2020年4月21日、岩上安身は、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師に、第3弾となるインタビューを行った。

　米国スタンフォード大学などの研究チームは、カリフォルニア州のサンタクララ郡の住民の抗体検査を行った結果、新型コロナウイルスに感染した人が、確認されている感染者の50倍から85倍に及ぶとの推計を、19日までに発表した。

• コロナ感染者、実際は５０倍超か　米加州の抗体検査で推計（中日新聞、2020年4月20日）

　また、同じカリフォルニア州のロサンゼルス郡は20日、南カリフォルニア大学と共同で実施した抗体検査の結果から、感染者が確認されている人数の28倍から55倍に及ぶとの推計を発表した。

• 感染者数、実際は５５倍も＝新型コロナ抗体検査で推計―米ロサンゼルス（時事メディカル、2020年4月21日）

　米国が実施し始めた抗体検査とは、新型コロナウイルスに感染した際に体内にウイルスに対する抗体ができることから、一部の住民の抗体を検査し、全体の感染率を推計するものである。

　サンタクララでは人口の2.5%から4.2%、ロサンゼルスでは4.1%が抗体を持っていると推計されるとのことで、これは従来考えられていたよりはるかに感染が広がっていることがわかった。

　他方日本では、オリンピック延期が決まった途端、感染者数が増加。これはそれまで抑制していたPCR検査数を増やしたからではないか、と上氏は指摘した。

　日本のPCR検査の少なさは、世界中から批判されているが、WHO世界保健機関事務局長上級顧問の渋谷健司医師や、ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑・京都大学特別教授らが、複数のメディアで批判している。

• 検査少なく氷山の一角　医療機関直接発注こそ　ＷＨＯ事務局長上級顧問　渋谷医師が警鐘　ＴＢＳ系番組（しんぶん赤旗、2020年4月18日）
• コラム：コロナ対策、許されない迷走　ＰＣＲ検査は周回遅れ（ロイター、2020年4月16日）

　渋谷氏は「実際の感染者数は10倍以上いるだろう」と述べている。渋谷氏をよく知り高く評価する上氏は「カリフォルニアの抗体検査の結果からみても、日本の感染者数は10倍ではすまないはずだ」とコメントした。

　上氏は東日本大震災の後、渋谷氏とともに福島県相馬市で医療活動を行った際、直接地域を回って診療し、結果を一軒一軒回って説明したという渋谷氏のエピソードを紹介し、「患者を単なるデータ、モルモットとして扱う研究者とは姿勢が違う」と語り、政府の専門家会議を批判した。

　さらに上氏は、4月15日に厚労省クラスター対策班の北海道大学・西浦博教授が「行動制限をまったくとらなかった場合は、感染が広がり始めてからおよそ60日でピークを迎え、流行収束までに重篤患者数は約85万人」「約42万人が死亡する」と発表したことを次のように批判した。

　「このデータが、そもそもPCRをやっていないからわからないはずなんです。西浦先生がどこのデータをもってやられたのか。感染症は、はるか前に発症しているから、10日や20日じゃないですよ。10日から20日って言っているのに、2月に発症しているのに、こんなはずないじゃないですか。本当の数と検査の数の乖離が極めて大きいので、このデータは使えないんです。前提条件が間違っているので、西浦さんの議論は全く何の意味もないんです」

　その上で上氏は「こんなものを根拠にして政策を決めるべきじゃないんです。もう一度立ち止まって考えるべき。1週間遅れたって構わない。政府は『今から10日が勝負』みたいなことを延々言い続けていますから」と訴えた。

• 日時 2020年4月21日（火）18：00～19：30
• 場所 IWJ事務所（東京都港区）