2024年4月14日午後1時30分より、東京都千代田区の専修大学神田キャンパスにて、「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」の主催により、シンポジウム「平和主義を捨てた日本」が開催された。
ジャーナリストで映画監督の三上智恵氏が、「要塞化される日本列島」と題して基調講演を行い、それを受けて、三上氏、法政大学名誉教授・前総長の田中優子氏、日本女医会会長の前田佳子氏、弁護士の杉浦ひとみ氏、ライターの和田靜香氏、東京新聞記者の望月衣塑子氏により、パネルディスカッションが行われた。
「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」の共同代表である田中優子氏は、会の活動について、次のように語った。
「(2022年12月に岸田政権が改定を閣議決定した、安保関連3文書は)攻撃能力のある武器であるとか、輸出であるとか、そして、また、非常にびっくりしたのが『5年間で43兆円』という軍事費。GDPの2%。これが出てきました。これ、まだお金があるわけじゃないので、私たちの税金から、これから出ていくわけですね。
そういうようなことを聞いて、非常に驚きました。(中略)
2015年あたりから、もう10年ぐらいかけて、情勢がこういうふうになってきたわけですが、これはちょっと黙っていられない、黙っているべきではないというふうに感じました。
それで、(2023年の)2月8日、その前、1月ぐらいから相談を始めて、2月8日に記者会見を開きました。
それまでの間に、7万5000筆の、この私たちの声明に対する賛同が集まりましたので、その署名を持って、各政党の方たちにお渡しする。そして、記者会見をする、という形で、この会(平和を求め軍拡を許さない女たちの会)が始まりました。
それから、お互い情報交換しながら1回目のシンポジウム、2回目のシンポジウム、そして、今日は3回目のシンポジウムになりました。
そして、各地で同じ会が立ち上がっています。なんと、同時に大阪と熊本で立ち上がりました。そして、その後、茨城であるとか、北海道であるとか、いくつかの会が立ち上がったんですが、昨日ですね、大分で立ち上がりました。ありがとうございます。
昨日、私、その大分での立ち上げに行ってきて、講演をしてきたんですけれども、なぜ大分だったのかといいますと、湯布院にミサイルが運ばれることが決まっているそうです(※)。しかも、これが迎撃型じゃなくて攻撃型だということなんですね。
- 陸上自衛隊「第2特科団」が発足…ミサイル部隊運用し南西防衛の中核に、湯布院駐屯地で式典(讀賣新聞オンライン、2024年4月14日)
温泉地ですよね。温泉とミサイルなんです。そういうような大分の方たちっていう、本当に今、危機感を感じてまして、そしてさまざまな活動が始まっています。
で、宮崎でも実は準備中なんですが、最初に熊本で立ち上がって、こういう風に九州の方たちが、沖縄の問題も受けとめながら大変大きな危機感を持っていらっしゃる」。
三上智恵氏は、映画監督として、これまで、『標的の村』(2013年)、『戦場ぬ止み』(2015年)、『標的の島 風かたか』(2017年)、『沖縄スパイ戦史』(2018)と、4本のドキュメンタリー映画を作成している。
そして、『沖縄スパイ戦史』から6年の時を経て、2024年、渾身の最新作『戦雲(いくさふむ)』を完成させた。
この最新作『戦雲(いくさふむ)』のテーマは、日米両政府の主導のもと、沖縄本島、与那国島、宮古島、石垣島、奄美大島で、急速に進行中の軍事要塞化だ。三上氏は、2015年から8年間、軍事要塞化の進む沖縄・南西諸島で暮らし、抵抗する人々を取材しそれを一本のドキュメンタリーへ結実させた。
3月16日のポレポレ東中野での上映を皮切りに、現在、全国の劇場にて絶賛公開中である。詳しくは、上記の公式サイトで確認いただきたい。
また、戦力配備が進む南西諸島の実態を取材した8年間の記録をまとめた書籍『戦雲 要塞化する沖縄、島々の記録』(集英社、2024年1月)も発売中である。
- 「戦雲 要塞化する沖縄、島々の記録(集英社新書)
三上氏は、基調講演の最後に、次のように語った。
「私は、別に反対運動の映画を作っている気は、これっぽちもないんです。
でも、本土でやっている、いわゆる『市民運動』というのと、沖縄の運動って、成り立ちが違うというか。沖縄県民は、米軍に占領されて、すべての権利がない中で、普通に奪われたものを取り返す。
例えば、自分が住んでいるところをアメリカに奪われて、テントとか建てられてしまう。それから、教育を受ける権利も最初はなかった。
もう、1から10までみんなで集まって、集まった力で米軍に抗議をするということを、毎日、ご飯をつくるように、洗濯をするようにやらないといけなかったから、そういうことで集まってみんなで反対する。みんなで意見を言う。
一人で言ったって怖いから、みんなでやる、っていうことを、もうずっとやり続けてきた。
で、本土復帰の頃に、全国のいろんな政党とかと一緒にやるようにはなりますけれども、だけど、沖縄伝統の座り込みみたいな抵抗のしかたというのは、本当に、畑に行くように、漁に行くようにやらなければいけないことだったんですよ。
だから、老若男女が来る、たくさんの現場を私は撮りたいし、でも、伝わらない。『テレビ朝日が』って言うと怒られるけど、賛成運動を入れないと流してくれないって言う。
でも、こうやって体を張って止めてるのは、本気で止めたいって思っている意思表示をすれば、自分たちの仲間もそうだけど、遠いところにいる本土の人たちにも知ってもらえるだろうって、いつか変えてもらえるだろうっていうことでやってるんですよ。
だから、例えば、汚い水がね、蛇口からばーって出ているのを見て、(ひとりで)止めてても限界あるじゃないですか。黒い水はボタボタ溜まっていっちゃうんですよ。だけど止めないと私たちの住んでいるところ、泥だらけになって埋まってしまうでしょ。
だから、こうやって(ひとりで蛇口を閉めようと)やってるのは、この蛇口を閉める力を、私たちは持ってないんですよ。
でも、蛇口を閉める力は、皆さんにあるんですね。本土の皆さんにあるから、その蛇口を閉めてくれるのに気づいてもらうまで、泥だらけになってても止めてるっていうのが、いわゆる『座り込み』とかの状態だと思うんですね。
だから、これはね、伝える人がいないと、何のためにやってるのか本当にわからないんですよ。
機動隊だって、本当にやりたくてこんな仕事をやってるわけじゃない。でも、体を張ってやる人たちがいるから、機動隊っていう仕事がね、政府が力ずくで自分たちの傭兵のように、機動隊を使っていいのかという問題もあるけれども、沖縄県警だって本当につらいと思うんですけど、なんで沖縄県民同士が誰も知らないところで戦っているのか、本当に毎回涙が出ますよ」。
三上氏の基調講演、及び、パネルディスカッションの詳細については、全編動画を御覧いただきたい。