【米中戦争対立激化時代の東アジア安全保障・後編】「台湾有事」急浮上で各国の軍拡競争激化 日本列島はミサイル要塞化! 新INF条約を樹立することは可能か?~岩上安身によるインタビュー第1047回 ゲスト 東アジア共同体研究所・須川清司上級研究員 2021.7.21

記事公開日:2021.7.28取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部 文責・岩上安身)

特集 日米地位協定|特集 台湾問題で米中衝突か?!

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 岩上安身は、東アジア共同体研究所・須川清司上級研究員インタビューを、2021年7月6日の前編に引き続き、7月21日に後編として行った。

 米軍のデヴィッドソン・インド太平洋軍司令官は2021年3月、「台湾有事は6年以内に起こり得る」と、日本を含む同盟国に軍備増強を訴えた。

 しかし日本政府が、米軍の青写真に乗り、中国本土に届く中距離ミサイルを日本列島に分散配備することは、列島全土が中国のミサイルの標的となることに他ならない。軍備増強する中国に対し、ミサイル配備が必要との意見も国内にはある。しかし、それにより日本全土を戦場にしていいのか、日本国民や日本社会は、ミサイル戦に耐えうるのか、真剣に考える必要がある。

 仮に通常弾頭のミサイルと戦って互角になっても、中国は核保有国であり、核を投下されれば日本は破滅である。

 そうなってからでは、米国が核報復を中国に対して行うかどうかなど、後の祭りである。

 インタビュー後編では、日本の運命を決する問題である、日本政府は米国に対して、そもそも「ミサイル配備を拒否できるのか!?」をテーマに、須川氏にご見解をうかがった。

 須川氏は「それは日本政府次第だ」と主張する。しかし、米国に隷属する日本政府に、そんな「政治的意思」の表明を期待できるのだろうか?

 須川氏は、戦後、「日本政府は、対米協議申し入れの可能性を自ら封じてきた」と指摘する一方で、米国の次官級の人物による証言や、鳩山政権における経験などをあげ、ミサイル配備拒否の可能性が決して荒唐無稽ではないことを示唆した。

 そして須川氏は、米国からのミサイル配備要求に対して日本が採り得る「4つの選択肢」を提示した。

 同意か、拒否か、あるいはそれ以外の道か?

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■ハイライト

■全編動画【前編】

■全編動画【後編】

  • 日時 2021年7月21日(水)15:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

米軍司令官の証言「台湾有事は6年以内」にもとづき、米軍のミサイルを日本列島に分散配備すれば、列島全土が中国のミサイルの標的に!

 2021年7月21日、岩上安身は東アジア共同体研究所の須川清司上級研究員にインタビューを行った。7月6日に行った須川氏へのインタビューの続編である。

 米軍のデヴィッドソン・インド太平洋軍司令官は2021年3月、米上院で「台湾有事は6年以内に起こり得る」と証言し、米国だけでなく、同盟国(当然、日本も入る)も含めて、米中対決を前提に軍備増強を訴えた。

▲2021年3月9日上院軍事委員会 デビッドソン・インド太平洋軍司令官が軍備増強を訴える

 インタビューの前編では、地上・艦船・航空機など多様な発射台に長射程化されたミサイルを、日本列島を含む第一列島線上に分散配備して中国海軍を攻撃できるようにする、という米軍の描く軍備増強の青写真について、須川氏に詳しくお話をうかがった。

▲多様なミサイルを日本列島を含む第一列島線上に配備し、中国海軍を攻撃、将来的には中国本土への攻撃も

▲東アジアの未来~ミサイル軍拡の時代 米中間に長射程ミサイルのパリティ(均衡)が達成されうるのか?

 米軍は西太平洋・東アジアの第1列島線上に領土を持たず、第1列島線上の主たるミサイルの配備先は日本列島以外に考えられない。そして米軍のミサイルを日本列島全てに分散配備するということは、日本列島が中国を攻撃する最前線のミサイル基地になるとともに、日本列島全土が中国のミサイルの標的になる、ということである。

▲米国の新ミサイル戦略で、高まる「日本列島の戦略的価値」

▲結局、第1列島線上の主たるミサイルの配備先は日本列島のみ!!日本の位置は米国と中国にとって戦略上死活的に重要

日本へのミサイル配備を拒否できるか!? 日本政府が「拒否する」と公式に伝えれば、米国政府は無視できない!

 この前提を踏まえて、インタビュー後編では、「地上発射式長射程ミサイル配備を日本政府は拒否できるのか」をテーマに須川氏にご見解をうかがった。

 須川氏は、「日本のリベラルも含め、日米安保に詳しい人ほど『NO』と言えないとおっしゃる」としつつも、「政府間で取り決めに従えばできないが、条約の外側ではいくらでも言える」と、先に須川氏はご自身の見解を結論として述べた。

 須川氏は東アジア共同体研究所発行のメルマガで連載し、同研究所のサイトにも掲載されている「Alternative Viewpoint」第20号の中でも「(ミサイル配備を拒否できるかどうかは、)それは日本政府次第。『日本政府の政治的意志として地上発射式長射程ミサイルの持ち込みは拒否する』と公式に伝えれば、米国政府がこれを無視することはできない」と記している。政治的意志があれば、配備の拒否は可能なはずだ、ということだ。

※本記事は「note」でも御覧いただけます。単品購入も可能です。
https://note.com/iwjnote/n/nfcba28b43f12

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▲米軍のミサイル配備と事前協議〈どこへ配備するか?〉、〈何を装備するか?〉須川氏「政治的意志があれば、拒否は可能」

戦後外交で日本政府は対米協議の可能性を自ら封じた! しかし米国次官級が「ミサイル持ち込みは同盟国の同意得る」と証言! 鳩山政権の「NO」に「米国議会内でも見直しの声」あった!

 しかし、米国に隷属するばかりの現在の日本政府に、そんな「政治的意思」の表明を期待できるのだろうか?

 須川氏には、米国の要求に対する日本の意志決定の背景にある、日米安保条約第6条と、1960年の「岸・ハーター交換公文」、「藤山・マッカーサー口頭了解」について解説していただいた。

 日米安保条約第6条は、在日米軍が使用する区域について「日米合同委員会で定める」としている。そして日米地位協定には、米軍の装備に関する明示的な定めがない。

▲日米安保第6条は、在日米軍が使用する区域は「日米合同委員会で定める」

 しかし、1984年8月1日、衆議院外務委員会で、栗山政府委員(外務省)は、「俗に核、非核両用というような兵器で、核弾頭が装置されれば核兵器である、通常兵器としても使用できる、もしそういうようなミサイルがあるとすれば、そのミサイル自身の日本への持ち込みというものは事前協議の対象にはならない」と答弁している。

▲米軍が核ではない通常兵器の長射程ミサイルを日本領内に配備する場合は「事前協議の対象外」!

▲1960年「岸・ハーター交換公文」 装備・区域の重要な変更は日米事前協議の主題

▲藤山・マッカーサー口頭了解で「重要な変更」とは「中・長距離ミサイルを含めた核兵器」に関すること

 須川氏は、「戦後の日本外交は、『条約や政府間協定に明記されていなければ、米国政府の要求を断ったり、米国政府の意に反する要求をしたりしてはいけない』という考えにどっぷり漬かってきた」、「日本政府は日本の自発的意志に基づく対米協議申し入れの可能性を自ら封じてしまった」と指摘した。

 米国が対中国とのミサイル戦のために、日本列島上の各地に配備しようとしている中距離ミサイルは、通常弾頭を予定しているとも言われるが、核弾頭にも変更できるデュアル・ユース型である。

 そうしたミサイルの配備について、事前協議の対象にならないと、歴代の日本政府は「解釈」してきた、というわけである。

▲米国の行動を極力縛らないようにしてきたという日本政府の前科

 また、須川氏は「日本という国は国際法って言葉に弱い」、「(国内で)人権など国際法違反をやってはいるけど、目を閉じ、日米同盟で米国に従わなければいけない時など、有利な国際法に関しては義務があると」することを指摘した。

 そして、「国際政治は文書で動いているわけではなく、を背景にしている。アメリカの次官級の人間がミサイルの持ち込みは同盟国の同意を得てやると証言している。アメリカは相手国が『NO』と言えば押し付けは通らないところがある」と解説し、「鳩山政権で『NO』と言いたいとやったためにアメリカの議会内でも見直しの声があった」と当時を振り返った。

 須川氏のお話を受けて、岩上安身は「日本政府次第。国民が突き上げることができるかどうか。国民は議論する必要がある」と応じた。

米国からのミサイル配備要求に対する日本の「4つの選択肢」とは!?

 須川氏には、さらに「米国からの地上発射式ミサイルの日本への配備要求に対して日本が採り得る『4つの選択肢』」について、具体的なお話をうかがった。

 「日本側は確たる方針を持っているのか?」「政府内で十分な議論を行っているのか不安が募る」とする須川氏は、日本が採り得る4つの選択肢(外交的取組み)として次の4つを提示する。

 1. ミサイル配備に同意する 2. ミサイル配備を拒否する 3. 関知しないフリをする(実質的容認) 4. 日本がミサイル軍縮を仕掛ける

▲米国からのミサイル配備要求に対して日本が採り得る4つの選択肢

 各選択肢の具体的内容と、実施した場合の結果はどのように予想されるのか? 詳しくはぜひ、インタビューの全編動画を御覧いただきたい。

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