現地時間2020年11月7日に、バイデン氏は米国大統領選挙での勝利宣言を行った。
その後の最初の取引となった、週明け11月9日のニューヨーク市場は、バイデン氏勝利によって安心感が広がったことに加え、米製薬会社「ファイザー」が新型コロナウイルスのワクチンの治験結果を「90%を超える予防効果がある」と発表したことから、コロナの収束の期待が高まった。
取り引き開始直後には、前週末比で1600ドル高の2万9933ドルを記録し、3万ドルに迫る史上最高値を更新した。
こうした市場の値動きは、経済優先でコロナ感染対策を軽視してきたトランプ候補ではなく、コロナ対策を重視して経済活動との両立を図ろうとするバイデン候補に、投資家が好感していること端的に示している。
なお、この市場の高騰の件に関しては、後日譚がある。
ニューヨーク市場は、その後急落したが、そこに日本メディアで語られない「カラクリ」があったことが、11日16日に行われた岩上安身によるエコノミスト田代秀敏氏へのインタビュー会員版で明らかにされた。ぜひ、会員版のアーカイブで御覧いただきたい。このテキストでも、会員版の部分で、明らかにしていく。
一方で、大統領選による米国社会の分断も浮き彫りになった。
投票日前には、トランプ候補支持者たちの一部は、交通を遮断したり、車体をわざとぶつけたり、バイデン候補支持者の投票行動を妨害していた。11月1日にトランプ候補は、妨害行為の動画を引用し、「I LOVE TEXAS! 」とツイートし、賞賛するような態度を示した。
- Dr. Eric Cervini氏のツイート(2020年10月31日)
- トランプ大統領のツイート(2020年11月1日)
投票の集計が始まり、11月3日には、トランプ候補に投じられた投票用紙が満たされた袋が燃やされたと見せかけた虚偽動画が、SNSで拡散された。11月4日には、トランプ候補の息子のエリック氏もこの動画を共有し、さらなる拡散に加担した。
- 「投票用紙」燃やす動画は偽物、現地当局が発表 トランプ氏息子も共有(CNN、2020年11月6日)
トランプ候補自身もまた、現地時間11月5日夜に「不正な票を集計すれば、彼らが選挙を我々から盗み出すことが可能になる」と述べ、バイデン陣営が票集計について不正を働いていると、根拠もなく決めつけるような演説を行った。
日本でも、11月5日に右派論客の門田隆将氏が、バイデン陣営を貶める悪質なデマを拡散した。バイデン氏が「不正投票組織を設立した」とだけ言ったように聞こえるよう、恣意的に加工した動画を引用して、ツイートをしたのだ。このツイートには2.4万件もの「いいね」がつき、ネトウヨ諸氏の多くの賛同を得た。
別のツイッタラーも11月5日、2016年にサウジアラビアで「腐った鶏肉」が捨てられている動画をリツイートして、「トランプ票の大量廃棄」として投稿した。このツイートには1359件もの「いいね」がつけられた。
- 「腐った鶏肉」が捨てられている動画を「トランプ票の大量廃棄」として投稿(動画が現在削除されている)
- Video shows Saudi Arabia getting rid of 80,000 packs of ‘spoiled chicken’(アルアラビーヤ、2016年11月17日)
氾濫する情報の中にあって、政治や社会への不満を背景に、誤った情報や悪意あるフェイクニュースを信じ込んでしまう人は少なくない。このように、分断社会が誤った情報をはびこらせ、それが社会の分断をいっそう深化させるという悪循環に、米国ははまりこんでいる。状況は日本でも変わらない。IWJは、今後も正しい情報を発信しながら、分断にあらがっていく。
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