2023年10月22日、午後1時30分より、東京・専修大学神田キャンパスにて、シンポジウム「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」(以降、「女たちの会」)が開催された。
このたびは「女たちの会」による第2回目のシンポジウムとなる。
第1回は、2023年6月4日に、このたび同様、専修大学神田キャンパスで開催され、東京大学名誉教授・千葉大学国際高等研究基幹特任教授の藤原帰一(ふじわら きいち)氏を招き、「安全保障のジレンマ」というタイトルで、基調講演が行われた。
第2回では、元経産官僚の古賀茂明氏による基調講演「平和主義を捨てた日本」が行われた。
その講演を受け、古賀氏と3人の女性、東村アキコ氏(漫画家)、田中優子氏(法政大学名誉教授・前総長)、前田佳子氏(日本女医会会長)によるパネルディスカッションが行われ、その後、参加者を交えての質疑応答となった。
基調講演の中で、古賀氏は次のように述べた。
古賀氏「確かに、最近、きな臭い感じはするけど、そんなに変わりましたかね? という人が結構多いでしょ。で、これは何かというと、要するに、他の国から見ると、『日本がだんだん普通の国に変わってきちゃってるな』という感じなんですよ。
悪いことをしてるというふうにはならない。だから、あんまり批判がないので、批判には日本は敏感ですけど、批判されないから気がつかないんですね。
安倍さんが、『日本は防衛予算を増やさないなんて言ったら、世界の笑いものだな』なんて言ってたんですよ。こんなことを平気で言える国になっている。
ウクライナのゼレンスキーさんが国会でビデオ演説やった時に、武器提供を要請しなかったんですね。日本にだけは。韓国には要請しましたよ。でも、日本には要請しなかった。それはアジアだからじゃないんですよ。
それについて、大使が『何で要請しなかったんですか』って聞いたら、『我々は憲法9条、あるいは日本の政治環境というはちゃんと理解しています。認識していますから』と言ったんですね。
つまり、批判するつもりはもちろんなくて、彼らは『日本の憲法9条というのはちゃんと尊重する』ということを言っているんです。だから、日本は、変な国なんですよ。世界では。本当に変わってる。絶対戦争しないなんて国は、まずない。特に先進国では一つもないですから。
だから、そのままでいればいいんです。そのままでいてね、変な国だから、『お前何だ?』って言われるかというと、言われないんですよ。そういう国だからそれは尊重します。それは尊敬されているんですね。…ということを考えればいいんです。
とにかくね、日本は『売るもの』が、『経済』がだめになっちゃったでしょう。だから、みんな戦争の心配している人が、ここにも多いんですけれども、僕はあまり心配じゃないんですよ。何でかというと、戦争の前に日本の経済が破綻しますから。戦争しますと言った途端に破綻しますよ。
だから、戦争にはならないと思うんですけど、でも、戦争に行こう行こうとするから、それが破綻を早める可能性は極めて高いんです。戦争のために全部、全財産を投げ込んでね、行ったら、そのおかげで破綻しちゃったみたいなことになるということであります」。
パネルディスカッションでは、登壇者がそれぞれ、古賀氏の講演の内容についての感想を述べた。
漫画家の東村アキコ氏は、次のように語った。
東村氏「先ほどの古賀さんの話を聞いて、私がこの、本当に15年ぐらい感じていた違和感が、すごくつながった感じがして、大変勉強になりました。
私は漫画家という職業ですので、そっちの視点からも話していいですか? 話をさせていただきたいんですけど。
漫画家というのは、世の中の『ムード』。特に、若い子たちの『ムード』というのをものすごく、一番身近に感じられる職業だと思ってます。その『ムード』を捉えて、その子たちが何か喜んでくれるものを作るという仕事です。(中略)
私は、常にそういうのを意識しながら生きていて、この15年ぐらいで、何か、ムードがすごく変わってきたなって思っていました。それは、こういう活動に参加する前から思っていました。
平たく言うと、男の子たちがなんか戦争をしたがっているような会話が多いな、という感じがしていました。それは何でだろうと、ずっと思っていました。(中略)
要するに、もう、俺ばっかり貧乏で、就きたい仕事にも就けず、毎日本当にカップラーメンとか。ごちそうも食べずに、パソコンばっかり、パソコンの前でばっかりお金のかからないことで、何となく満たしている人たちが、『もう別にこんな国、もうメチャクチャになっちゃっていいや』という、それがムードです。
私が感じる時代の『ムード』だと思ってます。そこは直結しています。だって、そういう子たちが選挙にも行くわけですし。
岸田さんとかが何を考えているのかというのは、私はもうわからないし、何で? どういうこと? っていう。でも分からないんですよ。会ったこともないしね。
でも、やっぱり、漫画を読んでますから、今の若い子たち。みんな。必ず。そういう子たちがどういう『ムード』なのかという方が、私はわかるので。
何だろう、その子たちが別に『危険思想』とまで言わないけれど、何となくそういう『ムード』に流れていっているというのを止めるべき。文化人として、漫画家として、例えば芸術家の人たちとかもね、何かできることを探していかなきゃ、緊急にいかないなと思っております」。
基調講演、およびパネルディスカッションの内容など、シンポジウムの詳細については全編動画をご確認ください。