1923年9月1日に発生した関東大震災の直後に、数千人の朝鮮人と数百人の中国人が、日本の軍隊、警察、官憲や自警団を中心とした民間人の手によって虐殺された。政府の中央防災会議が2008年にまとめた報告書には、「犠牲者の正確な数はつかめないが、震災による死者数の1〜数パーセントにあたり、人的損失の原因として軽視できない」と指摘されている。
この「ジェノサイド」としか言いようのない朝鮮人、中国人の虐殺から、2023年は100年目となる。
民族差別問題に長年取り組んできた一橋大学名誉教授の田中宏氏や、元経産官僚の古賀茂明氏ら192人が呼びかけ人となった「関東大震災朝鮮人・中国人虐殺100年犠牲者追悼大会実行委員会」は、2023年8月31日に、東京都文京区の文京シビックホールで、大規模な犠牲者追悼大会を開催する。
また、9月2日には、国会正門前でキャンドル集会を開催し、9月3日には、神奈川県川崎市の在日大韓基督教会川崎教会で、国際交流シンポジウムを開催する。
これに先立ち、2023年8月25日、東京都千代田区の参議院議員会館で、実行委員会による記者会見が開催された。
田中氏は、震災後の1923年11月29日に発行された『帝国大学新聞』(現在の東京大学が発行した新聞)に、当時、関東大震災以前にも、植民地で朝鮮人に対する虐殺事件が起きていた、と指摘した、朝鮮人留学生が書いた記事を紹介し、「関東大震災のときの、一過性の事件ではないと、当時の朝鮮の人は理解していたことがわかる」と述べた。
韓国の又石大学碩座(せきざ)教授(寄付金等で研究活動をするよう大学が指定した教授)の徐勝氏は「日清戦争(1894年〜1895年)の契機となった東学農民の蜂起では、当時参謀次長であった川上操六は『東学教徒はすべて殺せ』と指示している。ジェノサイドの構成要件を備えた指示を出している」と指摘した。
さらに徐氏は、「そののち、義兵闘争である三・一運動(朝鮮独立運動)と、日本の植民地化行政に対する激しい抵抗があった中に、朝鮮に対する蔑視と憎悪が、日本人の意識の中に作られてきた。それがこの関東大震災における大虐殺の背景だ」と語った。
その上で徐氏は、「この問題が解明されず、その後これに対する正式な謝罪もなしに今日まできた」と指摘し、「日本と韓国の間の最大の未解決の問題のひとつとして、韓国で非常に注目されている」と語った。
古賀茂明氏は、「今起きていることの中に、(関東大震災での朝鮮人・中国人虐殺問題が)再現されつつある」と指摘し、次のように語った。
「大虐殺というのは、政府の流言飛語から始まったわけです。
それとまったく同じようなことが、今起きていて、『台湾有事で大変だ』と。『中国が攻めてくる』というような類の発信が、政府あるいは自民党からなされている。麻生(太郎・自民党副総裁)さんの発言(「戦う覚悟」)なんかは、まさにそういうものです。本当に万死に値すると思います」。
- 【第4弾! 自民党の麻生太郎副総裁が台湾有事で「戦う覚悟」を表明!「いざとなったら台湾防衛のために(防衛力を)使う」とまで発言!!】台湾のために戦うのは麻生の勝手! 麻生は自分1人で戦場へ行け! 自衛隊を巻き込むな!(『産経新聞』、2023年8月8日)(日刊IWJガイド、2023年8月9日)
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古賀氏は、「政府が率先して、嘘をばら撒いている。そして、それが元になっているということが、共通していると思うのですが、何か、中国とか、朝鮮・韓国とか、そういう国の人たちに関しては、嘘をついてもいい、みたいな、ちょっと自分たちより一段下の民族だと考えている感じが非常に強く出ている」と述べ、近隣諸国の反発にも関わらず、福島第一原発の汚染水を放出したことを「ひとつのあらわれ」だと語った。
古賀氏は「人権というものに対して、非常に政府の感覚が弱い。人権の基本中の基本というところが日本の政府にない」と指摘し、「これを放置すると、また同じ過ち(虐殺問題)が繰り返される。100年という節目であるから、というだけでなく、まさに今、そういう過ちが繰り返されようとしている時だからこそ、この問題を振り返って反省し、次に過ちを犯さないようにしなければならない」と語った。