【IWJ号外】<岩上安身によるインタビュー第1216回>現代イスラム研究センター理事長・宮田律氏「シーア派の中心教義とは?『神に隠されたイマーム』とマフディ思想」 2026.3.26

記事公開日:2026.3.26 テキスト
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(文・IWJ編集部)

特集 中東

 3月16日、イラン情勢をめぐり、現代イスラム研究センター理事長の宮田律(みやた おさむ)氏に、緊急インタビューを敢行しました。今回のインタビューは、「米・イスラエルによるイラン攻撃は国際法違反!『狂信』はどちらか!?」と題した3月11日インタビューの続編となります。

 インタビューは3分割し、3月17日にYouTubeで先行公開しました。

 インタビューのパート2では、日本を含む西側メディアがあまり取り上げない、イラン側の歴史や思想に焦点が当てられました。

 この最高指導者であるハメネイ師の殺害について、『日本経済新聞』は、イランのシーア派の「殉教心」に注目し、1980年からのイラン・イラク戦では「天国の鍵」を胸に下げた少年兵らに地雷原を渡らせたというエピソードを紹介し、狂信ぶりを強調しました。

宮田律氏(以下、宮田氏と略す)「確かにイラン・イラク戦争の時に、イラクが敷設した地雷原には、相当手を焼いたみたいなんですね。

 最初は馬とかロバとかを突入させたんですけども、動物って危険を事前に察知しちゃうじゃないですか。結局、地雷原を動物達は渡らない。回避しちゃうんですよ。

 で、地雷原を突破させるために、子供達に地雷原を渡らせて、突破口を開くということはやってましたよね。

 個人的な体験ですが、1989年ぐらい、イラン・イラク戦争が終わった直後に、イラン南部のシーラーズに行ったんですけども、中学校の先生の家庭に招かれたら、そこの弟さんが足を失って、杖をついて歩いていたんです。どうしたのか聞いたら、地雷を突破するために行ったと。ボランティアで」

岩上安身(以下、岩上と略す)「ボランティアですか。志願兵として」

宮田氏「ボランティアだと思います。『行け』『やってくれるか』という感じで渡ったと思うんですけども、そこで突破口を開いて、そこから革命防衛隊とか正規軍が突入していったということですよね。

 それが狂信的っていうか、やっぱりその時のメンタリティとすれば、日本の特攻と同じように、まさに国を救いたいとか家族を守りたいとか、そういう意識だったと思うんですね。それを『狂信的』というのは(違うのではないか)」

岩上「それを『狂信的』と呼ぶならば、大日本帝国というのは、狂信的な神権国家であることは間違いない。(中略)

 『神風』は、全世界でドローンの代名詞になっていますよ。『特攻』という、自分の命を捨てて国のために戦うということが、『カミカゼ』という言葉で世界的な普遍名詞みたいになってしまってますよね」

 岩上は、「靖国神社は狂信者の英霊」を祀っていることになってしまう、と指摘しました。

宮田氏「宗教に『解』を求める必要はないと思うんですね」

岩上「『愛国心』でもいいですよね」

宮田氏「そうそう。だから、『狂信』という言葉は、やはりふさわしくないですよね」

 宮田氏は、「(そういう観点で)『宗教』について語るっていうのは、どうも正しくないような気がします」と付け加えました。

<シーア派の殉教思想とは>

 2月28日に米国とイスラエルがイランに奇襲攻撃をかけ、真っ先に「斬首作戦」を行い、イランの最高指導者ハメネイ師を爆殺しました。

 それも、イスラムにおいて「聖なる月」とされるラマダン中のことでした。宮田氏は「イスラムに対する敬意を欠いた」攻撃だったと述べています。

 2020年1月、トランプ政権は、イラン革命防衛隊のトップであるソレイマニ司令官を爆殺しました。もちろん、国際法違反の殺害です。

 当時、ハメネイ師は、ソレイマニ司令官を「殉教者」として称賛し、「殉教は神の恩寵である」と述べました。

宮田氏「彼(ソレイマニ司令官)は、イラクのバグダードの空港に降り立って、和平交渉をやるはずだったんですよね、サウジアラビアの代表と。当時、サウジとイランは、イエメンを巡って敵対関係にありましたので。

 それで、ソレイマニ氏は、サウジの代表と会談をして、和平交渉をするはずだったんですけども、そこをトランプが狙って、ソレイマニ氏は殺されてしまった」。

 ハメネイ師は、ソレイマニ司令官を「殉教者である」とほめたたえ、さらに「殉教は神の恩寵である」と述べました。ハメネイ師は「『聖なるラマダン』に殉教した」とも述べています。

宮田氏「やっぱりラマダンって、日中は断食をするわけですから。非常にイスラム教徒にとっては、宗教感情が非常に高揚する月なんですよね。

 イスラムの『聖なる月』と考えられていて、その月に攻撃をかけるというのは、やはりそのイスラムに対する敬意を欠いた攻撃だったんではないかなということだと思います」

 米国とイスラエルは、最高指導者のハメネイ師を筆頭に、首脳陣をおよそ40人殺害する「斬首作戦」で、イランの体制が混乱し、軍が分裂し、イランの民衆やクルド人やアゼリー人らが蜂起して、政権転覆をすることを期待していたと見られていますが、イランではそうした混乱や分裂は起きませんでした。

 シーア派の「殉教思想」は、西暦680年の「カルバラの戦い」に由来すると言われています。

宮田氏「シーア派イスラム共同体の、最高指導者のことを『イマーム』と言います。ハメネイ師は、イマームの代理ですね。

 イランの、1番最初のイマームは、アリさん(※アリー・イブン・アビー・ターリブ)です。4人の正統カリフがいて、アブー・バクル、ウマル、ウスマーン、アリーと、4人のカリフがいます。

 シーア派では、その4代目の正統カリフのアリーから数えて12代目までは、正統なイマームだと考えるわけですね。

 その途中の第3代目イマームのフサインが、イラクのカルバラで、ウマイヤ朝軍(※アラブのウマイヤ族がつくった王朝。アラブ優越主義で、その後、平等主義を掲げるアッバース朝に打倒される)に殺害された。

 アリーが亡くなった後、ウマイヤ族が、『カリフ』というイスラム共同体の最高指導者を継ぐとウマイヤ朝は考えるわけですね。

 それに反対したのが、こちらのアリーさんのグループであった。

 アリーから数えて第3代目イマーム、フセインさん(※フセイン・イブン・アリー)がカルバラというところでウマイヤ軍に殺害されてしまった。

 これをシーア派では、『殉教』と考えるわけですね。フサインは宗教のために殉じて、ウマイヤ軍に殺害されたという風に考えるわけです。

 フセインの子供(※アリー・ザイヌルアービディーン)は、その時(カルバラには)一緒にいなくて、助かった。その子から数えて、12代目まではイマームが続くわけですね。

 ところが、12代目のイマームが、幼少の時、どこかに行ってしまった。『神隠れイマーム』といいます。

 神隠れしたイマームは、シーア派の信徒が困難にある時に、救世主として現れて、信徒を助けてくれるというのが、シーア派の救世主思想、『マフディ思想』ですね。救世主を『マフディ』といいます。

 そのマフディが現れるまで、この世を統治するのが、イランの最高指導者ということですね。

 だから、イランの最高指導者っていうのは、神隠れしたイマームの『代理』として、この世を統治するという考え方なんです」

岩上「救世主登場までの間、代行者を務めていくということですね」

宮田氏「そうです。ですから、スンナ派の方には『神隠れ』とか、『イマームの再臨』、つまり、この世に再び現れるという考え方はありません。シーア派の方にだけ、その神隠れと再臨という考え方があるということですよね。

 イラン人は、この『殉教』のお芝居を、繰り返し毎年行って、この『殉教』の追体験をしています。皆さんが、泣きながらこの『殉教』を悼む。

 ですから、イラン人は割とこう、泣くという感情もすぐできる人達ですよね」

 岩上は、「殉教思想」を生み出した「カルバラの戦い」はどのような戦いだったのか、と聞きました。

宮田氏「彼ら(フセインら)が、イラクのクーファというところに向かっていたんですけども、その途中でウマイヤ軍は、大軍をもって殺害してしまった。多勢に無勢で殺した。

 いわばやはり、卑怯な戦争であったということですよね」

 宮田氏は、その後、シーア派の思想は段々縮小していったが、16世紀に成立したサファヴィー朝時代に、イラン人によって広く信仰されるようになったと補足しました。

宮田氏「16世紀の初頭に、サファヴィー朝というイラン人の王朝が、バッと出てくるわけですよね。サファヴィー朝はシーア派を国教として採用して以来、『イラン人=シーア派』という信仰関係が定着したわけです。

 それからずっと、イラン人はシーア派を信仰しています」。

 宮田氏によると、シーア派の信仰は、スエズ運河以西には広がらず、スエズ運河以東だけ、イランとイラクだけに継承されているといいます。

岩上「スンナ派の国々、特に原油が豊かな湾岸諸国は、非常に歴史の浅い王族とか王室が支配していて、自分達は労働はしない。労働は外国人労働者に任せている。だから、(王族支配に対する)民衆の不満は溜まりやすいですよね。

 そういうところにシーア派の考え方が(浸透すれば)。例えば、イスラエルとかシオニズムに対して強く反対し続けている勢力は、もうスンナ派の国々では見られなくなっていて、シーア派のイラン、それからそれに共感しているヒズボラとか、シーア派のフーシ派とかだけになっています。

 だから(シーア派の方が)『大義を貫いている』わけですね。

 昔、『アラブの大義』という言葉がよく使われて、パレスチナ人のために戦うのはやっぱりアラブだって言われたんですけど。

 でも、イスラム世界ってアラブとペルシャとトルコがあるわけじゃないですか?そうすると今、アラブに大義なく、ペルシャに大義があると」

宮田氏「そうですね。シーア派に大義がある、ということですよね。(中略)

 やっぱり、今のパレスチナの不正義に対して、抵抗の声を上げているのは、シーア派です。だから、さっき言われたように、ヒズボラであるとか、ハマスであるとか、あるいはシーア派の武装集団であるとか、ハマスも。

 シーア派が、イスラエルへの抵抗軸になっているということですよね」

 宮田氏は、シーア派の人々は、正義感が強い、と説明しました。

宮田氏「シーア派は、非常に正義感が強いというのは、確かだと思うんですね。

 イスラム共同体の最高指導者の継承の仕方も、不正にウマイヤ朝に継がれたという思いがあって、さらに不正に、このフセインという人は殺害されたという思いがあって。

 イランという国は、ゾロアスター教の伝統を引き継ぐ国ですよね。ゾロアスター教も、善悪二元論的な価値観が強くて。ゾロアスター教の善悪二元論の影響と、シーア派の『殉教思想』も影響があって、イラン人は、非常に正義感の強い人達だと思います。

 私の個人的な経験ですが、イランから本を送ろうとして郵便局に行って。その時に、段ボールを買わないと本を送れないですよね。段ボールをいっぱい買って郵便局に持ち込んだんですけど、段ボールがどこかに行っちゃったんですよね。

 周りのイラン人達が、本当に必死になって探してくれました。『これは大変なことが起きた』っていう感じで、探してくれましたよね。

 あとは、イランの女性って非常にきれいですから、こちらも街中でパチッと(カメラで)撮っちゃったことがあったんですが、イラン人の男の人がやってきて、本当に普通の男の人ですね。割とインテリそうな」

岩上「別に、その人の旦那さんとか恋人とかではない?」

宮田氏「はい。通りがかりの人がやってきて、『なんで女性に無断で写真撮ったんだ、それは削除しろ』とか、そういうことを言ってくる。そういう国民性はあります」

岩上「『失礼だぞ』ということですよね。無礼だぞと」

宮田氏「イランという国は、非常に治安がいい国ですよね。日本と同じように、夜も一人で歩けるような、そういう国です」

岩上「それは結構重要なことですよね。知られてないですから。『テロリストの国』扱いされてますから」

 宮田氏は、「ニューヨークとか、ロスのダウンタウンの方が、よっぽど危なくて歩けない」と述べ、イランには世界文化遺産が米国の2倍になる22もあり、観光にも適した国だと説明しました。

<シーア派の中心教義『隠れイマーム』と『メシア思想』>

宮田氏「12代目のイマームが幼少の時に、行方不明になってしまった。これをアラビア語で『ガイバ(隠れた状態)』と言っています。姿を消した状態になって、神の命令で、信徒が苦難の時代『終末』に、再び現れると考えているわけですね。

 救世主が現れる時には、世界が混乱と不正に満ちている。そういう時に、『マフディ』と言っていますけども、メシアとして再び現れる、つまり再臨して、シーア派の信徒達を救済すると考えてるわけです。

 メシアは、世界を不正から解放して、イスラムの真の秩序を回復するというのがシーア派の考え方です。

 『最後の審判』は、スンナ派、シーア派、双方に最後の審判というのは行われるとされています。

岩上「スンナ派にもあるんですか?」

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