タッカー・カールソン氏によるプーチン大統領インタビューの翻訳(第10回)をお届けします。
- The Vladimir Putin Interview(タッカー・カールソン・ネットワーク、2024年2月8日)
このインタビューの翻訳の第12回目は、最終回でもあり、プーチン大統領は、AIや遺伝子工学の発展を止めることはできないと、核兵器や火薬の発展と比較しながら論じています。
「かつて人類は、核兵器による存亡の危機を感じました。核兵器を無頓着に使用すると人類を絶滅に追い込みかねないと、すべての核保有国が認識し、互いに歩み寄り始めました。
かつて火薬の使用を止めることが不可能だったように、今日、遺伝学やAIの研究を止めることは不可能です。しかし、AIや遺伝学、あるいは、その他の分野の奔放で無秩序な発展が脅威であることに気づけばすぐに、これらを規制する方法について国際的な合意に達する時が来るでしょう」。
プーチン大統領のこの発言は、理想的ではありますが、やや楽観的に響きます。
核兵器の無頓着な使用を防ぐことができたのは、人間理性のせいではなく、米ソの間で、核の恐怖の均衡が成り立っていたからに違いありません。今、それらの均衡や、核抑止の条約から、米国が離脱したことで、「使えない核」から「使える核」へと、リスクが高まっています。
AIや遺伝子工学による大規模被害については、人類共通の破局的な被害経験はまだしていませんし、核と違って巨大な装置を持てる大国だけが、持ちうるのではなく、テロのような形で、BC兵器やサイバー攻撃に採用されうるので、「核の恐怖の均衡」のような抑止力がききません。
予防的な議論だけで、国際的な合意に達することができるかどうか、警戒心を忘れず、今後の行方を注視する必要がありそうです。
また、プーチン大統領は、ウクライナ紛争中、外交関係は断絶していても、捕虜の交換で米露の諜報機関同士には連絡がある、という興味深い事実にも言及しています。
さらに、ほとんど、西側で報道されない事実として、ウクライナ紛争が内戦の性格も持っている点を、自らをロシア人と自認するロシア語話者のウクライナ兵を例に語っており、注目されます。
このインタビューを通じて、プーチン大統領は、一貫して、停戦交渉の可能性を否定せず、実際に、トランプ大統領の停戦要請には、条件付きで応じています。
インタビュー翻訳の第1回は、以下から御覧になれます。
- タッカー・カールソン氏によるプーチン大統領インタビュー全編の翻訳を開始!(第1回)冒頭は、プーチン大統領による仰天のロシア・ウクライナの歴史講義! IWJは慎重にインタビュー内容を吟味しながら、可能なかぎり注や補説で補い、あるいは間違いの検証をしながら全文の翻訳を進めます!
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以下から、タッカー氏によるプーチン大統領インタビュー第12回となります。
タッカー氏「それで、AI帝国はいつ始まると思いますか?」
プーチン大統領「(笑)。それは、ますます複雑な質問です。それに答えるには、ビッグデータやAIの専門家である必要があります。
遺伝子研究者のせいで、人類は現在多くの脅威に直面しています。今や超人を作ることができるのです。特別な能力をもつ人間です。たとえば、遺伝子操作されたアスリート、科学者、軍人。
すでに米国で、イーロン・マスクが人間の脳にチップを埋め込んだという報告もあります」
タッカー氏「あなたは、それをどう思いますか?」
プーチン大統領「イーロン・マスクを、止めることはできないと思います。彼は、自分が妥当だと考えることを実行するでしょう。とはいっても、彼と共通の前提を見つける必要は、あるでしょう。彼は、賢い人だと思います。本当に、そう思います。
だから、彼と合意に達する必要があります。このプロセスは形式化され、一定のルールに従う必要があるからです。人類は、遺伝学やAIの最新の発展によって、何が起こるかを考えなければなりません。何が起こるか、おおよその予測はできます。
かつて人類は、核兵器による存亡の危機を感じました。核兵器を無頓着に使用すると人類を絶滅に追い込みかねないと、すべての核保有国が認識し、互いに歩み寄り始めました。
かつて火薬の使用を止めることが不可能だったように、今日、遺伝学やAIの研究を止めることは不可能です。しかし、AIや遺伝学、あるいは、その他の分野の奔放で無秩序な発展が脅威であることに気づけばすぐに、これらを規制する方法について国際的な合意に達する時が来るでしょう」
タッカー氏「お時間をいただきありがとうございました。最後に、1つだけ質問させてください。おそらくこちらではあまり知られていないでしょうが、米国ではとても有名な人に関することです。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』の記者エヴァン・ガーシュコビッチ(※注1)です。彼は32歳で、1年近く刑務所にいます。これは米国で大きな話題になっています。
あなたに直接おうかがいしたいのですが、事の詳細や、何が起こったかについてのあなたの見解は抜きにして、あなたの良識の証として、彼を解放してくださるつもりはあるでしょうか?
解放されたら、私達が彼を米国に連れて帰ります」
プーチン大統領「我々は、良識を持って多くの善意の意思表示をしてきましたが、それも限界を超えていると思います。誰かが、私達に同じようなやり方でお返ししてくれるのを、見たことがありません。
しかし、理屈の上では、パートナー諸国が、互恵的な措置を取れば、我々もそのような措置を取る可能性は否定しないと言えます。
パートナー諸国について語るとき、私はまず諜報機関(special services)のことを言っています。諜報機関は互いに連絡を取り合っています(※注2)。彼らは、この問題について話し合っています。この問題を解決することに、タブーはありません。
我々はこの問題を解決したいと思っていますが、諜報機関のチャンネルを通じて議論されている一定の条件があります。合意に達することができると私は信じています」
タッカー氏「概して、このようなことは、確かに何世紀も前からあることだと言っています。ある国が、国境内で他国のスパイを捕まえる。それを、他国にいる自国の諜報員と交換する。
私が関知することではありませんが、ただ違うのは、この男が今回、スパイではないのが明らかだということです。彼はまだ子どもで、何らかの形であなたの国の法を犯していたのかもしれないが、スーパースパイではないし、それは誰もが知っていることです。
そして、彼は交換条件として人質に取られている。それは事実です。それは本当です。そして誰もが、それを知っています。だから多分、彼は違う範疇の人間でしょう。彼を解放する代わりに他の誰かを要求するのはフェアではないかもしれない。それは、ロシアの品位を落とすことになりかねません」
プーチン大統領「何をもってスパイとするかについては、さまざまな解釈があるでしょう。しかし、法律で定められていることがあります。ある人が秘密情報を入手し、それを陰謀的な方法で行った場合、それはスパイ行為とみなされます。
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