国民投票法「改悪」案審議でコロナ禍でも容赦なく近づく憲法改悪の足音!! 自民・二階幹事長と立憲民主・福山幹事長が来年1月の通常国会での採決で手打ちか!? 2020.12.10

記事公開日:2020.12.10 テキスト
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(文・IWJ編集部 編集・杉浦まりあ 文責・岩上安身)

 改憲手続きを定めた国民投票法改正案が、今国会で初めて審議された。採決は見送られたものの、自民党の二階幹事長と立憲民主党の福山幹事長が会談し、来年1月の通常国会での採決について合意したというニュースが飛び込んできた。

 自民党が長年実現しようとしてきた憲法改悪につながる可能性が高い今回の改正案が、コロナ禍の混乱の中、手続きも不透明なまま進んでいくことに危機感を抱かざるを得ない。

 12月3日に衆議院で憲法審査会が開かれ、11月26日に続いて2回目の実質協議が行われた。

  • 憲法審査会(衆議院インターネット審議中継、2020年12月3日)

 憲法審査会では自民・公明と維新、希望の4党が共同提出した国民投票法改正案の7項目について審議が行われている。

▲国会議事堂内部(衆議院)(Wikipediaより)

 7項目とは(1)「選挙人名簿の閲覧制度」への一本化、(2)「出国時申請制度」の創設、(3)「共通投票所制度」の創設、(4)「期日前投票」の事由追加・弾力化、(5)「洋上投票」の対象拡大、(6)「繰延投票」の期日の告示期限見直し、(7)投票所へ入場可能な子供の範囲拡大、である。

国民投票法改正案の問題点とは

 立憲民主党や日本共産党などは、現行の国民投票法の「国民投票運動」の規定について、投票期日の14日前まではテレビやラジオのCM規制がないことを問題視している。

 政党の資金力によってCM量に違いが出ることから、公正な国民投票とならないことを指摘し、「改正案には本当に改正すべき問題点に触れられていない」として審議に反対してきた。

 旧国民民主党(法案提出者は現在立憲民主党)は、広告規制を定めた独自の国民投票法改正案を2019年5月21日に、衆議院へ提出し、与党案との並行審議を求めている。

 与党の国民投票法改正案をめぐっては、12月1日に自民党の二階俊博幹事長と立憲民主党の福山哲郎幹事長が会談を行い、今国会での採決を見送り、来年1月の通常国会で「何らかの結論」を得ることで合意したと報じられた。

 これについて、12月3日の憲法審査会で国民民主党の山尾志桜里議員が、与野党の幹事である自民党・新藤義孝議員と立憲民主党・山花郁夫議員に「幹事長会談で何が決まったのか? 成立させることなのか?」と質問した。

 山尾議員の質問は、ストレートなものだった。

山尾議員「7項目について、次期通常国会で早期の結論を得るという合意が報道されている。

 内容があまりにも永田町的で、玉虫色で何が決まったのかわからないので教えてください」

<ここから特別公開中>

国民民主・山尾議員が迫る! 「何が決まったのか? 結論とは成立させることなのか?」

山尾議員「もう一つは決め方。この場でも幹事会でもなく、突然自民党と立憲民主党の幹事長が会談をして、この憲法審査会の運びが決まっていくということには極めて違和感を持っている。

 何が決まったのか? 結論とは成立させることなのか? そうでないとすれば何なのか、その認識を教えて欲しい」

▲山尾志桜里議員(IWJ撮影)

新藤議員「手に入れた資料によると、二階幹事長の方から『この国民投票法は8国会で継続案件になっており、次の通常国会では何らかの結論を得ることで合意したい。自分としては1日も早く結論を得たい』と、申し入れがあって、それに対して福山幹事長が『次の通常国会では静かな環境の中で粛々と議論を行い、何らかの結論を得るというのは承知したい』と」

「採決」を「承知」した

 新藤議員の説明は、続いた。

新藤議員「私たちの提案に対して立憲側が、『それを承知する』というやりとりがあって、その後の森山国対委員長の会見で、記者さんから『「何らかの結論」とは、次の国会で採決のことか?』というご質問があり、それに対して『採決ということだ』と、こういうお答えがあった。

 これが事実でございます。次の国会で採決をすることにご承知をいただいたと理解している。

 その上でなぜ国対で幹事長の方に上がるのかといえば、この前提は、筆頭間協議があるからです。与野党の筆頭間協議で徹底して詰めに詰めて、現場では合意している、または現場でのやりとりがそれ以上の判断を求められることになったときに、それぞれ党に上がっていく。そのプロセスの中で今回のことが起きた」

 ここで明確過ぎるほど明確に、「何らかの結論」とは「採決ということだ」と、「密室のやりとり」の中身を新藤議員は述べている。採決をすれば、与党が過半数を占めている、国民投票法「改悪」案が成立するのは確実である。

福山はなぜ説明しないのか

 立憲民主党の福山幹事長は、なぜ「事実上の採決の承認」に応じたのか。そして、どうしてその事実を「早期の結論」というだけの言葉でぼかし、この重大な決定と合意について、支持者・有権者に説明しないのか。

 福山議員の代わりに、立憲民主党の山花郁夫議員が、答弁に立った。以下の答弁で、国民は納得いくのだろうか。

山花議員「筆頭間での協議で、膠着状態になった部分について、国対委員長同士で話をしていただきました。そこでまた結論が得られなかったということで、幹事長まで上がっていったと承知しています。

 私も『次の国会で何らかの結論を得るということで承知している』という形で伝達されている。ただ、法案の中身について疑義のあるところは、噛み合ったかたちでご答弁いただいて議論することが大事だと考える」

 山花議員の説明は、説明になっていない。採決を「承知した」というのが福山幹事長というのであれば、福山幹事長自ら、答弁し、国民に説明すべきである。

自民党・石破議員「CM規制については、とにかく金を持っている者が有利だ、などということが絶対にあってはならない」

 一方、12月3日の審議では、「7項目の審議は尽くした。採決した上でCM規制など次の議論に移るべきだ」とする与党側に対し、野党は「旧国民民主党提出のCM規制などを含む法案を、並行して議論すべきだ」と主張した。

 これに対して自民党の石破茂氏は、次のように独自の考えを表明した。

石破議員「7項目については、おおむね審議は尽くしたので速やかな採決をお願いしたい。

 その一方で、これが成立すればすぐに国民投票が行われるのではないか、という懸念があることは事実だ。そうならないための、何かの担保が国会として必要なのではないか。

 その上で、最低投票率をどう考えるかだ。衆参の総議員の3分の2で発議ができるということと、国民投票においては投票率が全く加味されないことの整合をどう考えるべきか? 投票ボイコット運動が起こりかねない。そうなれば本末転倒だ。この点について、さらに詰めた議論、成案が必要だ。

▲石破茂議員(IWJ撮影)

 CM規制については、とにかく金を持っている者が有利だ、などということが絶対にあってはならない。賛成であろうが反対であろうが、公平というものが確保されなければならない。

 もう一つは、いかにして国民に正確な知識のもとに深く考えてもらえるか、ということに配慮しなければならない。一人でも多くの国民に参加していただくということと、どれだけ正しい知識を持って、賛成でも反対でも、意見を表明していただくか、この両方に配慮していかねばならないと思う」

 その上で石破議員は、「(憲法審査会の)50人の委員が毎回やっていても、なかなか討議にならない。演説会みたいになってしまう。この委員会を分科会というか、小委員会に分けて、全国47都道府県、できれば全国300小選挙区、そこにおいて議論をすることが必要だと考える」と、憲法審査会の運営について言及した。

 岩上安身は2017年10月21日、ノンフィクション作家で元博報堂社員の本間龍氏に、国民投票法の「国民投票運動」の問題点について、詳しくお話をうかがっています。ぜひ、以下のURLより御覧いただきたい。

 IWJがこれまで報じてきた憲法改正の国民投票法の問題点を指摘した記事は、ぜひ以下を御覧いただきたい。

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