【IWJ号外】ロシア・ウクライナ紛争からロシア・欧州戦争へ!? ラブロフ外相は「ヨーロッパは完全に狂っている」「歴史上初めて、ロシアは西側諸国全体と対決している!」と宣言! 2025.7.31

記事公開日:2025.7.31 テキスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!
2025-2026、年末年始限定フルオープン!
※IWJ会員にご登録いただき、安定的な取材をお支えください!→会員登録はこちらから

 ロシア・ウクライナ紛争は、ロシア・欧州戦争へと移行しつつあるようです。

 ロシア軍は、ウクラナ全土に及ぶ戦略的標的へのドローンと極超音速ミサイルの組み合わせによる異次元の精密攻撃を展開しています。ロシアの戦略転換の背景にはNATO、特にドイツの対ロシア強硬姿勢があると思われます。ドイツ軍の欧州最強軍隊計画と、ドイツ国防大臣の「必要であればドイツはロシア兵を殺すことを躊躇しない」という発言に、ロシア側が猛反発しました。

 ロシアのラブロフ外相は「第3次世界大戦はすでに始まっている」、「欧州のエリートは皆ナチスである。ヨーロッパは完全に狂っている」と強く欧州を非難し、「ロシアの最優先の任務は、敵を打ち破ることだ! 歴史上初めて、ロシアは西側諸国全体と対決している!」と宣言しました。

 IWJではすでに報じてきた通り、ロシアに潜入したウクライナ諜報部隊が、6月1日に「蜘蛛の巣(スパイダー・ウェブ)作戦」を行なって、ドローンでロシア空軍基地を攻撃し、戦略爆撃機を含む40機以上(ウクライナ保安庁の発表)を破壊してから以降、ロシアはウクライナで空爆による攻撃のギアを一段と上げています。これまでと一線を画す、猛攻撃ぶりです。

  • ロシア軍が過去最多数のドローン728機とミサイル13発を使って大規模攻撃! 主要な標的はウクライナ西部! ポーランド国境付近にも! ロシア軍は戦術的にも攻撃能力をさらに高め、兵器増産能力も高める一方、ウクライナは防空能力も限界! 米国は防空の切り札であるパトリオットミサイルの備蓄が必要量の25%まで減少! 頻度と規模を拡大するロシア軍の飽和攻撃、そしてイラン・イスラエルの停戦が破れて戦争再開となった場合、もはや欧州・ウクライナ・イスラエルに供与するだけの防空ミサイルが足りず、増産も間にあわない!!(日刊IWJガイド2025.7.14号) 会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20250714#idx-4 非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/54857#idx-4

 東南4州の接触線上での地上戦だけではなく、ウクライナ全土の諸都市にある戦略的目標に対して、数百機のドローンで飽和攻撃をかけ、ウクライナのパトリオットシステムなどの防空システムを消費させきって、迎撃不能の極超音速ミサイルを標的に撃ち込むといった戦術的な攻撃が、連日のように行われています。

 「ウクライナ劣勢/ロシア優勢」の情報を流したくない、日本の大手主要メディアではほとんど報じられていませんが、YouTubeの軍事関連アカウントでは、ロシアがウクライナで展開している圧倒的な攻撃を伝える動画が数多くアップされています。

 『ミリタリー・ギア』は29日、「キエフでパトリオットが粉砕される―ロシアの極超音速ミサイルがNATOの盾を灰燼に帰す」と題して、「ロシアは、戦争中、最大規模かつ最も協調的な空爆を開始した。420機以上のドローンと、キンジャール極超音速ミサイルを含む20発の精密誘導ミサイルを投入し、キエフをはじめとする主要地域を壊滅的な攻撃で破壊した。多くの地区が炎に包まれ、重要インフラは瓦礫と化し、ウクライナの防空システムは圧倒された。モスクワは、この攻撃をロシア奥地への攻撃への報復と宣言した」と伝えています。

 「スパイダー・ウェブ作戦」という冒険主義的な作戦は、ロシアの核能力を標的とするものであり、完全にロシアの怒りを買ってしまい、本気にさせてしまった、ということです。  『ミリタリー・ギア』は、「(パトリオットを含む)西側諸国の防衛システムは、止めることのできない(極超音速ミサイルである)キンジャールを阻止できるのだろうか?」と問いを投げかけていますが、動画を見れば、現在のロシアの新しい攻撃戦術を阻止できていないことは明白です。

 『ミリタリーTV』は、ロシア軍が7月21日、「キエフ近郊で米国製パトリオット発射装置3基と、重要なAN/MPQ-65レーダーを破壊し、ウクライナの防空網に大きな打撃を与えた。ロシアはドローン群と強力なキンジャール極超音速ミサイルを用いて、西側諸国のシステムの脆弱性を露呈させ、戦場での有効性に疑問を投げかけた」と報じています。

 『APT』は7月28日、ロシア軍は壊滅的な電撃攻撃を行い、24時間でウクライナ軍1995人を殲滅し、最前線全域で武器16万6000個を破壊し、キエフにもドローンとミサイルで攻撃をかけたとする、ロシア国防省の発表を伝えました。「無人機施設、長距離ドローン管制センター、そして外国の傭兵拠点への攻撃が成功した」という内容です。

 ロシア軍の攻撃は、ウクライナ東南部4州の接触戦だけではなく、スーミ州、ハリコフ州、ドニプロペトロウシク州、西部フメリニツィキー州などにも及び、さらに北東部のウクライナ第2の都市ハリコフ、黒海に面する南部の港湾都市オデッサ、さらにはウクライナ民族主義者(ネオナチ・バンデラ主義者)の故地ともいえる、西部の都市リヴィウなどにも及んでいます。

 オデッサとパヴログラードへの攻撃は、「無差別攻撃ではなく、ウクライナの物流ルート、防空システム、そして軍事生産施設の破壊を目的とした、綿密に計算された作戦」であり、「オデッサの空港、飛行場、国境検問所を含む16の精密攻撃目標が攻撃対象」となり、パヴログラードは「サプライチェーンと工業地帯が麻痺」した、と『ミリタリー・ギア』は、伝えています。

 ロシア軍の高度な精密攻撃は、これまでの攻撃とは異なる次元に達しています。

 ロシア側が攻撃のギアを一段と上げた理由として、先述したように、「スパイダー・ウェブ作戦」があることは間違いありませんが、さらにその後の西側諸国の対応、特にドイツの強硬な対応も、理由のひとつとして加わったと思われます。  NATO加盟国は、6月のサミットで、2035年までに、防衛費をGDP5%まで増額すると表明しています。

  • NATOサミットで加盟国は2035年までにGDP5%の防衛費増額へ! その増加資金は日本の防衛産業とAI技術へ!? マルク・ルッテNATO事務総長はトランプ大統領をNATOに引き留めるのに必死! 他方、トランプ政権は軍事費関連で日本に2つの要求を突き付けている! 日本核武装論のエルブリッジ・コルビー国防次官が暗躍! (日刊IWJガイド2025.6.27号) 会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20250627#idx-3 非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/54785#idx-3

 ドイツのメルツ首相は5月14日、首相就任演説で、増大するロシアの脅威に対処できるよう、通常戦力として欧州最強の軍隊へと軍を変革することが政府の最優先課題だと表明しました。

 7月18日『BBC』のインタビューでは、「我々は大きな脅威を目の当たりにしている。その脅威とはロシアだ。そして、この脅威はウクライナだけに向けられたものではない。我々の平和、我々の自由、そして欧州の政治秩序に対する脅威なのだ」と語り、あたかもロシアからドイツに対して宣戦布告を受け、それに対して受けて立つ、とでも言っているかのような高ぶり具合です。

 ドイツのピストリウス国防相は、志願制の導入によって兵力を現行の18万人から26万人に拡大する方針を示しました。

 さらに、ピストリウス国防相は、14日に公開された『フィナンシャル・タイムズ』のインタビューで、ドイツ軍は、モスクワがNATO加盟国を攻撃した場合には、ロシア兵を殺害する用意があるとまで表明しました。ウクライナは、NATO加盟国ではありません。それでも、このタガが外れたようなイキリ具合はどうしたものでしょうか。  14日付『TASS』によると、ロシア大統領府の報道官ドミトリー・ペスコフ報道官は即日、ピストリウス国防相の発言を受け、「ドイツは再び危険な状況になりつつある」と警告しました。

 ペスコフ報道官は、「ピストリウス氏がそのような発言をしたとは信じ難い」と述べつつ、「しかし、残念ながら、彼はそうしたのだ」とコメントしました。

 こうした状況を受けて、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は7月28日、モスクワの北東約100kmほどに位置する都市ソルネチノゴルスクで開催された「第11回テラ・サイエンティア全国教育青年フォーラム」に参加し、質疑応答を含めると1時間20分近い演説を行いました。

 ラブロフ外相の演説からは、ロシア側が危機感を高めていることがよく伝わってきます。ウクライナによる組織的なテロ攻撃、NATO諸国の敵対的な態度を受け、欧州に対する深い失望と、今後「完全に狂った」欧州と対決していく覚悟を表明しています。

 以下に、ラブロフ外相の演説と質疑応答を、抜粋でご紹介します。 <主要項目> ・第三次世界大戦は単に不可避であるだけでなく、既に新たな形態で進行中である。

・欧州にとってウクライナ問題は、西側がロシアに「戦略的敗北」を強いる政策だった(が、あてが外れた)。

・ドイツ国防相のボリス・ピストリウス氏「必要であれば、ドイツはロシア兵を殺すことを躊躇しない」。

・欧州はトランプ関税を甘んじて受けてでも、ロシアを打ち負かし、全滅戦争を続けたい。

・欧州のエリートは皆ナチスである。ナチズムはウクライナ社会において復活した。ヨーロッパは完全に狂っている。

・覇権を維持するため西側は、中東、ウクライナ、イランに続き、極東地域での戦争を計画している。

・BRICSとSCO(上海協力機構)は、新たな多極的な国際秩序の形成において、中心的な役割を果たしている。

・ロシアの最優先の任務は、敵を打ち破ることだ。歴史上初めて、ロシアは西側諸国全体と対決している。

・次は「インド太平洋」。これから10年間の世界安全保障システムは、容易なものではない。

・西側の約束は「すべて嘘だった」。  ラブロフ外相の演説の動画と文字おこしは、ロシア外務省のホームページで公開されています。


セルゲイ・ラブロフ外務大臣の演説および質問への回答 ―第11回テラ・サイエンティア全国教育青年フォーラム、ソルネチノゴルスク

<第三次世界大戦は単に不可避であるだけでなく、既に新たな形態で進行中である>

 「多くの政治学者、研究者、専門家は、第三次世界大戦は単に不可避であるだけでなく、既に新たな形態で進行中であると真剣に主張しています。

 その始まりは、1999年の西側のユーゴスラビアに対する侵略、イラクへの侵略、リビアの破壊、シリアへの攻撃です。これらの中東諸国は現在、混乱状態にあります。  イラク、シリア、リビアの領土の不可侵性 ――西側がウクライナの場合のみ、重視しているように見えるもの―― は、2011年のアラブの春において、深刻に損なわれました。これらの国々は、現在も非常に厳しい状況にあります。

 現在、西側は隣の地域、すなわちガザ地区とパレスチナ領土(より広範な地域)に目を向けています。イスラム共和国イランに対する侵略行為が行われています」。

<欧州にとってウクライナ問題は、西側がロシアに「戦略的敗北」を強いる政策だった(が、あてが外れた)>

 「欧州では、ウクライナ問題は、西側がロシアに『戦略的敗北』を強いる政策を象徴しています。彼らは、この計画を長年準備してきたことを隠そうとしません。  恥じることなく、すべての問題を解決するために策定されたミンスク合意(※2015年に結ばれたウクライナ東部の内戦の停戦と、ドンバスへ自治権を与えるという合意。実はウクライナに軍備を整えさせるための時間稼ぎだった)は、最初から実施されるつもりはなかったと公言しています。

 プーチン大統領、当時のメルケル独首相、当時のフランスのオランド大統領、当時のウクライナのポロシェンコ大統領は、その合意のために17時間眠らずに働きました。

 しかしその後、彼(プーチン大統領)とともに同じテーブルに着いた人々は、まったく実行するつもりはなかったと認めました。彼らは単に『紙に何かを書く』ことで、ウクライナがロシアとの戦争に備える時間稼ぎをし、武器を大量に供給するためだったのです」。

 ラブロフ外相の指摘通り、当時ドイツ首相であったメルケル氏は、ミンスク合意が「時間稼ぎだった」と認めています

。  メルケル氏は、2022年11月24日の『シュピーゲル』誌のインタビューで、「ウクライナはロシア軍に対する防衛力を増強するための時間稼ぎができた」と語っています。

  • 「ロシアに対する欧米の戦争」は、すべて計画され、計算されたものだった! ドイツのメルケル前首相の「ミンスク合意はウクライナに時間を与えるため」発言に続き、ベアボック独外相が「我々はロシアに対して戦争をしている」と発言! ロシア外務省のザハロワ報道官が「あらかじめロシアに対する戦争が計画されていた」と反発!! 米ポンペオ元国務長官は「CIA長官時代、特殊部隊とともに何度もウクライナに行きウクライナ軍を訓練した」と暴露!!(日刊IWJガイド2023.1.29号) 会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230129#idx-4 非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51811#idx-4

 「その同じ人達が今、キエフの顧客のために再び時間稼ぎをし、ウクライナにさらに武器を送り込むために、即時停戦と現状維持を要求しています。ヨーロッパ人が心底から『私達を打ち負かそう』としていることは、毎日確認されています。

 ドイツの新首相フリードリッヒ・メルツ氏は、最近(彼が自分の発言を理解していたかどうかは定かではありませんが)、『ドイツは再びヨーロッパ最強の軍事大国にならなければならない』と発言しました。

 ドイツは第一次世界大戦前と第二次世界大戦前に最強の軍事大国であり、その両方を引き起こしました。今、彼はドイツを再び『ヨーロッパの軍事大国』にしたいと考えているのです」。

<ドイツ国防相のボリス・ピストリウス氏「必要であれば、ドイツはロシア兵を殺すことを躊躇しない」>

 「ドイツ国防相のボリス・ピストリウス氏は、『必要であれば、ドイツはロシア兵を殺すことを躊躇しない』と発言しました。欧州のエリート達は、このレトリックを、当然のこととして受け止めています。

 これは何よりも、西側諸国が、多極化した世界の中で、単なる強国の一つにすぎないという事実を受け入れることができないことを反映しています。

 西側諸国は、500年にもわたって享受してきた覇権を、放棄することはできないのです。すべての人に自分の意志を押し付け、現実的な懸念を無視しようとしている、今日のヨーロッパで特に顕著です」。

<欧州はトランプ関税を甘んじて受けてでも、ロシアを打ち負かし、全滅戦争を続けたい>

 「先日、ドナルド・トランプ大統領は、欧州委員会委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエン氏と会談しました。その後、彼女は誇らしげに、欧州の製品は15%の関税で米国に輸出され、米国の製品は無関税で欧州に輸出されるという合意に達したと、嬉しそうに発表しました。

 さらに、欧州は700億ドルの資金を投じて、主に液化天然ガスや核燃料などの米国のエネルギーを購入し、ロシアのエネルギーを完全に放棄することになりました。さらに、トランプ大統領が述べたように、6000億ドルの新規投資も行われます」

※ここから先は【会員版】となります。会員へのご登録はこちらからお願いいたします。ぜひ、新規の会員となって、あるいは休会している方は再開して、御覧になってください!
https://iwj.co.jp/ec/entry/kiyaku.php

(会員限定・続きを読む :https://iwj.co.jp/wj/member/archives/528707

<ここから特別公開中>

 ラブロフ外相は、さらにこう続けます。

 「間違いなく、米国の提供するエネルギーは、ロシアの提供するエネルギーよりも、はるかに高価になるでしょう。このアプローチは、欧州の産業の空洞化をさらに進め、欧州から米国への投資の流用をもたらすことになるでしょう。

 当然のことながら、この決定は、欧州の産業や農業に影響を与えるエネルギー価格や、資本流出の面で、深刻な打撃となります。

 しかし、(欧州委員会委員長の)ウルズラ・フォン・デア・ライエン氏のような人物は、この方針に従うことに誇らしげです。彼らは支出が増加することを認め、社会問題に対応するための資源が不足する可能性を指摘しつつも、『ロシアを打ち負かす必要がある』と主張しています。

 ブラジル大統領のルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ氏が最近述べたように、前米大統領のジョー・バイデン氏は、彼との会話で『ロシアを破壊しなければならない』と述べたことがあります。戦略的に打ち負かすだけでなく、破壊しなければならない、と。それは、全滅戦争です」。

 ラブロフ外相は、トランプ大統領は、ジョー・バイデンやフォン・デア・ライエン、スターマー(英首相)、マクロン(仏大統領)といった欧州のエリート達とは別の見解を持っており、対話にオープンで戦争を望んでいない、と付け加えました。

 トランプ大統領に対する、ラブロフ外相の、この肯定的な評価は、外交的な修辞なのか、米国の油断を誘うためなのか、そのどちらでもなくて、本気で「米国は違う」と思って、口にした、と信じているのだとしたら、お人好しの度がすぎる、というべきでしょう。

 あまりに無防備に、米国大統領の言葉を信じ込むと、ロシアは、ミンスク合意の時に騙されたのと同じ過ちを犯すことになるでしょう。

 トランプ大統領は、最近はロシアを「愛している」とまで言い始めましたが、経済制裁をかけながら、こんな歯の浮くようなセリフを、大っぴらに口にすることのできる男性を、普通の女性は信じません。トランプ大統領の言葉を、真に受けるべきではありません。

<欧州のエリートは皆ナチスである。ナチズムはウクライナ社会において復活した。ヨーロッパは完全に狂っている>

 「冷戦時代でさえ、対話があり、それはまず第一に、大規模な戦争を防ぐために、対立する陣営が互いの意図をよりよく理解するのに役立ちました。ヨーロッパはその本能を失い、ナチズムに対するワクチンも効力を失いました。

 かつてロシアの破壊を目指したのと同じ勢力が、今、ヨーロッパで再び台頭しており、私達に対する攻撃の道具としてウクライナを選んだのです。彼らは、ウクライナがしていることを、すべて歓迎しています」

 ラブロフ外相は、欧州のエリート達は「ウクライナが欧州の価値観のために戦っている」と主張し、ウクライナが犯している人権義務の履行や、言語、教育、メディア、文化におけるロシア語の禁止などを無視してきた、と付け加えました。

 「欧州はウクライナが『欧州の価値観』のために戦っていると主張しています。フランス大統領エマニュエル・マクロン氏は最近、ロシアとは異なり、ウクライナは『私達の利益』、『私達欧州の価値観』のために戦争を続けていると断言しました。

 これは彼らが皆、ナチスであることを認めるものです。ナチズムはウクライナ社会において立法を通じて復活しています。アドルフ・ヒトラー、ヨーゼフ・ゲッベルス、他の戦争犯罪者と同列であるステパン・バンデラとロマン・シュケヴィッチ(※)を、現在では『自由の象徴』として称賛することに何の障害もありません」

(※)ステパン・バンデラとロマン・シュケヴィッチについて解説したIWJ記事は以下の通り。

 「私達は、最も困難な時期でも、一貫して対話を主張してきました。冷戦中、ソビエト連邦とアメリカ合衆国との対話は、決して断たれませんでした。冷戦時代には、相互尊重が存在していたことも認めなければなりません。

 現在、それは存在しません。ヨーロッパは、完全に狂っています。他に適切な言葉が見つかりません」。

 ラブロフ外相は、欧州は今、「一時的な停戦」を求めているが、それはミンスク合意と同じだ(再軍備のための時間稼ぎ)だと断言しました。

<覇権を維持するため西側は、中東、ウクライナ、イランに続き、極東地域での戦争を計画している>

 ラブロフ外相は、「西側は覇権の喪失を受け入れられず、純粋な新植民地主義政策を追求し続けている」と指摘しました。

 「同時に、多極化の世界が台頭しています。これは客観的で不可避なプロセスです。(西側諸国による)制裁、貿易戦争、または公開的な紛争の挑発は、この流れを逆転させられません。

 それでも西側は、中東、ウクライナ、イランでの行動に続き、同様の戦術を追求し続けています。

 現在、同様の作戦が、極東地域で計画されています。南シナ海、台湾海峡、東シナ海、東南アジアと東北アジア全域、さらには朝鮮半島を含む地域です。これらはすべて、彼ら(欧米)のより広範な目標と一致しています。グローバルな支配を維持し、覇権国の地位を保つことです」。

 ラブロフ外相が言及した共闘地域の中に、日本列島はまるまるおさまります。「台湾有事」によって、南西諸島地域限定の戦争が起こり、日本は米軍を援助する、などという「箱庭」のような限定的な戦争でおさまることは決してありません。

 さらにラブロフ外相は、西側が自然な歴史の流れに逆らってあがいても「多極化の世界の台頭は、最終的に勝利を収めるだろう」と述べました。

<BRICSとSCO(上海協力機構)は、新たな多極的な国際秩序の形成において、中心的な役割を果たしている>

 「インド、中国、ロシア、トルコ、イランは、いずれも何世紀にもわたる深い歴史的ルーツを持つ古代文明です。これらの国々は、世界でも稀に見る、結束力のある文明共同体として存続し、進化してきました。ユーラシア大陸では、この継続性が依然として特徴的な要素となっています。

 今日、これらの偉大な文明は、新たな多極的な国際秩序の形成において中心的な役割を果たしています。実際には、この変化は、BRICSやSCOなどの組織、そしてこの世界的な変革に積極的に貢献しているアフリカ連合やCELAC(ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)のパートナーとの協力によって推進されています」。

 ラブロフ外相は、「西側諸国は依然として、国際通貨基金(IMF)や世界銀行など、第二次世界大戦後に創設された機関に依存しており、多くの場合、その支配力を強化するためにこれらの機関を利用している」と指摘し、準備通貨・特に米ドルの役割を悪用するなどして、公正な競争を阻んできた、と指摘しました。

 ラブロフ外相は、グローバル・マジョリティは「旧態依然とした欧米中心のルール」から独立した代替手段を進めていると述べ、より多くのパートナーを紹介し、こうした動きは「ユーラシアの安全保障構造を構築するための強固な基盤となる」だろうと述べました。

<ロシアの最優先の任務は、敵を打ち破ることだ。歴史上初めて、ロシアは西側諸国全体と対決している>

 「(ロシアの)最優先の任務は、敵を打ち破ることです。歴史上初めて、ロシアは、西側諸国全体と対決しています。第一次世界大戦と第二次世界大戦では、同盟国がいました。しかし現在、戦場には味方は一人もいません。したがって、私達は自分達自身に頼るしかありません。弱さや迷いは許されません。

 ウラジーミル・プーチン大統領は、国際舞台で追求する目標を明確に示しました――主に戦闘行動の面での目標です。これらの目標は、実現されます。私達は、正当な要求を強調したいと思います。私達の安全保障の保証です。

 第一に、ウクライナのNATO加盟は、絶対に認められません。NATO同盟のさらなる拡大は、一切許されません。実際、NATOは、すべての約束と合意文書を無視して、私達の国境まで拡大してきました。

 第二に、繰り返し『ロシアは1991年の国境に戻らなければならない』と主張されます。しかし、1991年にウクライナが独立国家として承認された際、その基本原則は独立宣言に明記されていました。『非同盟、非核、中立の国家』です。まさにこの原則にもとづき、ウクライナの領土一体性が認められたのです。

 彼らが、ロシアのすべてを破壊し、消滅させようとした時、私達は無関心でいることはできませんでした。説得と交渉を試みましたが、何の成果も得られませんでした。したがって、特別軍事作戦を開始する以外に選択肢はありませんでした。

 領土は、私達の最優先事項ではありません。一部の人々は『彼らは土地を奪った。それは解放されなければならない』と主張します。これらの領土は、私達の関心事ではありません。私達はすでに、世界で最も広大な国土を保有しています。

 最も重要なのは、数百年にわたり、その地で暮らしてきた人々(ウクライナ国内におけるロシア語話者のこと)です。彼らはロシアの文化、言語、教育の守護者であり、その遺産の中で子供を育てたいと願っています。

 彼らは、消滅させてはなりません。彼らの権利は保護されなければなりません。これは、完全に合法的な要求です。憲法に定められた現実を認識することは、絶対的で交渉の余地のない義務です」。


以下、質疑応答からの抜粋です。

<次は「インド太平洋」。これから10年間の世界安全保障システムは、容易なものではない>

 「10年後の世界安全保障システムはどうなるか?」との質問に、ラブロフ外相は、西側は「インド太平洋」で、中国を封じ込め、ロシアを孤立させようと画策しており、「これからの10年間は、容易なものではない」と警鐘を鳴らしました。

 「ウクライナ周辺には、単なる脅威ではなく、現実の安全保障問題が存在します。私達は自国の安全保障、正当な安全保障利益のために戦っており、目標を達成するでしょう。

 近隣地域でも、危機が継続しています。中東、パレスチナ、イラン、シリアの紛争は、いまだ終結しておらず、リビアやイラクでも同様です。

 西側にも、安全保障上の問題があります。まず、アメリカは、アジア太平洋地域(意図的に『インド太平洋』と改名し、インドの友好国を引き込み、その満足を維持しようとしている)に強力な影響力を拡大したいとの意向を隠していません。

 しかし、実際には、これらの『インド太平洋』戦略は、中国を封じ込め、ロシアを孤立させ、東南アジアのASEAN中心の枠組みなどの開かれた普遍的な協力体制を解体し、南シナ海、台湾海峡、朝鮮半島といった極東地域に向けて、NATOの軍事インフラを前進させることを目的としているのです。

 彼らは、さまざまな『4者協議』や『3者協議』を設立しています。

 例えば、日米韓の3ヶ国は、北朝鮮を標的とした、朝鮮半島周辺での大規模な軍事演習をすでに計画しています。この演習には、米韓両軍による核兵器の使用を想定したシナリオも盛り込まれているという、憂慮すべき事態にも至っています。

 同じことが、オーストラリアの原子力潜水艦の建造と核技術の移転を目的として事実上結成されたAUKUS(米国、英国、オーストラリアの3ヶ国による同盟)にも当てはまります。これらの行動が核兵器不拡散条約に準拠しているかどうかについては、深刻な疑問が残ります。

 NATOがこの地域への浸透を図っていること、―例えば、日本はNATOの代表事務所を開設する準備を進めていると報じられていること―など、多くの問題が表面化しています。

 そのことを如実に表しているのは、当時のNATO事務総長イェンス・ストルテンベルグ氏の記者会見です。彼は、当初、加盟国の領土の物理的な保護を主な任務とする防衛組織として創設された北大西洋条約機構(NATO)が、その後、その枠を超えて東方に拡大したこと、その拡大の理由について質問された際、『NATOは引き続き、加盟国の領土の保護に専念している』などと、ためらうことなく答えました。

 しかし、『現在の状況では、これらの領土に対する脅威は「インド太平洋地域(南シナ海など)」から来ている』、と彼は主張しました。これは、同盟の存続の新たな目的と意味を求める同盟の考え方の変化を反映した、象徴的な発言だったと思います。

 私達は、この地域に目的と意味を見出していますが、彼らは、まだNATOが存続すべき理由を正当化しようとしています。先には多くの脅威が待ち受けており、これからの10年間は容易なものではありません」。

<西側の約束は「すべて嘘だった」>

 「国際舞台で、合理的に対話できる相手とは」という質問に対し、ラブロフ外相は、BRICSやSCOの指導者を始め、いくらでもいます、と回答しました。

 「もちろん、(プーチン)大統領には、多くの対話者がいます。大統領は、ほぼ毎日、国際的な交流を行っています。ベラルーシ、朝鮮民主主義人民共和国、中国については、すでに述べました。私達は、中華人民共和国との間で、前例のないほど深く、広範で、信頼にもとづく戦略的関係を築いています。

 中華人民共和国主席の習近平氏は、ロシアを訪問し、(第2次大戦の)勝利80周年を記念する式典に参加しました。9月初旬、ウラジーミル・プーチン大統領は、習近平主席の招待で、中国を訪問し、日本軍国主義の敗北80周年を祝います。

 これらの重要な出来事は、歴史的記憶の保存と、欧米や日本が当時の記憶を消し去ることを阻止するという観点から、大きな意味を持っています。

 BRICSやSCOの枠組みの中で、また旧ソ連圏で、ウラジーミル・プーチン大統領と定期的に協力している指導者をあげれば、きりがありません」。

 しかし、一方で西側諸国の首脳については、彼らの言うことは「すべて嘘だった」と切り捨てました。

 「私達は今、彼ら(西側諸国の首脳)の言葉の真の価値を知っています。『表現された考え、は嘘である』し、彼らが私達に約束したこともすべて嘘です。

 これがミンスク合意で起こったことであり、2014年2月のキエフでのクーデター直前に同様の状況が形づくられました。

 当時、ヴィクトル・ヤヌコビッチ大統領と野党は、早期選挙を平静に準備する合意に署名しました。フランス、ドイツ、ポーランドが、この文書に保証国として署名しました。しかし、その翌朝、これらの署名はゴミ箱に投げ捨てられ、野党はすべての政府施設を掌握しました。

 2022年4月、特別軍事作戦開始直後、イスタンブールで二国間協議が開始されました。当時、私達の交渉団はウクライナ代表団が提案した紛争解決の原則に同意しました。しかし後になって、彼らは『これまでほとんど成果を上げていないため、戦闘を継続し、ロシアを弱体化させるべきだ』と告げられました。

 私は確信していますが、『もし』ではなく、『いつかは』彼らが正気を取り戻し、関係再開を提案してきた場合、私達は、将来の関係構築において、より厳格なアプローチを取るでしょう」。

 日本政府も、日本の主要メディアも、日本国民のひとりひとりも、ウクライナ紛争に端を発している(ように見える)東西対立の地球大の対立の拡大に、とまどい、我が事のようには考えないでしょう。しかし、確実に、その構図の中に我々日本も、ピースのひとつとしてはめ込まれています。そのことを、深く自覚し、対立の図式の中で利用される罠から逃れる術を考えるべきです。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です