【第590号-第593号】岩上安身のIWJ特報!急速な円安は「アベノミクス」の経済的帰結!?世界最悪の財政危機に見舞われ、岸田政権のもと増税による軍拡に走る日本はこれからどうなるのか?岩上安身によるエコノミスト田代秀敏氏インタビュー(その4) 2023.4.1

記事公開日:2023.4.2 テキスト独自
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(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!
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 2022年10月10日、岩上安身が行ったエコノミストの田代秀敏氏のインタビュー第3弾の続きである。

 2013年3月から2期連続で日本銀行総裁を務める黒田東彦(はるひこ)氏が、2023年4月8日で退任する。

 第2次安倍政権のアベノミクスのもと、「異次元の金融緩和」「黒田バズーカ」などと呼ばれた大規模な金融緩和策を実施し、株価を押し上げる一方で、国債の大量買入れによる財政規律の低下、市場の機能低下なども招いた黒田総裁の後任には、経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏が決定している。


▲エコノミスト・田代秀敏氏(IWJ撮影、2022年10月10日)

 植田氏は2023年2月24日、衆議院で日銀総裁候補として所信表明を行い、「今の金融緩和政策は適切だ」と述べて、黒田総裁の方針を継続する姿勢を示した。

 「アベノミクス」の提唱者である安倍晋三元総理が死去したことで、大規模な金融緩和政策の修正を始める可能性も想定されたが、植田氏はそれを否定したのである。

 一方、2022年10月7日付け『共同通信』が、中国の2022年GDPが成長目標を割り込むことを報じた。5.5%前後の目標が達成できないのだという。それが、中国だと世界的なニュースになるのであり、GDPの成長率がよくて1%台とされる日本とは、まったくレベルが異なる。

 しかし、「世界最大のマーケット」である中国経済の減速は、「5.5%前後」の成長を前提に、事業計画を立てている日本と世界中の企業に多大な影響を与えると田代氏は指摘する。IMFは世界経済全体の見通しを下方修正した。

 日本経済において、かつてアベノミクスの「プラス」の副産物として歓迎された「株価上昇」「インバウンド」は今や見る影もなく、日本の通貨、株式、債券がすべて売られる「トリプル安」状態である。

 日本の株価は、2万8000円の付近をぐるぐると回る「鉄火場相場」の様相を呈していると田代氏は評する。それは、もはや成長性の低い日本株には、専門のファンドマネージャーがいなくなり、AIがマネーゲームをやっている状態だというのだ。

 日銀の政策に関して、田代氏は日銀のイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)について、「通常は、短期の金利を操作して、間接的に長期金利に影響を及ぼそうとするんだけど、日本銀行は直接に長期金利に手を出している」と話す。

 岩上安身が、「できるんですか、そのイールドカーブ・コントロールというのは」と尋ねると、田代氏は、「その帰結がどうなるかは、これからわかる」と答えて、自由主義経済の市場はアダム・スミスの言う「神の見えざる手」が働くものだが、日本銀行は「見える手」を突っ込んで金利を押さえ込んでいるのだと説明した。

 「そのために、日本国債の、発行されて満期が来てないもの全体の、半分以上は日本銀行が単独で保有しているわけですよ。これも前代未聞」

 そして、国債のエキスパートで、ミスターJGB(日本国債)の異名を持つ財務省の斎藤通雄理財局長が、「金融緩和の出口を見据え、日銀にかわる(国債の)引き受け手の開拓が急務」だと語っていることに、田代氏は危機感を表明した。

 いずれにしても、(日本経済が)中国にかなり依存していたことを考えると、中国の成長率が下がってくるというのは、大変なことではないかなとは思うんですけど。ここをちょっと、ご解説ください」

▲中国では、GDP成長目標割れが確実に! 指導部はコロナ対策を優先し、目標未達を容認

田代秀敏氏(以下、田代氏)「おっしゃる通り、5.5%前後の成長目標が、多分、つまり達成できないだろうと。問題はそれが、4.5%なのか4%なのか3.5%かってこと、議論してるんですね。だから、日本とは全然レベルが違う話なんですよ」

岩上「そうですね」

田代氏「だけど、日本のメディアとすると、そういう時の見出しにはですね、『中国経済崩壊』と打つと視聴者が増えるっていうので、そうやるんだけど、言ってることはそうじゃないんですね。問題は、その5.5%%前後っていうのを、今年、冒頭でぶち上げてしまったから、これを前提に、世界中の企業が……」

岩上「投資とか」

田代氏「計画しちゃったわけですね」

岩上「なるほどね。中国を相手にして」

田代氏「そう。ところが、それができないってことになると、簡単に言えば、企業からすれば、想定した売り上げが中国で達成できないかもしれないと」

岩上「なるほど」

田代氏「現状ですね、多くの産業品目に関して、中国は世界最大のマーケットなんですよ」

岩上「そうですね」

田代氏「あと、日本企業だけじゃなくて、世界中の企業も、台湾の企業も含めて、大きく中国に依存してる。中国の成長に依存してるわけですよ。それが目論見よりも下がるってことは、これは大変な事態なんですね」

岩上「なるほど。特に大企業ですよね。グローバル企業」

田代氏「うん。たとえばトヨタも、すでに販売台数の国別で言うと、1位がアメリカで、2位が中国なんです。で、3位が日本なんです、ようやく」

岩上「まだ、1位はアメリカなんですか?」

田代氏「アメリカにたくさん工場つくったから」

岩上「そうか、そこで現地生産しろと」

田代氏「現地生産のトヨタがいっぱいあるわけです」

岩上「圧力がありますからね、アメリカのね」

田代氏「うん。圧力もあったし、あとやっぱり、自動車産業は非常に競争厳しいから、現地生産しない会社ってのは非常に苦しいんですよね」

岩上「なるほど」

田代氏「それもあって、アメリカで生産してるんだけど、中国の市場の伸びがすごくて、もうとうに日本での販売台数は上回ってますね。

 そういう企業はたくさんあります。中国市場がなかったら、そもそも会社が存立できなくなってるという。台湾の企業もそうです。なのに、政府が公約したね、成長目標を下回るとなると、これはですね、大変な事態になっちゃうね」

岩上「なるほど」

田代氏「世界経済全体にとって」

岩上「グローバル企業にとっては、特にね」

田代氏「うん。グローバル企業じゃなくても、経済は全部連鎖してますから」

岩上「そうですよね。その下部にあって支えてる企業も」

田代氏「中国に、たとえば製品や部品を供給してる会社の下請けとか、あるいはそこの従業員が通っているような食堂とかね。そういうの考えると、やはり経済全体にすごく大きな影響があるわけですね」

岩上「なるほど。そうするとこれは、日本の企業、あるいは日本人の生活にとってはマイナスの影響が、負の影響が出てくるということですよね」

田代氏「うん。だから、昔から私が不思議でたまらないのは、なぜ、中国経済崩壊論っていうのが」

岩上「歓迎されるのかと」

田代氏「歓迎されるのかわからない。それって……」

岩上「自分のところ、どうなっちゃうかって」

田代氏「それはもう、日本経済崩壊を意味してるんだから」

岩上「(転落する中国に、日本が)取って代われるとでも思ってんですよ。ちょっとおかしいんですけどね。相手にしてもしょうがない、その人たち」

田代氏「そうですね。これは大変なことで、7日付けのロイターの話の通り」

▲世界経済の見通しが「暗転」! IMFが2023年の世界成長予想を下方修正

岩上「『世界経済の見通しが「暗転」!』してます。『IMFが2023年の世界成長予想を下方修正』した。同じく10月7日付けのロイターなんですけど、『「世界経済見通し『暗転』、23年予想を下方修正へ=IMF専務理事」と報じた。IMFのゲオルギエワ専務理事は「6日、景気後退と金融不安のリスクが高まっているとして、現在2.9%としている2023年の世界成長率見通しを、来週にも下方修正する」』と。

 だから、5.5%っていうのは、中国は(日本などと比べれば)非常に高かったわけですよね」

田代氏「うん」

岩上「世界全体で、ならしても2.9%。日本は、それよりも低い状態にあるわけですけれども。この、世界全体の成長率ってことになると、本当に日本も、全面的にここに依存してるわけですから、影響が出るわけですよね」

(中略)

記事目次

  • 中国でGDP成長目標割れ! 世界最大マーケットの中国経済の低迷は、日本経済の低迷も意味している!
  • アベノミクスの「プラス」の副産物とされた「株価上昇」「インバウンド」は今や見る影もなく、日本の通貨、株式、債券がすべて売られる「トリプル安」に!
  • AIによって株価が激しく変動する「鉄火場相場」の出現! 日本の株式市場はサイコロを振って「丁、半」とやるようなマネーゲームに!
  • 日本国債の半分以上を保有する日銀は、もう限界!「日銀に代わる引き受け手」を財務省の斎藤理財局長が模索! しかしどこに引き受け手がいるのか!?
  • かつて国民が買わされた戦時国債が紙くずになった「黒歴史」がある日本! 政府は国債の新しい引き受け手に国民を想定!?
  • 「前代未聞の金融緩和」の結果が今。日銀が国債購入をやめるなら「前代未聞の何か」をしなければならない! しかし、それが何であるかは、自民党の政治家はもちろん、財務省の「プロ」の官僚も「わからない」と答えるだろう!
  • 雪だるま式に膨らんできた日本の政府債務は先進国の中でもダントツ! これは「黒田日銀」の大罪!?
  • 日本政府の債務残高は対GDP比256.2%! マネー戦争の「敗戦処理」は緊急事態条項で銀行封鎖を行い、国民全員から財産を根こそぎにする財産税を再び強行すること!?
  • 「ドル一強」で米国では産業の空洞化も? グーグルは「安い通貨の日本」で「安い労働者」を集めて「安いデータセンター」を新設!
  • 米国はコロナ・パンデミックで未曾有の財政出動を実施。米国債の利回りは急上昇、同時にMMT理論は下火に! 日本の通貨・円は世界中の通貨の中で一人負け! これが円安の現実!
  • 戦後日本の「交易条件の推移」を知らないと、日本の貿易収支の構造的変化がわからない!! この経済状況をウクライナ危機と絡めるのは「地政学的妄想」! かつてない金融緩和をズルズル続けた上にパンデミックが起きた結果が今!
  • 日本が貿易立国だった時代は、すでにはるか昔の話! 企業物価指数は戦後5番目の急上昇。コスト高に耐えきれない企業が、今後、価格転嫁して、消費者物価が急上昇したら、年率20%近いインフレに! 財政も危機的で、パンデミックにインフレ、交易条件も悪い、こんな最悪な条件がそろっている日本で戦争をするというのは、「台風が直撃する時にピクニックをやろう」というよなもの!

中国でGDP成長目標割れ! 世界最大マーケットの中国経済の低迷は、日本経済の低迷も意味している!

岩上安身(以下、岩上)「さて、共同通信の10月7日付のものなんですけれども、『中国では、GDP成長目標割れが確実に! 指導部はコロナ対策を優先し、目標未達を容認』するということなんですけど。

 これね、いつも中国を扱う時に、中国もダメだなんていうことを簡単に言う人いますが、日本のレベルじゃないですからね。『「5.5%前後」を割り込む』ってことですから。

 日本は成長するかしないか、下手するとマイナス成長になりかねないっていうギリギリ(のところで推移している)。海を泳いでることに例えるとしたら、頭が出るか出ないかぐらいの水没ギリギリぐらいのところにいる国ですよ。それが、5.5%前後で『中国ももうダメだ』と言ってるのは、ちょっとどうかなとは思いますけど。

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