【IWJ号外】タッカー・カールソン氏によるプーチン大統領インタビューの翻訳!(第9回)「プロパガンダ戦争で米国に勝つことは難しい。なぜなら、米国は世界とヨーロッパの多くのメディアを支配しているから」 2025.2.18

記事公開日:2025.2.18 テキスト

(文・IWJ編集部)

 タッカー・カールソン氏によるプーチン大統領インタビューの翻訳(第9回)をお届けまします。

 この歴史的インタビューは、ロシアと米国の関係史の、一方の当事国であるプーチン大統領の非常に貴重な証言を含んでいます。

 トランプ大統領の就任直前に、ガザ紛争は形式上、停戦したものの(イスラエル軍による一方的なパレスチナ人殺戮は日々、続いている)、パレスチナ人を全員、ガザから追い出して、ガザでリゾート開発を行うというとんでもない「提案」を、トランプ氏が臆面もなく述べた今、就任前にさかんに豪語していた、ウクライナ紛争を早期に停戦させるという発言が、別の響きを帯びてきます。

 ウクライナ紛争を早期に停戦させたとしても、その功績を盾に、ウクライナの復興に、トランプ政権が、米国の国益拡大をもくろんで、とんでもない形で介入するかもしれない、という危惧です。

 現に、トランプ大統領は、これまでの軍事支援の対価として、レア・アースを提供せよと、ウクライナに要求していますが、こうした地下資源は、ロシアが併合したドンバス地方に偏って存在しており、ウクライナ政府がおいそれと発掘して、提供できる状態にはありません。

 トランプ大統領も、そうしたことはわかっているはずで、実現不可能な要求をつきつけて、ゼレンスキー氏のさらなる軍事支援を、という要求をはねのけようとしていると思われます。

 トランプ氏には、国際法も国連決議も、存在しないも同然です。彼は「アメリカ・ファースト」であると同時に、「シオニスト・ファースト」でもあり、それ以外の世界には、「利益」になること以外の関心をもっていません。

 このタッカー氏によるプーチン大統領へのインタビューの第9回では、タッカー氏は、ノルド・ストリーム爆破の犯人に正面から切り込んでいます。

 これに対するプーチン大統領の答えは、さながら、推理小説のような様相を呈しています。

 しかし、きわめて、まっとうな推理です。

 プーチン大統領の答えは、「犯人」は、利害関係があり、かつ、それを実行できる技術力・組織力のある勢力です。

 この2つの条件を同時に満たすのは、米国を置いて他はなく、仮に単独犯ではないにしても、メインプレイヤーであることは、ほぼ間違いのないところでしょう。

 他方で、トランプ政権は、CIAの全職員を対象に早期退職勧奨を実施しています。CIAを弱体化しようとしているのは、どのような政治的意図があるのか、説明が不足しています。

※はじめに~あのCIAがリストラ!? 諜報活動だけでなく、世界の国々に介入し、情報工作や政権に対する工作や転覆すらも行なってきたCIAが、トランプ大統領の連邦政府縮小方針に従い、全職員を対象に早期退職勧奨を実施! 年々膨れ上がってきた情報機関では初! CIAの活動は、今後、全世界での活動から、トランプ大統領が重視する、中国の弱体化、メキシコの麻薬カルテルとの戦いなどに絞りこまれる!? 全世界に支配的影響力をおよぼす米国の単独覇権を支えたCIAの縮小は、多極化の容認への第1歩か!?(日刊IWJガイド、2025年2月10日)
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 この第9回では、ノルド・ストリーム爆破の犯人が米国である証拠を聞かれて、プーチン大統領は、明確に次のように指摘しています。

 「プロパガンダ戦争において、米国に勝つことは非常に難しいのです。なぜなら、米国は、世界中のメディアと多くのヨーロッパのメディアを支配しているからです」。

 これは、現在、世界中で問題となっている米国(特に、USAID=米国際開発庁)による世界のメディア支配について、プーチン大統領が明確に認識していた点は注目に価いします。

 インタビュー翻訳の第1回は、以下から御覧になれます。

※タッカー・カールソン氏によるプーチン大統領インタビュー全編の翻訳を開始!(第1回)冒頭は、プーチン大統領による仰天のロシア・ウクライナの歴史講義! IWJは慎重にインタビュー内容を吟味しながら、可能なかぎり注や補説で補い、あるいは間違いの検証をしながら全文の翻訳を進めます!
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 インタビュー翻訳の第2回は、以下から御覧になれます。

 インタビュー翻訳の第3回は、以下から御覧になれます。

 インタビュー翻訳の第4回は、以下から御覧になれます。

 インタビュー翻訳の第5回は、以下から御覧になれます。

 インタビュー第6回は、以下から御覧になれます。

 インタビュー第7回は、以下から御覧になれます。

 インタビュー第8回は、以下から御覧になれます。

 前回の第8回では、ウクライナに侵攻した目的の一つ、「非ナチ化」について、プーチン大統領は、主に語っています。

 ウクライナにナチスは存在しない、というのが、西側の公式見解です。

 しかし、プーチン大統領は、ヒットラーの思想を、ウクライナが国家として称揚している証拠として、ゼレンスキー氏がカナダを訪問した際、議会において、元ナチス親衛隊だった人物に対し、カナダ議会議員全員ととともに、ゼレンスキー氏が、スタンディング・オベーションを行った事実をあげて反論します。

 ウクライナの「非ナチ化」と「非武装化」は、ロシアがウクライナへ侵攻した3つの理由の1つです。

 このテーマが、トランプ氏との今後の和平交渉の議題として、改めて浮上する可能性もあります。

 以下から、タッカー氏によるプーチン大統領インタビュー第9回となります。


タッカー氏「(特別軍事作戦の前に、プーチン氏がバイデン前大統領と話した内容に)興味はあります。しかし、外から見ていると、これは全世界を巻き込むような紛争に悪化、あるいは発展しかねないし、核兵器が発射されるような事態にもなりかねない。

 そういう事態なのですから、なぜあなたはバイデンに電話して、解決しましょうと言わないのですか?」

プーチン大統領「何を解決するというのですか? とても簡単なことです。繰り返しますが、我々はさまざまな機関を通じて接触しています。この件に関して我々が言っていること、米国の指導者に伝えていることをあなたに言いましょう。

 本当に戦闘をやめたいのなら、(米国がウクライナへ)武器の供給をやめる必要があります。そうすれば数週間以内に戦闘は終わるでしょう。そういうことです。それを実行する前に、我々はいくつかの条件について合意することができる。それだけです。これほど簡単なことがありますか? 

 私が彼に電話するなんて? 彼に何について話せばいいのでしょうか? それとも何を彼に懇願するべきなのでしょうか?」

タッカー氏「で、(米国政府からは)どんなメッセージが返ってきますか?」

プーチン大統領「あなたがたは、ウクライナにあんな武器やこんな武器を届けようとしていた。ああ、怖い、怖い。やめてくれ。そんな人たちと何を話すのですか?」

タッカー氏「これが世界規模の戦争や核紛争になることを、NATOが心配していると思いますか?」

プーチン大統領「少なくとも彼らはそう言っています。そして、ありもしないロシアの脅威を語って自国民を怖がらせようとしようとしています。これは明白な事実です。

 そして、ものを考える人たち、俗物根性の人ではなく、考える人たち、アナリスト、実際の政治に携わっている人たち、賢い人たちは、これがフェイクであることを完全に理解しています。

 彼ら(NATO)は、ロシアの脅威を煽ろうとしているのです」

タッカー氏「あなたがおっしゃるその脅威とは、ロシアがポーランドやラトビアに侵攻することだと思います。

 拡張主義的な振る舞いです。

 ポーランドにロシア軍を送るシナリオは、想像できますか?」

プーチン大統領「一つだけあります。ポーランドが、ロシアを攻撃した場合です。なぜか?

 ポーランドにもラトビアにも、他のどこの国にも、我々は何の関心もないからです。なぜ(ロシアが)侵攻するなどと思うのですか? 

 我々は、単に(他国の領土に対して)関心がないのです。それは、ただの脅し文句です」

タッカー氏「そうですか。議論はこうです。

 ご存知の通り、ウクライナに侵攻した人がいる。彼は大陸全域に領土的な狙いがある。そして、あなたは明確に、そうではないとおっしゃるのですね」

プーチン大統領「まったく問題外です。分析家にならなくてもわかることです。世界規模の類の戦争に手を染めるのは常識に反するし、世界規模の戦争は全人類を破滅の淵に立たせる。当たり前のことです。

 抑止の手段は確かにあります。彼らは我々を指して、ずっと皆を脅かしてきました。明日、ロシアは戦術核を使うだろう。明日、ロシアはそれを使うだろう。いや、明後日だ。

 これは、どういうことでしょうか?

 ウクライナを戦場として、ロシアと対決して、米国の納税者や欧州の納税者から追加の金をせしめるためです。

 しかし、その目的は、ロシアを可能な限り弱体化させることなのです」

タッカー氏「ニューヨーク州選出の上院議員チャック・シューマー氏が、昨日だったと思いますが、ウクライナが行っている苦闘に資金を提供し続けなければ、米軍兵士が現地で戦うことになりかねないと述べました。

 それをどう評価しますか?」

プーチン大統領「それは挑発です。安っぽい挑発だ。なぜ米国兵がウクライナで戦わなければならないのか、私には理解できません。

 ウクライナで戦っているのは傭兵です。最も多いのは、ポーランド出身の傭兵で、2番目が米国出身の傭兵、3番目がグルジア出身の傭兵です。

 もし正規軍を送りたいと願望する人がいるなら、それは人類を非常に深刻な世界戦争の瀬戸際に立たせることになるでしょう。それは明らかです。米国は正規軍派兵を必要としているのでしょうか?

 何のために?

 ウクライナは、米国の領土から何千マイルも離れています。他にもっと良い方法があるでしょう? 

 米国は、国境に問題を抱えていますね。移民問題です。それに国家債務問題。33兆ドル以上です。何か他にましなことがないから、ウクライナで戦うべきだというのですか? 

 (米国政府は)ロシアと交渉した方が、いいのではないですか? 今日展開している状況は、すでに理解しており、ロシアが最後まで自国の利益のために戦うこともわかっているのだから、(停戦、もしくは和平の)協定を結ぶべきです。

 そして、このことが実際に常識へ立ち戻ることになるのだと理解し、自国の利益の尊重に一歩踏み出し、一定の解決策を模索する。

 その方が、はるかに賢明で合理的だと私には思えます」

タッカー氏「ノード・ストリームを爆破したのは、誰なのですか?」

プーチン大統領「あなたたちですよ、間違いなく(笑)」

タッカー氏「私はあの日忙しかったので、ノルド・ストリームは爆破しませんでしたよ。でもありがとう(笑)」

プーチン大統領「あなた個人には、アリバイがあるかもしれないが、CIAにはそんなアリバイはありません」

タッカー氏「NATOもしくはCIAがやったという証拠はありますか?」

プーチン大統領「詳細は省きますが、このような場合、いつも『利害関係のある人を探せ』と言われます。

 ノルド・ストリームの件では、利害関係を持っている人を探すだけでなく、爆破する能力も持っている人を探さなければならない。

 利害関係を持っている人は多いですが、その全員がバルト海の底に潜って、この爆破を実行できるわけではない。

 この2つの要素は、つながっていなければならない。利害関係を持ち、かつ実行できるのは、誰でしょうね?」

タッカー氏「でも私にはよくわかりません。つまりあれは、史上最大の産業テロで、史上最大量のCO2排出だ。

 多分あなたの安全保障機関や諜報機関からの情報でしょうが、証拠があるというなら、NATOや米国やCIAや西側諸国がやったと、証拠を提示してプロパガンダ戦争に勝利すればよいと思いますが、なぜそうしないのですか?」

プーチン大統領「プロパガンダ戦争において、米国に勝つことは非常に難しいのです。なぜなら、米国は、世界中のメディアと多くのヨーロッパのメディアを支配しているからです。

 ヨーロッパ最大のメディアは、最終的にアメリカの金融機関に利益をもたらすように仕事をしているのです。それを知らないとでもいうのですか? ですから、このことに関わることは可能だとしても、いわば法外な費用がかかるわけです。

 我々の情報源にスポットライトを当てることぐらいはできるけれども、成果は得られない。あのとき何が起こったかは、全世界に明らかにされています。米国のアナリストでさえ、そのことを端的に話している。それは事実なのです」

タッカー氏「そうですね、でもここで、あなたなら答えられるかもしれない質問があります。よく知られていることですが、あなたはドイツで働いていたことがありますね(訳注1)。ドイツも加盟している北大西洋条約機構(NATO)のパートナーが、これを行ったことは、ドイツ人もよく知っています。ドイツ経済は大きな打撃を被り、回復不可能かもしれません。なぜ彼らは沈黙しているのでしょうか? 私には非常に不可解です。なぜドイツは何も言わないのでしょうか?」

プーチン大統領「それは私にも不可解です。しかし今のドイツの指導者たちは、自国の国益よりも西側の集団利益に添って動いているのです。そう考えなければ、彼らの行為や不作為の論理を説明するのは難しい。

 結局のところ、問題なのは、ノルド・ストリーム1が爆破され、ノルド・ストリーム2が損傷したということだけではなく、パイプのひとつは無事で何の損傷もない、そこからヨーロッパにガスを供給できるということです。

 しかし、ドイツはそれを開きません。私たちは、いつでも開通できます。そうなのです。もう一つヤマル・ヨーロッパという、ポーランドを経由するパイプラインのルートがあって、こちらも大量供給が可能です。ポーランドはこのルートを閉鎖していますが、ドイツの手から餌をついばんでいます。

 ポーランドは、汎欧州基金から資金をもらっており、ドイツはこの汎欧州基金の主要ドナー国です。ポーランドは一定程度、ドイツに養ってもらっているわけですが、ポーランドはドイツへの(天然ガスパイプラインの)ルートを閉鎖している。なぜでしょうか?

 私にはウクライナも理解できない。ドイツはウクライナに武器を供給し、資金を提供しています。ドイツはウクライナへの資金援助において、米国に次ぐスポンサーです。ウクライナを通るガスルートが2つあります。ウクライナはルート1つを閉鎖しました。ウクライナ人よ、2つ目のルートを開けて、ロシアからガスをもらってください。でもウクライナ人はそのルートを開けない。

 では、なぜドイツはこう言わないのでしょうか。いいか、君たち、我々は君たちに金と武器を提供している。バルブを開けてくれ。ロシアからのガスを我々のために通してくれ。

 我々は、液化ガスをヨーロッパ内から法外な値段で買っている。そのため、我々の競争力と経済全般がゼロに落ちている。その我々に金を出せというのか?

 自国経済のために金を稼ぐまともな存在になろう。我々があなたに提供している資金もそこから出てくるのだ。しかし彼らはそう言わない。なぜでしょうか?

 彼らに聞いてみましょう。彼らの頭の中にあるのはこういうことなのです。非常に無能な人たちです」

(訳注1)プーチン氏は1985年から1990年まで東ドイツのドレスデンで諜報活動に従事していた。

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