ロシア弱体化と孤立化は米国の大誤算!「米国の覇権は外部要因ではなく『自壊』によって崩壊する!」~岩上安身によるインタビュー第1130回 ゲスト 桃山学院大学法学部教授・松村昌廣氏 2023.8.20

記事公開日:2023.9.22取材地: テキスト動画独自
このエントリーをはてなブックマークに追加

(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!|特集 台湾問題で米中衝突か?!
※全編映像は会員登録すると御覧いただけます。 サポート会員の方は無期限で、一般会員の方は、23/11/22まで2ヶ月間以内に限り御覧いただけます。
ご登録はこちらから
※新春特設のために期間限定でフルオープンにします。

 岩上安身は8月20日、「米国覇権は凋落から崩壊へか? ウクライナ紛争は、米国の軍事覇権、経済覇権、政治文化覇権衰退の加速!」と題して、桃山学院大学法学部教授・松村昌廣氏にインタビューを行った。岩上安身は、以下のように切り出した。

岩上「皆さん、こんばんは。ジャーナリストの岩上安身です。本日は、IWJでは、初めてご登場いただく先生にお越しいただいております。桃山学院大大学法学部教授の松村昌廣先生です。

 先生、初めまして。よろしくお願いいたします。先生、今、お忙しくて関西の方にいらっしゃる。私も、皆さんご存じだと思いますけれども、コロナにかかっておりましてですね。いや、いまかかっているわけじゃないですよ。もう一応陰性ということが出たので、こういう場に出てきているんですけれども。

 ズームでのインタビューという形になります。タイトルとしては、『米国覇権は凋落から崩壊へか』。大変なテーマがあるんですけれども、『ウクライナ紛争』を見ていくんです。

 ウクライナ紛争を見ていて、ウクライナ紛争は『米国の軍事覇権、経済覇権、政治文化覇権衰退の加速』。それを加速させてしまうのではないか、というテーマです」

 松村教授は、桃山学院大大学法学部法律学科教授、専攻は国際政治学・国際政治経済論・国家安全保障論、そして研究テーマ日米関係と世界政策である。アメリカ州立メリーランド大学大学院の政治学博士。米国の州立オハイオ大学大学院、政治学修士。関西大学、法学士。主要な経歴は以下である。

 ブルッキングス研究所・北東アジア研究センター招聘研究員(2006年から2007年)。
 ケイトー研究所・外交政策プログラム客員研究員(2010年)。
 一般社団法人平和・安全保障研究所研究員(2011年から現在)
 米国防大学国家戦略研究所客員研究員(2013年、2016年から17年)
 国際安全保障学会理事(1999年から2017年)
 防衛省行政監視・行政効率化チーム外部有識者委員会(2010年から2013年)
 防衛省行政事業レビュー外部有識者委員会(2013年から2023年)

 近年のご著書は以下である。

 『テキスト日米関係論 : 比較・歴史・現状』(ミネルヴァ書房、2022)
 『Security Turbulence in Asia: Shaping New Strategy in Japan and Taiwan』(PublishDrive、2021)
 『Defense policy and strategic development : coordination between Japan and Taiwan』(World Scientific、2021)
 『甦る国際権力政治 : ポスト・グローバリゼーションと日本』(芦書房、2019)
 『日米同盟と朝鮮半島 : 国際政治における格闘場』(芦書房、2019)
 『衰退する米国覇権システム』(芦書房、2018)

<会員向け動画 特別公開中>

■ハイライト

■全編動画

  • 日時 2023年8月20日(日)20:30
  • 場所 Zoom + IWJ事務所(東京都港区)

 インタビューは、ウクライナの「反転攻勢」が事実上、大敗というかたちで終わっている、という指摘から始まった。

岩上「『夏静かなる膠着。実は勝負はすでについた』。一般のメディアでは、『6月、ウクライナが反転攻勢する』と言われました。そして、毎日のように『反転攻勢』について、報道量は少ないようではありますけれども、あります。

 『少し村が解放された』とか、『少し進んでいる』とか、『確実にロシアは追い込まれているんだ』とかですね。いろんなことが報じられているんです。それと、現実に、では、それを評価しているアメリカの例えば『フォーリン・アフェアーズ』みたいなところは何と言っているか、『ランド研究所』の報告書は何と言ってるのか。

 そういうものを見ていきますと、『もう勝負がついたな』と。ついたな、というのは勝ったという意味じゃなくて、負けたなと。『ウクライナは勝てない』というような、もうずばりというタイトル(の記事)が、この2カ月の間の膠着状況の中で(出てきた)。『あ、勝てないんだな』、『ロシアには勝てないな』というようなことを言い出しております。これは現実に言い出しています。

 ウクライナのバックにアメリカがあることはわかっていることなんで、アメリカが『これは無理だな』と思うというのは、大変なことだと思うんですけども、全くそういうことは日本の大メディアでは報じられていません。一般向けには報じられていません。

 このギャップが余りにも大きくてですね。一般の人たちも、実はこういう専門家はこういう見方をしている、アメリカはこういう見方をしているよと言うと、本当に驚くんですが。『嘘でしょ』というふうに言われるのが、オチなんですね。これだけ、極端にプロパガンダにまみれた情報空間、日本情報空間が見れたことは、私は40年来、ジャーナリズムをやってますけれども、初めて会うことで、本当に驚いているというか、なかなか大変なんですね。

 とにかく、『ロシアに勝てないという現実に、西側が今、出会ってます』というところです。

 もちろん、これをひっくり返すのかもしれません。今、一部言われているのが、ウクライナ軍の反転攻勢というのを『しばらくお休みにして、来年の春に順延にしようか』と。来年の春に順延されたら、じゃあ何か急に、いいこと、プラスになるのか。全然そういう見方ができないんですけど。

 さらに、ロシアは購買力平価GDPでドイツを抜いてしまって、世界5位。『ロシアは経済的にも追い詰められているんだ、対露制裁も推し進められているし、釘づけになっているんで、どんどんどんどんダメになってるんだ』というプロパガンダをいっぱいされてきたんですけれども、世界第5位です。

 (一方)ウクライナは『20万機のドローンで、テロ攻撃してやる』と言い始めた。しかも、ずっとアメリカは『ロシア領内を攻撃するな』と言ってたんですけど、それはもう(今のウクライナには)効かないみたいです。散発的にやってた、自由ロシア軍団(※IWJ注2)みたいな傀儡を使ってたんですけども、そういうことも言わなくなっちゃったんですね。

 『ドローンでテロ攻撃を、自分たちがしてやる』とはっきり言っていて、『これは一体、どう見たらいいのかな』とも思ったりしているんです」。

(※IWJ注2)自由ロシア軍団:ロシア人やベラルーシ人などで構成される反ロシアの軍事テロ組織。ロシアの解体をめざす。2023年7月末、来日して、幹部であるイリヤ・ポノマリョフ氏のインタビューがNHK、TBS『報道1930』などで放映された。
・【第2弾!「自由ロシア軍」の幹部イリヤ・ポノマリョフ氏らが、日本の議員会館で「第7回ポストロシア自由な民族フォーラム」を開催したことに、ロシア外務省が日本政府に正式抗議!】〜(日刊IWJガイド、2023年8月9日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230807#idx-7
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52613#idx-7
・【第2弾!『NHK』が武装テロ組織「自由ロシア軍」の主張を無批判に流す】〜(日刊IWJガイド、2023年8月7日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230807#idx-7
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52613#idx-7
・【第3弾! TBS『報道1930』がモスクワシティへの「テロ攻撃」は、ゼレンスキー大統領の故郷であるクリビーリフへの「テロ攻撃」への報復ではないかと擁護!?】〜(日刊IWJガイド、2023年8月7日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230807#idx-8
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52613#idx-8
・【第4弾! 武装テロ組織「自由ロシア軍団」らが、東京で「第7回ポストロシア自由な民族フォーラム」を開催】〜(日刊IWJガイド、2023年8月7日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230807#idx-9
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52613#idx-9

松村教授「それは、もうドローンぐらいでしかやることがない、ということでしょうね。要するに、ウクライナが、英米が援助して8年間、2014年から2022年まで育て上げてきた部隊というのは、ほぼ枯渇して、弾薬もなくなるし。英米、西側の方も、弾をあげようにも、段々枯渇してなくなって、というような実態なんでしょう。

 先ほどの話で、西側の方が負けてるのに、『負けてない』とか、『勝っている』とか、ロシアの方も勝っているのに、勝っていることを言わないというのは、お互いに都合がいいからですよね。だから、双方、今のように間違った情報操作が続けられることを『利』と考えているから、そうなっているだけで。

 これは、西側だけの問題じゃない。ロシアの方は、この状況が続けば、西側の覇権、米国の覇権が崩れていくということがわかっているから、『別に、墓穴を掘ればいいだろう』と。アメリカの方はもう少し、近視眼的で、これが続けば続くほど、ヨーロッパがボロボロになると。日本も金を出させて、日本の力をそぐことができると。

 そういう打算があって、この嘘の状態を続けていると。そういうふうに読むのがいいと思います」

岩上「なるほど。今、お話しになった2点、すごくショッキング、初めて聞いた、という方がいらっしゃると思います。

 まず、ひとつは、ロシアが『勝った、勝った。今、自分たちは勝っている。すっかり防衛戦で食いとめるぜ』と、言えばいいものを言っていない。『ロシアはプロパガンダが下手なんだな』というふうに思っている人たちがたくさんいて、そういう分析もあるんですけど、下手なんじゃなくて黙っていることによって、プロパガンダがうまいということにもなる。(という)先生のお話だったんですね。

 『ウクライナ軍はロシアの防衛戦を全く破れず』。『(ウクライナ軍が)何メートル行った』とか、『少しの村を取った』とか言うんですけれども、実際には3重の防衛線が引かれていて、こちら左側が、6月1日。こちらは8月19日。何も変わらないんですよ(ISWの図を示す)。

 (ウクライナ軍としては)ここもドーンといって、この海(黒海・アゾフ海)に出たかったわけですね。その海に行くことが全くできていない。『ウクライナの「反転攻勢」は、膨大な犠牲者と兵器損耗を出している。プロパガンダもちょっと限界なんじゃないの』と言いながらも、毎日、同じようなことをぐずぐず、ぐずぐず日本のメディアはまだやってます。

 さすがに欧米メディアは幾つかが変わってきましたけれども、まだ日本はやっているわけですね。『専守防衛』状態と言いますか、『ロシアは穀物協定停止以後は、事実上、黒海を封鎖して、ハリコフへ進軍を一部始めた』と。これは、ちょっかいをかけるだけかもしれません。

 ハリコフと、それからオデッサが残っております。ここのオデッサを(ロシアが)取ると、第3の都市にして黒海の最後の港湾ですね。海がなくなってしまう、海の出入り口がなくなってしまいます、ウクライナはね。大変なことになるんですけれども。

 それからハリコフというのは、第2の工業都市です。この両端、占領地の両端を取られるということになると、あとは『キエフとリビウが残っているだけ』ということになってしまうのではないかなと思うんですが。

 ロシアは、ゆったりと構えている感じです。その構えの奥にある戦略は、今、先生がおっしゃられたように『ゆっくり待つ』ということ。待つことによって、西側の消耗、自損を待っているということだとお考えですか?」

松村教授「つまり、英語でいう『War』と『Warfare』とは違うんですよね。『Warfare』というのは、実際、地上でドンパチやってる状況のことなんですけれども」

岩上「『Warfare』は戦闘に近い」。

松村教授「『戦争』というのは、もっと大きなものなんです。『Warfare』と違って、戦争が政治の延長で、政治・経済、全部あるわけで。

 そういうところで考えると、一発の弾がなくても、法的には『戦争』という状態があるし、バトルで、ドンパチで負けていながら、第2次世界大戦で勝った中華民国とか、フランスの例もあるわけで。要するに、『ドンパチ』の部分は、戦争のごく一部なんです。

 だから、今の状況でも情報操作がなされているとか、そういう部分はもう置くとしても、戦争の全体像を見ずに、ドンパチの部分だけを報道している。まあ、軍人さんはそれでいいんでしょうけど。

 そういう意味でいうと、やっぱり『軍人に戦争はまかせれない』というのは、そういうことですよね。(戦争というのは)全体像ですから。経済とか、そういうことも入って、プロパガンダも入って、全部そうですから。そういう意味でいうと、非常にゆがんだ現実の描写になっているということでしょうね」。

岩上「かつ、『政略』という意味、『戦略』よりもさらに大きくて、『政略』という意味では、この辺の東南部を押さえておいて、今静かに待っている。『何を待っているんだろう、ロシアは』という状態なんですけれども。

 これはさきほど先生がおっしゃっていたように、ロシアは自分たちが勝っている状態をアピールしないことによって、西側が自分たちで解決、いろいろつけていかなきゃいけない。そういうことによって、消耗していく」

 松村教授は、すでにウクライナの敗戦は明白だが、西側諸国だけではなく「ロシアの方も勝っているのに、勝っていることを言わない」のは、「お互いに都合がいいから」だと指摘した。

 岩上が、ウクライナ紛争に関して、日本を含めて西側のマスメディアが以上に偏向した報道を行っていると批判すると、松村教授は「マスメディアはもともと戦争プロパガンダ機関」であり、「今は戦時体制、もしくは準戦時体制だという認識があれば」驚くことでもない、と述べた。岩上は、それでもジャーナリストとして「真実に近寄りたいという矜持」と、「真実を伝えたいというプリミティブな欲求」があると訴えた。

 インタビューは、米国が目論んだ「ロシア弱体化」が実は同盟国である弱体化になっている、そもそも「ロシア弱体化」と「ロシアの孤立化」は大誤算となった、米中は「一蓮托生」であり、米国覇権の崩壊後には「多極化」が出現する、米国の覇権は外部要因よりも内ゲバによる「自壊」という形で崩壊する、東欧系ネオコンに深く食い込まれているバイデン政権の性格、カール・ポパーからジョージソロスへ継承された「開かれたリベラル・デモクラシー」、米国では「社会」と「国家」の関係が逆転し「民間の利害関係で統治機構が乗っ取られた」、ウクライナは北朝鮮のような「間島」国家であること、などに話が及んだ。

 詳しくは、ぜひIWJの会員となって全編動画を御覧ください。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です