2022年1月11日(火)午前10時55分頃より、岸信夫防衛大臣の定例会見が、防衛省にて開催され、IWJが生中継した。
はじめに岸大臣が、新型コロナに関して、前回の定例会見(2022年1月7日)以降、93名の自衛隊員の感染が新たに確認され、合計5013名の隊員が感染、うち9名がオミクロン株だったことを報告した。
また岸大臣は、1月5日の岸田総理による、沖縄県へ自衛隊等から看護師を派遣するとの発言にもとづき、11日に沖縄県知事からの要請に対して、看護官と准看護師の計10名を派遣し、翌12日から医療支援活動を行うと述べた。さらにこの日、岸田総理が会見で自衛隊による大規模接種会場を設置すると発言したことを受けて、準備を行うよう指示したと発表した。
- 北朝鮮による弾道ミサイルの可能性があるものの発射事案等についての会見(首相官邸、2022年1月11日)
また岸大臣は、北朝鮮がこの日午前7時25分頃、弾道ミサイルの可能性のあるものを少なくとも1発、東方向に発射したが、日本の被害は確認されてないと発表した。
通常の弾道軌道であれば、700キロ未満飛翔し、日本の排他的経済水域以外に落下したと推定されるとのこと。北朝鮮は令和元年5月以降、40発を超える頻繁な発射を繰り返しており、目的がミサイル技術の向上にあることは明らかだとした。
質疑応答で、IWJ記者は以下のように質問した。
IWJ記者「防衛省はミサイル迎撃に、電磁力で弾を発射するレールガンを、20年代後半に実用化の計画と報じられました。
しかし2016年、米国の国防副長官がレールガンについて『在来の砲塔で発射可能な超高速発射弾(HVP)でも、開発や試験を行わずに同様の効果が得られることが判明した』と発言しています。それでもあえて、2016年の基礎研究費21億円に加えて、今回の『防衛力強化加速パッケージ』の65億円の研究費をかけて開発する理由は何でしょうか? また、この投資は将来的に有効であるとの確約がおありなのでしょうか?
また、レールガンは大量の電力を必要とするため、原子力発電所を延命させる根拠となるのではとの指摘もあります。しかし、そうなれば、原子力発電所は敵ミサイルやドローン兵器の格好の標的となり、攻撃の理由や正当性の口実を与えることにもなります。攻撃されれば壊滅的な被害を日本全国に与えることが明らかで、日本防衛のアキレス腱と言っても過言ではありません。
ミサイル迎撃のために、防衛の最大の弱点である原発の存在を必要とし、原発の電力に依存する兵器を開発しようとし、敵ミサイルにさらし続ける矛盾について、防衛大臣のお考えをお聞かせください」
岸信夫防衛大臣「いわゆるゲームチェンジャーとなり得る先端技術に重点的に投資をし、早期に実用化させることは重要であると考えております。こうした考えのもとで、極超音速兵器にも対処し得るレールガンについて、来年度から本格的な研究に着手する予定です。
レールガンは、ミサイル防衛や対艦攻撃など、様々な用途に活用し得る可能性を秘めていることから、我が国防衛にとって重要な事業であると考えております。
いずれにしましても、防衛省としては、我が国防衛力強化を加速するため、レールガンの早期実用化に向けて着実に取り組んでまいりたいと考えています」
IWJ記者「先ほどお尋ねした、原発が標的となることの矛盾に関してはいかがでしょうか?」
岸大臣「レールガンの様々な用途についての可能性ということも、先ほど述べさせていただきましたけども、そうしたことから考えますと、我が国防衛にとって、重要な事業であると考えているところであります」
IWJ記者「最初にお尋ねした、米国の国防副長官が発言されていた、開発や試験を行わずに、従来の超高速発射弾でも同じ効果が得られるということとの関係については、いかがでしょうか?」
岸大臣「米国のレールガン研究事業については、昨年12月に成立いたしました米国の国防権限法において、関連経費が盛り込まれたところであって、こうしたことを踏まえますと、米国がレールガン研究開発を中止したとは承知をしておりません」
米国海軍はレールガン・プログラムへの資金を2022会計年度予算案(国防権限法/NDAA)の中で要求せず、レールガン開発への取り組みを正式に終了させることを議会に提案していたが、バイデン米大統領が12月27日に署名した国防権限法の最終予算案には2950万ドル(約33億円)の予算が盛り込まれた。
しかし米メディアは、「開発を進めるには不十分な額」と指摘し、NDAAに記載された資金供給目的も「達成されたレールガン関連技術と知識を文書化して保存するため」となっているとのこと。
- Congress Wants Answers On The Railgun It Just Funded Even Though The Navy No Longer Wants It(THE DRIVE、2021年12月28日)
岸防衛大臣は「米国がレールガン研究開発を中止したとは承知をしておりません」と答えているが、米海軍も議会も、開発を進める気はないと見るのが普通ではないだろうか。
他社からは、幹事社の西日本新聞が、「在日米軍施設での感染拡大を受けて、基地からの外出について、必要不可欠な活動のみとする外出制限が昨日から始まった。対応は米軍任せのため、実効性を確保できるか見通せないとの指摘もあるが、大臣の所見は?」と質問した。
これに対して岸大臣は「9日、日米両国が『新型コロナウイルス感染症の拡大に対処するための措置に関する日米合同委員会声明』を発出した」と回答。声明の内容について、「在日米軍が、今月10日から14日の施設・区域外における行動制限、施設・区域内外でのマスク着用義務化、出国前・出国時検査、および入国後14日間の行動制限の維持、といった措置をとることについて確認をした」「これらの措置については、日本政府との協議のもと、新型コロナの状況を踏まえて、必要に応じた調整が行われる」等と説明した。
さらに「加えて、在日米軍は、今月10日から14日間、夜間外出を禁止することとした」とし、「先般の日米2+2で、自分からも外出制限の導入も含めた感染症拡大の措置の強化と徹底を米側に強く求めた」と述べた。
その他、北朝鮮のミサイルの高度、発射のタイミングに関してと、コロナワクチン大規模接種会場の時期、場所、対象、需要想定等に関する質疑があった。
詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。