今、台湾有事が取り沙汰されているが、約4年前、朝鮮半島有事直前の軍事的緊張が、米軍によって高められていた。米軍と自衛隊が軍事的に一体化してしまった日本は、このままでは中国との間で、必ず同じような危険な状態に巻き込まれるだろう。
安保法制成立後の2017年から2018年にかけて、ミサイル実験、核実験を繰り返す北朝鮮に対し、当時のトランプ米大統領は朝鮮半島周辺海域に空母打撃群を展開。さらに戦略爆撃機B1Bに朝鮮半島上空を飛行させるなど、米朝の緊張は一気に高まった。
2017年3月、自衛隊は安保法制にもとづき、米空母打撃軍や戦力爆撃機を「武器等防護」する共同訓練を実施した。
これをきっかけに北朝鮮は、それまで朝鮮半島有事の際の攻撃対象を、米韓および在日米軍基地のみとしていた方針を転換し、史上初めて日本をも標的にし、日本本土を攻撃すると明言した。
北朝鮮側は、この年5月に入ると、労働新聞や朝鮮中央通信、外務省報道官の声明や、朝鮮平和擁護全国民族委員会スポークスマン声明などで繰り返し、日本がこうした米軍と一体化した共同訓練などの行動を取るなら「最も大きな被害を受けるのは日本だ」、「米国よりも先に日本列島が丸ごと焦土化されかねない」、「日本列島ごときは決心さえすれば一瞬で焦土化してしまう」、「無慈悲な核の拳の激しい強打を免れない」などと、警告を発し続けた。

▲立憲民主党・小西洋之参議院議員
小西洋之議員は防衛省に対し、2016年3月以降に北朝鮮が日本攻撃の意思表示をしている発言を請求した。岩上安身によるインタビューの際には、これを一覧にし、ここに自衛隊の米軍との共同訓練を重ね合わせた。これを見ると、北朝鮮は日米合同訓練を脅威ととらえ、日本に警告を発し続けているにもかかわらず、安倍政権が米軍と行動をともにし、北朝鮮の脅威を煽り続けていたことがわかる。
小西議員は、武力による威嚇が国際法違反であることを指摘した上で、「共同訓練が怒りを買って、敵国扱いされ、北朝鮮の日本への攻撃の理由を与えてしまった。まったくの亡国、国を失う、国を亡ぼすようなことを、行為を、実は、当時、安倍政権は繰り広げていた」と批判した。
この当時、自衛隊トップの統合幕僚長だった河野克俊氏は、2020年に行った講演で、米国が北朝鮮を爆撃する可能性が6割ぐらいあったと明かしている(2020年1月29日、水戸市で開催された茨城新聞社主催の新春合同政経懇話会)。
自衛隊は集団的自衛権にもとづき、米国と北朝鮮との戦争の最前線に置かれる重要影響事態、存立危機事態を想定していた。
河野氏は「何があってもおかしくない」と、著書に記している。つまり、戦争が起き、日本が巻き込まれる可能性を、当時の自衛隊制服組のトップは認識していたのである。
集団的自衛権の容認と安保法制のせいで、我々日本国民が、下手をすれば北朝鮮の核ミサイル攻撃を受けるかもしれない、という危機を、安倍政権は我々国民に説明しただろうか?
テレビ、新聞などの大手記者クラブメディアは、この危機について国民に大々的に伝えただろうか?
答えは「ノー」だ。
我々国民は、小西議員へのインタビューを通じて、初めて真実を知らされたのである。