2021年7月30日(金)10時40分より、映画館・新宿ピカデリーにて、映画『パンケーキを毒見する』公開記念スペシャルトークショーが行われた。
内山雄人(たけと)氏(本作監督)、前川喜平氏(元文部科学事務次官)、古賀茂明氏(元経産官僚)、河村光庸(みつのぶ)氏(プロデューサー)が登壇した。司会進行は奥浜レイラ氏(MC)が務めた。
『パンケーキを毒見する』は、『新聞記者』(2019年)、『i 新聞記者ドキュメント』(2019年)などの社会派作品を送り出してきた映画プロデューサー河村光庸氏が、企画・製作・製作総指揮を務め、第99代内閣総理大臣・菅義偉氏の素顔に迫った政治ドキュメンタリー。製作チームは、題材となる菅氏を直接撮影取材することがかなわないだけでなく、数々の取材拒否などの困難に遭いながら、現役の総理を批判するドキュメンタリー映画を完成させた。
公開初日、初回となるこの日の午前8時40分からの上映は満席となり、観客らは上映後のトークショーに聴き入った。
河村プロデューサーは、この映画を2021年初頭に製作開始し、オリンピックのまっただ中、かつ、衆議院議員選挙が近づくこの時期に公開する構想で企画した。そこから逆算される完成納期のために苦心したことが内山雄人監督から語られた。
製作の初期構想段階から関わった古賀茂明氏は、「河村プロデューサーとは、まずこれは面白いものにしなければならないということで、意見が一致した。批判するのだ、というところにばかり力が入ってはよくないが、内山監督は良い仕事をされた、良い映画ができたと思う」と語った。
また、古賀氏はかつて菅氏と対面した時の印象について、「堺屋太一さんに求められて菅さんの前でレクした機会があったが、相槌だけをして、まったく自分の意見を出さず、相手をうかがう人だった」と述べた。
内山監督は、『パンケーキを毒見する』の作中に風刺アニメの部分があることについて、「もともと『モンティ・パイソン』や、宮武外骨の『滑稽新聞』のようなものが好きで、そういう風刺画を入れたかった。こういう風刺画というのは日本においてすごく伝統があったのに、今は廃れてしまっているように見える。また、映像に変化をつけてYouTubeを多く見る若い世代にも本作をアピールしたかった」と語った。
前川喜平氏はまず、「私はこの映画に関してはほんのチョイ役で、今日ここに来てもしょうがないですが、肝心の主役『S氏』がどうしてもいらっしゃらないようですから、せめて、とやってきました。……菅さんの素顔はそうスガスガしいものではない。それはこの映画を見て、みなさんに知ってもらいたい」とユーモアを交えて挨拶した。
前川氏は続けて菅政権の問題点について、「かつての私の専門領域に関連づけて言うならば、教育分野への介入が著しい。特に、道徳教育。これは非常に難しいことで、戦前の『修身』に近い、『偉い人の言うことに無条件に従え』、とでもいうようなことが進められている」と述べた。
また、河村プロデューサーはじめ一同より、現在の日本のこの状況は、政権批判の視点を持たないマスコミによって作り出された、という指摘もなされた。それは、菅義偉首相の「パンケーキが好きなおじさん」という愛嬌あるイメージがつくりだされ流布されたことと、2020年10月に菅首相が大手新聞社の記者を招いてパンケーキを食べながら意見交換をする会を開いたこと、そこに疑念も緊張感もなく参加する記者・メディアを批判するという、本作の題名の由来と根本的な主題でもあった。
トークショーの詳細は、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。
映画『パンケーキを毒見する』(配給スターサンズ)は、2021年7月30日より新宿ピカデリーほか全国で公開中。https://www.pancake-movie.com/
©2021『パンケーキを毒見する』製作委員会