「脱亜入欧」のスローガンのもとでの朝鮮侵略と植民地支配が朝鮮人虐殺を生み出した! 山田朗 明治大学教授が 「明治150年」の歴史認識を問う! 〜 6.16講演「明治150年」と関東大震災 2018.6.16

記事公開日:2018.6.17取材地: テキスト動画
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(取材:城石裕幸 文:花山格章)

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 2018年は、明治元年(1868年)から起算して150年。NHKの大河ドラマは林真理子氏原作の『西郷どん』で、激動の時代を生きた西郷隆盛を「明治維新のヒーロー」として大々的に取り上げている。

 政府は「明治150年」関連施策推進室を設置し、「明治以降の歩みを次世代に遺す」「明治の精神に学び、更に飛躍する国へ」という方針のもと、さまざまな施策を展開している。

 「明治期の人々のよりどころとなった精神を捉えることにより、日本の強みを再認識し、現代に活かす」とうたう安倍政権の「明治推し」キャンペーンは、自民党が再び政権を取った2012年12月の衆議院選挙のスローガン「日本を、取り戻す」を思い起こさせる。

 あの選挙に勝利して第2次安倍内閣をスタートさせた安倍晋三首相は、自著『新しい国へ・美しい国へ 完全版』(2013年)の中で、前述のスローガンは「戦後の歴史から、日本という国を日本国民の手に取り戻す」という意味だと説明していた。

 確かに、明治時代の日本は近代化に成功して大きく躍進した。しかし、単に「素晴らしい時代だった」と美化するだけでいいのだろうか。明治大学文学部の山田朗教授は、「歴史的な成功事例には裏面がある」と述べ、「日本の明治以降150年の、近隣諸国との付き合い方を真似してはいけない」と警鐘を鳴らす。

 「歴史上、中国がやや地盤沈下していた時代に、日本人は『日本は他のアジアの国とは違う』という発想で近隣諸国と付き合ってきた。しかし、今は中国も経済大国化し、韓国も先進国である。明治から150年目にいる私たちは、何から学んで、どう変えていくか。それを考える良い機会だ」と山田教授は続けた。

 2018年6月16日、東京都千代田区の明治大学駿河台キャンパスにて、「関東大震災朝鮮人虐殺問題を『明治150年』から考える」が開催され、山田教授による「『明治150年』と関東大震災 ~朝鮮人虐殺を生み出したもの~」と題した講演が行われた。

▲明治大学文学部 山田朗教授

 その中で山田教授は、第二次世界大戦の終戦から70年の節目となった2015年、安倍首相が発表した「安倍談話」について、日露戦争と日中戦争のとらえ方に疑問があるとし、「日露戦争は、『安倍談話』の言う『植民地支配の下にあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づける』ためでなく、欧米に追随したい日本が、日英同盟でイギリスに押されてやった戦争だ。さらに『安倍談話』では日中戦争が消し去られている」と指摘した。

 そして、1923年(大正12年)に起きた関東大震災後の朝鮮人虐殺について、「明治維新以来、日本には『脱亜入欧』(*)的な発想があり、日清戦争以後、中国や朝鮮の人たちを対等の存在に見ない価値観が強く植え付けられた。虐殺は、関東大震災によるパニック状態の中で起きたのではなく、構造的に作り上げられた価値観が爆発した結果なのだ」と語った。

*脱亜入欧: 明治時代の日本で盛んに謳われた、「後進世界であるアジアから脱して、ヨーロッパの列強諸国の仲間入りをしよう」というスローガン。「富国強兵」とともに、明治政府の政策の根幹となり、政治、経済から文化面に至るまで幅広い分野で展開された。

記事目次

■ハイライト

  • 講演 山田朗氏(明治大学教授、明治大学平和教育登戸研究資料館館長、歴史教育者協議会委員長)
  • ※本編映像は、開会挨拶および山田氏講演部分のみの録画となっております。
  • タイトル 「明治150年」と関東大震災 ―朝鮮人虐殺を生み出したもの― 講演:山田朗 明治大学文学部教授
  • 日時 2018年6月16日(土)13:30〜
  • 場所 明治大学駿河台キャンパス(東京都千代田区
  • 主催 9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会/歴史教育者協議会詳細

ひとくくりに「明治の精神に学べ」というのは問題。明治には「学んではいけないこと」がある!

 はじめに山田教授は、「明治150年にあたって、私たちが何をとらえておかなければいけないのか」と述べて、改めて我々の歴史認識を論じていった。

 「今、焦点になっている9条改憲問題は、歴史認識問題そのもの。まさに、近現代日本の歴史、戦争や植民地支配の歴史をどうとらえるかが重要なファクターである。日本人が、日本の歴史をどう認識して、何を学びとり、何を継承するのかという問題なのだ。

 現在の改憲論の根底をなすのは、明治を栄光の時代と見る明治150年史観、明治礼賛論である。もちろん、封建時代から比べれば良くなったことがある。だから、明治の精神に学ぶ部分は当然あるべきだ。しかし、明治の精神で、学んではいけないことがある」

 政府のキャンペーンのように、すべてひとくくりにして「明治の精神に学べ」というのは、大きな問題を残すことになると警鐘を鳴らす山田教授は、明治礼賛論の頂点は日露戦争だと言う。

 「極東の小国である日本が、ヨーロッパの大国のロシアに勝利したというサクセス・ストーリー。その日露戦争の結果として起きたのが韓国併合で、同じ年に起きたのが大逆事件。これらは、明治時代を考える上で重要な3つの側面を表している。実は、これが関東大震災の時の朝鮮人虐殺を産む基盤になる。

 朝鮮人あるいは中国人を格下と見る考え方。もともとは『脱亜入欧』の考え方で、これは日清戦争以前から強くあった。これを広めたのは福沢諭吉だ。この考え方を元にして日本は朝鮮に進出、植民地支配をする。その植民地支配の過程の中で、朝鮮や中国の人々を格下と見ていく考え方が日本社会に根強く定着した。これが関東大震災という突発的な事件が起きた時、表面に出てきたのだ」

「強い日本を取り戻す」!? 改憲派が夢見る「明治の成功」の再現は無理! むしろ失敗から学ぶべき

 次に、山田教授は改憲論と明治150年史観との関係について語った。

 「憲法9条は、近代日本の歩みに対する一定の反省によって制定され、継承されてきた。護憲論の背景には、戦争や植民地支配、自由の抑圧に対する否定的な評価があり、全面的反省論であり、失敗事例に学ぼうというもの。逆に9条改憲論の基盤は、近代日本の歴史は成功だったから、その再現を期待する。特に明治時代は(国力が)右肩上がりの時期だったので、その精神に学んで日本を復活させよう、という考え方がベースにある」

 しかし、世界史的に見ると、成功事例と思われるものはなかなか再現できないと山田教授は言う。

(…会員ページにつづく)

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「脱亜入欧」のスローガンのもとでの朝鮮侵略と植民地支配が朝鮮人虐殺を生み出した! 山田朗 明治大学教授が 「明治150年」の歴史認識を問う! https://iwj.co.jp/wj/open/archives/424796 … @iwakamiyasumi
    負の歴史に向き合ってこなかったツケが日本を蝕んでいる。「栄光の明治」という幻想から目を覚まそう。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/1008280698468294656

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