【第675号-676号】岩上安身のIWJ特報!「ウクライナ軍が第2戦線(防衛戦)を作れないのは、資材や資金を横流ししているから!」「今、大事なことは、領土の問題は棚上げにして、とにかく現時点の境界線で、戦闘をやめること。これ以上人が死ぬのを止めること!!」~岩上安身による東京大学法学部・松里公孝教授インタビュー 第1部・第1回 2025.4.1

記事公開日:2025.4.1 テキスト独自

(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!|特集 IWJが追う ウクライナ危機
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 2024年12月11日に行われた、岩上安身による東京大学法学部・松里公孝教授へのインタビューの続きである。

▲東京大学法学部・松里公孝教授(2024年12月11日、IWJ撮影)

 松里教授と岩上安身が、「大統領就任24時間以内の停戦」を謳ったトランプ次期米大統領(このインタビュー時点は大統領就任前)による、ウクライナ和平案を検討したが、ロシアが占領したウクライナ領土の奪還も、ウクライナのNATO加入も、困難と思われた。

 この状況に対し、松里教授は、将来的にウクライナがロシアに「経済的に勝てばいい」と主張した。「西側が本気でウクライナの残部を援助して、ウクライナがロシアよりも繁栄するという状態になったら、住民は豊かな方に移りたい」と思うものであるからだと述べた。現在の「ウクライナの1人あたりGDPは、ロシアの3分の1」だが、「3倍に伸ばせばいいじゃないですか、西側が援助して」。すなわち「一番大事なのは、西側に入れば、NATOに入れば、EUに入れば、豊かになれるという構図を作ること」というのである。

 これに対して岩上安身は、「それは不可能なんだってことを、証明したんじゃないですか?」と問いかけた。アメリカが、「分断して統治せよ」の原則で、ロシアから欧州向けの天然ガスのパイプラインを断ち切るなど、欧ロ友好を妨げた結果、安価なエネルギー資源の供給が妨げられ、西欧の中核であるドイツの産業経済力も落ち、西欧も貧しくなっている。そこにぶら下がる東欧では、ハンガリーやスロヴェキアなど、バイデン政権の米国・NATOの対露強硬方針に叛旗を翻す動きが各所に見られるようになっている(トランプ政権は、バイデン政権とは正反対の、ウクライナ紛争の停戦、対露緊張緩和の方向へと舵を切った)。

 一方、米軍の関係者による、ウクライナの兵役年齢を25歳から18歳に引き下げるべきという主張に対しては、松里教授は「(ウクライナの)民族がいなくなる」と反駁。今回の戦争で、もし20万人、ウクライナ側が死んだとしたら、子供が生まれなくなることで、実際には100万人の人口減の打撃があると述べた。したがって、「本気でまず考えなきゃいけないのは、ウクライナ人の人口を、これ以上減らさないこと」だと強く語った。

 松里教授は、「今はとにかく停戦して」、「経済的にはウクライナに残るところは助けてあげて、人口を増やして、ロシアを経済で追い越して」、「それで、クリミアやドンバスの人たちが、『ウクライナの方が豊かに暮らせる、ウクライナに戻りたい』と思わせるしかない。それが、唯一の道」だと述べる。

 しかし岩上は、ウクライナ人の犠牲をこれ以上増やさないためにも、すみやかな停戦が必要であることに同意しつつも、西側がウクライナを支援して、ロシアよりも豊かになり、領土を取り返す「唯一の道」は実現が困難ではないかと、再度問い返した。

 米国をはじめ、西側の「善意」には、期待できないという見方である。戦争による膨大な借款に対する担保として、ウクライナの肥沃な大地を、モンサントのようなグローバル企業が手に入れるなど、外資が入ってきて、全部根こそぎになる可能性を指摘した。

 なおその後、実際に、大統領に就任したトランプ氏は、これまでの軍事支援の見返りとして、レアアースなど資源の権益譲渡を、ウクライナに対して求めている。

※レアアースめぐる協定「合意に近づいている」トランプ氏 ウクライナへの“安全保障”の見返りに権益譲渡求める(TBS,2025年2月25日)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1750629?display=1

 これに対して、松里教授は、ウクライナは、教育の重要さに目覚めるなど、「住民が自覚を変えないとダメだ」と指摘。「教育の重要さに目覚めるとか、市民的な自覚を持つ」ことで、「いわば明治日本みたいになればいい」という。たとえば、ウクライナ語のみを強制するような教育を変えるためには、ソ連時代の悪い残滓である「基幹民族(※1)」という発想を捨て、「ウクライナはウクライナ人のもの」という考えを根本から変えなくてはいけないと述べた。

 その上で、4500万の人口が1000万人減って、3千数百万人になってしまったウクライナを、「(海外に出て行った国民が自発的に)戻りたくなる国にしなきゃだめだ」と、改めて力説した。

※「ウクライナ軍が第2戦線(防衛戦)を作れないのは、資材や資金を横流ししているから!」「今、大事なことは、領土の問題は棚上げにして、とにかく現時点の境界線で、戦闘をやめること。これ以上人が死ぬのを止めること!!」~岩上安身によるインタビュー第1173回ゲスト 東京大学法学部・松里公孝教授 第1部・第1回
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/525951

記事目次

トランプ大統領の和平案はウクライナには厳しい内容になるだろう。「NATOには入れない、取られた領土は諦めろ」!?

▲トランプ和平案はどうなる?https://bit.ly/4gZSZJW

岩上「で、トランプ和平案はどうなるのかということなんですけれども。『トランプ和平案はまだ公式には発表されていない』。これは、当たり前のことですね。

 ただ、ヴァンス次期副大統領と、ウクライナ特使に指名された陸軍退役中将のキース・ケロッグ氏の、『戦争終結に向けた提案から、推測される和平案』は、『1)ウクライナのNATO加盟を10年程度先延ばし。2)ロシア占領地域に対し、ウクライナは軍事的に奪還することをやめ、外交的手段で奪還を目指す』と。だから、ウクライナに対して、奪還は、やっぱり、やるんなら外交手段だよ、という話のようですけど。

 で、『ウクライナ西部にNATO加盟国による「平和維持軍」が駐留する可能性も示唆』っていうんですけど、これはロシアは、のまないでしょうね。という気がするんですけどね」

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