コロナ禍による緊急事態宣言下で迎えたゴールデンウィーク初日。4月29日夜7時から、岩上安身による 小西洋之参議院議員インタビュー第2弾をフルオープンで中継した。
ゴールデンウィーク明けの、5月6日には、衆議院で国民投票法の「改悪案」が採決される危険がある。この「改悪案」には、国民の投票機会を狭める2つの改悪ポイントが入っている。それら改悪ポイントについて、小西議員は4月22日の岩上安身のインタビュー第1弾で詳しく語っている。
第2弾インタビューは、コロナ禍緊急事態宣言下のゴールデンウィーク、ゴールデンウイーク明けの5月6日と言われている衆議院での国民投票法改悪案の強行採決にフォーカス。
まず、前回の振り返りも含めて、感染拡大第4波と3度目の緊急事態宣言を招くことになった安倍・菅政権によるコロナ対策の失政についてお話いただいた。
4月23日の緊急事態宣言を発令した記者会見で菅総理は「緊急事態における法令の整備が必要だと痛感する」と述べた。
岩上「(菅総理は)医療機関にはお願いベースしかできないと。緊急事態において、いざというなら強権発動だと」
小西議員「今でも法律で、医療機関に協力を要請できる。しなければ公表までできる。強制に近いことできる。それを御願いベースしかないという総理は何もわかっていない」
岩上「自民党政権は、ずっとPCR検査にすごく抑制的でしたね」
小西議員「とにかくどんどん検査をしていくことができてない。『ゼロコロナ』は、ほんとうにゼロをめざす」
岩上「東アジアではちゃんと対策できている国がたくさんある」
小西議員「RCEPの加盟国で、日本は感染者数が3番目に多い、看護師さん500名とか。五輪するためにコロナ医療を犠牲にするのは許されない。それは本当のオリンピックじゃない。ナチスがやってるような。今日も大阪過去最多。そんな状況で500人看護師さん動員するんですかね。そんなことしないと五輪できないんなら、できないですよ」
小西議員は、菅政権が誤った法解釈で都道府県知事に特措法31条を使わせなかったこと、コロナに立ち向かう医療体制を構築する法律をいまだに作っていないことは「万死に値する」失政だと批判した。そして、大手メディアはそのことを書こうとしないと嘆く。
脆弱なまま放置された医療体制のために、本来なら手術が必要な人も手術を延期され、緊急の心臓発作などを受け入れてくれる病院があるのかと不安に駆られている人もいる。
インド由来といわれる二重変異株もすでに日本国内に入っている。厚労省は遅ればせながらやっと、昨日ようやく米国4州とインドを「新型コロナウイルス変異株流行国・地域に指定」したが、またも後手に回った。
第2部では、コロナ感染拡大の陰で5月6日に迫る改憲のための国民投票法改悪の採決についてお話しいただいた。
岩上「政府はコロナ感染拡大の陰で改憲のための国民投票法改悪を画策しています。5月6日に憲法審査会があって、その後ダダダっと改憲までなだれ込むのか」
小西議員「この国民投票法を改正すると、いつでも改憲できるようになってしまいます。おかしなことをやる政治家を止めているのは、憲法だけ。おかしなことをやってる政権には、法改正をやらせてはいけない」
岩上「憲法9条のことが書いてないから、声をあげなくていいと思っている左派の人も多い」
小西議員「9条はすでに壊されているんですね。自民党がやりたいのは9条よりも緊急事態条項です」
岩上「5月6日の採決を与党は迫っているということですが?」
小西議員「明日が正念場の1日になると思う。立憲民主党が改定案を出したんですね。今の国民投票法は、お金持ちがいくらでもCMできる体制。ネットも全く規制がないという極めて危険なもの。
2007年の立法のときは民放連が自主規制するといったんです。それならばいいだろうと。会議録を見ればわかる。しかし、今になって、自主規制するなんて言ってないと言いだした。自主規制するということで今の国民投票法ができたのに、これでは欠陥法」
昨日立憲民主党は修正案を出した。向こう3年以内にCM規制を入れる、それを受け入れるなら賛成してもいいと。与党はとにかくいったん国民投票法を改正しましょう、野党の言っているCM規制の話はその後でやりましょう、とまったくいい加減なことを言っています。与党はCM規制の問題と同時並行で憲法改正案の議論も進めましょうといっている。そんなやり方が許されていいはずはない」
小西議員は、いまや衆議院も参議院も改憲派が3分の2以上を占め、いつでも憲法改正を仕掛けられるリスクが存在しているという。
小西議員「衆議院は、自公の議員がコロナ禍で銀座のクラブに行ったり、選挙買収などがあったりして、自公だけでは3分の2は取れないはずなんですが、無所属で残っている議員、それに維新が11名など野党の改憲勢力を入れると、衆議院は圧倒的に改憲派が多数」
参議院は定数45名で、3分の2は164名。私の計算だと改憲派は162名だったが、その後自民党に寝返る野党議員がいて、改憲派が3分の2を超えてしまった。衆参両院とも改憲派が3分の2を超えていて、いつでも憲法改正発議ができるようになっている」
さらに、憲法改正が発議された後は、「改憲ビジネス」に飛びつくメディアによって、一気に世論の「洗脳」が進む、と岩上が指摘した。
岩上「そのあとはもう一気です。資金の豊富な改憲派のCMがだーっと流される、メディアもそれで広告がたくさん入るので、どんどんCMを受け入れる。いわば改憲ビジネスです。いまどこもメディアは経営に苦しんでいるんです。だから、外資規制もゆるゆるの状態。改憲でもなんでもCMでお金が欲しい、そうなれば改憲を批判するような番組も作れなくなる。
報道ステーション、古舘さんが辞めさせられたときも、実は番組スタッフまで解体させられた。1回だけ緊急事態宣言の素晴らしい番組を作ったが、それが逆鱗に触れてしまった」
小西議員「大変ですね。テレ朝に政府が圧力かけることは法的にはできないはずなのに。僕らももっとがんばらないと」
岩上「テレビは完全にスポンサーの言いなりです。そして、各官庁に記者クラブがあって、各社の記者が出向していて、省庁の職員がお茶出しをしていたりする。海外ではジャーナリストは独立しているんですが。
だから、僕は出版ジャーナリズムを志したが、圧力を感じ始めていた時に、インターネットが普及してきて、個々の市民がカンパしてくれた。それではじめて独立したメディアってこういうことかと気がついたんです」
小西議員「マスコミもダメ、出版もダメということになると、国民にどうやって真実を伝えればいいのか。狭い国会の中で議論しているだけ。われわれも報道が命なんです。NHKも、何も真実を伝えていない。受信料を返せ、と。安保法制の時も一番大事なことを伝えていなかった」
岩上「記者もそう。記事を取り上げてくれなかったら終わりですから。戦っている人たちが潰されていくのを見てくると、みんな学習していきますよね。ずっと見てきましたら。ボロボロになった人もいますし」
小西議員「IWJも、(視聴者の)みなさんはこの場面しか見ていないけれど、この後ろにバックオフィスがあって、スタッフの皆さんが一生懸命番組を作っているんですね。これはコストがかかります。どうぞ、みなさん、IWJを支援してあげてください」
小西議員から思わぬ応援をいただいた。ありがとうございます。
小西議員「僕はNHKの受信料の一部で公共報道基金のようなものをつくっていきたいとおもっているんです」
岩上「アメリカは新自由主義の国だけれど、一方でそういう公共政策があるんですよね。日本は恐ろしいほどない。その上で新自由主義をすすめている」
自民党がめざす緊急事態条項の成立について、小西議員は強い懸念を示した。
小西議員「一番恐ろしいのは国会がなくなることです。国会議員の小西も働けなくなるんですね。政府にやりたいようにやれるようになる。緊急事態までいったら終わりですね。
たとえば、アパホテルの社長さんは筋金入りの改憲派なんですよね。そういう資金力のある人がどんどん改憲CMを出すということになると、影響力がすごい。CM規制がなければ、国民投票法は欠陥法です。
5月11日に衆議院、6月16日参議院で可決となると、施行が3ヶ月後。やろうと思ったら、衆議院選挙と改憲国民投票を同時にできることになるんですね。
昨日、4月28日の憲法審査会では、多くの国民が苦しんでいるコロナ禍の中で、なぜ今、こんな大事な問題をやるのか。不要不急の問題ですよね。自民の議員も維新の議員もなぜ今やるのかを説明できないんです」
しかし、衆参両院とも与党は圧倒的に多くの議席を有している。国民投票法の改悪を止めることはできるのか。
小西議員「参議院では憲法を守るためにあらゆる手を尽くしている。付帯決議には『立憲主義及び憲法の定める国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義に基づいて、徹底的に審議を尽くす』と入れました。一種のファイアウォールなんです、憲法を守るための。
憲法審査会は、憲法99条によって憲法尊重の義務があり、憲法違反の議論も仕事の一つです。参議院では審査会をひらけば安保法制を始め、憲法違反もどんどん問い詰められる。それで、参議院ではあんまり開きたがらないんですよ。
5月6日の衆院での可決を1日でも2日でも遅くすること、参議院ではファイアウォールを何枚も用意している。参議院で議論が煮詰まったまま国会閉会を迎えれば、廃案になる可能性もある。我々はそれを狙っているんだけれども」
細い糸だが、まだ国民投票法改悪を止めることのできる可能性はゼロではない。