大阪にテロリスト分子が「やばい数」潜伏中? 『ワイドナショー』で政治学者・三浦瑠麗氏が垂れ流した戦争プロパガンダを検証!三浦氏の「ヘイト発言」を大物芸人・松本人志氏が擁護!? 2018.2.18

記事公開日:2018.2.18 テキスト
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( IWJ編集部)

 「テロリスト分子がいるわけですよ。今ちょっと、大阪がやばい……」

 国際政治学者の三浦瑠麗氏による、2018年2月11日放送のフジテレビ系バラエティ番組『ワイドナショー』での発言が、放送直後から物議を醸した。しかし、年末に報じられた日本テレビ『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』のブラックフェイス問題同様、テレビ局側からは、寄せられた批判や疑問の声に真摯に応じる姿勢は見受けられない。

 11日の放送では、平昌オリンピックの開催を受けて、五輪と政治外交について意見が交わされていたが、ゲスト出演していた三浦氏は、米国と北朝鮮の間で戦争が始まり、北朝鮮最高指導者の金正恩氏が殺された場合には、韓国や日本に潜伏していたスリーパ-セル(番組テロップで『一般市民を装って潜伏している工作員やテロリスト』と補足)がテロへと動き始めると断定し、「それがソウルでも、東京でも、もちろん大阪でも。今ちょっと、大阪やばいって言われていて」と、工作員やテロリストが「やばい数ほど」大阪に潜伏していると言い放った。

 問題は三浦氏だけではない。生放送中、放送事故的にしゃべってしまった、という事ではなく、録画で、編集過程で番組制作側の判断として「スリーパ-セル」発言を残し、あまつさえ、その発言をテロップとして画面に刻んだのだ。この発言を流した番組と放送局の責任はまぬがれられないのではないか。MCを務めた東野幸治氏と山崎夕貴氏(フジテレビアナウンサー)、そしてレギュラーコメンテーターの松本人志氏の責任もである。

 大阪には、たくさんの在日コリアンの人々が暮らしている。三浦氏は直接の言及こそしていないが、「北朝鮮」「スリーパ-セル」「大阪やばい」というキーワードを散りばめて、大阪の在日コリアン社会の中に北朝鮮のテロ工作員が潜んでいるかのように印象づけた話を、子どもたちの多くも見ているであろう日曜午前中のお茶の間に向けて発信したのである。

 同番組レギュラーでコメンテーターの1人であるダウンタウンの松本人志氏は、この発言に疑問を呈するわけでもなく、相槌を打ちながら番組を進行した。放送終了後、SNSなどで「在日コリアンへの差別につながるのでは?」などの批判の声が高まると、松本氏は自身のツイッターに、「番組にゲストで出たタレントさんが叩かれていたりするとツライ。きっとサービス精神でいろいろ話してくれたのに」と、名前は明らかにしていないが、三浦氏を擁護したと思われるツイートを投稿している。

▲2月11日、松本人志氏ツイート
https://twitter.com/matsu_bouzu/status/962673623918985216

 しかし、松本は一週間後の2月18日放送の「ワイドナショー」の中で、そうした憶測を否定。「違うんですよ。Twitterってそういうもんでしょ。普段思ってることとか、つぶやくじゃないですか。そしたら、これに『三浦瑠麗さんのことっすねー』と来て。『どういうこと?』って思ったら、時を同じくして三浦瑠麗さんが大炎上していたんですね。ワシは知らんがな。そういうことを言ってるわけじゃなくて。三浦瑠麗さんのフォローをしていると思われた」などと釈明。Twitterでの発言は、ダウンタウンとして出演している『ダウンタウンDX』や『ダウンタウンなう』などの別番組についての言及だったとしている。

 他方、この日の同番組内で、三浦氏の発言そのものの是非について触れられることはなかった。

 昨今、大阪では「わさびテロ」や「韓国人差別バス切符」などのヘイトクライムが相次いでいる。そうした社会背景が現実にある中で、「北朝鮮のテロリストが潜んでいる」というひと言が「オレの番組」でながれることで、どんな影響がもたらされるか、松本氏はどう考えているのだろうか。

 ちなみに、松本氏は相方の浜田雅功氏と共に、2025年の国際博覧会の大阪誘致を盛り上げる「2025日本万博誘致アンバサダー」に就任している。片方で世界中の人々に「大阪へ来てや」と呼びかける大役を引き受けながら、他方で大阪にテロリストが大量潜伏中というヘイトまじりの根拠の曖昧な情報を流す。矛盾していると思わないのだろうか。

 一方、前日の2月10日、東京都内で行われた映画の封切りイベントに登場した女優の綾瀬はるかさんが、自分の夢を尋ねられて「世界平和」と発言したところ、それを揶揄するような伝え方をされている。

 おっとりした雰囲気で、バラエティ番組などで「天然キャラ」として笑いを誘う部分もある綾瀬さんだが、この日は「オリンピックも開催中ですし、夢は世界平和です。皆さんが、いつも笑顔で健やかに過ごせる、そんな世の中がいいです」としっかり回答している。広島出身の綾瀬さんには原爆で亡くなった親類もいて、平和を願うことはあたりまえの気持ちなのだろう。

 これを「壮大過ぎる」とし、「不思議ちゃんの綾瀬はるかに周囲はびっくり」というトーンで伝えることは、彼女の願う「世界平和」を矮小化し、まるで取るに足らないものであるような空気を作ってしまう。同様に、三浦氏の「スリーパーセル、大阪やばい」発言をメディアが看過することは、私たちの隣人への疑念や、無自覚な差別意識を育てかねないのである。

 日本のエンターテインメントの現場で、今、何が始まっているのだろうか。テロ工作員が特定地域に多いという根拠のない妄想を垂れ流し、世界平和を願うと「あの子、大きなこと言い過ぎ」とクスクス笑う。テレビでは相変わらず「日本すごい」系の番組が量産されている。今、娯楽を使って、静かに戦争プロパガンダが進行しているのかもしれない。

大阪万博の誘致役にもかかわらず、三浦瑠麗氏の「大阪やばい」はスルーする松本人志氏の「ダブスタ」ぶり

 三浦氏は何の根拠も示すことなく、北朝鮮のテロリストが一般市民を装って潜伏していると番組中で断定した。この発言にいち早く反応を見せたのがSNS上のユーザーたちで、「陰謀論とヘイトの合わせ技の最悪のデマ」「三浦瑠麗さん、大阪にテロリストが潜んでいるという根拠を具体的に教えてください」「関東大震災の時に『朝鮮人が井戸に毒を投げ入れた』とデマをばら撒き虐殺を扇動したのと同様の危険な行為」などとする意見が飛び交った。

 1923年9月に起きた関東大震災の混乱の中で「朝鮮人が放火している」「井戸に毒を投げている」といった流言飛語を信じた人たちが、当時、関東に暮らしていた朝鮮人や中国人を無差別に虐殺した事件が起きたことは、忘れるわけにはいかない。

 映画評論家の町山智浩氏は自身のツイッターで、「三浦瑠麗さんはワイドナショーで発言する際、関東大震災で朝鮮人がデマで虐殺され、アメリカで大戦中に日系人がスパイとされて収容所に入れられ、今、イスラム系の人々がテロリスト扱いされていること、それに自分の発言で韓国朝鮮系の子どもたちがどんな辛い思いをするか少しでも考えたのだろうか?」と強く批判している。

人権や人種差別に無頓着なダウンタウンは、時代を100年前に戻すのか?

 2017年の大晦日に日本テレビ系列で放送された『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!大晦日年越しスペシャル!』の『絶対に笑ってはいけない』シリーズでは、ダウンタウンの浜田氏が、米俳優エディー・マーフィに扮して肌を黒く塗ったことに「人種差別的だ」との声が上がった。イギリスのBBCやアメリカのニューヨークタイムズなどの海外メディアに批判的に取り上げられたことは記憶に新しい。

 三浦氏の今回の発言は、コリアン系の人々への人種差別を誘発し、関東大震災当時のデマに通じるヘイトを扇動する危険性が大いにある。しかも、『ワイドナショー』は録画である。三浦氏の発言に何も感じるところのないまま放映したのならば、フジテレビの姿勢もまた、問われるべきではないか。

 また、松本氏自身も、これまでに物議を醸すコメントを繰り返している。2017年5月には「共謀罪」法案について、「正直言うといいんじゃないかなと思ってるんですけどね」「冤罪も多少あるのかもしれないけど、未然に防ぐことの方がプラスが多い気もするし」と発言。「10人の真犯人を逃すとも、1人の無辜を罰するなかれ」という刑事事件の鉄則は知らないようだ。

 2017年12月の元横綱・日馬富士の暴行問題でも、「(相撲は)人を張り倒して投げ倒す世界じゃないですか。その世界で土俵以外のところで一切暴力はダメというのは無理があると思う。だったら稽古ってどうやってつけるんだろう。稽古と体罰ってすごくグレーなところで、それで強くなる力士もいる」と自説を展開。体罰と稽古の違いもわからないのかと、呆れる声が噴出した。

 芸人という仕事柄、人とは異なる「ユニーク」な発言を口にして、タブー破りに挑戦しているとのポーズを見せたり、「逆張り」をして目立ちたいという打算も働くのかもしれないが、芸能ゴシップならともかく、社会問題に関しては生半可な知識や思い込みで語るべきではないだろう。

 『ワイドナショー』の11日の放送中には、松本氏、東野幸治氏、元プロ野球選手の長嶋一茂氏のいずれも、マイクロソフト社の表計算ソフト「Excel」を知らず、スタジオが騒然となる一幕があった。ここまで社会性に乏しい人たちに、テレビで社会問題を扱わせていいのかと思わされる出来事だった。

 IWJ代表・岩上安身は、「番組の責任は重大です。ワイドナのようなクズ番組は打ち切り、松本は降板し、プロデューサーの首が飛んで当たり前。というか、視聴者がそこまで追い込まなくてはいけない。三浦瑠璃なぞ、便利に戦争へ向けてのプロパガンダに使われている三下」とツイートしている。

「大阪やばい」の根拠は「ネッシーあらわる」のフェイク記事で有名な英タブロイド紙だった!

 「スリーパーセル」発言の三浦氏は「根拠を示せ」との指摘に対して、ハフポストの取材に「朝鮮のスリーパーセルの存在については、例えばイギリスのメディアが、北朝鮮がラジオ放送に暗号を忍ばせて各国のスリーパーセルに指令を出していたと報じるなど、複数の海外メディアが記事にしています」と答えている。

 しかし、これにもすぐに疑念の声が上がった。文筆家の古谷経衡(ふるや つねひら)氏は、「北朝鮮の特殊工作員が常に日本の大都市部に潜んでいて、有事の際には事前の想定通り、独自に日本で破壊活動を行う・・・というある種の観念は、小泉訪朝に揺れた、ゼロ年代中盤におけるネット右翼の典型的対北朝鮮工作員観をトレースしたモノで、これを私は『工作員妄想』と名付けている」と看破した。

 三浦氏は2月12日、自身のブログでも反論を展開。「まず、下記(韓国の情報源に基づく英国の記事)では、北朝鮮から、ラジオを使って暗号が流されたことを報道しています。記事を通じて、スリーパー・セルの存在や、連絡手段のあり方が明らかになっている他、スリーパー・セルは、『各国にいる』とも表現されています。日本は、韓国に次いで北朝鮮にとっての重要な工作先ですから、日本にも存在すると想定することは当然でしょう」と述べている。

 しかし、三浦氏がリンクまで貼った「韓国の情報源に基づく英国の記事」というものが、実はゴシップ報道で知られる大衆向けタブロイド紙「デイリー・メール(Daily Mail)」だったのである。

(…会員ページにつづく)

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    大阪にテロリスト分子が「やばい数」潜伏中? 『ワイドナショー』で政治学者・三浦瑠麗氏が垂れ流した戦争プロパガンダを検証!三浦氏の「ヘイト発言」を大物芸人・松本人志氏が擁護!? https://iwj.co.jp/wj/open/archives/412551 … @iwakamiyasumi
    両者とも日本社会を歪めることしかしていない。「類は友を呼ぶ」のだ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/1056488287991324672

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