8月20日、厚生労働省は、8月18日時点の自宅療養者数は全国で9万6857人に達したと発表した。療養先調整中の人数も3万1111人に達している。全国の自宅療養者数は、1ヶ月前の7月21日にはおよそ9分の1の1万717人であった。7月28日は8216人増えて1万8933人、8月4日は2万6336人増えて4万5269人、8月11日は2万8866人増えて7万4135人と、週を追うごとに倍増してきた。菅総理が「重症者以外は自宅療養」と、中等症以下の切り捨てを意味する棄民政策を発表したのは8月2日、事実上の医療崩壊宣言だった。
感染力の強いデルタ株の感染が広がり、収束の兆しが見えない中、日本女医会理事・青木正美医師と、日本女医会前理事・前田佳子医師を迎えて、岩上安身のインタビュー「コロナ第5波感染爆発中! 五輪開催とコロナ感染拡大は安倍・菅政権による人災! パラリンピックは即刻中止を!」を8月20日に行った。
青木医師と前田医師は、「フラワーデモ」の北原みのり氏と松尾亜紀子氏、看護師で随筆家の宮古あずさ氏、東京新聞の望月衣塑子記者らと6人で、「私たちが止めるしかない 東京オリパラ〜女性たちの抗議リレー」のオンラインデモをYouTubeで配信してきた。毎週火曜日に行われている抗議リレーは、6月1日から8月17日までに12回配信されている。
青木医師、前田医師と松尾氏は、東京五輪開幕直前の7月12日に、日本外国特派員協会(FCCJ)で、東京オリンピックの中止を求めて記者会見を行い、IWJは中継を行った。
6月1日にYouTubeで配信された第1回の抗議リレーで、新型コロナウイルス感染症を「おそらく人類史上最大の疫病、大災害」ととらえる青木医師は、「医療を受けられず自宅で亡くなる人がいる中での五輪開催は許容できない」と訴えた。
前田医師は「医療現場全体としては7割くらいが女性」だと指摘し、「コロナによる医療現場への負担は、女性への負担」だと訴えた。エッセンシャルワーカーの約6割が女性といわれ、非正規雇用の約6割が女性であることから、コロナ禍が女性に過剰な負荷を負わせて、自殺の増加に結びついていると指摘した。
デルタ株が感染力の強い変異種であり、インドで巨大な感染爆発を引き起こしたことは周知の事実であった。
しかし、「東京五輪」の中止を訴えるマスメディアはなかった。無観客開催にするかどうかという議論はしても「中止」には踏み込まない。あくまで開催ありきで突き進んできたのは、大手メディアもまた、皆、五輪のスポンサー企業だからである。
その中で、「私たちが止めるしかない」と、声をあげた2人の医師は、現状をどう見るのか、岩上安身が6時間に渡ってお話をうかがった。
青木医師、前田医師には2017年9月5日に岩上安身がインタビューを行っている。ぜひ、こちらもあわせて御覧ください。
「空いてるベッドがあっても、いつも中華料理を作っている店でハンバーグ作ってと急に言われても、どうしたらいいのかわかりません」
青木医師は、「長年、災害問題にも取り組んできた。1995年の阪神淡路大震災、2011の東日本大震災を見てきて、いつか必ずやってくる首都直下大地震がライフワーク」だと自己紹介をした。今回のコロナパンデミックは建物は壊れないけれども、大きな災害が広がっているようだと述べた。
前田医師は、国際婦人年連絡会のCEOでもある。長らくニューヨークに滞在し、差別を受けていたユダヤ人が医学の勉強ができる場所として開設されたアルバート・アインシュタイン医科大学で研究されていたご経歴をお持ちである。
青木医師・前田医師のお二人は、フラワーデモの北原みのり氏・松尾亜紀子氏、宮古あずさ氏、望月衣塑子氏の6人と「私たちが止めるしかない 東京オリパラ〜女性たちの抗議リレー〜」を呼びかけた。
▲「私たちが止めるしかない 東京オリパラ〜女性たちの抗議リレー」のオンラインデモのようす
青木医師「どうしてもオリンピックを止めなきゃといって、周りで反対している人をかき集めたらこのメンバーになりました」
前田医師は、医療の現場は女性が7割、コロナによる医療現場への負担も女性にかかっていると指摘した。テレワークのできないエッシャンシャルワーカーや非正規雇用にも女性が多く、しわ寄せがきているのだ。
前田医師「非正規の人は仕事がなくなったり、若い人は相談する人がいなかったり。孤立してしまいますね」
青木医師「経済的なことも大きいんですよね。ホテルに勤めている人でも、非正規だと仕事がなくなってしまう。これまでは自殺は男性が多かったんですが、女性の自殺が増えました。ステイホームによるDVなど、社会の中で弱い立場にいる女性たちにしわ寄せが行っている」
政府が五輪を開催したことで多くの人の気が緩んだのか、繁華街でマスクをしていない人も多く見かけるようになり、そんな時にこれまでにない規模で感染が拡大し、医療も限界なのではないかと岩上安身が問いかけた。
▲東京都のホームページを見ると確保病床数には余裕があるように見えるが、実態は救急車も来ない・入院先も見つからない状況
前田医師「東京都は10万床くらいあって、空いている病床は1万くらいと言われていますが、自宅療養者が2万人を超えているので、みんなが入院できるわけではないです」
青木医師「空いてるベッドがあるんだったら、受け入れられないですかと行政の方も言うんですが、いつも中華料理を作っている店で、ハンバーグ作ってくださいと急に言われても、どうしたらいいのかわかりません。
実際には小さいところで何箇所かベッドが空いているというのではなく、これまでも夏場は小さく医療崩壊しているんです。去年、私の叔母が倒れた時、夜10時半ごろに駆けつけて病院に入れたのは翌朝の7時頃でした」
岩上「少し前まで救急車が毎日夜中でも走り回っていたが、ここ数日救急車の音がしない。これはなんだろうと。もうみんな諦めて救急車を呼ばないんだろうかと」
青木医師「119番をされると、まずは本当に救急搬送すべきかどうか医師が判断する。もう、軽症のコロナ患者の方は搬送できないと判断されているのではないでしょうか」
岩上「本当に、いざというとき受け付けてもらえないのかなと心配になります」
青木医師「通勤電車がかなりいっぱいなんですよ。満員電車の話がないのはどういうことでしょうね。それから、バス、電車、新幹線、飛行機、機密性の高いところなどが気になります」
前田医師「飛行機が危険なのは、今回のオリンピックではっきりわかりましたね。同じ飛行機に乗っていた人の間で感染が多かった」
そもそも「日本のコロナ政策は一番上のボタンがかかっていない」!?
日本は世界の潮流に逆らって、感染拡大から1年半経った現在もPCR検査をなお抑制したままである。12月下旬から始まった第3波の2倍以上の感染者数が出ている中で、東京都の行政検査の数は7日間移動平均でようやく1万3000件程度、陽性率は8月20日以来、20%以上のままである。圧倒的な検査不足の状況についてうかがった。
青木医師「目に見えないのが感染症なので、まずはPCR検査をやらないと。白黒分ければ、そのあと自ずから問題点が浮き彫りになってくる。日本は最初からそれをやってこなかったから、日本のコロナ政策は一番上のボタンがかかっていない。ボタンの掛け違いじゃなくて、ボタンがそもそもかかっていないんですよ」
▲中国は徹底検査でデルタ株の感染拡大を抑制
岩上「中国は恐るべきことにデルタ株を克服してしまいました。イデオロギーのことはさておき、虚心坦懐にみるべきだと思います。上海国際空港で1人感染者が出たら、7000人もの職員を一晩で検査した」