2018年は、明治元年(1868年)から起算して150年。NHKの大河ドラマは林真理子氏原作の『西郷どん』で、激動の時代を生きた西郷隆盛を「明治維新のヒーロー」として大々的に取り上げている。
政府は「明治150年」関連施策推進室を設置し、「明治以降の歩みを次世代に遺す」「明治の精神に学び、更に飛躍する国へ」という方針のもと、さまざまな施策を展開している。
「明治期の人々のよりどころとなった精神を捉えることにより、日本の強みを再認識し、現代に活かす」とうたう安倍政権の「明治推し」キャンペーンは、自民党が再び政権を取った2012年12月の衆議院選挙のスローガン「日本を、取り戻す」を思い起こさせる。
あの選挙に勝利して第2次安倍内閣をスタートさせた安倍晋三首相は、自著『新しい国へ・美しい国へ 完全版』(2013年)の中で、前述のスローガンは「戦後の歴史から、日本という国を日本国民の手に取り戻す」という意味だと説明していた。
確かに、明治時代の日本は近代化に成功して大きく躍進した。しかし、単に「素晴らしい時代だった」と美化するだけでいいのだろうか。明治大学文学部の山田朗教授は、「歴史的な成功事例には裏面がある」と述べ、「日本の明治以降150年の、近隣諸国との付き合い方を真似してはいけない」と警鐘を鳴らす。
「歴史上、中国がやや地盤沈下していた時代に、日本人は『日本は他のアジアの国とは違う』という発想で近隣諸国と付き合ってきた。しかし、今は中国も経済大国化し、韓国も先進国である。明治から150年目にいる私たちは、何から学んで、どう変えていくか。それを考える良い機会だ」と山田教授は続けた。
2018年6月16日、東京都千代田区の明治大学駿河台キャンパスにて、「関東大震災朝鮮人虐殺問題を『明治150年』から考える」が開催され、山田教授による「『明治150年』と関東大震災 ~朝鮮人虐殺を生み出したもの~」と題した講演が行われた。
その中で山田教授は、第二次世界大戦の終戦から70年の節目となった2015年、安倍首相が発表した「安倍談話」について、日露戦争と日中戦争のとらえ方に疑問があるとし、「日露戦争は、『安倍談話』の言う『植民地支配の下にあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づける』ためでなく、欧米に追随したい日本が、日英同盟でイギリスに押されてやった戦争だ。さらに『安倍談話』では日中戦争が消し去られている」と指摘した。
そして、1923年(大正12年)に起きた関東大震災後の朝鮮人虐殺について、「明治維新以来、日本には『脱亜入欧』(*)的な発想があり、日清戦争以後、中国や朝鮮の人たちを対等の存在に見ない価値観が強く植え付けられた。虐殺は、関東大震災によるパニック状態の中で起きたのではなく、構造的に作り上げられた価値観が爆発した結果なのだ」と語った。
- 南千住警察署の裏庭で後ろ手に縛られた朝鮮人が次々撃ち殺された――数多の証言から辿る関東大震災・朝鮮人虐殺の『真実』~岩上安身によるインタビュー 第688回 ゲスト 『ほうせんか』理事・西崎雅夫氏 2016.11.17
- 噂を事実にしてしまえ!? 朝鮮人虐殺の責任を隠すため国家ぐるみででっち上げ!? 〜関東大震災で軍、警察、民衆は何をしたのか 2017.9.10
*脱亜入欧: 明治時代の日本で盛んに謳われた、「後進世界であるアジアから脱して、ヨーロッパの列強諸国の仲間入りをしよう」というスローガン。「富国強兵」とともに、明治政府の政策の根幹となり、政治、経済から文化面に至るまで幅広い分野で展開された。
「脱亜入欧」のスローガンのもとでの朝鮮侵略と植民地支配が朝鮮人虐殺を生み出した! 山田朗 明治大学教授が 「明治150年」の歴史認識を問う! https://iwj.co.jp/wj/open/archives/424796 … @iwakamiyasumi
負の歴史に向き合ってこなかったツケが日本を蝕んでいる。「栄光の明治」という幻想から目を覚まそう。
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