岩上安身は4月20日午後3時から、国立遺伝学研究所の川上浩一教授に録画収録によるインタビューを行った。
川上教授のご研究テーマは人間の遺伝子と多くの共通点を持つ「ゼブラフィッシュ」。
しかし、2020年新型コロナウイルスの感染拡大が広がる中で、川上教授はPCR検査を抑制する日本政府のコロナ対策に疑問を抱き、遺伝研の有志と栃木県宇都宮市のインターパーク倉持呼吸器内科院の倉持仁医院長の民間クリニックらとともに共同研究ネットワークを作り、手弁当で新型コロナウイルス検体の遺伝子解析をはじめた。
第4波を迎えてもまだPCR検査抑制を続ける日本政府。100万人あたりのPCR検査数は世界145位である。上昌広医師のインタビューでも繰り返し、検査と隔離という感染症対策の基本に忠実な中国がコロナウイルスの抑制に成功していること、「無症状社の検出」の重要性が指摘されてきた。
川上教授は「日本ではPCRが歪められて伝えられている。分子生物学をやってきた身としてはおかしいと思います」と指摘、岩上も「PCR抑制論を国がやっているので、周りの人間が有用性を貶めるようなことを言っている。ぜひデマを論破していただきたい」と応じた。
川上教授は、インターパーク倉持呼吸器内科の患者さんから採取された6検体のうちの1検体から、英国変異株とは異なる新しい変異株が確認されたと、2021年3月11日にツイッターで報告。
- 栃木で新しい変異株が出現! 栃木県のインターパーク倉持呼吸器内科の倉持仁医院長と国立遺伝学研究所の川上浩一教授の共同研究で英国株(B.1.1.7)、南アフリカ株(B.1.351)、ブラジル株(P.1)とは異なる新しい変異株を確認! この変異株にも免疫逃避能力が懸念される! 国立感染症研究所の発表した起源不明の新変異株394件と同じものか?(日刊IWJガイド、2021年3月13日)
現在、関西を中心に猛威をふるっている英国型の変異株は、N501Y変異を持ち、感染性、伝播のしやすさが高いとされており、2次感染率の増加、死亡リスクの増加の可能性を示唆する疫学データもある。
一方、南アフリカ型、ブラジル型と呼ばれる変異株は、このN501Y変異に加えてE484K変異を持つ。このE484K変異には、免疫逃避(免疫力があっても、その免疫が効かないこと)変異ではないかと指摘されており、せっかくワクチンを接種して、免疫力をつけても、その有効性を低下させる懸念がある。
インタビューでは変異と変異株について、川上教授にわかりやすくご説明いただいた。
川上教授らが独自に確認した変異株は、E484K変異を持ちながら、N501Y変異を持たないもの。免疫逃避の特徴をもつE484K変異を持ちながら、N501Y変異を持たない変異株は、同じ時期に前後して、慶應大学医学部臨床遺伝学センターや国立感染症研究所からも報告されており、E484K変異をもつ変異株が日本で広がっていることは間違いない。
川上教授は、日本には、放射能でもウイルスでも「封じ込める」という概念がないと嘆く。
現在、厚生労働省は英国型、南アフリカ型、ブラジル型に共通の変異であるN501Y変異のみを変異株としてスクリーニング調査しており、E484K変異をもつ変異株はスクリーニングしていない。川上教授は「E484Kに対する警戒が弱すぎますよね」と指摘した。
E484K変異のスクリーニング調査がなぜ行われていないのか、この国のもたつきは原因は何か。根本的に理解不足が国にあるのか、それとも厚労省内の医系技官らがPCR検査抑制論をすすめて今も護持しているのと同様の、またしても論理的には理解不能の「国策」なのか。
川上教授は変異株の蔓延を防止するために、検疫とゲノム調査の重要性を強調した。
「まずは検疫でPCR検査をする。それをすると全部見つけることができるので、その後でゲノムを調べればわかる。時間と手間を惜しんだ結果が今のような状態。変異うんぬんよりとにかく感染者を見つける」
検疫でもゲノムでも対策の原点にあるのが、POCR検査。川上教授は、日本でPCR検査に対する歪んだ認識が広がっていることを嘆き、「根本的に間違っている」と指摘。
「(初動時にPCR検査抑制方針を打ち出し、秋になってからその方針が間違っていたと認めた)鈴木技監は『PCR検査は完全ではない』と必ず言い訳する。日本以外にPCR検査に疑義を持ってる所はない」
「コロナは病態が読めないので軽症者に検査を推奨しないのはあり得ない。4日間待機も根拠のないこととすぐわかりましたし。とんでもないことが延々と来てますよね」
「イギリスも無症状の感染を甘く見て失敗した。無症状感染を検出する対策を推進しないといけない。それにはPCR検査」
川上教授は、コロナ検査キットの実験手順(プロトコール)を独自にアレンジすれば、現行の試薬量100回分で300回分の検査ができる可能性があると指摘した。
インタビュー後半では、m-RNAワクチン、ベクターウイルスワクチン、不活化ワクチンなど、それぞれのワクチンの特色について、副反応や今後の可能性などについて川上教授にご説明いただいた。
その後、川上教授が立ち上げたコロナに関するQ&A集「さようならコロナ.bot @adios_corona」に掲載された質疑やコロナ禍での東京五輪についてお話しいただいた。
詳しくはぜひIWJの会員となって、全編動画を御覧ください。