【IWJ号外】タッカー・カールソン氏によるプーチン大統領インタビューの翻訳!(第10回)「安全保障は世界全体で共有されるべきもの。それこそが、世界が安定し、持続可能で、予測可能な唯一のシナリオ」 2025.2.24

記事公開日:2025.2.24 テキスト

(文・IWJ編集部)

 タッカー・カールソン氏によるプーチン大統領インタビューの翻訳(第10回)をお届けまします。

 この歴史的インタビューは、ロシアと米国の関係史の、一方の当事国であるプーチン大統領の非常に貴重な証言を含んでいます。

 第10回のインタビューでは、ロシアに対する経済制裁が、逆に、米国のドルの力を弱めて、米国による世界支配を崩していることや、そもそも、プーチン大統領が、米国という国家の意思決定システムや権力のあり方を、どう見ているかなど、米国国家観の核心を突く発言を、タッカー・カールソン氏が引き出しています。

 さらに、興味深いのは、没落しつつある米国が、どのように、生き残ってゆくべきなのか、実に、説得力ある国家方針を、プーチン大統領が提示していることです。

 これは、米国指導部は、虚心に耳を傾けるべき提言であり、米国の事実上の衛星国家として、精神的にも政治的にも自立できない日本国家の指導部も聞くべき現実認識だと思われます。

 インタビュー翻訳の第1回は、以下から御覧になれます。

  • タッカー・カールソン氏によるプーチン大統領インタビュー全編の翻訳を開始!(第1回)冒頭は、プーチン大統領による仰天のロシア・ウクライナの歴史講義! IWJは慎重にインタビュー内容を吟味しながら、可能なかぎり注や補説で補い、あるいは間違いの検証をしながら全文の翻訳を進めます!
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 以下から、タッカー氏によるプーチン大統領インタビュー第10回となります。


タッカー氏「世界は2つの領域に分かれつつあるのかもしれませんね。安価なエネルギーが入手できる領域と、そうでない領域と。あなたにお尋ねしますが、今、世界は多極化していると思われますか?

 私はその通りだと思います。同盟のブロックについて教えてください。それぞれの側に誰がいるのか。どう思われますか?」

プーチン大統領「いいですか、あなたは世界が2つの領域に分かれていると言いましたね。人間の脳も2つの領域に分かれているのです。少なくとも一方はある種の活動を担当する。もう一方は創造性などをより重視する。

 しかし、それでも一つの頭脳であることに変わりはない。世界は一つの全体であるべきです。安全保障は黄金の10億人(※注1)のためのものではなく、共有されるべきものです。それこそが、世界が安定し、持続可能で、予測可能な唯一のシナリオなのです。

 それまでは、頭が2つに割れている間は、病気であり、深刻な事態にあるのです。世界が現在経験しているのは、重病の時期なのです。

 しかし、誠実なジャーナリズムのおかげで、私にはこの仕事が医者の仕事に似ていると見えています。これは何とか改善できるかもしれない病気です」

タッカー氏「ひとつ例をあげましょう。米ドルは世界を統一してきたようなものです、いろんな意味で。

 あなたにとって有利ではないかもしれませんが、私達にとっては有利なことです。

 基軸通貨として、また普遍的に通用する通貨としての米ドルは消えていくのでしょうか? 制裁によって、世界におけるドルの地位はどのように変化したと思いますか?」

プーチン大統領「ドルを外交闘争の道具として使うことは、米国の政治指導部が犯した最大の戦略的過ちの一つです。ドルは米国の権力の要です。ドル札をいくら刷っても、すぐに世界中にばらまかれることは、誰もがよく理解していると思います。

 米国のインフレはごくわずかです。3%か3.4%で、これは米国にとってまったく許容範囲だと思います。しかし、彼らはドル札の印刷を止めようとしない。33兆ドルの負債(※注2)は何を物語っているのでしょうか? それは排出行為(※注3)を語っているのです。

 とはいえ、それは米国が世界中で権力を維持するための主要な武器です。政治指導者が、米ドルを政治闘争の道具として使うことを決めたとたん、米国のこの力に一撃が加えられました。

 強い言葉は使いたくないですが、これは愚かな行為であり、重大な過ちです。

 世界で起こっていることを見てみましょう。米国の同盟国でさえ、今はドル準備高を縮小している。それを見て、誰もが自分達を守る方法を探し始めている。しかし、米国が特定の国々に対して、取引制限や資産凍結などの制限的な措置をとっていることは、重大な懸念を引き起こし、全世界に合図を送ることになる。何が起こったでしょうか?

 2022年まで、ロシアの対外貿易取引の約80%は、米ドルとユーロで行われていました。ロシアと第三国との取引では約50%がドル建てでした。しかし、現在は、13%にまで減少しています。

 我々が、米ドルの使用を禁止したわけではありません。我々には、そのような意図はありませんでした。米ドルでの取引制限は米国が決定したことです。これは米国自身と米国の納税者の利益という点からみて、まったく愚かな行為だと私は思います。

 それは米国経済へ打撃を与え、世界における米国の力の弱体化をもたらすのですから。ちなみに、以前、人民元での取引は約3%でした。現在、私達の取引の34%はルーブルで行われていますが、人民元での取引もそれと同程度の34%強です。なぜ米国はこんなことをしたのでしょうか?

 自惚れだとしか思えません。おそらく完全な崩壊につながると考えたのでしょうが、何も崩壊しなかったのです。さらに、産油国を含む他の国々は、石油の支払いを人民元にすることを考えており、すでにそれは受け入れられつつあります。あなたがたは、この状況を理解さえしていないのではないですか?

 米国でこのことに気づいている人は、いるのでしょうか。あなたがたは何をしているのですか? 自らを切り捨てているのです。

 専門家はみなこう言っています。米国の知的で思慮深い人々に、ドルが米国にとって何を意味するか尋ねてみてください。あなたがたは自らの手で米ドルを殺そうとしているのです」

タッカー氏「そうですね。妥当な評価だと思います。問題は次に何が来るかですね。ある植民地大国を、もっと容赦のない不寛容な別の植民地大国と交換するのかもしれない。つまり、例えばBRICSが中国に、中国経済に完全に支配される危険性はあるのでしょうか?」

プーチン大統領「それはこれから話します。しかし、先ほどの話を最後まで言わせてください。私達は、私の同僚であり友人でもある習近平国家主席と、中国との相互貿易額を今年2000億ドルにするという目標を掲げましたが、すでにそれを超えています。

 我々の統計によれば、中国との二国間貿易はすでに合計2300億ドルに達しています。そして中国の統計では2400億ドルとなっています。もうひとつ重要なことがあります。ハイテク、エネルギー、科学研究開発の分野において、ロシア・中国間の貿易はバランスが取れており、相互に補完しあっています。非常に均衡が取れています。

 今年ロシアが議長国(2024年)を務めたBRICSについては、BRICS諸国は概して急速に発展しています。私の記憶が正しければ、1992年当時、世界経済におけるG7諸国のシェアは47%に達していたのに、2022年には30%強に下がったと思います。

 BRICSは1992年には16%しかありませんでしたが、今ではG7を上回っています。ウクライナの出来事は関係ありません。これは、今申し上げたように、世界の発展と世界経済の趨勢です。

 そして、これは必然的なことです。これからも起こり続ける。それは日の出のようなものです。太陽が昇るのを、防ぐことはできない。それに適応するしかないのです。

 米国は、どのように適応するのですか? 武力制裁、圧力、爆撃、武力行使の助けを借りるのですか? これは自惚れの問題です。あなたがたの政治体制は、世界が変化していることを客観的な状況下で理解していない。

 そして、自分達のレベルを覇権のレベルに維持するためには、失礼ながら、たとえ誰かがそれを熱望したとしても、有能かつタイムリーな方法で正しい決断を下さなければならないのです。

 ロシアや他の国々に関することを含めて、このような残忍な行動は、逆効果です。これは明白な事実です。すでに明らかになっています。指導者が変われば何かが変わるでしょうか、とあなたは聞きましたね? 指導者の問題ではないのです。特定の人物の人格の問題ではないのです。

 私は、たとえば、ブッシュ大統領とは非常に良い関係でした。米国では、ブッシュは理解力の乏しい田舎者のように描かれていましたね。そうではないと私は断言します。

 ロシアに関しては、彼は多くの間違いを犯したと、私は思います。2008年について、ブカレストでNATOの門戸をウクライナに開放する決定をしたことなどについてはお話ししましたね(※注4)。

 それは、彼の大統領在任中に起こったことです。彼は、実際にヨーロッパ諸国に対して圧力をかけた。しかし、一般的に、個人的な人間レベルでは、私は彼と非常に良好な関係を築いていました。

 彼は、他のアメリカ人、ロシア人、ヨーロッパ人に比べて悪くなかった。彼は、自分のしていることを他の人達と同じように理解していたと、私は確信しています。

 トランプとも、同じように個人的な関係がありました。指導者の人格の問題ではないのです。エリートの物の見方、指導者の取引にかかわることです。強引な行動にもとづいて、どんな犠牲を払っても覇権を維持しようという考えが、米国社会を支配しているなら、何も変わらないでしょう。事態は悪化するだけでしょう。

 しかし、最終的に、客観的な状況によって世界は変化しているという認識を持ち、米国が現在まだ持っている利点を使える間に、その変化に適応することができなければならない、という認識を持つようになれば、何かが変わるかもしれない。

 ほら、中国経済は、購買力平価(PPP)GDPで世界第一位になりましたね。購買力という点では、中国はとっくの昔に米国を上回っているのです。米国は2位で、次に15億人以上の人口をもつインド、そして日本とロシアがともに5位です。ロシアは昨年、あらゆる制裁や規制にもかかわらず、ヨーロッパ第一の経済大国となった(※注5)。このことは、あなたがたの視点から見て普通のことですか?

 制裁や規制を加えられ、スウィフト・サービス(※注6)から締め出され、ドル建決済が不可能になり、石油運搬船に制裁を科されたロシアが? 飛行機に対する制裁。あらゆるもの、あらゆる場所での制裁。世界で最も多くの制裁がロシアに対して行われているのです。

 そしてその間に、ロシアはヨーロッパ第一の経済大国となった。米国が使っている(対ロシア制裁の)手段は、機能していないのです。では、どうすべきか考えなければなりませんね。

 もし米国を支配するエリート達が、このことを認識すれば、大統領の行動は、有権者やさまざまなレベルで決定を下す人々が期待することに応えるものとなるでしょう。そうすれば、何かが変わるかもしれません」

タッカー氏「でもあなたは、2つの異なるシステムについて語っておられます。あなたは、大統領が有権者の利益のために行動すると言われましたが、その決定は大統領ではなく、支配階級によってなされるのだとも言っています。

 あなたは、長い間この国を治めておられるので、すべての米国の大統領をご存じですね。米国の権力中枢とは何だと思いますか? 誰が実際に意思決定をしているのか、ということです」

プーチン大統領「わかりません。米国は複雑な国です。保守的なところもあるが、他方では急速に変化している。それをすべて整理して理解するのは、容易ではありません。

 選挙において決定を下すのは、誰なのか? 各州が独自の法律を持っているのに、権力中枢がどこにあるのか理解できますか? 各州が独自の規則を持っているのです。州レベルで、誰かが選挙から排除されることもあり得ます。二段階選挙制度です。我々がこの制度を理解するのは、非常に難しい。

 第二に、共和党と民主党という2つの支配的な政党があります。そして、この政党システムの内部で、決定権を持つ中枢が決定を準備する。

 では、なぜソ連崩壊後、このような、誤った、粗雑な、まったく不当な対ロ圧力政策がとられたのか。これは私の考えですが、結局のところ、圧力政策なのです。

 NATOの拡大、コーカサスの分離主義者への支援。ミサイル防衛システムの構築。これらはすべて圧力の要素です。圧力、圧力、圧力。ウクライナをNATOに引きずり込むのも、圧力、圧力、圧力です。圧力をかける理由は何でしょうか?

 とりわけ、過剰な生産能力が生み出されたからだと私は思います。ソ連との対立の時期、多くのセンターが作られ、ソ連に関する多くの専門家がいましたが、彼らは他のことは何もできなかった。彼らは政治指導者達に確信させたのです。

 すなわち、ロシアを削り続け、ロシアの解体を試み、この領土にいくつかの準国家組織を作り、それらを分断支配し、将来、それら総体としての潜在力を、中国と闘争するために利用することが必要だと。

 これは、対ソ対立のために働いた人々の過剰な潜在能力も含めて、誤りです。これを取り除く必要があります。新しい、フレッシュな力、将来を見据え、世界で何が起こっているかを理解する人々が必要です。

 インドネシアの発展ぶりを見てください。人口6億人です。私達に逃れる術はあるでしょうか? どこにもない。インドネシアが、参入してくることを想定するしかない。インドネシアは、すでに世界の主要経済国の仲間入りをしています。好き嫌いの問題ではありません。

 そう、私達は、米国においては、あらゆる経済問題があるにもかかわらず、状況はまだ正常であり、経済はまともに成長していると理解し、承知しています。

 私が間違っていなければ、GDPは2.5%成長している。しかし、将来を確実にしたいのであれば、変化しつつある状況に対するアプローチを変える必要がある。

 すでに申し上げたように、ウクライナ情勢がどのように終結しようと、世界はやはり変化するでしょう。世界は変わりつつあり、米国自身も変わりつつある。世界における米国の地位は徐々に変化している、と専門家達は書いている。

 そう書いているのは、あなたがたの専門家ですよ。私はそれを読んでいるだけです。唯一の問題は、それがどのように起こるかです。痛みを伴って急速に起こるか、穏やかに徐々に起こるか。

 反米ではない人々が書いていることです。彼らは、単に世界が展開する潮流を追っているだけです。そういうことなのです。そして、それを評価し、政策を変えるためには、思考し、将来を見通し、分析し、ある決断を提言できる人々が必要なのです。政治指導者のレベルでね」

(※注1)「黄金の10億人」とは、ロシアの地政学的・政治的言説でよく使われる概念。これは、世界の富と資源の大部分を支配・享受しているとされる先進国の人口層を指す。具体的には、アメリカ合衆国、カナダ、ヨーロッパ連合諸国、日本、オーストラリア、韓国などの経済的に豊かな国々のこと。「黄金の10億人」は、世界人口の中で最も高い生活水準、医療、教育、経済的安定を享受している層を指し、地球規模で見た富の不平等や資源の独占を象徴している。

(※注2)33兆ドルの負債とは、米政府が国内外の債権者に対して負っている借金の総額を表しており、米国財務省(U.S. Department of the Treasury)が発行する国債や証券を通じて資金調達されたもの。米国の債務は、近年急速に増加しており、2023年時点で33兆ドルを突破した。

(※注3)「排出行為」は、米国が世界経済に対して無制限にドルを供給していることを揶揄する言葉である。米ドルは基軸通貨であるため、米国は無制限にドルを発行しても国際取引を支配できる特権を有している。

(※注4)NATOは2008年のブカレストでの首脳会議で、ウクライナの「将来の加盟」を約束し、その加盟申請を支持した。しかし、加盟の方法や時期については言及しなかった。

(※注5)世界銀行が、2024年6月初めに発表した修正データによると、ロシア経済はPPP(購買力平価)ベースで日本を抜いて世界第4位になった。5位が日本で、6位がドイツ。世界1位が中国、2位が米国、3位がインドである。欧州では、ロシア経済はトップになっている。世界銀行はデータを修正した結果、ロシアのランキングを改善し、ロシアは2021年に日本を追い抜き、それ以来、4位を維持していると発表した。

(※注6)SWIFT(スイフト)・サービスとは、世界中の銀行や金融機関が安全かつ迅速に国際送金や金融取引に関する情報をやり取りするための通信ネットワークおよびメッセージングサービスを指す。SWIFTは、Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication の略で、1973年にベルギーで設立された。

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