

 なぜ、かくまで、もちろんユーチューバーみたいな人たち、いっぱいいますけど、本当の、たとえば記者クラブで訓練を受けてたような人たちの、本当に俊英みたいな人たちが出てきていないわけですよ。たいした勉強もしてないなというような人が、申しわけないけれども、多かったりする。

 我が身も含めてかもしれませんが、そういう、本当に、ちゃんとお金もかけてもらってね、なかなか行けない場所に行って、現地取材もして、そういう蓄えも相当ある人が腹をくくって独立して、今までいたところの会社とはまったく違うことを平気で書く。シーモア・ハーシュ(※11)みたいなことですね。ニューヨーク・タイムズにいたんだけど、今はニューヨーク・タイムズと全然違うことを書くみたいなことは、何でできないんでしょうか? 日本のマスメディアの新聞、元新聞記者とか、新聞記者の人が。先生とか、本当に例外的な存在なんでしょうけれども」

▲テキサス州のトリニティ・ユニバーシティで講演するシーモア・ハーシュ記者。(Wikimedia Commons、Zereshk)https://bit.ly/4auJDmH

塩原氏「でも、私はね、本当に不勉強なやつばっかりだと思いますよ」

岩上「不勉強が8割?」

塩原氏「9割。95%くらいかな」

岩上「でも、5%ぐらい、黙ってるけど、本当のことをわかっている人、いるわけじゃないですか」

塩原氏「でも、よく勉強する人たちは、もう辞めていると思いますよね」

岩上「辞めて、独立ジャーナリストになろうという風にはならないんですか?」

塩原氏「そういう人は、私は知らないですね」

岩上「そうですよね。何で…? アカデミズムの方には行かれるけれども」

塩原氏「いや、それは私に聞かれてもよくわかりませんが、ただ、私が強調したいのは、不勉強過ぎるわけですよ。

 2014年に私が、『ウクライナ・ゲート』だとか、『ウクライナ2.0』っていう本を書いていた頃には、時々はジャーナリストから問い合わせのメールをもらうようなことがありましたけれども。

 私は2022年に3冊、『プーチン3.0』っていうのと、『ウクライナ3.0』というのと、『復讐としてのウクライナ戦争』っていう3冊を書きましたが、私に対してメールを送ってきた人は、まあ、1人か2人かなぁ」

▲塩原俊彦(2014)『ウクライナ・ゲート』社会評論社 https://bit.ly/4ax3YrD

▲塩原俊彦(2015)『ウクライナ2.0』社会評論社 https://bit.ly/3TWeuCf

▲塩原俊彦(2022)『プーチン3.0』社会評論社 https://bit.ly/3Vy1Trf

▲塩原俊彦(2022)『ウクライナ3.0』社会評論社 https://bit.ly/4axPg3v

▲塩原俊彦(2022)『復讐としてのウクライナ戦争』社会評論社 https://bit.ly/4apbDbC

岩上「1人か、2人ですか? ちょっと待って、先生、そのうちの1人、僕が入っているんですか?」

塩原氏「いや、それは1人、はい、入ってますね」

岩上「僕、入れてですか?」

塩原氏「ええ。その程度なんですよ」

岩上「本当ですか?」

塩原氏「本当です。で、これは本当に、何ていうかなぁ、酷すぎるんですよ」

岩上「酷いですね」

塩原氏「2014年に『ウクライナゲート』を書いてからというか、『ウクライナ2.0』を書いてから、2015年にね、BSフジ『プライムニュース』というのに、1回出たことがあるんですよ。

 それは、フジテレビの誰かが僕にメールをくれて、じゃあ出ていいよって言って、1回出たんですけれども。

 そういう話は2022年以降、まったく、そんな話は出てこないので。要するに、私はウクライナ研究を継続し、ウクライナについて、私ほど本を書いている人間は、日本には誰もいないので、そういう人に、何で誰も尋ねてこないの? というのが正直な思いですね。

 それは、本を知らないっていうことであるならば、そいつは勉強が足らないので。私は本を出す以外に、自分で『21世紀龍馬会』っていうサイトを運営しているし、『独立言論フォーラム』というところでも、時々書いているし、インターネットでちょっと検索していただければ、私の書いたものを読むことなんて簡単なわけで。

 ということを考えると、本当に、勉強している人が少ないんですね。まあ、はっきり言っちゃうとね、アホばっかりなんですよ。本当に」

岩上「あと、95%ぐらいだってなると、もう同調圧力で、その5%の異論者のほうに寄るっていうやつは、いないんじゃないんですか?」

塩原氏「いないでしょうね」

岩上「もちろん、事実を知らないっていう前提ですよ」

塩原氏「いや、知ってても、だから、言っちゃいけないって。だって、真面目に勉強している人は、ちょっとは頭が働く人だから、違う意見を述べたらやばいなって、すぐに気がつくわけですから。同調圧力の中で、何も言えないでしょう、そりゃあ」

岩上「いや、僕は、それが気持ち悪くて、フリーランスをやってるんですけれども。自分が勉強してきたり、あるいは取材してきたことで、5%であろうと、『こっちが真実じゃないか、どう考えたって』と思った場合は、95%が嘘を言っていても、95%、嘘だろうと(5%の真実を伝える)。

 で、そういうポジションを確立するために、どうしたらいいのかということに、40何年余りね、何て言うかな、人生、エネルギーを費やしてきたとも言えるんで。

 できればね、その5%ぐらい、おそらく持っている人がね、日本人がね、勇敢にものを言っていただければ。

 先生、お書きになっているのがあるから、そこに辿り着ければ、こうやってお話にもご登場いただけると思うので」

塩原氏「だから、御覧になってる方に言いたいのは、この岩上さんがやっているような、場を設けるっていう仕事が、実はすごく大切で。要するに、本当にどうしようもない状況にあるのでね」

岩上「あるんですよ。本当に、それはそうなんですよ。それをひたすら、わかりやすく届けたいということをね、僕自身はやってるつもりなんですよね。

 そうか、やっぱりね、もちろん40年もこういう仕事やってれば、新聞記者やテレビの報道の記者と付き合いは山ほどあるわけですけれども、ヒットアンドアウェイ(主にボクシングの戦法で、接近して打ってすぐ離れる)での付き合いばかりになっちゃうんですが、(マスメディアの企業)内部まではね、中に入ってないですから、わかんないんですよね。

 で、内部で、本当にどこまで、そういう風におバカさんなのか、バカなフリしているのか。で、ずるいのかというのは…。やっぱり、でも、そういう人もいるんでしょう? ずるい人も。ちゃんと見えていて」

塩原氏「まあ、いると思いますよ」

岩上「政府の意向というのは、どこにあるな、みたいな」

塩原氏「いると思いますけど、でも、そういう人が何かこう、マスメディアで実権を握っているわけじゃないと思いますけどね。実権を握ってるのは、アホの塊のようなやつで」

岩上「そうなんですか? 皆さん、よく聞きました?

 私が言っても説得力ないと思うんですけれども、『日経新聞』、『朝日新聞』と行かれて、それで、まあ、あの、記者クラブに入るということはね、他のメディアの人たちと一緒の空間で、いつもお仕事してますからね、他メディアも同様だということもよくご存じの、こういう塩原さんのような方が言われてるんですから、そうなんだろうな、という気はしますね、本当に」


※11)シーモア・ハーシュ:
 米国の調査報道ジャーナリスト。1960年代から世界を震撼させる数々のスクープを発表し続け、政治の方向性を動かすほどの影響を与えてきた。「調査報道の生けるレジェンド」と呼ばれる。
 1937年4月8日、米国シカゴ生まれ。両親はリトアニア系ユダヤ人でクリーニング店を営んでいた。シカゴ大学で歴史学を専攻。卒業後は薬局チェーンのウォルグリーンで働いた。
 フリーランスの記者としてのデビューは1969年。ベトナム戦争中の米軍によるソンミ村虐殺事件(1968年)を暴露した。当時は小さな個人通信社の記者だったハーシュは、借金をしながら証言者を求めて全米を回った。
 ソンミの虐殺は、ベトナム反戦運動のシンボルとなり、米国内外で大きな批判の声があがって、米軍が支持を失うきっかけとなった。
 『ザ・ニューヨーカー』に掲載されたこの記事で、ハーシュは1970年度ピューリッツァー賞を受賞する。
 ハーシュの主な調査報道としては、CIAの国内スパイ計画「ケイオス作戦」暴露、多国籍企業に関する報道(後にロッキード事件に発展)、ソ連原子力潜水艦回収作戦、イスラエルの核武装、アブグレイブ刑務所における捕虜の虐待、ウォーターゲート事件、大韓航空機事件の内幕などがある。
 さらに、2023年2月8日、ハーシュは、ロシアから欧州向けに天然ガスを送るパイプライン「ノルドストリーム」への破壊工作は米国が主導し、共犯がノルウェーだったと暴露した。
 実行部隊はCIAと米海軍、ノルウェー海軍の合同部隊だという。米政府はこのスクープを直ちに全面否定している。
 ハーシュがかつて特別記者として在籍した『ニューヨーク・タイムズ』は、同年3月7日、「親ウクライナグループがパイプラインを妨害した」とする匿名の「米当局者」の談話を元に、「ウクライナ政府が関与した証拠はない。米国人と英国人は無関係」と強調する記事を発表。日本の大手メディアも、これに盲従した。
 しかし、深海に潜水してパイプラインを爆破するには、専門的な訓練が必要で、そのような工作員を養成できるのは、国家の特殊機関だけであることから、この記事には疑問を抱かざるを得ない。
 ニューヨーク・タイムズの記事について、『スプートニク』の取材に応じたハーシュは「コメントはしない。私は自分の記事を書いただけ」と笑いながら語っている。
参照:
・【IWJ号外】ドイツとロシアを結ぶ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したのは、米国だった! ピューリッツァー賞を受賞した米国の最も著名な独立調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が大スクープ! (その1) 2023.2.10(IWJ)
【URL】【IWJ号外】ドイツとロシアを結ぶ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したのは、米国だった! ピューリッツァー賞を受賞した米国の最も著名な独立調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が大スクープ! (その1) 2023.2.10
・【IWJ号外】ハーシュ氏が鼻で笑う!『ニューヨーク・タイムズ』が、ノルドストリーム爆破工作をおこなったのは「親ウクライナ派のグループ」で「ウクライナ人か、プーチン大統領に反対するロシア人」、「米国人と英国人は無関係」とする記事を発表! 『ロイター』、『BBC』、『日本経済新聞』など主要メディアが一斉に『ニューヨーク・タイムズ』追従記事を発表! 『ニューヨーク・タイムズ』の情報源は匿名の「米当局者」!? 2023.3.10(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3rOTFy7
・【IWJ号外】バイデン政権によるノルドストリーム爆破はタイミングを逸した失敗だった!! シーモア・ハーシュ氏の新記事「ノルドストリームに関する嘘の1年」を紹介! 2023.10.3(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3vvOy85
・ノルドストリーム爆破事件 シーモア・ハーシュ記者に独占インタビュー(CRI online、2023年3月12日)
【URL】https://bit.ly/3TAro8L
・「ノルドストリーム」爆破テロは親ウクライナ派組織の犯行か=米紙報道(スプートニク、2023年3月8日)
【URL】https://bit.ly/4asA0oA

米国にとってウクライナ支援は「賢明な投資」と謳うバイデン大統領! 自国民は傷つかない「代理戦争」で、古い武器や弾薬の在庫処分セールもできる!

岩上「じゃあ、ウクライナ支援について」

▲図 各国によるウクライナへのタイプ別支援実績(2022年1月24日から2023年10月31日まで)https://bit.ly/3VBPr9P

塩原氏「どういうふうに考えなきゃいけないのかっていうと、その支援のあり方って、いろんな考え方があるんですけれども。

 ここにあるように(パワポ画面の「各国によるウクライナへのタイプ別支援実績」グラフを示して)、2022年1月24日、つまり、戦争より少し前から、2023年の10月31日まで、ウクライナに対する政府支援というのが、実績としてどうであったか、ということについて調べたものなんですね。

 この場合は、軍事支援と、人道支援と、金融上の支援、3つのタイプに分けて考えるとどうかっていうことを示していて。これを見ていただいて、すぐにわかることは、アメリカは軍事支援ばっかりしているという話」

岩上「オレンジ(軍事支援を表すグラフの色)ですね。すごい飛び抜けてますね」

塩原氏「ええ、ヨーロッパには、この、金融上の支援をさせているっていうことが、よくわかるんですね」

岩上「つまり、アメリカは武器をタダで供与しているのではなくて、『こういうふうに武器を出しますよ。でも、その代金というのは、EUから借りてきてくださいね』というふうになっていて、この金融支援が焦げついたら、EU側が焦げ付くみたいな話なんですか、これは」

塩原氏「それは、そうではなくてですね、こちらの支援っていうのは、例えばウクライナの国家財政って、財政赤字で大変なんですけれども、そういうものを補填するため、つまりインフレになってしまいますから、そういう金融上の支援であるとか、あるいは世界銀行を通じて、そのインフラ投資をさせるとか、というような支援ですね」

岩上「なるほどね」

塩原氏「で、何が言いたいかというと、こういうふうに実際の支援のあり方を見て、これだけ多くの軍事支援をしているアメリカが、ウクライナ支援をするということは、イコール、また軍事支援するんだなということを意味していて。

 じゃあ、これから見ていきますが、アメリカの言う軍事支援って、一体何なのというとですね、ここにあるように、去年(2023年)の10月20日、バイデン大統領はアメリカ国民に向けた演説の中で、明日10月21日に、イスラエルやウクライナを含む重要なパートナーを支援するための、緊急予算要求を議会に提出すると述べた直後に、『これは何世代にもわたって、アメリカの安全保障に配当金をもたらす賢明な投資であり、アメリカ軍を危険から遠ざけ、我々の子供や孫たちのために、より安全で平和で豊かな世界を築く助けとなる』というふうに言っていて。

 まさに、ウクライナ支援というのが、賢明な投資である、というふうに言っているわけです」

▲「国内投資」と行われている米国の「ウクライナ支援」(1)

▲ジョー・バイデン第46代米大統領。(Wikimedia Commons、Adam Schultz)https://bit.ly/3VzQ43C

岩上「これは、『アメリカ軍を危険から遠ざけ』というのは、米軍が表に出ない、米軍は死傷者を出さないと。

 そして、自分たちの子供や孫たちが兵士になることもないよ、ほかのところが代理戦争してくれるからね、ということも含意しているわけなんですね」

塩原氏「次のところで、これは翌月、つまり11月18日付のワシントン・ポストに、バイデン大統領自身が意見を述べる記事を掲載していて、その中で、『今日のウクライナへのコミットメントは、我々自身の安全保障への投資なのだ』というふうに書いています。

 まさに、自分で書いているわけですから、まさに、そう思っているわけですね」

▲「国内投資」と行われている米国の「ウクライナ支援」(2)

岩上「そうですね」

塩原氏「それだけではなくて、国防総省は、国防総省のサイトに11月3日に公表した、『バイデン政権、ウクライナへの新たな安全保障支援を発表』の中で、ウクライナへの安全保障支援は、我が国の安全保障に対する賢明な投資(smart investment)であると、はっきりと、ここでも書いているわけです。

 つまり、明らかに軍事支援を投資と考えている。

 これは、どういう投資かっていうと、ひとつはアメリカ軍が持っている在庫、古くなった弾薬であるとか、機関銃であるとか、旧式のいろんな軍需品というものを、いい機会だからウクライナに全部持っていこう、ということがひとつあって」

岩上「在庫セールですね」

塩原氏「在庫がなくなるので、新たな製品に対して、国内の企業に作らせるってことができる」

岩上「需要ができる、ということですよね」

塩原氏「そのことが、ひとつですね。

 それから、もうひとつは、ヨーロッパの国々にある旧式の武器を、これ、中にはソ連製のものもあったりするので、そういうものをウクライナに送って。ウクライナ軍が使いやすい武器を、つまり、古い旧式のものを送らせて。

 (ウクライナに古い武器を)送ってくれれば、あんたのところにアメリカ式の最新の武器を売るよ、というか、安く売るよ、なのかよくわかりませんが、供給してあげるよ、と約束する。そうすると、今度はまた、アメリカ国内にある武器メーカーが、大変な需要に沸く」

岩上「そうですね、マーケットね」

塩原氏「はい」

岩上「旧ワルシャワ条約機構の国々というのは、ソ連時代の武器とか戦車だとか、そのままだったっていうのは、それだけ軍事費を、かつては、ため込んできたわけだし、その操縦に慣れて、代々きたし。で、冷戦後、終わった後は、特段の紛争も、コソボを除けばなかったし。

 だから、そのままやってきちゃったけど、この際、それを全部、放出してしまい、そして、やり方が全然わからないアメリカの(武器を供与させて)これから全部訓練し直して、何だったら、それのために(NATOの)将校も派遣するよ、と。いくらでもサービスするから、今度はアメリカ式の軍隊の編成し直し、やろうよと。

 もう、何て言うんですかね。ドミノ倒しのようにひっくり返すという、そういうことまで含んでいる、ということですよね」

塩原氏「そうですね」

米国社会は内戦寸前!? バイデンVSトランプの大統領選を控えて高まる緊張! 自分の支持政党も口に出せない異様な空気に!

岩上「これは、国防総省は、まさにバイデンの言ってることと同じなんですよね。

 そしてこれは、国防総省の言ってることは、ここの出入り業者というか、主人に近いかもしれませんね、スポンサーであるさまざまな、ロッキード・マーティン(※12)とかですね。たくさんの軍事企業の思惑と、もう、みんな一致していると思うんです」

▲ロッキード・マーティン社の代表的製品の一つ、F-35ライトニングII戦闘機。写真は米空軍機。(Wikimedia Commons、U.S. Air Force photo by Master Sgt. Donald R. Allen)https://bit.ly/43A3Bua

岩上「一致していると思うんですが、ここはやっぱり、やっていることが無残なことで、たいした効果も上げられていないし、バイデンのこのくらいの支援、いい加減にした方がいいんじゃないか、ということは、各種の世論調査でも出てきていますよね。

 で、トランプは『私は(ウクライナ紛争を)止める』と。こんなことは無駄な投資だと。他にやることが、いっぱいあるじゃないかと。

 例えば、アメリカの国内のインフラなんて劣化してて、前から刷新しなきゃいけないと言われながら、ボロボロになっている状態のままなわけですよね。そんなことも含めて、いろいろあるだろうと思うんですけれども、ここは何か、揃っちゃってるんですよね(バイデン大統領と国防総省が『ウクライナ支援は投資』と声をそろえたパワポ〈「国内投資」と行われている米国の「ウクライナ支援」(2)〉を指す)。もう何かこう、スロットマシンでいう、数が揃ってるスリーセブン状態みたい。そこに違うものを入れてくると。政治を入れていく。

 そうすると、国防総省とトランプの間というのは、それから、この軍産複合体の連中との間の軋轢っていうのは、相当なものになりやしませんか」

塩原氏「それはもう、猛烈なものになっていて。ですから、トランプ潰しのマスメディア報道というのが、彼が大統領でいた、トランプが現職の大統領であった時から、ずっと続いているわけです。本当にすさまじい。

 例えば、トランプの再選の時の大ウソでいえば、トランプがモスクワの、あれは一番高いホテル、リッツ・カールトンというホテルのスイートルームか何かに泊まった時に、娼婦を呼んで、クリントン夫妻が泊まったようなベッドに小便させて、その様子をビデオに撮って流した、みたいなことをですね、最初は独立系のメディアが流して。その後、CNNが流して、ということがあって。これは100パーセント大嘘なわけですよ」

岩上「嘘なんですか?」

塩原氏「だから、覚えてらっしゃる方はいると思いますけど、トランプがCNNに対して猛烈に怒ってたでしょう」

岩上「CNNの記者がいたりすると、『嘘ばかり言うな』っていう」

塩原氏「『フェイクニュース!』って怒鳴ってたわけですけど。あれは、そのためなんですけど、もう本当にどうでもいいようなことを含めて、ガンガン嘘を流して、トランプを貶めるっていうことを、大手メディアが平然とやり続けているわけですよね。

 で、もちろん酷い奴だと私も思いますけど、一部はね。でも、その大嘘を平気で流しているのが、『ワシントン・ポスト』であったり、『ニューヨーク・タイムズ』であったりするわけですよ、現実に。

 だから、もうずっと、エスタブリッシュメントが作り上げてきたような、軍産複合体に属するような人たち、それは、メディアを含むわけですけれども、そういう人たちは、トランプをとにかく大統領にさせてはいけないということを、ずっと今でも続けてるんですね」

岩上「なるほど。よくアメリカの政治の緊張といいますか…、というのは、アメリカのことをよく知っている方、あるいはアメリカから帰ってきた方、アメリカに今、在住の方、いろんな方から聞くんですけれど、まるで内戦寸前だって言うんですね。内戦って大げさだろうなと。それは、確かにアメリカには、銃は満ち満ちている社会ではあると思うんですけれど。

 とにかく、今までは『自分は民主党、あなたは共和党』と、いろいろなことに関してディスカッションできた。そういう社会だったのが、今、自分は何党を支持しているとか言えない、っていうんですよね。何か、ものすごい緊張をはらんだ状態に、社会全体があるって言うんです。

 それは、こういうことが、もし、ここにバイデンが残ったらともかく、トランプが来るようなことが起こったら、その緊張というのは、もっともっと『フェイクニュース』を流すというようなレベルを超えて、攻撃的なものになり得る可能性があるということですね」

塩原氏「それは、そうですね。だって、彼はもう『復讐する』ということを明言しているので」(※13

岩上「トランプが…」

塩原氏「トランプは、明言してますから。

 要するにこれは、もう、例えばクリントン、ヒラリー・クリントンがね、秘密情報を流してたかもしれない(※14)っていうのは、要するにきちんと」

▲ヒラリー・クリントン第67代アメリカ合衆国国務長官。2016年米合衆国大統領選挙での民主党の大統領候補。(写真は2016年1月24日)(Wikimedia Commons、Gage Skidmore)https://bit.ly/4cAGAet

岩上「管理してなかった」

塩原氏「管理してなかったって問題で、不起訴になったでしょう」

岩上「なりましたね」

塩原氏「あれは、明らかに検察が民主党寄りで」

岩上「手心を加えたという」

塩原氏「っていうところから、もう、トランプが怒るのは当然なわけですよ。で、逆にトランプいじめが、今、バイデンの下で行われていて、それ、トランプは頭にきているわけでしょ。トランプは、もう、大統領選の候補者として、『復讐するぞ』って言っているわけですから、当然、彼が大統領になったら、それこそバイデンそのものを含めて、起訴したりするというのは、ごく当たり前に行われる」

岩上「バイデンと、バイデンの息子のハンター・バイデンは、ウクライナにおいて膨大な汚職に関わってきて(※15)、それはもう、大変なエビデンスがありますから。あれをウクライナで起訴するということがあった時に、ウクライナの検事総長を外せと、(バイデンが)直々に圧力をかけたという事実まであるわけじゃないですか」

▲ジョー・バイデン米大統領の次男、ハンター・バイデン氏。(Wikimedia Commons、Center for Strategic & International Studies)https://bit.ly/4cxBXlA

塩原氏「それは、事実ですから」

岩上「ですよね。そういうようなことが、アメリカでも裁かれた時に、それはもう弾劾レベルでは済まないんじゃないかというような、禁固刑か何かになるような話なんじゃないかなと思うんです。

 明らかな刑事事件になるような話じゃないかと思うんですけど、これがもし、トランプがそこまで勇気を持ってやるということになると、アメリカっていうのは、リンカーンにしろ、ケネディにしろ暗殺されているような、その暗殺の歴史もあるような、大統領や大統領候補は暗殺されちゃう国ですから、暗殺の可能性だってある、あり得るんですか?」

塩原氏「それは、十分にあるでしょうね」

岩上「なるほど。じゃあ、それへのボディーガードもつけた上で、身構えるということですね」


※12)ロッキード・マーティン:
 米国の航空機・宇宙船の開発製造会社。ボーイング、BAEシステムズ、ノースロップ・グラマン、ジェネラル・ダイナミクス、レイセオンなどとともに、世界の主要な軍需企業のひとつ。
 1995年にロッキードとマーティン・マリエッタの合併により誕生し、企業ロゴは、旧マーティン・マリエッタの書体と、旧ロッキードの星を組み合わせている。日本語で「ロッキード・マーチン」と表記されることもある。
 合併前のロッキード時代には、旅客機の開発も行っていた。
 同社の旅客機の受注をめぐる大規模な汚職事件が、田中角栄元総理が逮捕されたロッキード事件(1976年)。
 この事件で「ロッキード」の名前は、日本中に知れ渡った。
 現在のロッキード・マーティンは、ストックホルム国際平和研究所が発行するSIPRI Yearbookによると、軍需部門の売上高の世界ランキングで、1998年から2000年は1位、2001年から2002年は2位、2003年は1位、2004年から2006年は2位、2007年は3位、2008年は2位、2009年から2010年は1位である。
 最新鋭ステルス戦闘機であるF-22やF-35の開発・製造を行っており、極秘先進技術設計チーム「スカンクワークス」が、多数の傑作軍用機を生み出したことでも知られる。
 日本との関わりも深く、F-35戦闘機は最終組立て・試験施設である名古屋FACOで組み立てられている。また、25年以上にわたり、イージス戦闘システムを日本のこんごう型護衛艦とあたご型護衛艦に提供している。
 ロッキード・マーティンの関連会社であるシコルスキー・エアクラフト社は、三菱重工と65年間のパートナー関係にあり、シコルスキー社のライセンスのもと、三菱重工は550機を超える防衛省向けヘリコプターを生産してきた。
参照:
・日本 ロッキードマーティン(公式サイト)
【URL】https://bit.ly/3RzPO2G
・ロッキード・マーティン(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/46qO3ZK

※13)「彼(トランプ)はもう『復讐する』ということを明言しているので」:
 トランプ氏は2023年12月25日に、自身が創設したSNS『トゥルース・ソーシャル』で、政敵らを「悪党」と呼び、「彼らが地獄で朽ち果てますように。改めて言おう。メリークリスマス」と投稿した。
 『ABCニュース』は2024年3月23日、トランプは選挙運動の公約に「報復(retribution、悪行の報い、懲罰、天罰)」を掲げた、と報じた。同『ABCニュース』によれば、トランプ氏は、2024年の保守政治行動会議で、自分が再選した場合、「勤勉なアメリカ人にとっては、11月5日(大統領選挙の日)が新しい解放の日になる。だが、我々の政府を乗っ取っている嘘つき、詐欺師、詐欺師、検閲者、詐欺師にとって、それは彼らの審判の日になるだろう」と述べた。
 同『ABCニュース』は、トランプ氏が、トランプ氏を調査したリズ・チェイニー元議員や調査した下院委員会の同僚メンバーは「刑務所に行くべきだ」と発言した件と、トランプ氏は2023年、バイデン政権が司法省を「武器化」していると不満を訴え、ジョー・バイデン大統領とその家族を追及する特別検察官を任命すると述べた件を取り上げ、具体的な「報復」の内容を推定した。
 一方で、2024年1月12日付『ABCニュース』によると、トランプ氏は1月10日、アイオワ州の『フォックス・ニュース』のタウンホールで開かれた、大統領選挙のためのキャンペーン集会後に、「私たちは国を再び成功させるつもりです。報復している時間はありません」「これを覚えておいてください。私たちの究極の報復は(米国民の)成功です」と、政敵への「報復」を否定している。
 トランプ氏の真意はともかく、米国の多くの有権者はトランプ大統領の2期目は「復讐」になるというイメージを抱いている。
 英『デイリー・メール』の委託を受けた英調査会社「J.L.パートナーズ」が実施した世論調査が12月26日に公表された。調査では、ジョー・バイデンとドナルド・トランプの大統領2期目に何を望むかを、一言で表現するよう、1000人の有権者に求めた。
 調査結果は、言葉の出現頻度に応じて文字に大小の差を付けて表示するワードクラウド形式で示され、トランプの2期目に最も多くの人が期待する言葉として、中央に赤い大文字で「復讐(revenge)」と記されている。バイデンの2期目については「何もない(nothing)」が中央になった。
参照:
・Trump’s dark ‘retribution’ pledge at center of 2024 bid, but can he make it reality? (ABC News、2024年3月23日)
【URL】bit.ly/4cASF3q
・Trump backs off 2024 campaign theme threatening political ‘retribution’(ABC News、2024年1月12日)
【URL】bit.ly/3VHbtYL
・Trump declines to rule out abusing power to seek retribution if he returns to the White House(6abc Philadelphia、2023年12月6日)
【URL】bit.ly/3VCYAPh
・トランプ氏再選で連想するのは「復讐」、自ら世論調査結果を投稿(ロイター、2023年12月27日)
【URL】bit.ly/3TTk0GO
・Voters describe their 2024 choice between a Trump second term and a Biden second term as a choice between REVENGE or NOTHING in Daily Mail poll(Daily Mail、2023年12月26日)
【URL】bit.ly/3TXkFHp

※14)ヒラリー・クリントンがね、秘密情報を流してたかもしれない:
 アメリカの大統領選挙を控えた2016年3月に起きた、ヒラリー・クリントン前国務長官の私的メール流出事件のこと。
 2016年3月16日、ウィキリークスが3万通を超えるクリントン氏のメールを公開した。内容は、2010年6月30日から2014年8月12日までの間に個人サーバーが送受信した3万322通の電子メールおよび添付ファイル。うちクリントン氏の手によるメールは7570件に上る。
 これらは同氏がオバマ政権の国務長官だった時期のもので、最大の問題は自宅に設置したメールサーバーで、個人メールアドレスを使っていたことである。
 米国には「政府の公文書は国民の所有物・財産である」という考えがあり、公職にある人間の個人メール使用は問題と見なされる。また、米政府は、公式メール使用に関して厳しいセキュリティ管理を行っており、組織による監査、使用記録の保管などを義務づけている。
 国務長官という、人一倍セキュリティに注意すべき立場にもかかわらず、このルールを守っていなかったことが「国家安全保障を揺るがす重要な過失」とされ、クリントン氏は各方面から追及を受けた。
 大統領選挙で民主党候補となる可能性が高いクリントン氏(7月に正式指名を受けた)の私用メール問題は、大統領選の論点のひとつとなり、共和党のドナルド・トランプ氏は、クリントン氏を激しく攻撃した。
 同年5月、米国務省はクリントン前国務長官をはじめ複数の元国務長官が、メール利用にあたってセキュリティー管理が不十分だったとする調査結果を発表した。国務省のトナー報道官は、複数の政権において国務省としてメールの管理に問題があったと認め、「以前から続く組織的な弱点」だったとしている。
 2016年7月5日、米連邦捜査局(FBI)のコミー長官は、クリントン氏が「極めて軽率だった」としながらも「意図的に違法行為をした証拠は見つからなかった」として、司法省に訴追を求めないと表明した。
 それを受けて翌6日、リンチ米司法長官はクリントン氏を訴追しないと発表。同問題の捜査は、正式に終結した。
参照:
・【スクープ!】米同盟国の「カタールとサウジアラビアがひそかにISを支援している」と述べるヒラリー・クリントン氏のメールをウィキリークスが暴露! APがディベートの事実関係を意図的に「誤報」!? 2016.10.14(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3TDUWlS
・【トランプ初当選の予測的中!】米国マスコミの異常な「トランプ叩き」は仕組まれた罠だった!?米大統領選挙の裏の裏までせまる!岩上安身によるインタビュー 第683回 ゲスト 国際情勢解説者 田中宇氏 2016.11.8(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3TAlPHo
・「違法ではないが、きわめて軽率」、いまだくすぶるヒラリー・クリントン氏の私的メール問題とは(Digital Arts、2016年9月13日)
【URL】https://bit.ly/3TxJrwh
・米司法長官、クリントン氏訴追せず 私用メール問題の捜査終結(日本経済新聞、2016年7月7日)
【URL】https://bit.ly/3TUtilS
・クリントン前国務長官のメール問題、規則違反と国務省(BBC NEWS JAPAN、2016年5月26日)
【URL】https://bit.ly/3xeDblA
・ヒラリー・クリントン(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/4cNvYt9

※15)バイデンと、バイデンの息子のハンター・バイデンは、ウクライナにおいて膨大な汚職に関わってきて:
 米国のバイデン大統領はオバマ政権の副大統領時代(2009年1月20日~2017年1月20日)にウクライナを6回も訪問している。いつも同伴していたのが、次男のハンター・バイデンである。
 ハンターは、1970年生まれ。ジョージタウン大学からイェール大学ロースクールに編入、1996年に卒業して弁護士登録した。2歳の時に母と妹を交通事故でなくし、兄も46歳で病死したため、実質的にバイデン家の跡取りの立場にある。
 2014年のユーロマイダン・クーデターでウクライナに親米政権が誕生すると、ハンターはウクライナ最大手の天然ガス会社、ブリスマ・ホールディングスの取締役に就任し、2019年まで月5万ドル(約550万円)という多額の報酬を得ていた。
 ウクライナのオリガルヒが創業したブリスマ社は、脱税や汚職疑惑でウクライナ検察が捜査中であった。2016年3月、ウクライナを訪問したバイデン副大統領は、親米派のポロシェンコ大統領に対し、米国からの10億ドルの借款保証の代わりに、ブリスマ社の捜査を指揮していたショーキン検事総長の罷免を要求。結果、検事総長は解任されてブリスマ社は追求を免れ、米国の追加融資が実行された。
 2023年7月19日、『ニューヨーク・ポスト』は「米国内国歳入庁(IRS)犯罪捜査部門の捜査官、ジョゼフ・ジーグラー氏は19日、バイデン米大統領の息子のハンター・バイデン氏とそのビジネスパートナーが外国企業から1700万ドル(約23億7000万円)を受け取っていたと下院監視委員会に報告した」と報じた。
 その記事によると、2014年から2019年にかけて、バイデン一族とその関連する企業は、ウクライナ、ルーマニア、中国の企業から数百万ドルの支払いを受けており、これらの収益の約半分がハンターに支払われていたという。
 続く8月4日付『ニューヨーク・ポスト』は、バイデン副大統領(当時)が、ショーキン検事総長を辞めさせなければ、ウクライナに10億ドル(約1400億円)の融資はしないと、ウクライナ政府関係者を脅迫したことを報じた。同紙は、2018年の外交問題評議会のイベントで、バイデン大統領が述べた以下の発言を伝えている。
 「『私は彼らを見て、こう言ったんだ。「私は6時間以内に出発する。検事をクビにしなければ、お金はもらえないぞ」』。バイデンは2018年の外交問題評議会主催のイベントで、10億ドルの融資保証についてこう言及した。『あのくそ野郎、あいつはクビになった』」。
 IWJは、ショーキン氏の2019年の宣誓供述書を入手し、仮翻訳して、日刊IWJガイド2023.8.8号に掲載した。そこには、以下の証言がみられる。
 「(ウクライナ大統領の)ポロシェンコが、私に辞任を要請したのは、アメリカ大統領政権、特に、アメリカ副大統領のジョー・バイデンからの圧力があったからでした。
 バイデンは、私が辞任しなければ、ウクライナへの補助金10億ドル(約1400億円)を撤回すると脅していたのです」。
 2023年12月13日には、米下院でバイデン大統領に関する弾劾調査が正式に始まった。ショーキン氏は、弾劾調査のキーパーソンである。バイデン大統領が、米国史上初めて、現役大統領として弾劾罷免されるかどうかの鍵を握っているのだ。それは、2023年11月の米大統領選に向けても、きわめて重大な意味を持つことは言うまでもない。
 2024年1月17日・20日付以降の「IWJ号外」では、バイデン副大統領(当時)とポロシェンコ大統領(当時)がショーキン氏解任を話し合った録音を公表した、ウクライナの政治家、アンドリ・デルカッチ氏へのインタビューを仮訳、紹介している。
 デルカッチ氏に対して、米国・ウクライナ両政府は、起訴や国籍剥奪などの弾圧を行い、アントニー・ブリンケン米国務長官は、ゼレンスキー大統領に対して、デルカッチ氏抹殺まで命じたともされる。
 デルカッチ氏は、命の危険を感じ、2022年からベラルーシの首都ミンスクに避難している。彼の証言も、弾劾調査や大統領選へ重大な影響を与えることは確実だ。
 デルカッチ氏へのインタビューで、特に驚かされるのは、ゼレンスキー大統領が、ショーキン氏を、ウクライナで人質として保持して、対米交渉のカードに使用しているという主張である。
 しかし、バイデン政権のウクライナへの不合理な肩入れの理由としては合理的と考えられる。
参照:
・バイデン・ファミリーはウクライナ利権に深く関与! バイデン大統領の次男ハンター・バイデン氏が、2014年ユーロ・マイダン革命直後、ウクライナの天然ガス会社ブリスマ役員に! 同社新規ロビー活動と同時期! 2022.3.18(IWJ)
【URL】https://bit.ly/452AChY
・【IWJ号外】ウクライナに君臨し、巨額の富を搾取し続けてきたバイデン一家! 約23億7000万円の疑惑の金について米国内国歳入庁(IRS)犯罪捜査部門の捜査官が証言! 2023.7.22(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3VUhqSv
・はじめに~バイデン大統領がウクライナを脅迫していた! 次男のハンター・バイデン氏が取締役を務めるウクライナの天然ガス会社ブリズマの汚職事件! 自ら捜査を指揮していたウクライナの検事総長、ヴィクトル・ショーキン氏を辞めさせなければ10億ドルの支援を撤回するとウクライナ政府を脅迫! 今後、米下院の弾劾調査の大きな焦点に! IWJは、ショーキン氏の2019年の宣誓供述書を入手し、仮翻訳!(日刊IWJガイド、2023.8.8号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/4adbE2p
非会員版 https://bit.ly/49eTZpT
・【IWJ号外】ウクライナの大物政治家が証言! ブリンケン国務長官がキエフでゼレンスキーに対し、『バイデンの汚職関連の解決ができないなら、我々が解決する(証人を消すの意味)』と脅迫!(第1回) 2024.1.17(IWJ)
【URL】【IWJ号外】ウクライナの大物政治家が証言! ブリンケン国務長官がキエフでゼレンスキーに対し、『バイデンの汚職関連の解決ができないなら、我々が解決する(証人を消すの意味)』と脅迫!(第1回) 2024.1.17
・【IWJ号外】ウクライナの大物政治家デルカッチ氏が驚愕発言!!「ブリズマ事件の幕引きのために使われた600万ドルの賄賂が汚職隠蔽のテロに使われた」!!(第2回) 2024.1.20(IWJ)
【URL】https://bit.ly/4aaEeRU
・バイデンに利用され捨てられたウクライナの悲痛(YAHOO!JAPANニュース、2022年2月25日)
【URL】https://bit.ly/43DWSiD
・ハンター・バイデン(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/3Hu0N58

▲塩原俊彦氏(IWJ撮影、2024年1月22日)

 塩原氏は、2024年11月の米大統領選挙で返り咲きを狙うトランプ元大統領が、「ウクライナ即時撤退」や「NATO脱退」を公言していることを指摘。岩上はトランプ氏の岩盤支持層と言われるキリスト教福音派とユダヤ、イスラエルの関係について解説した。

 塩原氏はさらに、米国の投資ファンドがウクライナへの投資に乗り出していることを指摘。岩上は投資ファンドがウクライナの肥沃な穀倉地帯を狙い、ウクライナは軍事・金融支援の見返りに「国を切り売りしている」のではないかと分析した。

 一方、ウクライナ戦争の和平に関しては、塩原氏が、ウクライナと英国が結んだ「安全保障協力に関する協定」や、NATOの他の国との協定への動きを含めて解説。それらは、ウクライナのNTO加盟までの間の安全保障を意図する。

 こうした協定が意味するのは、戦争を止めると権力を維持できないゼレンスキー大統領が、国内向けに「戦いをやめる理由」を必要としているということだ。協定で安全を担保する体制ができるという理屈が、停戦の理由付けになる。だから、きわめて重要だというのだ。

 米国の保守系シンクタンクのランド研究所は、ウクライナでの代理戦争のブループリントを書いたとされる(※16)。ところが、この研究所の政治学者が停戦・休戦を進言し始めたことを、塩原氏は指摘した。もう戦争継続は難しいという判断だ。

 しかし、休戦は米国の軍産複合体による経済を失速させ、失業を生む。したがって、11月の大統領選直前は別として、「少なくともこの半年間で、バイデンがウクライナ戦争を止めさせるってことは、あり得ない」と塩原氏は断言した。

キリスト教福音派の支持を固めて、返り咲きを狙うトランプ前大統領。その選挙公約は「ウクライナ即時撤退」に「NATO脱退」!?

塩原氏「もうひとつ(トランプが)公言している話として、NATOを潰すというか、アメリカがNATOを脱退するとかって。こういうのも要するに、アメリカで今まで利益を得てきた連中にとっては、許し難い暴挙なわけですから。

 それを、NATOを辞めるとか、脱退するとかっていう、正反対、180度正反対なことをやるって言い始めたら、そりゃ怒る人、たくさんいるわけですよね。怒るだけじゃなくて、要するにお金の問題として、大損する人がたくさんいるわけですから」

▲返り咲きを目指すドナルド・トランプ元大統領。(Wikimedia Commons、Shaleah Craighead)https://bit.ly/4cB1MkD

岩上「(米国内は内戦が起きて)人が死にますか…。自分が、実力組織とか、あるいは法的な味方とかね、何十人も、いろいろな段階で味方がいないと、ちょっと、内戦はできないんじゃないかと思うんですけれども。

 トランプ側の方には、そういう準備があるんですかね?(※17) 政治だけでは語れない話になってきますから」

塩原氏「まあ、アメリカの話をするとですね、共和党支持者の3分の2ぐらいかな、これも、本当のことはよくわかりませんが、要するに福音派なわけですよ(※18)。福音派という人たちは…」

岩上「そこら、また、ややこしい」

塩原氏「何ていうのかな。その、ちょっと変なんですけど」

岩上「聖書を字義通り、信じているような」

塩原氏「そうですね、原理主義者なんですけど。別に、トランプはそうではありませんけども、彼ら福音派の支持をたくさん集めていて、彼は要するに、まあ、神とまでは言わないにしてもですね」

岩上「預言者」

塩原氏「オーディネイティッド、って言ったかな。オーディネイティッド・バイ・ゴッド(※)、『神に定められた人物』として位置づけられているんですよ、トランプがね。だから、そういうふうに信じて疑わない人たちがいるので、それはすごく大きな話っていうかな。

 だから、あれだけ不祥事が出ていても、神に定められた人っていう意識でトランプを見ている人たちにとっては、そんな言いがかりをつける奴らこそ悪いので。神に定められた人に何を言うんだ、っていう話ですから」

※ordinated by God もしくは ordined by God か。いずれも「天命」「神の定め」等の意。

岩上「バイデンに対しては、そういう思いはないんですね。福音派は」

塩原氏「ないですね。だって、バイデンはカトリックですから」

岩上「ただ、カトリックとは言ってもですね。何と言うんでしょう。今、アメリカは、もう、ぐちゃぐちゃの状態になっていて。特にイスラエルに関して言えばですよ。常にイスラエルを支持していなかったら、政権が成り立たないような状態ですし、かといって、イスラエルは、ものすごく、今、(パレスチナに対するジェノサイドが)行き過ぎているじゃないですか。

 その、行き過ぎていて不利だなと、これを看過していたら、国益を損なうなと思っていても、イスラエルを擁護しなければいけない、というようなことを。アメリカというのは、手足を縛られているような状態にありますよね。

 そこは、ウクライナに関しては、もしかしたら変わるかもしれない。トランプになって。

 でも、(対イスラエルは変わらない、)トランプは娘婿がユダヤ人ですしね。東エルサレムは、本来だったらパレスチナの首都だったのに、イスラエルの首都に決めるとか言ってしまったし。

 それから、歴代政権も遠慮していたのに、テルアビブからですね、イスラエル米国大使館を移したりしたじゃないですか。

 そういう、非常にダイナミックなことをしてしまって、イスラエル寄りだと見られているし。

 福音派は福音派で、結局、イスラエルの建国を、イエスの再臨、世の終わり、ハルマゲドンもそうした最終終末論的な、未来終末論でありながら、審判が行われて、自分たち信じている者は空中携挙(※19)されて、救われて、危うく火で焼かれた後、1000年王国が始まるという時にですね、この予兆として、イスラエルが建国されなければならないということを、真面目に信じているわけですよね。そして、それを進め、加速するんだというわけですよね。

 自分たちの手で、もっと早く、これをスピードかけて、そして最後の審判の下る日を招来させようと、招き寄せようと、そういうような、我々からすれば本当に何というかSF的な話、SFファンタジーみたいな話なんですけれども、それを信じているわけじゃないですか。

 その人たちが、言ってみれば、そういう日を招き寄せるような役割をするほどの、重要な人物というような意味で、トランプを信じているということなんですか?」

塩原氏「それは、そうでしょうね」

岩上「さっき言った、先生の、何て言う御言葉でしたっけ」

塩原氏「オーディネイティッド・バイ・ゴッドって言うんですかね、確か」

岩上「中東じゃ、大変なことになりませんか、トランプになっても」

塩原氏「まあ、サウジとの関係ですよね。どうなるかっていうのはね」

岩上「そうですか。今日、それ、深入りしているといけないので、また、ちょっと機会があったら、ぜひ先生の、そこのところもお話をうかがいたいと思うんですけれども。

 投資の話ですが、アメリカ投資ファンドの虎視眈々、という話ですよね」

▲米投資ファンドの虎視眈々(1)

塩原氏「こちらはですね、本当に、ウクライナに投資をして、金儲けしようという動きもあるんだっていうことも、知っておいてほしいんですよね」

岩上「そうなんですね」

塩原氏「つまり、ここに書いておいたように、具体的に、ブラックロック(※20)、世界最大とも言われる投資運用会社ですけれども、こことウクライナ政府とがいろんな協定のようなものを結んでいたり、J.P.モルガンが…、というのが次のやつですけど、そういう動きがあって、つまりこういう、金儲けに聡い人たちは、きっちりといろんなことを考えて準備をしているんだ、っていう状況があるということですね」

▲米投資ファンドの虎視眈々(2)

岩上「これは、例えば何の支援もしないでですね、何にも魅力のないところに、お金を貸す方はいないわけですよ。ところが、彼らは喜んでお金を出してくるわけじゃないですか。

 その、喜んでお金を出すっていうのは、担保…、普通、金貸す者は担保を取るわけですよね。で、たいがい貸し倒れになったら、担保をいただくということになるわけですけれども。

 ウクライナといえば、結局、工業力でも何でもなく、まず何よりも肥沃な土壌、世界でも有数の肥沃な土壌を持っていると。そこの農地というものをですね、100万ヘクタールかな、もう、そういうような形で、これを租借されているのか、もう回収したのか、それとも担保になっているのかわかりませんけれども、事実上、確保していると。

 こういう米国の資本が土地を買っちゃってる、というような状態ということになると、もう、国を切り売りしているという話ですね。

 ロシア側は、それを再三指摘していたりするんですけれども、ロシア側の指摘みたいなものを、日本のメディアは全部カットオフして、入れないですから。ブラックロックの話も、これ、ロシア側は具体的に指摘していますけれども、まったく日本のメディアでは流れない話ですよね。

 ウクライナの沃土と言われる、非常に(肥沃な)穀倉地帯が、アメリカの背後に大きな農業会社というのがあるわけですから、そうしたところが、買収しているのか何なのかわかりませんけれども、もうすでに、その段取りはついているのかもしれないし、モンサント(※21)だらけになるのかもしれませんが。

 そういうことが、こういうお金の呼び込んだ後の、次の段階ということになるわけですよね」


※16)米国の保守系シンクタンクのランド研究所は、ウクライナでの代理戦争のブループリントを書いたとされる

 米国の代表的な保守系シンクタンクであるランド研究所が、2019年にまとめた報告書『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争(Extending Russia -Competing from Advantageous Ground)』(以下「ランド報告書」)は、米国のロシア政策を見る上で、予言的な報告書である。
 進行中のウクライナ紛争では、米国は、まるでランド研究所の描いた青写真(ブループリント)通りに、対ロシア戦略を実行に移しているように見えるからだ。
 IWJは、この報告書の最重要個所の仮訳を進め、日刊IWJガイド上にシリーズで発表している。
 それは、この報告書が、現実を「予言」しているように見えることを称揚するためではなく、この青写真を米国が実行に移した結果、どうなったのか、あるいは、米国は、この青写真を本当に実行できたのかどうかを、検証したものである。いわば、ランド報告書と現実の米国政府の行動との「齟齬」の検証である。
 なお、報告書のタイトルにあるExtendとは、範囲・領土を「拡張する」、勢力を「伸ばす、広げる」という意味が一般的だ。しかし、この仮訳では、「extend」が持つ、相手に「全力を出させる」という意味を用いることにした。相手に「全力を出させる」ことから、文字通りロシアの軍事費の支出を増やし、国力を「疲弊させる」、経済的に「力を使い果たさせる」、という意味で仮訳した。
 Wikipediaの記述によると、ランド研究所は、米軍に対して調査・分析を提供する目的で、ダグラス・エアクラフト社(Douglas Aircraft Company、現在ボーイング社に吸収合併)が1948年に設立した非営利の世界政策シンクタンクである。ランド研究所のRANDとはResearch and Developmentのアナグラムである。軍事面において、米国内ではきわめて権威と影響力のあるシンクタンクとして知られている。
 資金源は、米国政府、民間寄付、企業、大学、個人となっている。
 また、ランド研究所の目的は、「ランドは、応用科学やオペレーションズ・リサーチを用いて、形式的経済学(歴史的文脈や全体社会を考慮しない近代経済学のこと)や物理学の理論的概念を他の分野での新しい応用に置き換えることにより、学際的かつ定量的な問題解決を目指しています」となっている。
 2019年のランド研究所の報告書『ロシアの力を使い果たさせる ―有利な立場からの競争(Extending Russia -Competing from Advantageous Ground)』は、閲覧が制限された秘密報告書でもなんでもなく、米国議会図書館のカタログにも掲載され、ランド研究所のホームページから誰でも世界中からダウンロードできる。
 当然、報告書の内容は、ロシアは十分分析しているはずである。
 この報告書は、9章で構成されている。
 第1章 序論
 第2章 ロシアの不安と脆弱性
 第3章 経済的手段
 第4章 地政学的手段
 第5章 イデオロギー手段と情報手段
 第6章 空と宇宙における手段
 第7章 海における手段
 第8章 陸と多領域における手段
 第9章 結論
 この報告書は、タイトルの『ロシアの力を使い果たさせる』に端的に表れているように、ロシアと共存共栄する平和的な戦略ではなく、いかに、ロシアを軍事的・経済的に「ロシアの力を使い果た」させて、自滅に追い込むか、という趣旨で書かれた報告書である。
 IWJによる仮訳・検証シリーズの第1回(日刊IWJガイド、2022年12月10日号、本注記末の参照リスト記載)では、報告書の「サマリー(概要)」抜粋の仮訳を掲載し、このランド報告書が掲げる、以下の目的等についてご紹介した。
 「本報告書は、何らかの次元でロシアとの対決は不可避であるとの認識のもと、米国が優位に立ちうる領域を明確化することを目指すものである。
 ここで検討されるのは、ロシアの国内外における軍事的地位、経済的地位、現体制の政治的地位に圧力をかけるための方策であり、同国が現在抱えている諸々の弱点や不安を利用するかたちで取りうる非暴力的手段のレパートリーである」。
 そのための手段としてランド報告書が提示したのが、「経済的手段」、「地政学的手段」、「イデオロギー手段と情報手段」、「空と宇宙における手段」、「海における手段」、「陸と多領域における手段」の6つということになる。
 なお、シリーズ開始前の日刊IWJガイド2022年8月22日号(本注記末尾の参照リストに記載)では、ランド報告書をウクライナにおける「代理戦争」実現のシナリオとして分析しつつ、第4章「地政学的手段」に言及している。
 第4章では、欧州に近いロシアの西部だけでなく、ロシア南部のコーカサス、中央アジア、そして西に飛んでモルドバまで、同時進行で影響を与えることやシリアの反体制勢力を強化して、アサド政権を揺さぶろうとまで計画されているのだ。
 仮訳・検証シリーズの第2回(日刊IWJガイド、2022年12月18日号、参照リスト記載)は、「第3章 経済的手段」の「手段1 石油輸出を妨げる」を、グラフを除き全文仮訳してご紹介し、現実の石油価格の動向と対照させて分析した。
 「第3章 経済的手段」は、ロシアの力を使い果たさせる経済的手段について言及している。
 ランド報告書は、提示したすべての手段の中で、米国のエネルギー生産の拡大とロシアへの貿易・金融制裁といった経済的手段が、ロシア経済、政府予算、国防支出を圧迫する可能性が最も高いと断言している。
 実際、バイデン政権は、まさに、このランド報告書の提言通りに、自国のエネルギー生産の拡大とロシアへの貿易・金融制裁を課してきた。
 ウクライナ紛争が進行するにつれ、ロシア産石油の禁輸、ロシア産天然ガスの禁輸、SWIFTからの排除といった過酷な経済制裁が行われ、後述するように、ロシアから欧州への天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1、2」は停止し、爆破工作まで行われた。まさに、米国の大戦略の「シナリオ」通りにロシアを弱体化するプロセスが進められた。
 第3回(前編)(日刊IWJガイド、2023年1月25日号、参照リスト記載)では、報告書の第3章「経済的手段」の「手段2 天然ガス輸出の抑制とパイプライン拡張の阻害」を、グラフを除き全文仮訳してご紹介している。
 そこでは、「欧州のガス供給を多様化し、ロシアを経済的に疲弊させるための様々な選択肢が存在するが、米国がそれらをどの程度コントロールできるかは不明である。その第一歩は、ノルドストリーム2を止めることである」と端的に述べられている。
 そして、「ノルドストリーム2を止める」は実行された。
 2022年2月にウクライナ紛争が始まった直後、バイデン政権が真っ先に行ったことは、ホワイトハウスにオラフ・ショルツドイツ首相を呼びつけて、圧力をかけ、ロシアと欧州の共存共栄の象徴だった「ノルドストリーム2」プロジェクトを中止に追い込んだのである。
 さらに、2022年9月26日、ノルドストリーム1と2で計4本のパイプラインのうち3本が爆破により損壊した。その実行犯が米国であるというシーモア・ハーシュ記者のスクープを、IWJはご紹介している(参照リスト掲載)。
 そもそも、ランド研究所の報告書は、他国同士のプロジェクトを停止する、しかもロシアを弱体化するためである、と言いきっている。ここには良心のかけらもない。なぜ自国が他国に対して、そのような横暴な力の行使が許されるのか、という理由すら述べられていない。米国がして、あたり前のことと了解されているのである。これこそ純度の極めて高い「邪悪(Evil)」といわざるをえないだろう。
参照:
・Extending Russia -Competing from Advantageous Ground(RAND Corporation、2019)
【URL】https://bit.ly/3Mjmieh
・米国の最も有力な軍事シンクタンクであるランド研究所による2019年のレポート『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争』には、現在進行中のウクライナ紛争の、米国の戦略シナリオが掲載されていた!? IWJは、全300ページに及ぶ報告書の抜粋仮訳を進めています!(日刊IWJガイド、2022.8.22号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/3QfEarA
非会員版 https://bit.ly/3tPXiEW
・<検証! ランド研究所報告書>ウクライナ紛争はランド研究所の青写真通り!? 米国ランド研究所の衝撃的な報告書『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争(Extending Russia -Competing from Advantageous Ground)』の翻訳・検証シリーズ開始!(その1)サマリー(概要)の抜粋の仮訳!(日刊IWJガイド、2022.12.10号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/3FyrjvH
非会員版 https://bit.ly/40imNLg
・<検証! ランド研究所報告書>ウクライナ紛争はランド研究所の青写真通り!? 米国ランド研究所の衝撃的な報告書『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争(Extending Russia -Competing from Advantageous Ground)』の翻訳・検証シリーズ開始!(その2)「第3章経済的手段」の「手段1 石油輸出を妨げる」の全文仮訳(グラフ除く)!(日刊IWJガイド、2022.12.18号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/40cWndT
非会員版 https://bit.ly/3QipRlP
・はじめに~<検証! ランド研究所報告書>ウクライナ紛争はランド研究所の青写真通り!? 米国ランド研究所の衝撃的な報告書『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争(Extending Russia -Competing from Advantageous Ground)』の翻訳・検証シリーズ開始!(その3の前編)「第3章経済的手段」の「手段2 天然ガス輸出の抑制とパイプライン拡張の阻害」の全文仮訳(グラフ除く)!(日刊IWJガイド、2023.1.25号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/3s8FCUD
非会員版 https://bit.ly/3QyWRro
・RAND Corporation(Wikipedia、2022年12月9日閲覧)
【URL】https://bit.ly/49gsVGK
・【IWJ号外】ドイツとロシアを結ぶ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したのは、米国だった! ピューリッツァー賞を受賞した米国の最も著名な独立調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が大スクープ! (その1) 2023.2.10(IWJ)
【URL】https://bit.ly/43Mypq2
・【IWJ号外】ドイツとロシアを結ぶ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したのは、米国だった! 米国の著名なジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が大スクープ!西側メディアは既読スルー!(その2) 2023.2.11(IWJ)
【URL】https://bit.ly/472Whsp
・【IWJ号外】ドイツとロシアを結ぶ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したのは、米国だった! ピューリッツァー賞を受賞した米国の最も著名な独立調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が大スクープ!(その3) 2023.2.14(IWJ)
【URL】https://bit.ly/475IZeC
・【IWJ号外】(最終回)ノルドストリームを爆破したのは米国! 大統領命令は無原罪!? 米国に正義も倫理も法の支配もなし! ピューリッツァー賞 ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が大スクープ! 2023.2.15(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3Yj4V1N

※17)トランプ側の方には、そういう準備があるんですかね?
 トランプ側には「内戦」の準備があるのかという疑問である。
 この点に関して、全米には、「ミリシア militia」と呼ばれる武装した民間人による「自警団」もしくは「極右武装勢力」が200近く存在し、多くがトランプ氏支持だということが、トランプ氏の大統領在任中から報じられている。 militiaとは、正規軍に対して国民兵・民兵を指す言葉である。
 米国でミリシアは以前から存在し、1930年代半ばのファシスト団体と「黒シャツ」運動の提携や,1960年代初めには武装右翼団体「ミニットマン」などの例があるとされる。
 トランプ氏とバイデン氏が戦った、2020年11月3日の米大統領選挙を前に、9月15日に配信されたTBS NEWS DIGの番組は、「ミリシア」の活動を報じた。
 彼らの多くはトランプ支持の保守派で、愛国心の強さを自負し、活動目的は「犯罪者や有事から自衛すること」だという。銃規制に反対する集会には、参加者を護衛するために、ミリシアも参加した。
 同番組のインタビューで、ミリシアの一つ「111%セキュリティ・フォース」のリーダーは、「我々は米国で生まれ、いざとなればここで死ぬ」「ここが守るべき場所で、戦う準備はできている」と語っている。
 彼らが「敵」と目すのは、「過激極左のアンティファ」「ブラック・ライブズ・マター」の参加者で、「リベラルな考えにもとづく運動を、社会の秩序を乱すものとして警戒している」と番組は報じた。
 同年盛り上がった黒人差別反対運動のデモ隊を「暴徒」と捉えて、ミリシアは活動を活発化させたという。例えば同年、ウィスコンシン州でデモ隊に発砲し、3人を死傷させた17歳の白人少年は、ミリシアに所属していた。
 この事件に対して、当時のトランプ大統領は、「あの少年はデモ隊から逃げようとして、転んだように見えた。デモ隊は彼に暴力をふるった」「彼はトラブルに巻き込まれたのではないか。殺されていてもおかしくなかった」と擁護。ミリシアの暴力を容認するような発言を繰り返した。
 続く同年10月8日には、米当局が「民主党のグレッチェン・ウィットマー ミシガン州知事を拉致し、『内戦』を引き起こす計画を企てたとして、右派武装組織のメンバー2人を含む13人を逮捕したと発表した」と各メディアが報じた。
 AFPは10月10日、この逮捕を受けて「ドナルド・トランプ政権下で台頭している『ミリシア』と呼ばれる極右武装勢力が改めて注目を集めている」と報じた。
 米国に昔から存在する右派の武装組織の多くが、トランプ氏が大統領に就任以降、活動を活発化させたと、AFPの記事は述べている。
 例えば、2017年の米バージニア州シャーロッツビルでの右派集会「ユナイト・ザ・ライト」、2020年には新型コロナ関連の規制に抗議するデモへの参加、ブラック・ライブズ・マターのデモ参加者への重装備での対抗などを挙げている。
 ミシガン州知事の拉致を計画して逮捕されたのは13人で、多くが「ブーガルー」の信条を支持し、うち数人は地元の武装組織「ウルヴァリン・ウォッチメン(Wolverine Watchmen)」のメンバーだったという。
 「ブーガルー」とは、「組織も統率者も持たず、銃の文化をめぐって大まかに形成されたイデオロギーで、左派や独裁的な政府との闘争や、人種間の闘争が近いという考え」を指すとされる。
 ミシガン州立裁判所の記録では、ブーガルーは「反政府暴動、または政治的理由による差し迫った内戦」を意味する言葉として使われているという。
 また、AFPによれば、FBIが「こうした武装市民集団は米国にとって国内最大の脅威になる」と警告する一方で、「トランプ氏が一部の勢力を助長している」ともされ、「大統領選の前後で政治絡みの暴力行為が発生するのではないかと不安視」されているとした。
 事実、2021年1月1月6日、大統領選でのトランプ氏の敗北を認めないトランプ支持者の一団が武装し、米国会議事堂が占拠される事件を引き起こすことになる。
参照:
・トランプ氏支持の自警団「ミリシア」とは?【現場から、】(TBS NEWS DIG、2020年9月15日)
【URL】https://bit.ly/3xhv0Vw
・ミシガン州知事の拉致計画、13人逮捕 「内戦」も企て(AFP BB News、2020年10月9日)
【URL】https://bit.ly/3VDW7UM
・米国脅かす極右武装勢力「ミリシア」 ミシガン州知事の拉致未遂も(AFP BB News、2020年10月10日)
【URL】https://bit.ly/3vIkTsl
・ミリシア 先鋭化する米国の民間武装勢力(日経サイエンス、2022年7月号)
【URL】https://bit.ly/3TDqBnw
・ミリシア運動(コトバンク、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
【URL】https://bit.ly/3VLEItk
・2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件(Wikipedia)
【URL】https://bit.ly/3QzGZVR

※18)要するに福音派なわけですよ:
 福音派はキリスト教の潮流のひとつ。聖書の記述を忠実に守り、伝道を重視し、積極的に行動することを旨とする。プロテスタントの系譜を引くが、米国では宗教別人口の約4分の1を占め、主流派のプロテスタント(メインストリームと呼ばれる)を上回る最大勢力。
 16世紀の宗教改革でルターらが唱えた福音主義は、教会の権威によらず、聖書に立ち返ろうとする考えを指す。プロテスタントは神学的にはこの流れを汲むが、さまざまな歴史的経緯から、福音派はいくつかの会派に分かれている。
 19世紀前後、自然科学などの発展に伴い、プロテスタントの中に自然科学の知見を認める自由主義神学の流れが出てきた。一方で、米英の保守的なプロテスタントの中からは、進化論などを否定し、聖書の霊感と無謬性を固持するファンダメンタリズム(原理主義)が現れた。
 国によって福音派の定義に違いがみられ、社会問題についての見解なども会派により多少の差異があるが、一般的に福音派は妊娠中絶や同性婚には否定的なことが多い。
 また、基本的には聖書の教えどおり生きることを重視するため、旧約聖書の一節を「神がイスラエルをユダヤ人に与えた」と解釈し、「世界が終末を迎える時、エルサレムの地にキリストが再来する」などと考える。
 米国の福音派は、トランプ前大統領の強力な支持基盤で、2016年の大統領選では白人福音派の8割がトランプ氏に投票したとされる。トランプ氏自身は深い信仰心を有しているとは思われていないが、選挙公約に米大使館のエルサレム移転などを掲げ、当選後まもなく、エルサレムをイスラエルの首都と認めた。つまりクリスチャン・シオニズムの望む政策を実行したのである。これは、福音派への配慮だとされる。ことここにおいて、福音派とクリスチャン・シオニズムは、接近し、重なりあい、ほぼ同義となりつつあると考えられる。
参照:
・福音派(コトバンク)
【URL】https://bit.ly/3PEeyoJ

※19)空中携挙:
 携挙(けいきょ)とは、プロテスタントにおけるキリスト教終末論で、イエス・キリストの再来の際に起こるとされている。「空中携挙」という言葉自体は、聖書には出てこないが、概念として信者に伝えられている。
 新約聖書の中の『テサロニケの信徒への手紙一』4章16~17節によれば、神のラッパの響きと共に主イエス・キリストが天から空中まで下って来ると、教会において亡くなったすべての信者が甦り、生きている信者たちは彼らと一緒に引き上げられて空中で主と会い、いつまでも主と共にいられる、という。
 これは使徒パウロがテサロニケの教会に宛てた手紙に記されたもので、すべてのクリスチャンに希望を与える預言となっている。
 聖書における携挙を描いた現代の映画作品として、『レフト・ビハインド』(原題: Left Behind)がある。これは、2014年に米国で製作されたスリラー映画で、監督・編集ヴィク・アームストロング、主演ニコラス・ケイジ。原作はティム・ラヘイ、ジェリー・ジェンキンズの小説『レフトビハインド』(1995年出版)である。
 表題は英語で「後に残される、取り残される、置いていかれる、おいてきぼりにされる」といった意味。
 内容は、ショッピングモールや航空機内をはじめ、世界各地で人間が消失するという現象が発生し、その原因として、キリスト教の「携挙」を絡めたストーリーである。
 本映画に対しては、キリスト教系の批評家を含めて、厳しい評価が寄せられたとされるが、いずれにしても、現代の一般的米国人にとって「携挙」とは、娯楽映画のモチーフになるような概念ということになる。
参照:
・五章 空中携挙とは(心に響く聖書の言葉)
【URL】https://bit.ly/4afrBp0
・教会の空中携挙とは何ですか?(Got Questions)
【URL】https://bit.ly/43EJU48
・携挙(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/4cBW2XI
・レフト・ビハインド (2014年の映画)(Wikipedia)
【URL】https://bit.ly/3TXxukQ

※20)ブラックロック:
 ブラックロック(BlackRock Inc.)は米国のニューヨークに本社を置く世界最大の資産運用会社。2021年の運用資産残高は、日本のGDPの2倍の10兆ドル。
 1988年、ユダヤ系アメリカ人のローレンス・フィンクら8人のパートナーによってニューヨークで設立された。当初は債券運用が中心で、その後、合併や買収を繰り返し、クローズド・エンド型ファンド、確定拠出年金等の分野において新商品を開発するなど事業を拡大した。
 1995年に株式を含むオープン・エンド型ファンドの運用を開始。ビジネスが多様化し、他の運用会社が事業部門を独立させる中で、ブラックロックはあらゆる事業をひとつのプラットフォームで運営し、一元的に管理することで事業体の横のつながりを強めたビジネス・モデルを築いた。
 1999年、ニューヨーク証券取引所に上場。同年末時点で1650億ドルだった運用資産残高は、2004年末には3420億ドルに増加。
 2021年末における同社の運用資産残高(AUM)は、日本のGDPの2倍に相当する10兆ドル(約1153兆円)である。
 ブラックロックはファンドを通じて主要上場企業の大株主となっており、S&P500種株価指数を構成する企業の80パーセント以上において、持ち株比率の上位3位までに入る。
 世界30ヶ国、70のオフィスに合計1万8000名超の従業員が在籍、日本ではブラックロック・ジャパン株式会社としてビジネスを展開している。
参照:
・ブラックロックのご紹介(BlackRock 公式サイト)
【URL】https://bit.ly/3TEnpYM
・ブラックロック(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/43JDvVx

※21)モンサント:
モンサントは、かつて米国に存在した多国籍バイオ化学メーカー。1901年、米ミズーリ州セントルイスでジョン・F・クイーニイが創業した。社名は彼の妻、オルガ・モンサントに由来する。
 1920年代から硫酸、ポリ塩化ビフェニルなどの化学薬品の製造で業績を上げ、1940年代からはプラスチックや合成繊維、農薬なども手掛ける。
 ベトナム戦争で使われた枯葉剤もモンサントが製造したが、催奇形性のあるダイオキシン類が含まれており、のちに深刻な被害を出した。
 1961年から1975年にかけて、枯葉剤は米軍によってサイゴン周辺などに大量撒布され、約400万人のベトナム人が曝露したとされる。
 日本でも有名になった結合双生児の「ベトちゃんドクちゃん」の母親は、終戦1年後に枯葉剤のまかれた地域に移住し、2人を出産していた。
 モンサントは、1970年に除草剤のラウンドアップを開発。その後、ラウンドアップに耐性をもつ遺伝子組み換え作物を育種して、セット販売を開始した。
 この時、遺伝子組み換え作物のシェア確保商法を強引に進めて、「農業分野における米国の世界支配を支える企業」との批判を受けた。
 また、在来種の絶滅や、ラウンドアップに耐性を持つ雑草の出現など、新たな問題を引き起こした。
 モンサントの売上高は、2005年に62億ドル、2008年は110億ドルとなり、遺伝子組み換え作物の種の世界シェアは90パーセントであった。バイオ化学メーカーとしては、世界屈指の規模と成長性を誇り、ビジネス・ウィーク誌が選ぶ2008年の世界で最も影響力がある10社にも選ばれた。
 一方、ラウンドアップによる健康被害も増加。国際がん研究機関(IARC)は「発がん性が、おそらくある」という評価を下し、モンサントに対する多数の訴訟が各地で起きた。
 サンフランシスコ市の陪審は、2018年8月10日、学校の校庭整備の仕事で使ったラウンドアップが原因で悪性リンパ腫を発症した末期がん患者の裁判で、モンサントに損害賠償金2億8900万ドル(約320億円)の支払いを命じた。
 これに先立つ2018年6月、モンサントはバイエルによって630億ドルで買収・吸収され、その企業名は消滅した。バイエルはドイツに本部を置く化学工業及び製薬会社(多国籍企業)。
 バイエルは、ラウンドアップの発がん性を巡る米国内の訴訟を引き継いだが、2020年6月、約12万5000人の原告の大半に合計最大109億ドル(約1兆1600億円)を支払うことで和解を成立させた。和解ということは、発がん性があることを認めて、和解金を支払うもの、にもかかわらず「ラウンドアップを今後も販売する」と述べている。
 インタビュー中の「ウクライナの沃土が(中略)モンサントだらけに」の発言は、ウクライナの広大な農地を確保した遺伝子組み換えの穀物メジャーが、遺伝子組み換え作物の大規模栽培を展開するのではないか、という懸念を表している。
参照:
・モンサント除草剤「ラウンドアップ」はがんを発生させた「事実上の要因」!今度はカリフォルニアで陪審評決!類似するケースは9000以上とも! 2019.3.23(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3TVXfSH
・「種子法廃止は飢餓につながる」「防衛予算より自給率向上を」! 採種農家、一般農家、消費者の原告3人が種子法復活へ強い訴え! 憲法違反認められれば種子法復活へ!~6.3 種子法廃止違憲確認訴訟 原告本人尋問 2022.6.15(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3IYvsdO
・独バイエルが109億ドルで和解 除草剤発がん性の米訴訟(ロイター、2020年6月25日)
【URL】https://bit.ly/3VAgulO
・モンサント(企業)(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/4cLpWZY
・ラウンドアップ(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/3IYtIS6

ゼレンスキー大統領にはウクライナ国内向けに「ロシアとの戦いをやめる理由」が必要! 単なる「和平」では彼自身の権力は失速する!

岩上「(パワポを切り替えて)『少しだけ前進した和平への下準備(1)』ということです」

▲少しだけ前進した和平への下準備(1)

塩原氏「これはですね、要は実際には、そう簡単に、すぐに和平なんて結ぶ、和平協定が結ばれるとはまったく思えませんが、一体、何が行われているのかという時に、非常にヒントになることが、この前起きたばかりなので、ご紹介しておきたいということなんですけど。

 つまり、今年(2024年)の1月12日に、イギリスのスナク首相は、キーウを訪れて、ゼレンスキーとの間で、安全保障協力に関する協定に署名しました。で、次のページに行っていただくと…」

▲少しだけ前進した和平への下準備(2)

塩原氏「要は、有効期間10年で、イギリスがウクライナのNATO加盟実現までの間、同国のウクライナの安全保障を約束する内容が合意されたということで。要するにイギリスがウクライナを守ってあげますよと、NATOに加盟するまでの間、ということが決まったんですね。」

岩上「加盟するまでの間をつなぐ、ということで意味合いがあったんですか?」

塩原氏「そうです」

岩上「あれ、イギリスというのはブレグジット(※22)してますよね。それで、単独行動しようと。

 イギリスのバックにはアメリカがあって。そういう意味合いというよりも、EU、NATOと加盟するまでの間、直接的にバックアップしてやるよと、こういうことなんですね」

塩原氏「そうです。それが、次のところを見ていただくと、要するに、アメリカ、カナダ、ドイツ、フランス、ポーランドを含む他の国々と同様の文書の準備について交渉している、ということがあって。

 要するにNATO加盟国の多くが、こういう保障をすることで、NATOに実際にウクライナが加盟するまでの間、安全保障するということの一歩として、イギリスが、ともかく実際に協定を結んだんですね」

▲少しだけ前進した和平への下準備(3)

塩原氏「だから今年、同じような協定を結ぶ国が増えることは、多分、間違いないということになって。それは、ここに書いた、これは、アメリカがイスラエルを守るための方策として、クオリタティブ・ミリタリー・エッジ(Qualitative Military Edge=QME)と言って、『質的軍事的優位性』と訳されているものですけれども。

 要は、イスラエルは核兵器を持っていますが、その周囲、中東からの攻撃とかの脅威にさらされている中で、アメリカがイスラエルを守る方法として、常に質的軍事的優位性をイスラエルに保証してあげますよ、という文書を交わしていて。

 したがって、新しい、周辺の中東の国々がロシアから新型の何かミサイルを配備されたら、それに対抗し得るような防空システムを、アメリカから必ず輸出してあげますよ、とかっていうようなことを、これによって担保しているわけですね。

 それと同じようなことなんだけれど、イスラエルは核兵器があるからっていうことで、決定的にウクライナとは違うので、ウクライナをまったく同じ、イスラエルと同じ条件で、『軍事的優位性』を保証することはできないので、この『質的抑止力バランス』という言葉があって。

 違う形で、ともかく、ウクライナの安全保障というのを保証するために、NATOに加盟できるかどうか知りませんが、加盟するまでの間、保証してあげましょう、ということの一環として、まずイギリスが、とにかく協定を結びましたと。

 これから、こういった国々が結ぼうとしていると。こういうものが実際に結ばれれば、少しはウクライナの安全保障上の保証になるので、まあ、和平なり、休戦協定なりに向けて弾みがつくかもしれないという、そういう話ですね」

岩上「そうなんですか。この、質的抑止力バランスが、いまいちわからないんですよね。

 『質的軍事的優位性』というのは、ある程度軍事的に優位だから、抑止力になるんですけど、抑止力的バランスっていうのは、一体何なんだ。現実的には何があり得るんだ、という気がするんですけれども」

塩原氏「それについてはですね、私の書いた本を読むと(『知られざる地政学』を読む)、『ウクライナの安全保障にコミットする諸国が、優れた装備・訓練・情報及び欧米の技術企業との協力といった、官民のソリューションの組み合わせにより、ウクライナがロシアの戦場での優位性に対抗、または相殺できるようにすることをイメージしている』と。

 『こうすることで、明確な戦略的ビジョンを示し、この取り決めの耐久性に対する長引く疑念を取り除くことができれば、米国がイスラエルにコミットしている、このQMEに近い効果を持つ』、という考え方があります」

岩上「抽象的ですね」

塩原氏「よくわからないですね」

岩上「そうですね。ここで先ほど、ちょっと、ラブロフ外相が、きわめて長い記者会見をしたという時に、その質問も出たようですけれども。彼らは、もう初めから、とっくの昔から(ウクライナの軍備にも、ウクライナの内部に入り込み)関わってきたので、それを『改めて言葉を、そう載せただけだ』みたいな、確かそんな内容だったと思うんですよね。『あまり細かいことに関しては、我々は気にしていない。所詮、ああだこうだの言い換えに過ぎない』と。

 ただ、ここでちょっと、その第2幕が始まるかもしれないみたいな話を、ちょっと冒頭、させていただいたんですけど、その予兆のひとつということでも言えるのかもしれませんが、ロシアがですね、ハリコフへ精密誘導弾で、フランスの傭兵部隊数十人がいる、そのアジトを攻撃した。約60人、爆殺したんですね(※23)。

 そして、それは狙って撃ったわけで、これまでウクライナ国内の中で、たくさんウジャウジャ、実はNATOの将校団だとか傭兵団とか、いろいろいたんだけれども、基本的には、そこを狙い撃ちをするとかウクライナ軍と同等に見るとかはせず、攻撃しなかったけど、これからは、この日をもって、これからはやるよと。

 膠着戦も終わって、ウクライナの戦争、我々(ロシア)の勝利宣言、彼ら、もう勝利宣言しているんですけど、勝利宣言した後、これからウクライナ国内にいるNATO、だから、こういうふうにウロチョロするイギリス軍(あるいはフランス軍、その他)がいれば、それは同じ標的の対象、と見なして攻撃するよ、という風に言ったんですね。

 だから、それは、(NATO側が)言ったことに対するカウンターでもあると思うんですけれども、そのカウンターというのは、(ウクライナの)中に入ってきて、いろいろなことで手伝ってあげるよ、ということを言ってきた。それは、(今までも)実際にしてきたんだけども。

 それを、(今後は)さらに高めるよと言って。また、兵士だけでなく将校団が入ってきていろんなことやったりするのでしょう。この時は、ロシア(はもう容赦しない)から狙い撃ちにしてやると。で、意識的に『これから狙うからね』と言ってるわけです。

 そうなると、『イギリス、(誤爆じゃなくて)お前に対して攻撃したんだよ。フランス、お前に対して攻撃したんだよ』っていうことを言っていくわけですね。それは、すごく緊張を高めやしないかなと思うんですけれども、その辺はどうでしょうか」

塩原氏「緊張を高めるかもしれませんが、こういう協定を、各国ごとにウクライナが結ばないと、少なくとも和平協定などにはたどり着かないですよね」

岩上「たどり着かないというのは、ロシア側が、ある意味、もう本当に、ほぼほぼ勝ってしまった状況の中で、何で和平協定のテーブルに立たなくてはいけないかっていう…。ロシア側にとってのモチベがない、という意味ですか?」

塩原氏「そうではなくて、ウクライナ側が戦争を止めるということを、もし、言い出そうとしたら、ゼレンスキーは自分の権力を失うことを意味しているから、言えないわけですよ。

 そういう意味で言うと、『安全の確保』というのを担保できるような体制ができるから(戦いを)止めるんだ、というような理由付けを」

岩上「ああ、国内に対しての理由付け」

塩原氏「…があるわけですから、そういう意味で言ったら、この体制づくりって、すごく重要で」

岩上「自分たちだけじゃなくて、こうやって味方がいるから。今度、一応和平するけれども、何かあったら、彼らが助けてくれるからと。

 NATOへの正式加盟はできないから。だから、『NATOから助けてくれないし、俺たちはひとりぼっちだ、って考えなくてもいいんだよ』と国民に向かって言うということですね。実際はどうであれ、っていうこと。なるほど、そういうことですね」


※22)ブレグジット:
 ブレグジット(Brexit)は、欧州連合(The European Union=EU)から英国(Britain)が出て行く(exit)という意味の造語。英国のEU離脱のこと。
 英国では2016年6月23日、EU離脱の是非を問う国民投票が実施され、離脱が約52パーセント、残留が約48パーセントで離脱派が僅差で勝利した。
 原則2年の交渉は、独立重視のハード・ブレグジット(強硬離脱)派と経済関係を優先するソフト・ブレグジット(穏健離脱)派の対立などで離脱延期が繰り返されたが、強硬派のボリス・ジョンソン首相(当時)の下、2020年1月31日に英国はEUを離脱。同年12月31日に移行期間が終わって、英国はEUから完全離脱を果たした。
 英国のEU離脱の主な理由は移民問題だと言われる。移民の増加は経済や社会に大きな影響を与える。EU域内を人が自由に移動できるシェンゲン協定による移民の流入を懸念する声が大きかったのである。
 また、EU域内のルールは加盟国(28ヶ国)で話し合って決めるため、合意に至るまで時間がかかること、自国の法律がEUのルールに合わなければ無効となることも離脱の理由であった。
 英国には、かつての植民地であったインドや南アフリカ、その他のアフリカ、アジア太平洋諸国との関係も良好に維持したい意向があり、米国とのつながりも重視しているため、EUに留まることで欧州以外の国々との外交が不自由になる事態を避けたと言える。
参照:
・1からわかる!「ブレグジット」(1)なぜEUから離脱したいの?(NHK、2019年10月11日)
【URL】https://bit.ly/3PHTU77
・イギリスの欧州連合離脱(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/3PFI8KG

※23)ロシアがですね、ハリコフへ精密誘導弾で、フランスの傭兵部隊数十人がいる、そのアジトを攻撃した。約60人、爆殺したんですね:
 2024年1月18日付ロイターは、ロシア国防省が1月17日、「ロシア軍が16日にウクライナ第二の都市ハリコフにある『外国人戦闘員』が滞在する建物に対し精密攻撃を実施した」と発表したことを報じた。
 発表によると、「戦闘員の多くはフランスの傭兵で建物が破壊され60人以上が死亡した」という。
 ただし、国防省は証拠を示しておらず、ロイターは発表内容を確認できていないという。
 また、同記事は、ハリコフ当局の情報として、「ロシア製ミサイル2発が16日、ハリコフ市中心部の住宅街を直撃し17人が負傷、そのうち2人が重傷を負ったほか、家屋に大きな被害が出た」としている。
 一方、これに対して、フランス政府が1月18日、「ウクライナにフランスの傭兵がいたというロシアの主張を否定した」と、同じくロイターが報じている。
 同記事によれば、フランス外務省は「フランスは、ウクライナの主権、独立、領土保全を守る戦いを支援するため、国際法を完全に順守し、軍事物資の供給や軍事訓練でウクライナを支援している」として、「他の一部の国とは異なり、フランスにはウクライナにも他の場所にも傭兵はいない」と主張したという。
参照:
・ロシア、ウクライナのハリコフ攻撃 外国人戦闘員を殺害と(ロイター、2024年1月18日)
【URL】https://bit.ly/4aeQBww
・仏、ウクライナに傭兵派遣とのロシアの主張を否定(ロイター、2024年1月19日)
【URL】https://bit.ly/43EUQio

ウクライナでの「代理戦争」を考案した米シンクタンク研究者が「もう無理」と言い出した! だが、選挙モードに入ったバイデン大統領は止める気なし!

岩上「次は、ランド研究所のシニア政治学者のサミュエル・チャラップさん(※24)」

▲ランド研究所シニア政治学者サミュエル・チャラップの主張(1)

▲サミュエル・チャラップ氏。(ランド研究所)https://bit.ly/43ELYcM

塩原氏「これと、この次というのが連動してるんですけども、要するに、この人が言っていることは、すごくいいこと言っていますし」

岩上「ワシントンはウクライナに終止符を打つ必要がある、と」

▲ランド研究所シニア政治学者サミュエル・チャラップの主張(2)

塩原氏「次のやつで、これが一番最近、これは去年(2023年)の7月に出されたものですけれども、要は、この人は早く休戦協定を結べと言っているわけです。

 要するに、和平協定を結ぶのは非常に困難でありますから、朝鮮戦争を終結したのと同じように、とにかく休戦協定を結んで、賠償問題とか棚上げにして、とにかく戦争をやめろというのが彼の主張で、私もそのとおりだと思っているわけですね。

 だから、ここに紹介しておいたんですけど、つまり、そういう意味で言ったら、今日のお話のテーマであるウクライナ支援の長期化っていうのは許しがたいことで、早く止めろという話なんですよ」

岩上「ですよね。

 実はランド研究所っていうところは、実際のアメリカ政府が、「代理戦争」をやっていく計画の、そのブループリント(青写真)みたいな報告書を、ずっと前に出していて。(バイデン政権は)まさに、それに乗っかってやったようなところがあって。

 ところが、ここへ来て、ランド研究所が『ちょっと、もう無理だから、ストップしようよ』ということを言ってて。

 私も実はこれ、興味を持っていてですね。ランド研究所は、この、ちょっと長い文を書いたということと、それとこれ、『フォーリン・アフェアーズ』にも書きましたよね、チャラップは。

 それで、それを紹介(した)。IWJとして、紹介はしたりしたんですね。先生もやっぱりご注目されていたんだな、と思うんですけれど。

 これは非常に重要で、もうこれは、ちょっとこのやり方、自分たちが大体アイデア出したところが、もうこれはちょっと、店じまいしようぜ、というふうに言ってるんだから、紛争を終わらせないと駄目だと。

 『基本的には永続的な停戦協定であり、紛争を終わらせることはできないが、流血を止めることはできるだろう』と。これは止めないと、ちょっとダメだよ、という話ですよね。

 その、止めないとダメだよと言われても、『もう始めちゃったんだから、止められないよね』と言っているのが、バイデン政権と、国防総省と、それから軍産複合体みたいな状態で。始めた戦争はストップかけられない。昔の旧日本軍、皇軍と同じような状態にあるのかなと思うんですけれども。

 これの紹介は、すごく大変、大事なことで、みんな知っておくべきだと僕も思うんですが、現実的なこれの影響力といいますかね、例えば、これはアメリカ国内のエリートに非常に大きな影響を与えて、そうだな、そろそろストップかけないとダメだなという方向へ、こう作用しているんでしょうか? これが発表されてから、少し間が出ているんですけれども、効果というのは、いかがなものでしょう?」

塩原氏「今、選挙戦、大統領選挙戦モードに入ってしまっていることで、したがって、もう要するに、もう止める側じゃないわけですよ、バイデンは。

 先程申し上げたように、国内投資なんだから、続けてそうすれば、国内の雇用増加を見込めるから、何が悪いのっていう。

 しかも、そのための予算が通ってないので、これは国内投資なんだから、予算通してよ、ということで、追加のウクライナ支援という名前で、議会に頼んでいるのに、3月の8日までかな、少なくとも、これが宙に浮いたままの状態にあるわけです。

 したがって、もはやとにかく、『国内投資なんだよ』という風に言わなきゃ、なかなか予算追加、ウクライナ支援の追加ができないほどに困難な状況に置かれていて、予算がもちろん通れば、事実、国内投資に回って、国内の雇用増加につながる。つまり、戦争なんか、終わるわけがないわけです。

 したがって、この人が言ってることは、正しいことを言ってると私は思いますが、この人の言っていることが、アメリカ国内において影響力を持つかといったら、少なくともバイデンが民主党の代表者になって、本当に大統領選に出て戦うって言うんだったらですね、もう100パーセント、この人の考えは無視されると」

岩上「ランド研究所の影響力、そして、その中でわざわざ、そこのレポートをピックアップして、『フォーリン・アフェアーズ』という非常に影響力のある雑誌の中で、カバーストーリーを書かれた。

 だけれども、それが、現実がね、政治がそちらに傾けば、一切無視されるということですよね。本当に分岐点になりますよね、そういう意味では」

塩原氏「そうですね。もうひとつだけ申し上げておきたいんですけど、今日の話の中では、プーチンの話が出てきませんでした。

 プーチンについては、決定的に違うのは、ゼレンスキーはバイデンと相談しなきゃ、戦争を止めるかどうかを含めて決められないけど、プーチンは自分が止めようと思えば止められるわけですよね。

 で、プーチンは、まあ、いろんな説があって、去年(2023年)の秋、11月頃に何か、和平したいとか言っていたか言わないか知らないですが、いろんなことを言う人がいますけど、要するにプーチンは最初、負けたわけですが、相手が続けるってことで続けていて。長期戦に巻き込まれて大変な部分もあって、今は膠着状態の中で、最初よりはだいぶ気分が良くなってると思いますけれども。

 要するに、彼は止めようと思えば、いつでも(彼自身の意志で)止められるわけですよね。それが決定的に違う。

 バイデンは、今言ったように、もう選挙事情で、止めようなんて言えないわけですよ、はっきり言っちゃうと。止めちゃえば、国内投資なんだから、国内に影響が出て、失業者が増えて、大統領選に悪影響を及ぼしますから。バイデンは、少なくともこの1年間、ウクライナ戦争を止めようとは思わないはずですね。

 もし、止めさせるんだったら、それこそ大統領選の直前に、和平休戦協定を結ばせて、大統領選でプラス効果を狙うとかっていうのはあるかもしれませんが、少なくともこの半年間で、バイデンがウクライナ戦争を止めさせるってことは、あり得ないんですね、100パーセント。

 ゼレンスキーは、自分が権力を保持するためには、バイデンの言う通りするしかないわけですから、バイデンが『やれ、やれ』って言えば、止めたいなどと思うはずがないわけですね。

 プーチンはどうかというと、プーチンはもちろん長期化、相手が長期化するって言うんだったら、もう長期化するしかないわけですよ(自分では選べない)」

岩上「ですね」

塩原氏「主導権を、彼が握ってるわけではないので。今年の夏にロシア側が攻撃するかもしれないとかって、また、いい加減なことを言うやつがたくさんいますけれども、そんなのは、どうだっていいんですよ」

岩上「そうですね」

塩原氏「要するに、プーチンは、このゼレンスキーとバイデンが、今、私が申し上げたような状況にあることをよく知っていて、もう後は、相手がどう出るかなんですね。

 最初だけなんですよ。本当に負けちゃったから、(プーチンが)やばいなと思って、本当に、停戦か和平協定を結ぼうとした。それを延ばしたのは、あいつら(ゼレンスキーやバイデン)だろう、ということがあって。今現在で言えば、別にそんなに困ることはないので、出方を見守っていると。どっちにも転べるんですね」


※24)ランド研究所のシニア政治学者のサミュエル・チャラップさん:
 サミュエル・チャラップ氏はアメリカの保守系シンクタンク、ランド研究所のシニア・ポリティカルサイエンティスト。
 専門はロシア、旧ソビエト、ユーラシア、軍備管理など。オバマ政権時代に米国務省政策企画部に勤務した。『The Ukraine Crisis and the Ruinous Contest for Post-Soviet Eurasia(ウクライナ危機とポスト・ソビエト・ユーラシアの破滅的競争)』の共著者。
 ランド研究所は、2019年に『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争(Extending Russia -Competing from Advantageous Ground)』という報告書を発表した。
 IWJは、この報告書の最重要個所の仮訳と内容に関する検証を進め、日刊IWJガイド上にシリーズで発表している(※1参照)。
 この報告書の目的は、ロシアの国力(経済的・軍事的・政治的・人的)を、エネルギーに関する経済制裁などを通じて、使い果たすように、仕向けて、ロシアを弱体化させることだった。
 この報告書で示されている対露戦略が、ウクライナ紛争で次々と実現していったことから、これがウクライナ紛争の「青写真」であろうと目された。したがって2020年の開戦時点のランド研究所は、ウクライナ紛争とウクライナ支援を強力に支持していた。
 ところが、その3年後の2023年1月25日、ランド研究所は、サミュエル・チャラップ氏とミランダ・プリーベ氏による「長期戦を回避する―米国の政策とロシア・ウクライナ紛争の軌跡」と題する報告をウェブサイトに掲載した。
 IWJでは、このチャラップ氏らの報告書について、日刊IWJガイド、2023.8.2号でご紹介している。
 この報告書の趣旨は、「紛争の長期化の影響は、ロシアの核使用と、NATOとロシアの戦争のリスク、経済的損害など、米国にとっての利益をはるかに上回る。絶対的勝利は困難で、政治的解決が米国の利益に叶う」というものだった。
 つまり、民主主義や自由主義といったネオコンの掲げる理念(というよりもお題目)の裏側にある実利の損得勘定を前面に押し出し、初めてウクライナ紛争の長期化に反対し、早期の停戦を主張し始めたのだ。
 さらにチャラップ氏は、アメリカの外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』2023年7月号掲載の論文では、ウクライナ紛争について、「いまこそ、ウクライナ戦争をどのように終わらせるかについてのビジョンを描くべきだろう。15カ月に及ぶ戦闘で明らかになったのは、たとえ外部からの支援があったとしても、双方には相手に決定的な軍事的勝利を収める能力がないということだ。このままでは、はっきりとした結果を得られぬまま、数年にわたって壊滅的な紛争が続く恐れがある」と書いている。
 IWJでは、このチャラップ氏の『フォーリン・アフェアーズ』の論文についても、同じく日刊IWJガイド、2023.8.2号で報じている。
 この論文は、2023年6月の、ウクライナの『反転攻勢』が不調に終わったことを受けて、早期の休戦を提言したもの。日本版のタイトルは「勝利なき戦争と外交――いかにウクライナでの戦闘を終わらせるか」となっているが、原文はストレートで、「An Unwinnable War: Washington Needs an Endgame in Ukraine」(勝ち目のない戦争:ワシントンはウクライナに終止符を打つ必要がある)というものだ。
 米カリフォルニア州サンタモニカに本部を置くランド研究所は、1946年にアメリカ陸軍航空軍による支援を受けて、研究プロジェクト(ランド計画)として発足した。「ランド」とは研究と開発(Research AND Development)の略である。
 1948年にフォード財団の支援を受けてNPO法人として独立、大学や民間から第一級の人材を集め、政府の政策や企業活動をめぐって多くの理論や提言を発信してきた。
参照:
・米国の最も有力な軍事シンクタンクであるランド研究所による2019年のレポート『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争』には、現在進行中のウクライナ紛争の、米国の戦略シナリオが掲載されていた!? IWJは、全300ページに及ぶ報告書の抜粋仮訳を進めています!(日刊IWJガイド、2022.8.22号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/3QfEarA
非会員版 https://bit.ly/3tPXiEW
・<検証! ランド研究所報告書>ウクライナ紛争はランド研究所の青写真通り!? 米国ランド研究所の衝撃的な報告書『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争(Extending Russia -Competing from Advantageous Ground)』の翻訳・検証シリーズ開始!(その1)サマリー(概要)の抜粋の仮訳!(日刊IWJガイド、2022.12.10号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/3FyrjvH
非会員版 https://bit.ly/40imNLg
・<検証! ランド研究所報告書>ウクライナ紛争はランド研究所の青写真通り!? 米国ランド研究所の衝撃的な報告書『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争(Extending Russia -Competing from Advantageous Ground)』の翻訳・検証シリーズ開始!(その2)「第3章経済的手段」の「手段1 石油輸出を妨げる」の全文仮訳(グラフ除く)!(日刊IWJガイド、2022.12.18号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/40cWndT
非会員版 https://bit.ly/3QipRlP
・はじめに~<検証! ランド研究所報告書>ウクライナ紛争はランド研究所の青写真通り!? 米国ランド研究所の衝撃的な報告書『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争(Extending Russia -Competing from Advantageous Ground)』の翻訳・検証シリーズ開始!(その3の前編)「第3章経済的手段」の「手段2 天然ガス輸出の抑制とパイプライン拡張の阻害」の全文仮訳(グラフ除く)!(日刊IWJガイド、2023.1.25号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/3s8FCUD
非会員版 https://bit.ly/3QyWRro
・はじめに~ウクライナを使って失敗した「代理戦争」の「後始末」をめぐって、米国のネオコンはすでに内部分裂!「クールなネオコン」(NATOとロシアの直接対決を回避し「出口戦略」を模索する)VS「ホットなネオコン」(ウクライナと感情的にも利権的にも一体化し、ウクライナ支援を続けて「出口」はなし)! ゼレンスキー大統領は反攻がうまくいかないと弱気発言の一方、ロシアへのドローン攻撃を激化! 岸田政権は「クールなネオコン」の方向転換に倣って、実利重視で、停戦を求める方向へと、バイデン政権に働きかけるべき! 自身も方向転換できず、バイデン政権を翻意させられないなら、総辞職して、次の内閣にバトンタッチを!(日刊IWJガイド、2023.8.2号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/3TUeZh9
非会員版 https://bit.ly/4av0ndr
・勝利なき戦争と外交――いかにウクライナでの戦闘を終わらせるか(フォーリン・アフェアーズ、2023年7月号)
【URL】https://bit.ly/49dMXlk
・勝利なき戦争と外交――戦場から交渉テーブルへの道筋(フォーリン・アフェアーズ・リポート、2023年6月20日)
【URL】https://bit.ly/3TVXXzl
・ランド研究所の概要(ランド研究所、公式サイト)
【URL】https://bit.ly/3IJ9JVP

 岩上は、ロシアへの経済制裁をはじめ、米国への従属が長期化することで、疲弊させられるのは、従属国の欧州、日本ではないか、と問いかけた。

これに対して塩原氏は、「連携を結ぶべき欧州が、現在ガタガタなので、日本はアメリカに媚を売って追従し続けるしかない」と答えた。しかし、それとともに、「米国がとんでもない国なんだっていうことを、知る人が増えないと」と語り、自分が既に『アメリカなんかぶっ飛ばせ』という書籍の原稿を執筆済みであることを明かした(※25)。

 岩上が、ウクライナの中に、海上戦等でクリミア奪還をけしかける動きがあることを指摘すると、塩原氏は「軍事にかかわることは、言いたくないが」と前置きした上で、「クリミア半島にそういうことをすると、ロシアの戦術核攻撃を誘発するのは100パーセント確実」と断言した。

 しかし、ロシアがウクライナを核攻撃しても(ロシアが西側に対して核で報復するので)第三次世界大戦にはならないが、西側がロシアに核で反撃すれば、第三次世界大戦になるため、それはできない。「ウクライナのどこかに10発打ち込もうが、20発打ち込もうが、西側は何もできないわけですよ。原理的に」と、塩原氏は分析するのである。

自国で資源を賄えない日本は、これからも米国に媚を売り続けるしかないのか? 「米国がとんでもない国だと知る人たちが、もっと増えてほしいんです」!!

岩上「で、ロシアをですね、弱体化させるというのは、ひとつはウクライナを『捨て駒』に使って、戦争に巻き込んでいくと。

 もうひとつは、それを、ロシアの侵略だと、それがすべて悪いんだと──本来はどっちもどっちもなんですけれども──ということにして、経済制裁をしたと。

 この対露経済制裁が、あたかも日本では、国際社会というのはG7のことだと。これ、岸田総理自身が言いますからね。総理が本気で「国際社会の中核を担うリーダーはG7である」と、1970年代ではなく、2024年に本気で言う。実際には逆です。G7は、国際社会で孤立してます。それこそ、4分の3のグローバル・マジョリティは、G7の言うことは聞いていないですし、対露制裁に参加していません。

 今まで西側に流れていたロシアのエネルギーを、東に、南に振り向けましょうと、プーチンが言ったら、むしろ大歓迎で、安価でロシアのエネルギーが入るわけですから、対露制裁に参加しなかった国々からすれば、大変結構なことじゃないかということになった。

 しかも、ドルを用いないと貿易決済できない、Swiftからロシアを外すという厳しい措置をとって、これ、世界中の国々をビビらせたわけですよね。

 で、それに対してロシアは、ロシア産のエネルギーの支払いはルーブルにしてくださいと切り返し、非ドル化というか、脱ドル化といいますかね。ドルに頼らない、Swiftを通さない、お互いの通貨、両建てで貿易していきましょう、という。そういう流れを作り出してしまった。

 Swiftから外されても怖くない、ドルを使わなくても貿易ができるという、手本をロシアが示し、成功してしまったもので、オイルマネー全部、ドルで取引してきたわけですけれども、『それ、ドルで取引しなくてもいいんじゃない?』という方向に、なりつつある(米国の覇権を支える基軸通貨であるドルが、基軸通貨でなくなりつつある)、サウジアラビアも傾いていっている。サウジアラビアだけではなく、イランも、他のベネズエラも、ドルを使わないエネルギー貿易決済の方向に傾いているし、ロシア自体もものすごく大きな産油国ですから。

 資源は、グローバルサウス、言葉を変えれば、グローバル・マジョリティーの側にあって、資源を必要とするのは、欧・米・日の(うち)、アメリカはなんとか自国資源でまかなえるけど、日本と欧州は資源なしでは何にも立ち行かないわけですよね(第1次、第2次大戦時には、植民地主義的列強は、エネルギー資源の出る植民地を抱えていたが、今、欧州と日本にはそれはない)。

 それを考えると、アメリカへの従属を続けていく状態の中で、それが長期化していって疲弊させられていくというのは、一番は欧州であり、日本ではないのかというふうに──日本、韓国もそうでしょうか──というふうに思うんですけど、そこはいかがですか。

 その見通しといいますかね、我が国に与える影響ということも含めて」

塩原氏「日本一国では、何もできないのでね。本当であれば、ヨーロッパと連携を結ばなければ、アメリカに対抗し得ないわけですよ。

 でも、今現在だと、ヨーロッパがガタガタなので、日本はどうかというと、そうなると、アメリカに媚を売って追従し続けるということしかできないですね」

岩上「東アジアでウクライナ・モデルをもう一回やろうという話になったら、米中戦争の『代理戦争』を、台湾と日本(ウクライナ同様の捨て駒にして)を使ってやるという話になっていくわけですよ」

塩原氏「なるかどうかは知りませんが、何て言うのかな、もう少し、アメリカがとんでもない国なんだっていうことを、知る人が増えないとですね。

 つまり、はっきり言って、『アラブの春(※26)』って勝手に言っているような出来事からして、ずっとですね、アメリカは介入し続けて、戦争をそこら中で起こして、数百万人もの人を死傷させているにもかかわらず、何の反省もしないし、責任も果たしていないと。こういう傍若無人なアメリカを、非難することさえできないっていうことが、ずっと続いていて。

 実は私は、宣伝があったら言っておくと、どこの出版社が出してくれるのか知らないけれども、『アメリカなんかぶっ飛ばせ』っていう原稿、今もう、できちゃったんですよ」

▲「アラブの春」の発端となった、チュニジアの「ジャスミン革命」での反政府デモ(2011年1月23日)。(Wikimedia Commons、M.Rais)https://bit.ly/3TVuuFr

岩上「アメリカなんかぶっ飛ばせ(笑)。そんなタイトルなんですか」

塩原氏「そうです。つまり、要するに、今年2024年はアメリカの話題でいろいろ沸騰するでしょうから、アメリカがこんな酷い国なんだっていうことを、きちんと日本の人にもわかってほしいんです」

岩上「本当ですよね」

塩原氏「そういうことについて書ける人が、誰もいない。昔は、反米と言えば、みんな反米だったんだ、ぐらいなムードがあったのに、今、反米などということを言う人が、そもそもいないんです」

岩上「はいはい、わかります」

塩原氏「だから私は、反米を叫びたいわけです」

岩上「あえて叫ぶ。それは読みたいですね。それは何か、格好いい題名に変えるんですか。それとも…、いや、先生のご著書はやっぱりアカデミックなタイトルが付いていたりするんですけど、そうじゃなくて本当に、わかりやすく、米国をぶっとばせ」

塩原氏「いや、中身はもうできているんですけれど、その内容は、きわめて学術的なものが多いので、出版社が決まってから、直せって言われると思いますけど。要するに、それひとつだけじゃないんですよ。

 つまり、『アメリカなんかぶっ飛ばせ』の次に、『民主主義なんかぶっ飛ばせ』っていうのを書こうと思っていて」

岩上「その民主主義というのは、どこからどこまでを含むのかっていう」

塩原氏「つまり、アメリカの言ってる民主主義っていうのは、そのエスタブリッシュメントの利益になるような事について、エスタブリッシュメントが、マスメディアを使って、無知な連中を操作している。

 これが『民主主義だ』って言っていて。アメリカの民主主義にとって、非常に必要不可欠なのは、無知蒙昧なわけですよ。こいつらが増えれば増えるほど、エスタブリッシュメント、およびマスメディアによる情報操作がしやすくなって、こんなにいいことないと。選挙に行ってくれなきゃ、もっといい、というようなことが、彼らの言う民主主義なわけですね。

 しかし、この民主主義は民主主義じゃないわけですよ。だから、こんな民主主義なら要らないっていう意味で、民主主義なんかぶっ飛ばせ、と私は言いたいので。

 私が民主主義って考えるのは、もっとヨーロッパ的、つまり、要するにルソーが言った公民みたいなもの(※27)」

▲ジャン=ジャック・ルソー(Wikimedia Commons、Maurice Quentin de La Tour)https://bit.ly/49fH2Mj

塩原氏「つまり、ひとりの人間はもちろん、個人として個人の利益のために生きていきたいのかもしれないけれど、政治の時には、少なくとも全体の人たちにとって、何をしたらいいのかを考えて、公民として投票に臨むというのが、そのルソーの考える、まさに公民を前提とする民主主義なわけですよ。

 つまり、全体の奉仕者という立場から、選挙に臨む。今みたいに、日本でもそうですけど、地方代表として、何かこう選んで、地方に利益を持って帰ればそれでいいんだろう、みたいな。それは、まったくアメリカ的な民主主義であって、利己的な、どうしようもない民主主義なんですね。そんなものはいらないと。

 そうではなくて、少なくとも選挙の時には、一国民なら一国民として、できれば地球市民としてですね、一体誰に投票したら一番いいのかってことを考えて投票する。

 できれば、そのために誰を選ぶかっていうところから、きちんと、そういう視点から、それぞれの候補者の主義主張を報道し、考える。

 そういうことをすることによって、初めて、あり得べき民主主義というのが機能するわけで、今の民主主義って、アメリカ流の民主主義なんて、そんなものはまったく要らないですね。意味がない」

岩上「その場合、当然、エスタブリッシュメントはあって、その民主的な形だけの偽装民主主義みたいなものがあり、でも、ここにメディアというもの、資本があって。メディアはまた、資本のスポンサー次第で動く。ここをどうにかしない限り、どうにもならないですよね。その場合」

塩原氏「だからまあ、トランプがどうするかが、非常に注目されているんですけど。

 要するに、トランプがその、エスタブリッシュメント攻撃をして、アメリカ・エスタブリッシュメントそのものをやっつけるって言っているので、彼が、もし大統領になって、内部からアメリカの今の体制を変える。彼は独裁者になろうとしているようですけれども、それをどう変えるかということを、よく見ておく必要があって。

 少なくとも、私が彼のことを評価するのは、今、私が申し上げたような、『エスタブリッシュメントが好きなことをやって、マスメディアを使って馬鹿な大衆をごまかしている』ということについて、こういう…」

岩上「偽善的な民主主義ね」

塩原氏「それは良くないっていうことについては、トランプも、よく気がついているわけですね。だから彼は、そのエスタブリッシュメントの意見を代弁する『ワシントン・ポスト』や『ニューヨーク・タイムズ』が大嫌いなわけですよ。

 だから、それを彼がどう変えるのかということを、よく観察することによって、アメリカの民主主義がどうなるのかをよく見つつ、少なくとも、民主主義はいいもんだって教え込むのは良くないことだと。だから、民主主義なんてぶっ飛ばせと」

岩上「ぶっ飛ばせですか。『ロールオーバー・ベートーヴェン』という曲(※28)がありますけれども、『ロールオーバー・デモクラシー』とか。それから、『アメリカなんかぶっ飛ばせ』ですね、『ロールオーバー USA』みたいな、そういう英訳されて出たりなんかしたら、びっくりされるでしょうね。でも、すごく読んでみたいと思いますし、お聞きしたいと思います」


※25)『アメリカなんかぶっ飛ばせ』という書籍の原稿を執筆済みであることを明かした:
 塩原氏が執筆された原稿『アメリカなんかぶっ飛ばせ』は、インタビュー時点で書籍の出版元等が未確定で、2024年3月時点ではまだ出版されていない模様だが、出版され次第、IWJでご紹介する予定である。

※26)アラブの春:
 アラブの春とは、2010年から2012年にかけてアラブ世界において発生した、前例にない大規模反政府デモを主とした騒乱の総称。
 2010年12月18日に始まったチュニジアの「ジャスミン革命」から、アラブ世界に波及した。また、現政権に対する抗議・デモ活動はその他の地域にも広がりを見せ、アラブの春の事象の一部に含む場合がある。各国におけるデモは2013年に入っても続いた。
 しかし、ほとんどの国で混乱や内戦が泥沼に陥り、強権的な軍政権に戻ったり、ISILのような過激派組織が台頭したりするなど、いわゆる「アラブの冬」として挫折を見せた。
 一連の暴動では情報共有のため、Facebookなどを通じたインターネットによる情報交換が力を発揮したほか、YouTubeやTwitter、WikiLeaksといったネットメディアも重要な役割を果たしたという意見がある一方、GoogleやFacebookなどのネットメディアがアメリカ政府の戦略に加担し、アラブの春を裏側で支援していたとの意見もある。
 なお、“Arab Spring”という言葉自体は、2005年前後から一部で使用されていた。
 岩上安身が2013年6月21日に行ったインタビュー(参照リスト掲載)で、中東情勢の専門家である日本女子大学教授の臼杵陽氏は、「アラブの春」に関して、エジプトを例に挙げ、「米国の介入を避けるためにイスラム過激派の母体であるムスリム同胞団が、党派性を出さず、背後で様子をうかがいながら親米従属的なムバラク政権を打倒することに成功した」と解説した。
 その際、革命の波が周辺国に拡散していった理由として、「若者のSNSを利用したデモがきっかけであった」としながらも、「こうしたムスリム同胞団の賢い動き方が功を奏した」と語った。
 IWJが動画記事(参照リスト掲載)でご紹介している、2013年9月28日の、JAPAC(日本・パレスチナプロジェクトセンター)主催の講演会「パレスチナ第2次インティファーダ連帯集会」の中で、板垣雄三氏(中東・イスラム研究者、東大名誉教授)は、「アラブの春」という欧米のメディアが作った言葉について、次のように語っている。
 「地図上でエジプト、リビア、チュニジアを一緒に塗りつぶしてしまうのは、アラブ世界で起こってきた変化というものを誤解させる」。加えて、「シリアで起こっている事に関しては、アラブで起こっている革命を潰す為のレジュームチェンジの動きである」と指摘している。
 また、同講演会で、佐原徹哉氏(バルカン近現代史、明大教授)は、前提として「『グローバル化の中における国民国家の危機』という現象は、『グローバルな資本主義システム自体の危機』でもあり、国民国家が出してきた『緩衝剤』としての機能が失われた時に出てくるのであろう」と述べた。
 そのうえで、2013年5月のトルコの民衆運動について「あたかも、エジプトやチュニジアで起こったような『民主主義を求める大衆の運動』と報道されたが、トルコが決定的に違うのはずっと民主主義だった」と指摘。「トルコのエルドアン首相は『挑発的に通りに出て抗議するのではなく、投票箱で勝負しよう』と言っていた」と語った。
参照:
・日本・トルコの「復古主義の仮面を被った新自由主義」体制を批判 ~ 岩上安身によるインタビュー 第309回 ゲスト 日本女子大学教授・臼杵陽氏 2013.6.21(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3TFaHsP
・中東の民衆運動は「グローバルな資本主義システム自体の危機」 専門家らが指摘 2013.9.28(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3TU6G54
・若者の利害を代表する政党がない ~激動するエジプト情勢をどうみるか~『アラブの春』後の情勢に迫る 2013.8.26(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3TTDcUT
・アラブの春(Wikipedia)
【URL】https://bit.ly/4cMBCf0
・ジャスミン革命(Wikipedia)
【URL】https://bit.ly/3xn3Kow

※27)ルソーが言った公民みたいなもの:
 ジャン=ジャック・ルソー(1712-1778)は、フランス語圏ジュネーヴ共和国に生まれ、主にフランスで活躍した哲学者、政治哲学者、作曲家。
 『学問芸術論』で人為的文明社会を批判して自然にかえれと主張、『エミール』では知性偏重の教育を批判した。
 また、『社会契約論』では人民主権論を展開し、フランス革命に大きな影響を与えた。著書はほかに『人間不平等起源論』『告白録』など。
 ルソーの教育思想研究の中では、「公民(citoyen)の形成か人間(homme)の形成か」という二者択一が、しばしば掲げられてきたとされる。
 「citoyen」は、「公民」のほか、「市民」「国民」「同士」「野郎」「やつ」等とも訳され、フランス革命期には、monsieur、madame、mademoiselle の代わりの呼称として使用された。
 『社会契約論』によれば、社会契約によってすべての構成員が自由で平等な単一の国民となって、国家の一員として政治を動かしていく。だが、めいめいが自分の私利私欲を追求すれば、政治は機能せず国家も崩壊してしまう。そこで、ルソーは各構成員は共通の利益を志向する「一般意志」のもとに統合されるべきだと主張した。
 公共の正義を欲する一般意志に基づいて自ら法律を作成して自らそれに服従する、人間の政治的自律に基づいた法治体制の樹立の必要性を呼びかけた。
 このように、主権者と市民との同一性に基づく人民主権論を展開し、近代民主主義の古典として、以後の政治思想に大きな影響を及ぼした。
 そして政府は人民の「公僕」であるべきだと論じつつ、国民的な集会による直接民主制の可能性も論じた。
 ただし、人民の意志を建前に圧政がしかれる可能性があり、『社会契約論』には過酷な政治原理が提唱されていると指摘する論者もいる。そのため、この著書には、今日でも賛否両論が存在している。
参照:
・citoyen(コトバンク、プログレッシブ 仏和辞典 第2版の解説)
【URL】https://bit.ly/4aRdAOf
・ジャン=ジャック・ルソー(Wikipedia)
【URL】https://bit.ly/4ctmgM6
・ルソーにおける「祖国愛」の対外的排他性─ルソーの公民形成論再考─(坂倉裕治、慶應義塾大学大学院社会学研究科紀要、1993年、慶応義塾大学学術情報リポジトリ)
【URL】https://bit.ly/3IWks0v

※28)『ロールオーバー・ベートーヴェン』という曲:
 「ロール・オーバー・ベートーヴェン(Roll Over Beethoven)」はチャック・ベリーの楽曲。1956年に米シカゴのチェス・レコードからシングル盤としてリリースされた。ビルボード・トップ100で最高29位、R&Bチャートでは最高2位を記録。日本語訳は「ベートーヴェンをぶっ飛ばせ」。
 少年時代、チャックは自宅のピアノでブギ・ウギを演奏したかったのだが、いつも姉のルーシーのクラシックのピアノ練習が優先されていた。チャックの自伝によると、姉にピアノを独占されていた悔しさを歌ったもので、「ベートーヴェンではなく、ルーシーに文句を言いたかった」という。
 この曲は多くのミュージシャンやバンドにカバーされており、特にザ・ビートルズやエレクトリック・ライト・オーケストラ(ELO)によるカバーが有名。日本では1964年7月、内田裕也のシングル『ラスベガス万才』のB面に収録された。
参照:
・ロックンロールの大定番『ロール・オーヴァー・ベートーヴェン』の意味を歌詞から紐解く!(リットーミュージック、2017年8月25日)
【URL】https://bit.ly/3xhvgnD
・ロール・オーバー・ベートーヴェン(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/3vnQMqf

ロシアがウクライナを核攻撃しても、西側諸国は手を出せないのが現実!「やり返したら第三次世界大戦になる。欧米ができるのはロシア批判だけ」

岩上「ひとつだけ、一点だけ、細かいことなんですけれども、ちょっとお尋ねしておきたいことがあるんですよ。ちょっと、よろしいですかね。

 先ほど、第2幕はどうなっていくかという時に、ヨーロッパはこう関与していくっていうことは、アメリカの代わりに、例えばドイツがリトアニアに派兵したりとか、それからフランスの外人部隊が中に入っていって、それをもう見つけてロシアが叩いて。

 今後、こういうことをしたら、ヨーロッパの奴らも、今まで猶予していたけど、今後、猶予しないよ、ということを(ロシアが)言っていると。

 ただ、そういう中で、実はアメリカの退役将軍がですね、2人くらい『ヒル』とか、そういうところで発言しているんですけれども。陸上戦ではウクライナは失敗したと。しかし、海上戦で、ロシアの黒海艦隊の20パーセントぐらいの能力は奪ったと。大成功だと。

 それは、ドイツが供与すると言われていた長射程のミサイルがあるわけですけれども、その長射程のミサイルを出すって言っていたのを、政権は出したいんですが、議会が否決したんですね。

 だから議会が、もうこれ以上、ウクライナ支援ダメって言ったんですけど。だから非常に今、政治的にデリケートな問題になったんですけど。

 その米国の退役将軍が、アメリカの利益を代表しますから、そのドイツの長射程ミサイル持ってきて使えば、それとドローンの組み合わせをやれば、ロシアの黒海艦隊をボロボロにできると。

 で、クリミアを攻撃せよと。クリミア大橋、やったじゃないかと。まあ、初期、クリミア大橋のテロのことは、ウクライナはとぼけてた(※29)わけですけど、そのことは、もう明らかになって(今では自国がやったことを開き直って自慢して)、『あのクリミア大橋の攻撃、よかった』と。『ケルチ大橋を吹っ飛ばせ』と。それで、『クリミアを直接攻撃しろ』と」

▲クリミア大橋の爆発の模様を伝えるRT(ロシアトゥデイ)チャンネルニュースのテレグラム。(2022年10月8日)https://bit.ly/3TGigzp

岩上「こういうですね、指南というものを公開しているんですよ。これは「代理戦争」の延長で、ウクライナにできないことを、もう、ヨーロッパにやらせる、もしくは、そこまでの長射程の武器とか、やり方全部教えて、ウクライナ海軍にやらせる。残存海軍力があればですけどね。(ロシアが)オデッサ、もし取っちゃったら、もうそれもなくなるんですけど。

 そういう話になったら、これ、米国の大統領選までの10ヶ月、何となく膠着戦が続いていくんだとしたらば、この大きな展開はないことになると思うんです。

 陸上では、もう、ロシアに押されちゃって。先ほど、先生おっしゃったとおり、プーチンの腹ひとつですからね。

 だけど、海上攻撃は、プーチンの腹ひとつではないんだと。やりようによってはクリミアを奪還できるんだと。クリミアはどんなことがあっても取り戻せ、みたいなこと言っているんですね。

 クリミア半島を手に入れてきたロシアの歴史(※30)って、血みどろの歴史があるわけじゃないですか。それらを、何て言うんでしょうね、アメリカ的に、歴史を全部忘れたまんま、言ってるんだろうと思うんです。

 ロシア人が、『クリミアをそんなやり方で、力ずくで奪うと言うんだったら、俺たちは、言っとくけど本気で戦争するぞ』っていう風に、彼らに火をつける可能性があると思うんですね。それは、どういうことになると思いますか。この提言というものは、現実化していくと…?」

塩原氏「軍事にかかわるようなことは、言いたくないっていうのがひとつあるんですね。要するに、興味本位にとられるってことが多いので。私は別に、軍事、小泉何某みたいな軍事オタクではありませんから、別によく知らないですけれど、はっきり言えば、クリミア半島にそういうことをすると、その戦術核攻撃を誘発するのは100パーセント確実だと思いますよ」

岩上「やっぱりそうですね」

塩原氏「死んだ、お亡くなりになったキッシンジャーが、初期の頃、2年ぐらい前に言っていましたけれども(※31)、要するに、ロシアがウクライナに核攻撃したところで、西側、何もできないわけですよ、もうはっきり言って、とキッシンジャーもおっしゃっていましたけど」

▲ヘンリー・キッシンジャー氏。(Wikimedia Commons、U.S. Department of State from United States)https://bit.ly/3TC0WLY

岩上「報復したら、今度はそこに打ちこまれる」

塩原氏「そうしたら、もう、第三次世界大戦になるので。ロシアが戦術核で、どこでもいいですけど、キーウでも一発かましたれ、って思った日には」

岩上「あるいは、リビウとかね」

塩原氏「そういうところを攻撃したら、西側はもちろん、批判や非難はできるけれども、反攻はできないわけです。核兵器で、少なくとも反攻することはできないので。だから、撃つ可能性は大いにあるわけですよ。

 という意味で、そこまで至るような攻撃って一体何かって考えると、それはもう、クリミア半島が奪われるなどということになったら、100パーセントと言っていいぐらい、戦術核を使う可能性が一段と高まると。これは確実ですね」

岩上「それは、ヨーロッパに対してぶち込むという可能性があるということですね」

塩原氏「だからヨーロッパに、つまりNATO諸国にぶち込んだら、本当に第三次世界大戦になっちゃうかもしれないけど、別に、リビウあたりに打ち込んだところで、第三次世界大戦にはなり得ないわけですから。

 別に、クリミアがやばくなって、本当に奪還されるような事態になったら、それはプーチンは戦術核をどこかに打ち込んで、『ふざけんなよ』と。『1発、2発じゃ済まないぜ』って。ウクライナのどこかに10発打ち込もうが、20発打ち込もうが、西側は何もできないわけですよ。原理的にね。

 やってもいいですよ。やったら、第三次世界大戦ですから。だから、そういう事態であるっていうことを、その米国の退役将校、知らなきゃいけないんですよ。

 だから、クリミア半島奪還だなどということ自体が間違ってて、要するに、クリミアを取ったのは、ヌーランド(当時の米国務次官補)っていう馬鹿な女が始めたクーデーターによって、住民投票の結果として取られちゃったわけですから。それを取り返すためにガンガン攻撃したら、そりゃ、プーチンだって怒るでしょう」

岩上「怒りますよね」

塩原氏「プーチンが取りたくて取ったんじゃなくて、ヌーランドが攻め始めて、クーデーターを起こして、ヤヌコビッチを追い出して」

岩上「虐殺もして。そうですよね。ロシア人をさんざん虐殺して。ドンバスで1万7000人ぐらい死傷しているわけですからね。

 それで(クリミア併合に)いったものを、まったくミリオタ的発想で、クリミアを取ろうぜって、これは馬鹿もいいところだけど、そんなことをやりかねない。もし、本当にやったらどうするんだろうというふうに思った時に、ちょっとお答え、欲しかったんですよ」

塩原氏「だから、何ていうのかな、私がはっきり言っておきたいのはね、本当に何も知らないやつが、偉そうなことを言うわけですよ。

 私は、少なくとも2014年から、ずっとウクライナ問題をはじめ、いろんなことを本にしてきましたけれども、私から見ると、何も知らないやつが、軍事オタクが、テレビに出て、くだらないことを話してね。それを日本国民が見ていて。何にも知らない馬鹿が、軍事オタクが、バカなことを言ってて、そういうことを許している。その結果、どんどんどんどん戦争に近づいている。それを、誰も、何も文句を言わないのかと」

岩上「うちは文句言ってますよ。先生のような、やっぱり、本を読むというのは、一定のインテリジェンス以上を持てる人でないと、なかなかできなかったり、時間もかかったりするので、わかりやすく先生にお話しいただきたいなと思うので、大変ご面倒だと思うんですけども、また、煩わしいと思いますが、時々、私どものところに出ていただいてですね、この『知られざる地政学』も読ませていただいて、ぜひとも解説もしていただきたいと思いますので、どうぞ、これからもお付き合いをよろしくお願い申し上げます。

 ということで、本日はですね、塩原先生にお越しいただいて、お話をうかがいました。

 まだまだ、これは語らなければいけない。もっと包括的に理解しないといけない。まさに、この『知られざる地政学』、(カメラに指示)これクローズアップして。新刊として、これ、出ているんですか?

 (塩原氏、うなずく)出ているということなので、ぜひ、お求めになってください。ということで、先生、本当に今日はありがとうございました」

塩原氏「ありがとうございました」


※29)初期、クリミア大橋のテロのことは、ウクライナはとぼけてた:
 2022年10月8日早朝、クリミア大橋の道路橋部分で爆発が発生、橋の一部が崩壊して男女3人が死亡した事件。
 クリミア大橋(クリミアおおはし)は、ロシアのタマン半島とクリミア半島の間のケルチ海峡にかかる全長18.1キロ(道路橋は16.9キロ)の鉄道道路併用橋。ケルチ海峡大橋、クリミア橋、ケルチ橋とも呼ばれる。
 2014年のロシアによるクリミア併合で、ロシア本土とクリミア半島を陸路でつなぐことが戦略的に重要となり、ケルチ海峡フェリーの代替として、2015年5月に橋の建設工事が開始された。道路部分は2018年5月15日、鉄道部分は2019年12月23日に開通した。建造費は37億ドル。ヨーロッパで最長の橋である。
 2022年2月に始まったロシアとウクライナの紛争では、クリミアはウクライナ南部への侵攻拠点となった。ロシア軍への補給路であるクリミア大橋は、ウクライナ軍の攻撃目標になる可能性が指摘されていた。
 爆発の直後、ロシアの国営メディアは「トラックが爆発した」とだけ報じたが、翌10月9日、プーチン大統領は「ウクライナの情報機関によるテロ行為」との認識を示した。
 ウクライナ国防省情報総局は10月10日、爆発の数日前からロシアで爆撃機や艦艇の準備が進んでいたとし、この事件はロシアによる「自作自演」だと決めつけた。
 同日、ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領府顧問も動画サイトの番組で、橋の爆破は「ロシア情報機関の仕業だ」と指摘し、戦いの口実をでっち上げるための「偽旗作戦」との認識を示した。
 ただし、ポドリャク氏は、爆発直後の10月8日、X(旧ツイッター)に橋の一部が海に落ちた写真と「クリミア、橋、始まり。違法なものはすべて破壊されなくてはならない」などのコメントを添えて「匂わせ投稿」をしていた。
 他方、ロシア連邦保安庁は、クリミア大橋爆破のテロ首謀者を発表した。
 10月12日付『スプートニク』は、ロシア連邦保安庁が、クリミア橋で発生したテロの首謀者は、ウクライナ国防省情報総局、同総局のキリル・ブダノフ局長、職員、エージェントだと発表したと報じた。
 また、10月10日付『グレイゾーン』の記事は、クリミアのケルチ橋を爆破するという英国情報機関の極秘計画が存在したことを、内部文書と電子メールから明らかにした。
 すなわち、大橋の破壊は、ウクライナ単独ではなく、英国軍が計画し、ウクライナにやらせた、ということになる。
 そして翌2023年5月になって、ウクライナ保安庁(SBU)のヴァシーリー・マリューク長官は、国内ジャーナリストによる取材で、「敵から遮断しなければならない物流ルート」であったため「適切な措置が取られた」と述べ、攻撃を公式に認めた。
 また、ウクライナのハンナ・マリャル国防次官も同年7月8日、「ロシアの補給を混乱させるため、クリミアの橋に対して最初の攻撃を行った」とテレグラムへ投稿。ウクライナの攻撃であったことを、より明確に認めている。
 なお、日刊IWJガイドの2024年3月5日号では、ドイツ空軍の幹部の将校4人が、クリミア大橋爆破について、2024年2月19日に『Webex』という、オンライン通話、メッセージング、会議のプラットフォームを使って話しあっていたことが発覚したことを報じた。IWJでは、謀議していた4人のドイツ空軍将軍・将校らの会話の重要ヶ所を仮訳して掲載している。
 このドイツ空軍の秘密計画は、2022年の英国とウクライナによる共同の自爆テロ攻撃より、はるかに大規模なものである。
 ロシアがクリミア半島に建設したクリミア大橋や弾薬庫を、理論上、タウルス巡航ミサイルで破壊できるかどうかという問題について、ドイツ空軍監察官インゴ・ゲルハルツ中将と同軍の3人の将校が話しあっていたのである。これは明らかに、軍事的攻撃であり、戦争行為である。
 ドイツ軍のタウルス巡航ミサイルは、すでにウクライナに供与された英国の「ストームシャドウ」に相当する、射程距離約500キロの空中発射型長距離巡航ミサイルで、2023年5月27日から、ウクライナがドイツに供与を求めてきた兵器である。つまり、ウクライナに供与したミサイルを、どのように軍事的に有効な効果を上げることができるか、ウクライナ軍幹部に代わって作戦を練っていたということだ。これはロシアと戦争中のウクライナへ、ドイツ軍幹部が作戦段階から組織的に加担していることになる。
参照:
・はじめに~恐れていた報復のエスカレーション! ロシアがウクライナによるクリミア橋爆破テロの報復へ! 月曜の朝8時、ロシア軍が首都キーウに続き、ウクライナ全土を砲撃、死傷者多数! ウクライナは「意図的に民間人・民間インフラを狙った戦争犯罪」と非難! ロシアは「エネルギー、軍事指揮、通信施設に対する高精度の大規模攻撃」と主張!(日刊IWJガイド、2022.10.12号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/3xhoTkh
非会員版 https://bit.ly/49hXBqU
・はじめに~クリミア橋(ケルチ海峡大橋)爆破のコンセプトは4月の段階で英国情報部が立案していた! 他方、ロシア連邦保安庁がテロ首謀者を発表! ロシア軍が大橋を破壊したという、ウクライナ政府の偽情報のみをたれ流してきた機能不全の日本のマスコミは、訂正を出さないのか!?(日刊IWJガイド、2022.10.13号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/3IZ5JSG
非会員版 https://bit.ly/3PG4Gef
・はじめに~ドイツがロシアに対して、隠されていた牙を剥いた日! フランスに続いてドイツまでが!! ドイツ軍幹部の将軍・将校らが、タウルス巡航ミサイルを使用したクリミア大橋攻撃を計画するドイツ軍幹部の謀略会議音声がリークされる!! ドイツ軍幹部は巡航ミサイル、タウルスの供与と作戦立案、ウクライナ軍の訓練までセットでクリミア大橋攻撃を考えていた、その会話がリーク! ロシアに対するむき出しの戦意は、米国だけの問題ではなくなった! IWJは、謀議していた4人のドイツ空軍将軍・将校らの会話の重要ヶ所を仮訳しました!(日刊IWJガイド、2024.3.5号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/3TCKZVS
非会員版 https://bit.ly/3TZd8qn
・ウクライナ、クリミア半島に架かる橋への攻撃認める 7月に爆発(BBC NEWS JAPAN、2023年8月4日)
【URL】https://bit.ly/3PHMGjH
・「爆破前からロシア軍準備」 ウクライナで自作自演説くすぶる(時事ドットコムニュース、2022年10月11日)
【URL】https://bit.ly/3PC1n7x
・クリミアとロシアを結ぶ唯一の橋で火災 3人死亡とロシア当局(BBC NEWS JAPAN、2022年10月8日)
【URL】https://bit.ly/3IVton9
・クリミア大橋爆発(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/3IVyMGP

※30)クリミア半島を手に入れてきたロシアの歴史:
 クリミア半島は南ロシア平原から黒海に突き出した三角形の半島。紀元前からさまざまな民族が国家を形成してきた。
 紀元前8世紀には、騎馬遊牧民のスキタイが活動、次にギリシア系のボスポロス王国が成立した。ローマ帝国の支配も及んだが、ゲルマン民族移動期にゴート族、さらにフン人の移動の後、6~10世紀に遊牧国家のハザール=カガン国が一帯を支配した。13世紀半ば、モンゴル人の大遠征によってキプチャク=ハン国の領土となった。
 キプチャク=ハン国が弱体化した14世紀頃、クリミア=タタール人がクリム=ハン国を成立させた。キプチャク=ハン国もクリム=ハン国もイスラム化していたので、同じイスラム教国のオスマン帝国の保護下に入った。
 一方、タタールのくびき(13世紀前半から16世紀までロシアの公国はモンゴル支配下で重い貢納を課せられていた)から脱したロシア(モスクワ公国)は、次第に支配領域を広げて、アジア系民族の支配下にあった黒海北岸のウクライナも解放、さらに黒海方面への進出を目指す。17世紀にピョートル1世が南下政策を進め、1696年には黒海の北につながるアゾフを占領した。
 1768年、ロシアのエカチェリーナ2世がクリミア半島を狙ってオスマン帝国に宣戦し、勝利する(第1次ロシア=トルコ戦争)。1783年にはクリム=ハン国を併合して強制的にロシア化を進めたため、オスマン帝国はクリミア半島と黒海北岸からのロシア軍撤退を要求。ロシアはこれを拒否、1787年に戦争が再開された(第2次ロシア=トルコ戦争)。
 この時は、イギリスとスウェーデンがオスマン帝国を、オーストリアがロシアを支持し、「東方問題」といわれる国際問題へと発展した。
 イギリスとスウェーデンが手を引いたため、オスマン帝国は、1792年に講和に応じた。
 19世紀に入ると、オスマン帝国の弱体化が進む。1853年、ロシアのニコライ1世はイスタンブールから地中海方面への突破を狙い、オスマン帝国に宣戦し、クリミア戦争が勃発した。イギリス、フランス、サルデーニャ王国がオスマン帝国を支援。軍備の近代化が遅れていたロシアは敗北し、1856年にパリ条約が締結された。
 1919年、ロシア革命の影響でウクライナにも社会主義政権が成立し、1922年にロシア、ベラルーシ、ザカフカースと共にソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)を構成する。1921年にクリミア自治共和国となったが、事実上はソ連の統治が続いた。
 第二次世界大戦中の2年半、クリミア半島はドイツ軍に占領された。その後、クリミアを再占領したソ連のスターリンは、クリミア・タタール人に対ドイツ協力の嫌疑をかけ、1944年5月、約20万人を中央アジアやウラル、シベリアに強制移住させた。彼らは強制労働を強いられ、その年のうちに約7万人から9万人が死亡。今日では、この強制移住はジェノサイドとみなされている。
 第二次世界大戦後の1954年、クリミア半島はソ連を構成するウクライナ共和国に移管された。
 1991年12月、ソ連の解体に伴って、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの3国首脳が協議、国境の再確認が行われた。ロシアはクリミア半島の領有を主張したが、ウクライナは1954年の移管を根拠に現状維持を主張、意見が対立した。ロシアは、ウクライナの核保有を認めないかわりにクリミア半島領有を認めた。
 2013年末から2014年2月、ウクライナでユーロマイダン・クーデターが起こり、親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領が追放される。このクーデターには、水面下で米オバマ政権が深く関与していたことが判明している。
 ロシア系住民の多いクリミアでは、親欧米派のペトロ・ポロシェンコ政権誕生への抗議運動が起こり、新政権と衝突した。
 2014年3月11日、クリミア自治共和国の最高議会とセヴァストーポリ特別市は、「クリミア・セヴァストーポリ独立宣言」を採択し、ウクライナから「離脱」した。
 3月16日、クリミア自治共和国およびセヴァストーポリ特別市で、ロシアへの編入を問う住民投票が行われ、96.77%がロシアへの編入への賛成を示した。投票率は80%を超えた。
 3月18日、ロシア、クリミア自治共和国、セヴァストーポリ特別市の3者が編入条約に調印した。
 ウクライナ政府は、住民投票を憲法違反であるとして認めず、アレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行は投票に先だって、投票結果は「ロシアの捏造だ」とさえ述べており、「編入」(ウクライナ側としては「併合」)を認めないが、事実上、クリミア半島はロシアの統治下となった。
 クリミア編入1年後の2015年3月10日から14日にかけて、現地を訪れた鳩山由紀夫元総理は、3月23日の岩上安身によるインタビューに、訪問の目的が、北方領土問題解決に向けた日露関係調整にあったことを明かした。
 その際、鳩山氏は、「露土戦争以降、クリミアはロシア固有の領土だ」「クリミアのロシア人からすれば、ずっとロシアに戻りたいなという気持があった」と、編入への認識を示した。
 その背景を鳩山氏は、「領土問題については、歴史的な経緯というものが重要です。クリミアには、元々ロシア人が住んでいて、キエフ政権によって彼らの人権が蹂躙されようとしていました。そこで住民投票ということになりました。私は、彼らの行為は尊敬すべきものだと思います」と説明。
 その上で、「クリミアでは大変、民主主義が尊重されています。住民投票の結果誕生した政権は、ロシア語だけでなく、クリミア・タタール語も公用語としました。キエフとやっていることが真逆です」と評価している。
参照:
・【IWJブログ】ウクライナ政変第2幕 クリミアの独立・ロシア編入までのドキュメント ~コソボ独立を承認した米国のダブルスタンダード 2014.3.27(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3Tg7Wz1
・【IWJブログ】検証 クリミア独立・ロシア編入住民投票~選挙結果は「捏造」だったのか?ウクライナ憲法違反か? 2014.3.28
(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3TdHxlk
・米国に”依存し過ぎている”日本の現実~ウクライナ危機、辺野古新基地建設、北方領土、TPP…クリミアを電撃訪問した鳩山由紀夫元総理に岩上安身が聞く~岩上安身によるインタビュー 第519回 ゲスト 鳩山由紀夫氏 2015.3.23(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3pnqE8z
・クリミア併合に何の意味があったか知ってますか(東洋経済ONLINE、2022年4月4日)
【URL】https://bit.ly/3TVvlpD
・クリミア半島(世界史の窓)
【URL】https://bit.ly/49hIHBl
・クリミア・タタール人追放(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/49weQoV
・ロシアによるクリミアの併合(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/3xgkzSe

※31)お亡くなりになったキッシンジャーが、初期の頃、2年ぐらい前に言っていましたけれども:
米国のキッシンジャー元国務長官が、2022年5月のダボス会議で「ウクライナは領土を譲歩しても、早期の和平交渉を進めるべき」とした発言のこと。
 ヘンリー・アルフレッド・キッシンジャーは米国の国際政治学者、外交家、政治家。ニクソン政権およびフォード政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官、国務長官を務めた。
 1923年5月27日、ヴァイマル共和政時代のドイツに生まれ、ナチスのユダヤ人迫害から逃れて1938年に米国へ移住。第二次世界大戦中の1943年に米国籍を得て従軍、故郷ドイツへ渡った。
 帰国後、ハーバード大学に入学し、国際政治学の博士号を取得。情報関係を含む米政府機関のコンサルタントを務めて、1969年にニクソン政権に入る。
 ニクソン政権時代に、米中の国交正常化や、ソ連とのデタント(緊張緩和)に貢献。ベトナム戦争の終結にも深く関わり、のちにノーベル平和賞を受賞。
 1977年、フォード政権の退陣と共に国務長官を退任。その後は「現代外交の生き字引的存在」として、多くの回想録を発表し、世界各国で精力的に講演活動を行なった。
 2023年11月29日、100歳で没。
 キッシンジャーの外交政策は米国の国益と力の均衡を重視し、理想主義よりも現実主義を優先したため、しばしば論争の的となった。
 2022年5月23日、キッシンジャーは世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)にオンラインで参加し、ウクライナ情勢について「今後2ヵ月以内に和平交渉を進めるべきだ」「理想的には、分割する線を戦争前の状態に戻すべき」との見解を示した。
 これは、ウクライナはクリミアや東部ドンバス地方(親ロシア派の地域)を諦めろ、と言ったに等しいため、『ワシントン・ポスト』は「キッシンジャー氏がウクライナは戦争終結へ領土を割譲すべきだと発言」と報じ、ゼレンスキー大統領や内外のウクライナ支持者は猛反発した。
 ゼレンスキー大統領は「すべての領土を回復するまで戦う」と宣言しており、2014年にロシアに編入もしくは併合されたクリミア半島や自治区となっている東部ドンバス地方を一気に取り戻す意向だったので、キッシンジャー発言は看過できないものであった。
 その後、キッシンジャーは「領土を放棄すべきだとは言っていない。いかなる交渉においても、それとは別の立場を持つべきだと示唆しただけ」とトーンを変えた。
 しかし、プーチン大統領が核兵器使用も辞さない姿勢であることから、リアリストのキッシンジャーが、早い段階で「ウクライナが全領土を回復することは不可能」と考えていたことは想像に難くない。
参照:
・【第2弾! ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が100歳で死去!】ウクライナ紛争についてバイデン政権に批判的な立場を表明し、停戦と和平を訴えて孤立、同じ米国への亡命ユダヤ人であるジョージ・ソロスとは、ダボス会議で真向対立! しかし、ウクライナ軍の劣勢がもはや隠しきれない状況になった今、改めてキッシンジャー氏の慧眼が光る!(『キッシンジャー・アソシエイツ』11月30日ほか)(日刊IWJガイド、2023.12.1日号)
【URL】
会員版 https://bit.ly/4cyR7XI
非会員版 https://bit.ly/49kKe9w
・【IWJ号外】スコット・リッター氏によるキッシンジャー追悼文「ヘンリー・キッシンジャー 世界を救った戦争犯罪人」!「キッシンジャーがいなければ、核戦争が起こっていた可能性は非常に高い」! 2023.12.2(IWJ)
【URL】https://bit.ly/3xcs5NL
・ゼレンスキー「全ての領土回復」発言の意味(e-論壇 百花斉放、2022年6月11日)
【URL】https://bit.ly/4axBkqf
・「現代の怪物」の秘密に迫る:満100歳を迎えたキッシンジャー氏の裏の顔(新潮社Foresight、2023年5月30日)
【URL】https://bit.ly/3PDqjvy
・ヘンリー・キッシンジャー(ウィキペディア)
【URL】https://bit.ly/4aAC5iy

(了)

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