「戦後80年で、外国の軍隊が、いまだに日本に駐留している。自分の国は自分で守る。これは、軍備だけじゃなくて、外交も含めて、東洋的な哲学や姿勢で、日本の理念を、今、出すべきだ!」「日本はG7に入っているけど、BRICSにも入ってもいいんじゃないか。東洋と西洋の架け橋が日本だ!!」岩上安身によるインタビュー第1204回ゲスト 一水会代表木村三浩氏 第2回(後編) 2025.8.12

記事公開日:2025.8.18取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!

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 2025年8月19日、「岩上安身によるインタビュー第1204回ゲスト 一水会代表木村三浩氏 第2回(後編)」を撮りおろし初配信した。

 木村氏は、今年6月に、慶應義塾大学名誉教授の大西広氏との共著『反米自立論 日本のための選択と共同』(あけび書房)を上梓した。木村氏は、同書で、「米国の衰退をチャンスに対米自立を」と提言し、日米地位協定の見直しや、日米安保の破棄を訴えている。

 第2回インタビューの後編では、この『反米自立論 日本のための選択と共同』の内容に沿って、木村氏の訴える「対米自立論」について訊いた。

 ウクライナ紛争を機に、日本は西側諸国によるロシアへの経済制裁に参加している。これについて、著書の中で木村氏は「経済制裁は『見えない戦争』」だと指摘し、「制裁に加担するということは、ロシアに対する戦争に加担することだと自覚するべき」だと論じている。

 さらに木村氏は、「80年前の我が国の開戦の原因の一つは、欧米各国から石油や鉄の輸入封鎖による経済制裁・ABCD包囲網にあった」と指摘し、「本来、日本は経済制裁を行なわないことを国是にすべき」だと提言している。

 木村氏は、「経験を教訓化する」べきだと述べ、次のように語った。

 「アメリカは、(自分達は)持てる国だと思っているから、どこに対してもすぐ制裁。こういうことばっかりやるんですよ。

 それで、日本もやられて、大変な思いをしている。

 (経済制裁を)やるということは、それで『見えない戦争』を仕掛けてきて、それで暴発させるわけですよ。

 『(経済制裁を)自分の国の意思を、他国に押し付けるための手段にするな』『それを戦争の道具にするな』ということを、本当は、日本が言うべきです」。

 また、木村氏は著書で、日本は「米国の掣肘をはねのけ、自主的な外交権のもとに国益を守るべき」だと訴え、「日ロ平和条約を締結すべく、主体性のある自前の外交ポリシーを発揮すべき」だと主張している。

 木村氏は、「北方領土は、ヤルタ会談の密約で奪われた」と、次のように語った。

 「ヤルタ会談というのは、終戦の年(1945年)に、日本の戦後処理を問うということで、アメリカとイギリスと旧ソ連が、クリミアのヤルタに集まり、10日間ぐらい会談しました。

 スターリン、チャーチル、ルーズベルトが、リヴァディア宮殿という、ロマノフ王朝のニコライ皇帝の元別荘で、第2次世界大戦終結に関する連合国の戦略を調整、決定する密約が行われました。

 ドイツが降伏したら、その3ヶ月以内に、ソ連が対日参戦をしなきゃいけないという決まり事がありました。

 その時に、恐らくなんですけど、ルーズベルトとスターリンは、ソ連が北海道の半分をよこせとか、1905年の日露戦争の時に日本が奪っていった樺太とか千島列島を返してもらうというような話をしていました。

 それにもとづいて、ドイツが降伏して、ソ連が(日ソ中立条約を破って)日本に入ってきた。この時、『プロジェクト・フラー』という作戦で、米国がソビエト(の対日参戦を)をそそのかしていた。

 だから、アメリカが焚きつけてやってきたことを、しっかりと見ないといけない。日ソ中立条約を、一方的にソ連が破って、日本に攻めてきたという話だけではないんじゃないか、ということを見ながら、ちゃんと日ロ平和条約を締結した方がいいんじゃないのか、ということが書いてあるわけです」。

 1956年には、ソ連側が主張する、歯舞、色丹の2島引き渡しによって、北方領土問題を解決し、日ソ平和条約が締結されそうになった際、当時の米国国務長官ジョン・フォスター・ダレスが、「日本が2島返還で受諾した時には、米国は沖縄を返さない」と、脅しをかけた(ダレスの恫喝)。

 木村氏は、ソ連が北方領土を占領する際、「アラスカのコールドベイというところで、昭和20年の4月から7月まで3ヶ月間、ソ連の軍隊の上陸訓練をしてるんですよ」と、米国側の協力があったことを指摘した上で、「(米国は)ダブルスタンダード、二枚舌もいいところ」だと批判した。

 ロシアのプーチン大統領は、2016年の安倍晋三元総理との日露首脳会談の際に、「あの時、日本は独自の判断ができなかった。アメリカの圧力に配慮した」と、日本が米国の属国であることを厳しく指摘している。

 ロシアとすれば、北方領土を返した途端、「日米安保条約」の名のもとで、ロシア本土に近い北方領土に米軍の基地が作られては困ると考えるのは当然だ。

 木村氏は、北方領土返還のためには、「北方領土に米軍基地を置かないということを、明言しなくてはならない」と指摘し、そのためには、日本の主権を妨げている、日米安保条約や、日米地位協定の改定が必要だとの見解を示した。

 木村氏は、著書で「衰退する米国」は、日本の自主独立のチャンスだと提言している。

 米国のトランプ政権は、バイデン政権が進めた在日米軍の機能強化や、在日米軍と自衛隊の統合運用を、予算削減を理由に、後退させるのではないか、との見方が報じられている。

 木村氏は著書で、「こうした動きから、『米国に見放される』との危機感をあらわにさせ、『米軍に撤退されては、安全保障上の維持機能が崩壊する』との恐怖心を表明をする人々がいる」と指摘した上で、「これは日本のメディアに刷り込まれたプロパガンダと言える」と述べている。

 木村氏は、「米軍が撤退するというならば、それは大歓迎」だとして、以下のように語った。

 「我々は、自主的な安全保障を考える。

 自主的な安全保障を考えるには、外交も含めて、周りの地域からの安全性を考えて、仲良くしていって、軍事ももちろん、(攻撃して)来たら、パッとやり返す。しかし、我々からは行きません、ということで、緊張を高めない方がいいですよと。

 米軍がいることによって、緊張が、むしろ高まるんだから、米軍は撤退してくれ、ということですよね。

 (米軍がいれば)依存心が高くなりますから、そういう意味では、ちゃんとした独立国家としての、また周辺地域との対応の仕方をとればいいんじゃないか、と言うことです」。

 他方で、在日米軍の予算削減のために、日本に対して、在日米軍駐留経費の日本側負担、つまり「思いやり予算」の強化の要求が強まる懸念がある。

 米国には、「『日米同盟強化』という名の打ち出の小槌で、お金がザクザク入ってくる最高のシステムを永続させたいとの思いがある」と指摘する木村氏は、次のように語った。

 「戦後80年で、外国の軍隊が、いまだに日本に駐留している。

 安保条約があるから、ということですけども、やはり、自分の国は自分で守る。これは、軍備だけじゃなくて、防衛装備品だけではなくて、外交も含めて、日本の理念、国の理念を、今出すべきだ。

 ヨーロッパの西洋的な考え方というのは、いいところももちろんあるけれども、やはりグローバル的な、資本主義の、『どんどんお金を儲けて、どんどん開発していけばいいんだ』というようなことから、東洋的な人間の徳や、倫理や、自然との一体感みたいなもので、理念を示して、逆に、征服型の自然観念のヨーロッパを、『自然との共生ができるんだ』という、東洋的な哲学や姿勢で、彼らを啓発していく。

 それが、アメリカの資本主義が進んでいった挙句、戦争と飢餓とか、格差とか、ボロボロになっていくよりは、ある程度どこかしら、有限性のものにもとづいて、自然と一体化するという、東洋的な哲学観を、わかってもらうということが必要なんじゃないか」。

 さらに木村氏は、次のように続けた。

 「アメリカの方の中でも、非常に、日本の文化や、考え方や、東洋的哲学に敬意を持ち、そして、『そうなんだ』と、『アメリカが狂っている』と言う人もいます。

 『本当に狂っているんだ』と。『これを救えるのは、日本しかないんだ』と。『日本の文化なんだ、考え方なんだ』ということを、積極的に言う人もいるわけですよ。

 アメリカのインテリが、そういうことを言うわけですから、それは、アメリカを救ってあげる根拠の一つとして、提示していってもいいかなと。

 しかし、まず日本が、それに立ち返っていくということが、先決なんですよね。日本は、まだ、ヨーロッパを見て、アメリカを見て、となっていますから、『そうじゃないよ』と。

 日本が元に戻っていく。それは、安倍さん流の『日本を取り戻す』というんじゃなくて、日本の哲学的なものに戻っていくことによって、アメリカの人との話し合いで、BRICSも、もちろんそうですね。

 日本の、いい利点を、ちゃんと提出していくということが重要なんじゃないか、と思います」。

 木村氏は、東洋と西洋の宗教観・死生観の違いから、西洋では自己の権利の主張に重点を置く資本主義が膨張しているのではないか、との考えを披露し、「日本はG7に入っているけど、BRICSにも入ってもいいんじゃないか。東洋と西洋の架け橋が日本だ」と述べた。

■ハイライト【後編】

  • 日時 2025年8月12日(火)15:00~17:00
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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