日刊IWJガイド・非会員版「本日岩上安身は午後3時から『ルポ特殊詐欺』著者・神奈川新聞田崎基氏、午後7時からJOGMEC原田大輔氏、2連続インタビューを生配信!」2023.3.13号~No.3833号


┏━━【目次】━━━━
■はじめに~<本日の岩上安身によるインタビュー 1>本日午後3時から「背後に『暴力団』が関与し、凶悪化する『特殊詐欺』を『高齢者差別』が後押し! ルフィ事件と、高齢者に『集団自決』を求めた成田悠輔氏の発言は同根の大問題! 岩上安身による『ルポ特殊詐欺』著者・神奈川新聞報道部デスク田崎基氏インタビュー第2回」を生配信します!

■<本日の岩上安身によるインタビュー 2>本日午後7時から「米国主導の対露制裁がもたらした大矛盾! ロシアへの制裁に参加した西側諸国がエネルギー資源高騰で苦しむ一方で逆に制裁不参加の国々が潤っている!? 岩上安身によるJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)調査課長原田大輔氏インタビュー第3弾」を生配信します!

■IWJは創業以来、最大の経済的危機です! 2月のご寄付は173件、241万6500円、目標達成率62%でした! ご寄付をお寄せいただいた皆さまありがとうございました! しかし2月の月間目標額より38%下回っており、毎月、累積赤字が増え続けている状況で、第13期の7ヶ月間の累積の不足分は1655万4500円です!「新たな戦争前夜」にあって、偏向メディアにかわり、正確な情報をお届けすべく、IWJは全力で頑張り抜きますので、3月こそは少なくとも月間目標額390万円を達成できますよう、また累積の不足分を少しでも減らせますよう、緊急のご支援・ご寄付・カンパのほど、どうぞよろしくお願いします!

■【中継番組表】

■IWJ検証レポート!「米国が狙った独露間の天然ガスパイプライン・ノルドストリームの阻止!! その9」~米国の制裁に対してロシアは自前で「ノルドストリーム2」を完工! しかし、遂に稼働することのないままウクライナ紛争が勃発!

■<シリーズ特集! 福島第一原発事故から12年、進む事故への危機感と恐怖の記憶の風化! 他方、急激に高まる原発への武力攻撃リスク!><IWJ取材報告>海渡雄一弁護士「株主代表訴訟の地裁判決で、我々は東電や国の責任を否定する、被害を否定する、きわめて悪辣な工作と戦う決定的に重要な武器を手にしたと言える!」~3.10 集会「控訴審も勝利へ! 東電株主代表訴訟」―登壇:海渡雄一弁護士、甫守一樹弁護士ほか
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■はじめに~<本日の岩上安身によるインタビュー 1>本日午後3時から「背後に『暴力団』が関与し、凶悪化する『特殊詐欺』を『高齢者差別』が後押し! ルフィ事件と、高齢者に『集団自決』を求めた成田悠輔氏の発言は同根の大問題! 岩上安身による『ルポ特殊詐欺』著者・神奈川新聞報道部デスク田崎基氏インタビュー第2回」を生配信します!

 おはようございます。IWJ編集部です。

 岩上安身は本日、生配信で連続2本のインタビューを敢行いたします。

 まずは午後3時から、『ルポ特殊詐欺』(ちくま新書、2022年11月10日)著者で、神奈川新聞報道部デスクの田崎基氏へのインタビュー第2弾です。

※『ルポ特殊詐欺』(ちくま新書)
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480075154/

 このインタビューは、3月7日に収録したインタビューの続編です。

※「今の特殊詐欺グループは、自転車の車輪がいくつも存在していて、そのハブのスポークが、また別の車輪のハブになっているみたいな円環構造」~岩上安身によるインタビュー第1111回 ゲスト 神奈川新聞報道部デスク・田崎基氏 2023.3.7
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/514596

 前回7日のインタビューでは、綿密な取材にもとづいた田崎氏の著書『ルポ特殊詐欺』が、今、世間を震撼させている連続広域強盗事件(「ルフィ」事件)発覚の3ヶ月も前に上梓されていたことをふまえ、「ルフィ」グループは「特異」で「例外」的なグループではなく、数ある特殊詐欺グループの中から凶悪化し、強盗殺人を犯すに至ったグループのひとつに過ぎず、氷山の一角である、という点についてお話をうかがいました。

 田崎氏によると、警視庁が特殊詐欺の手口と被害を正式に観測したのは2004年とのこと。その後、いったん収束した特殊詐欺は、2010年代中盤にかけて再び増加したといいます。

 また、2012年以降、対面して恐喝するなど、すでに手口が過激化しており、強盗殺人まであと一歩だったとのことです。さらに、減少傾向が続いていた特殊詐欺は、2022年上半期、コロナ禍で8年ぶりに増加したことを、田崎氏は著書の中で明らかにしています。

 本日のインタビューでは、特殊詐欺組織内部の構図や暴力団の関与について、さらに、こうした特殊詐欺事件の背景に「富める高齢者」と「貧困の若年層」の格差といった日本社会の構造があるということについて、田崎氏に詳しくお話をうかがいます。

 困窮した若年層が気軽に闇バイトに応募し、高齢者をターゲットにした特殊詐欺に手を染める構図について、田代氏も参照文献にあげている『老人喰い』(ちくま新書、2015年)のあとがきで、著者の鈴木大介氏は次のように述べています。

 「今後の老人喰いを収束に導く方法は(中略)ただ、これからの世代に『与え、育てること』しかないように思えてならない」

 「変わることのない真実は『彼らも与えられていれば奪う存在にはならなかった』ということだ。夜露の世代は今も夜露のまま、理不尽の中にいる」

 こうした指摘の一方で、2016年には元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏が、自身のブログで「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」と発信し、身体的弱者への「殺人教唆」ではないかとして、大きな批判を浴びました。

※許されざる弱者への「殺人教唆」!元フジテレビアナウンサー・長谷川豊氏が人工透析患者をターゲットに「殺せ」と暴論を展開したブログをBLOGOSが転載後、謝罪し削除! 2016.9.25
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/333932

※「謝れない男」長谷川豊氏 「自業自得の人工透析患者」を「殺せ!」と煽ったブログから「殺せ!」を削除も、「悪意を持って拡散された」と謝罪もせず他人に責任転嫁!「無断コピペ」も当事者に謝罪なく削除 2016.9.29
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/334941

※「殺せ!」ブログの長谷川豊氏 次々テレビ降板後に「あまりにも遅すぎる」形式的謝罪!東京MXは「続投」決定!ところが番組中に長谷川氏が「殺せ!」発言していたことが発覚!MXの責任は!? 2016.10.5
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/336133

 2020年には、当時れいわ新選組の公認候補だった大西つねき氏が、自身のYouTube番組の政策を語る動画で「高齢者を長生きさせるのかっていうのは、我々真剣に考える必要があると思いますよ」「生命選別しないと駄目だと思いますよ、はっきり言いますけど」「その選択が政治なんですよ」「高齢の方から逝ってもらうしかないです」などと発言し、大きな批判を浴びてれいわを除名されました。

※れいわ新選組の公認候補である大西つねき氏がナチスも顔負けの「高齢者の命を選別すべき」と発言!! しかも「生命の選別しないと駄目だ」「その選択が政治」とまで言いきる! しかし、れいわ代表の山本太郎氏は大西氏を「除名しない」と声明!! 2020.7.8
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/477830

※れいわ新選組が命の選別発言の大西つねき氏を除名! 山本太郎代表は会見でIWJ記者の質問に答え、大西氏擁護発言をする人々について「れいわの本質を理解できている方ならそういう解釈にはならない」と批判! 2020.7.16
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/478255

※れいわを除名された大西つねき氏「命の選別」発言に対する謝罪は本心ではなかったと開き直り!高齢者ジェノサイドを正当化する命の選別思想を口にし、次回衆議院選出馬まで表明!~7.17 大西つねき氏 れいわ新選組離党会見 2020.7.17
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/478324

 さらにその直後、2020年7月に23日に明らかになったALS患者嘱託殺人事件が起きた際に、当時日本維新の会代表だった松井一郎大阪市長が、事件をきっかけに「国会で尊厳死の議論を」とツイートしています。悪質な便乗としか思えない発言でした。

※医師二人がALS患者に薬物投与して殺害!?「嘱託殺人」の疑いで逮捕!大西つねき氏がした主張「命の選別」が現実に広がり始めている!間違えてはならない!「安楽死」は殺人である! 2020.7.25
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/478741

※医師2人がALS患者に薬物投与し殺害!「優生思想」信奉者の「嘱託殺人」事件に「便乗」して「尊厳死」を呼びかける松井一郎大阪市長!「死ぬ権利」追及が難病患者や重度障害者をさらに「生きづらくさせる社会的圧力」を形成する!! 2020.7.25
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/478700

※ALS患者嘱託殺人事件 大久保愉一容疑者が「高齢者を『枯らす』技術」と題したブログで優生思想的な主張を繰り返していた!! さらに、山本直樹容疑者は医師免許を不正取得か!? 松井一郎大阪市長は、なぜこの殺人事件を契機に「尊厳死の議論を」などと言えるのか!? 2020.7.26
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/478789

※維新 松井一郎代表、馬場伸幸幹事長の「れいわ新選組 舩後靖彦議員を尊厳死議論の旗振り役に」発言には同調せず。しかし「尊厳死の法整備」には撤回の意志なし!~7.30松井一郎 大阪市長 定例会見 2020.7.30
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/479031

 岩上安身はこの時、激しさを増す「高齢者ヘイト」を懸念し、2010年に『嫌韓流』などの著書で知られる漫画家・山野車輪氏との間のツイッター上での論争を【岩上安身のツイ録】としてIWJのサイトに再掲載しました。

※【岩上安身のツイ録】「命の選別」は大西つねき氏だけの問題ではない! 世代間格差により若年世代を蝕む「高齢者ジェノサイド」論! 2010年に『「若者奴隷」時代』を出した山野車輪氏とのツイッター論争を再掲載! 2020.7.19
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/478419

 山野氏は2010年3月15日、『マンガ 「若者奴隷」時代』(晋遊舎)を出し、増え続ける年金負担額などを理由に、「高齢者が若者を搾取している」と指摘しました。

 表紙には副題として「『若肉老食』社会の到来」と記され、若い男女を犬のように鎖でつないだ老人が「だ・か・ら 若者は高齢者に一生貢いでいればいいんだよ!」と叫んでいます。老人の足元では、重りをつけた足かせをつけられた若い男が「ジジババを殺らなきゃオレたちはこのままなのか!?」と青ざめています。

 岩上安身は「高齢者に対するヘイトクライム。殺害を匂わすなど、論外」と、このマンガを批判するツイートをしたところ、作者の山野車輪氏から、言論の自由のもと「世代間格差を訴えただけ」だと反論のツイートが返ってきました。

 2010年当時でもすでに、高齢者を「殺るしかない」という表現が出てきていました。高齢者ヘイトの事態は悪化し、深刻化し続けています。

 そして今年は、イエール大学経済学部助教授の成田悠輔氏が、「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」などとYouTubeやテレビ番組、講演などで繰り返していたことが明らかにされ、物議を醸しています。

※イエール大学経済学部助教授・成田悠輔氏の「高齢者の集団自決」発言が『ニューヨーク・タイムズ』の一面で取り上げられ、炎上! 成田氏はすでに2019年「日本版ダボス会議・G1サミット」で「集団自決」発言!(日刊IWJガイド、2023年2月27日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51932#idx-4

 成田氏の「高齢者は集団自決せよ」という発言に見られるような、高齢者や障害者といった社会的・身体的弱者を切り捨て、社会保障支出を減らすべきだとする言論の隆盛が、こうした犯罪に拍車をかけているのではないでしょうか。

 詳しくはぜひ、本日のインタビューを御覧ください。

 仮に、その日の都合で観られなくても、会員になっていただければ、一般会員なら2ヶ月以内、見逃し配信を自由な時間に観られますし、サポート会員ならば、いつまでも、いつでも好きな時にコンテンツを無期限で視聴できます!

 老いや病は、誰にでも訪れる問題です。人間はいつまでも若く、体力があり、病気もない、というままではいられません。自分も、自分の家族も老いて、病いを得てゆくのです。若い時に、老いた人間を切り捨ててしまえ、という思想や風潮が蔓延し、その波に加担することがあれば、必ず我が身に帰ってきます。ぜひ、多くの人に、関心をもっていただきたいと思います。

※会員のご登録はこちらからお願いします。
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【IWJ_YouTube Live】15:00~
岩上安身による 神奈川新聞記者 田崎基氏インタビュー 第2弾
視聴URL: https://iwj.co.jp/wj/open/archives/420867

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■<本日の岩上安身によるインタビュー 2>本日午後7時から「米国主導の対露制裁がもたらした大矛盾! ロシアへの制裁に参加した西側諸国がエネルギー資源高騰で苦しむ一方で逆に制裁不参加の国々が潤っている!? 岩上安身によるJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)調査課長原田大輔氏インタビュー第3弾」を生配信します!

 本日、午後7時より、岩上安身によるJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)調査課長原田大輔氏インタビュー第3弾をフルオープンでライブ配信します!

 第3弾は、ウクライナ紛争の裏の顔である、ロシアから欧州のガス市場を奪う米国の資源エネルギー戦略、その鍵を握る「ノルドストリーム1、2」に焦点をあてます。

 「ノルドストリーム1、2」は、2022年9月に爆破され、ヌーランド米国務次官にいわせると「海底の金属の塊」になりました。

 インタビューでは、特に、米国から3度制裁を科され、建設と稼働を妨害され続けた「ノルドストリーム2」に焦点をあて、この問題に精通していらっしゃる原田大輔氏にお話をうかがいます。

 詳しくはぜひ、本日のインタビューを御覧ください。

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【IWJ_YouTube Live】15:00~
岩上安身によるJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)調査課長原田大輔氏インタビュー第3弾
視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/featured

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■IWJは創業以来、最大の経済的危機です! 2月のご寄付は173件、241万6500円、目標達成率62%でした! ご寄付をお寄せいただいた皆さまありがとうございました! しかし2月の月間目標額より38%下回っており、毎月、累積赤字が増え続けている状況で、第13期の7ヶ月間の累積の不足分は1655万4500円です!「新たな戦争前夜」にあって、偏向メディアにかわり、正確な情報をお届けすべく、IWJは全力で頑張り抜きますので、3月こそは少なくとも月間目標額390万円を達成できますよう、また累積の不足分を少しでも減らせますよう、緊急のご支援・ご寄付・カンパのほど、どうぞよろしくお願いします!

 おはようございます。IWJ代表の岩上安身です。

 いつもIWJをご支援いただきまして、誠にありがとうございます。

 IWJの第13期も半期の折り返しを過ぎ、この3月で8ヶ月目に入りました。

 2月1日から28日までの28日間でいただいたご寄付が確定しました。173件、241万6500円でした。これは、単独月間目標額390万円の62%に相当します。ご寄付をお寄せいただいた皆さま、まことにありがとうございました。大切に、効果的に使わせていただきます。

 しかし、月間の目標額より38%下回っており、毎月、累積赤字が増え続けていることにはかわりありません! 今月3月こそは、390万円という月間目標額をクリアし、できれば積み上がった赤字部分を少しでも皆さまのお力で削らせていただきたいと存じます! 3月の不足分も含めて、第13期の目標の累積してしまった不足額は1655万4500円に達しています!

 3月の1日から10日までの10日間でいただいたご寄付は、45件、61万7400円となっています。これは月間目標額390万円の16%にあたります。ご寄付をお寄せいただいた皆さま、まことにありがとうございます。

 3月の月間目標額達成まで、あと84%、328万2600円が必要です! ぜひ、皆さま、今月こそは達成できますよう、どうぞ緊急のご支援をお願いしたいいたします!

 IWJの内部留保も底を尽き、キャッシュフローが不足したため、私、岩上安身が、個人的な私財から、500万円かつ2回にわたってIWJにつなぎ融資しました。

 私がこれまでにIWJに貸し付けてまだ未返済の残高は約600万円。これにつなぎ融資1000万円と合計すると、IWJへの私の貸し付け残高は約1600万円にのぼります。

 私の貯えなどたかがしれていますから、この先も同様の危機が続けば、私個人の貯えが尽きた時、その時点でIWJは倒れてしまいます。

 皆さまにおかれましても、コロナ禍での経済的な打撃、そしてこのところの物価上昇に悩まされていることとお察しいたします。

 しかし、ご寄付が急減してしまうと、たちまちIWJは活動していけなくなってしまいます。IWJの運営は会員の方々の会費(最近の流行語ではサブスク)とご寄付・カンパ(最近の用語でいえばドネーション)の両輪によって成り立っていますが、それが成り立たなくなってしまいます。

 2023年、「新たな戦争前夜」を迎えて、私、岩上安身とIWJは、少しでも正確な情報を皆さまにお届けできるように、その結果として、日本が戦争突入という悲劇に見舞われないように、無謀な戦争を断固阻止するために全力で頑張ってゆきたいと思います。

 先月、2月における、最も特筆すべきエポックメイキングな出来事は、ピューリッツァー賞を受賞した経歴をもつ、米国屈指の独立調査報道ジャーナリストであるシーモア・ハーシュ氏が、米国が、ノルウェーと協力し、ドイツとロシアを直接つなぐ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したという驚愕のスクープを出したことでしょう。日本の新聞・テレビなどのメインストリームメディアは、一切このスクープを報じませんでした。

 IWJは、全文の仮訳を進め、全4回を号外でお送りしました。

※【IWJ号外】ドイツとロシアを結ぶ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したのは、米国だった! ピューリッツァー賞を受賞した米国の最も著名な独立調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が大スクープ!(その1~4)
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e3%82%b7%e3%83%bc%e3%83%a2%e3%82%a2%e3%83%bb%e3%83%8f%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%a5

 私は、ロシア軍がウクライナに侵攻して1年となる2月24日の岸田総理会見で、ハーシュ氏のスクープについて岸田総理に直接、質問しました。

 私が「日本政府は、このノルドストリーム爆破疑惑について、独自に検証や調査を行なっているのでしょうか?」と質問したのに対し、岸田総理は、「米政府は完全なるフィクションであるという評価をしております」「ノルウェー外務省もナンセンスと言っています」「多くの国においてこうした記事に関しては、否定的な評価がされている」とはぐらかし、日本政府・日本国総理としての判断を示しませんでした。

※【IWJ代表:岩上安身質問】ノルドストリーム爆破疑惑について、日本は独自に検証や調査を行なっているのか?岸田内閣総理大臣記者会見ー令和5年2月24日(Movie IWJ)
https://www.youtube.com/watch?v=9uUrTxr_Mss

※はじめに~岩上安身が岸田総理に対して会見で質問!~(日刊IWJガイド、2023年2月25日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51926#idx-1

 このウクライナ紛争は、米国主導の戦争です。

 ハーシュ氏のスクープが事実であれば、米国は、同盟国のドイツも多額の出資をしたノルドストリーム・パイプラインを爆破し、ドイツとロシアの仲を引き裂き、ウクライナを戦場にして、欧州とロシアの友好的な関係を完全に破壊し、欧州に天然ガスと石油を高値で売りつけて市場を奪い取ったということになります。

 IWJでは、独自のIWJ検証レポートで、ノルドストリームの建設の経緯から、完成したもののウクライナ紛争の勃発と制裁によって使用できなくなり、さらに爆破に至るまで、断続的に連載してお伝えしています。この経緯を知ると、ウクライナ紛争以前から、米国がノルドストリームを何としても阻みたいと思っていたという事実が明らかになります。

 3月3日・4日には、この日刊IWJガイドで、レポートの第5弾と第6弾をお届けしました。ノルドストリームの建設の経緯で、米国が他国のプロジェクトだというのに、理不尽にもどれだけ不当に介入し、身勝手な制裁を加え続けてきたことか、これまで日本ではまったく報じられなかった事実をお伝えします。

 さらに10日の日刊IWJガイドに「その7」、12日には「その8」、そして本日の日刊IWJガイドには、(その9)を掲載しています。ぜひ、御覧ください。

※IWJ検証レポート!「米国が狙った独露間の天然ガスパイプライン・ノルドストリームの阻止!! その8」~ロシア・ガスプロム社は米国の制裁に対抗し自力で「ノルドストリーム2」を完工! ナワリヌイ氏毒殺未遂事件を契機に、米国はさらなる制裁へ!(日刊IWJガイド、2023年3月12日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51990#idx-5

※IWJ検証レポート!「米国が狙った独露間の天然ガスパイプライン・ノルドストリームの阻止!! その7」~なぜ、米国はロシア産天然ガスを敵視し、「ノルドストリーム2」建設を阻止に動いたのか?(日刊IWJガイド、2023.3.10号)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51982#idx-6

※IWJ検証レポート!「米国が狙った独露間の天然ガスパイプライン・ノルドストリームの阻止!! その6」~2019年末、米国は再びノルドストリームに制裁を発動、あと160kmを残すのみとなったノルドストリーム2を建設中止へ追い込む!(日刊IWJガイド、2023.3.9号)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51980#idx-4

※IWJ検証レポート!「米国が狙った独露間の天然ガスパイプライン・ノルドストリームの阻止!! その5(続編)」(日刊IWJガイド、2023.3.4号)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51958#idx-7

※IWJ検証レポート!「米国が狙った独露間の天然ガスパイプライン・ノルドストリームの阻止!! その5」(日刊IWJガイド、2023.3.3号)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51950#idx-6

 ハーシュ氏のスクープが事実であれば、米国は、国家テロを起こして、他国を都合よく操作する、邪悪な帝国主義国家である、という疑惑が急浮上したことになります。こんな「帝国」によって、日本はウクライナと同様に、次に米国が仕掛ける対中戦争の「代理戦争」のコマとされるかもしれないことに、日本国民は真剣な疑念と危機感を抱く必要があります。

 他方で、10日、号外を2本出しました。号外の1は、かつてハーシュ氏が記者として勤務していたこともあるニューヨーク・タイムズが、ハーシュ氏のスクープを打ち消すような記事を掲載した件についてです。

 「米当局者」を情報源とするこの記事は、ノルドストリームの爆発は、親ウクライナ過激派と反プーチンのロシア人による犯行とし、米国と英国は無関係とわざわざ断りを入れています。

 ハーシュ氏のスクープを一切報じなかった、西側の大メディアは、このニューヨーク・タイムズの記事にとびついて報道し、あわせて、1ヶ月あまり無視していたハーシュ氏のスクープにも言及して、いかにも「バランス」をとったように見せかけ、あげくハーシュ氏のスクープを中国やロシアが取りあげているのは、「情報戦」だ、などと決めつけています。号外の2で報じたNHK・BSの番組などは、その典型です。この番組自体が、プロパガンダのひとつだともいえます。

 こうした「情報戦」が起こるということは、このノルドストリームの爆破がいかに重大な出来事だったのか、ウクライナをたきつけて、同国内のロシア系住民を痛めつけ、ロシアを挑発して誘い出し、戦端の幕を切って落とさせたのは、このノルドストリームを何としても止めたい、という米国の強い国家意志があったからだ、ということを、こうしたノルドストリーム建設の経緯と、米国が、間接的に説明しているように思われます。

 岸田文雄総理は、1月早々に昨年末閣議決定した「改定版安保3文書」を携えて訪米、バイデン大統領と会談し、日本の軍拡をバイデン大統領から賞賛されて岸田総理は鼻高々でした。

 しかし国会での議論と承認がなされなくても、閣議決定し、米国からの承認があれば軍拡のアクセルを踏んでしまう岸田政権は、日本の主権を米国に丸投げしたも同然です。米国を守るために日本が代わりに犠牲となり、日本は米中の「代理戦争」の戦場とされてしまいます。

 上記の24日の岸田総理会見で、私は、「米国は誠実な同盟国なのかどうか、疑いの出ている中、日本の安全保障を米国に丸ごと委ねていていいのか」、「有事の際の自衛隊の指揮権まで米国に渡してしまっていいのか」と問いました。

 岸田総理は「自衛隊及び米軍は、各々独自の独立した指揮系統に従って行動をする、これはいうまでもないこと」などと、自衛隊の指揮権は独立して存在しているかのように述べました。

 しかし、この総理の発言は、事実と異なります。従来の幕僚長を事実上廃止し、新たに米軍との「統合司令部」を設置する「安保3文書」の改定は、自衛隊を米軍の司令下におく「2軍」にしてしまうものです。

 昨年12月15日に私がインタビューした、元外務省国際情報局長・孫崎享氏は、「日本がミサイルみたいなものを持つ。しかし、(ミサイルを撃つ目的地を指示するのは米国で)日本人自身が判断はできないんですよ」と語っています。

孫崎氏「これ(ウクライナ紛争)、日本でも同じことが起こるんですよ。例えば、ロシアの戦車がいますよね。それを『撃て』と。じゃ、その『撃て』という指示がどこから来るのか。

 当然ながら、(ロシアの戦車の位置などの情報は)情報衛星で取っているわけです。その情報衛星は誰が運営しているかと言ったら、ウクライナ人が運営してるわけじゃないわけだから、アメリカですよね。

 だから、戦争で『どこに撃て』という指示は、ウクライナは引き金を引いてるかもしれないけれども、指示はアメリカから来ているわけですよ。

 例えばロシア(領内のロシア空軍基地の)飛行場に(ウクライナ側がドローンで)撃ちましたよね。『このポイントに撃った方がいい』というのをウクライナ人が判断しましたか。してないんですよ。

 おそらく、それと同じことは東アジアで起こるんですよ。日本がミサイルみたいなものを持つ。その時に、どこか、目的地に向かって撃つ。しかし、その目的地を日本人自身が判断はできないんですよ」

※「ウクライナと同じで戦場になってガチャガチャになるのは日本だけ」~12.15 岩上安身によるインタビュー第1107回 ゲスト 元外務省国際情報局長 孫崎享氏インタビュー 2022.12.15
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/512936

 自衛隊が米軍と司令部を統合してしまい、自身で状況判断するための目と耳(情報衛星他)をもたず、独自に判断する頭(内閣に直結した独立した司令部)をもたない、そんな日本が、安全保障において、米軍から独立した主権をもつ、といくら岸田総理が口先だけで言っても、自衛隊のおかれたリアルな現実を国民に説明していることにはなりません。

 2月28日、衆議院本会議は与党の賛成多数で、「安保3文書」の改定を踏まえ、防衛費を大幅増額した2023年度予算案を可決しました。過去最大の114兆3812億円に上る2023年予算案は、参議院が仮に可決せずとも、3月中に自動成立してしまいます。

 日本は、このまま米国追従を続け、米国の一極覇権を支えるために、日本自らは世界最悪の財政危機に直面しているというのに、米国の要請に従って、軍拡という重い財政支出を重ねてゆくのはあまりに愚かではないでしょうか!?

 そもそも日本が依存している米国は、誠実な、信頼に値する同盟国といえるのでしょうか!? その問いに対する回答を得るためには、ノルドストリームを爆破したのが誰か、ハーシュ氏のスクープは正しいのか、間違っていたのか、知る必要があります。

 日本は、米国への依存から脱却をはかり、独立した主権国家として、そもそも「敵」を作らない、多極的な外交姿勢をめざすべきではないでしょうか?

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岩上安身


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◆中継番組表◆

**2023.3.13Mon.**

あくまで予定ですので、変更、中止、追加などがある場合があります。また電波状況によっては、安定した中継ができない場合もございますので、ご了承ください。

【IWJ・Ch5】13:00~「『袴田事件』東京高裁前での決定報告 ―登壇:袴田ひで子さん、袴田事件弁護団」
視聴URL: https://twitcasting.tv/iwj_ch5

 「袴田巌さんの再審無罪を求める実行委員会」ほかが主催する報告会を中継します。これまでIWJが報じてきた袴田事件関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%E8%A2%B4%E7%94%B0%E4%BA%8B%E4%BB%B6
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【IWJ_YouTube Live】15:00~「岩上安身による 神奈川新聞記者 田崎基氏インタビュー 第2弾」
視聴URL(冒頭以降は会員限定): https://iwj.co.jp/wj/open/archives/420867

 岩上安身による田崎基氏インタビューを中継します。これまでIWJが報じてきた田崎基氏関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e7%94%b0%e5%b4%8e%e5%9f%ba
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【IWJ_YouTube Live】19:00~「岩上安身による JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)調査課長 原田大輔氏インタビュー 第3弾」
視聴URL(フルオープン配信): https://www.youtube.com/user/IWJMovie/featured

 岩上安身による原田大輔氏インタビューを中継します。これまでIWJが報じてきた原田大輔氏関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e5%8e%9f%e7%94%b0%e5%a4%a7%e8%bc%94

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【230314火】

◆中継番組表◆

あくまで予定ですので、変更、中止、追加などがある場合があります。また電波状況によっては、安定した中継ができない場合もございますので、ご了承ください。

【IWJ・Ch4】12:00~「今度こそ!誤った裁判のやり直しを『袴田事件』高裁決定報告集会」
視聴URL: https://twitcasting.tv/iwj_ch4

 「袴田巌さんの再審無罪を求める実行委員会」ほかが主催する報告会を中継します。これまでIWJが報じてきた袴田事件関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%E8%A2%B4%E7%94%B0%E4%BA%8B%E4%BB%B6

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◆昨日アップした記事はこちらです◆

海渡雄一弁護士「株主代表訴訟の地裁判決で、我々は東電や国の責任を否定する、被害を否定する、きわめて悪辣な工作と戦う決定的に重要な武器を手にしたと言える!」~3.10 集会「控訴審も勝利へ! 東電株主代表訴訟」2023.3.10
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/514652

塚本和也弁護士「仙台高裁判決は『津波は予見できた』の判断まではされているので、私たちはこれからも原発反対の世論をしっかり盛り上げ、最高裁判決を覆す運動を続けていかなければならない」~3.10「311を忘れない」原発反対八王子行動 2023.3.10
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/514655

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■IWJ検証レポート!「米国が狙った独露間の天然ガスパイプライン・ノルドストリームの阻止!! その9」~米国の制裁に対してロシアは自前で「ノルドストリーム2」を完工! しかし、遂に稼働することのないままウクライナ紛争が勃発!

 ウクライナ紛争の裏の顔である資源エネルギー問題とは、ロシアから欧州のガス市場を奪う米国の戦略に他ならず、その鍵は「ノルドストリーム1、2」です。IWJでは、ノルドストリーム問題の検証を進めています。(その9)では、3度にわたる米国の制裁に対抗してロシアが完工させた「ノルドストリーム2」が稼働できないまま、ウクライナ紛争が勃発するまでの経緯を辿ります。

【これまでのふりかえり】

 IWJ検証レポート!「米国が狙った独露間の天然ガスパイプライン・ノルドストリームの阻止!!」(その1)から(その8)までで述べてきたように、ロシアは冷戦下の旧ソ連時代から半世紀にわたって、欧州に安価な天然ガスを供給してきました。

 しかし、ロシアから欧州へ送られる天然ガスのパイプライン通過国であるウクライナの「ガス泥棒」問題でしばしばトラブルが起こり、パイプライン下流にある欧州諸国へのガス供給に支障がでました。

 ドイツとロシアはウクライナを通らない「ウクライナ外し」パイプラインの計画を進め、バルト海経由でドイツへ天然ガスを直送する総延長1224km、年間輸送量550億m3の「ノルドストリーム(Nord Stream)1」が2011年に竣工、稼働し始めました。

 ロシアと欧州は、さらなる「ウクライナ外し」パイプラインの計画を進めました。トルコ経由の「トルコストリーム(サウスストリーム)」(年間輸送量315億m3、2020年1月稼働開始)と、「ノルドストリーム2」(年間輸送量550億m3)です。この3本が稼働すれば、ロシアはウクライナ経由で欧州に天然ガスを送る必要がなくなるはずでした。

 米国は、シェール革命によって、オバマ大統領が「米国をほぼ100年持続させることができる天然ガスを得た」と宣言するほど、豊富な石油・ガス資源を手中にしました。「双子の赤字」を抱える米国は、シェール革命によって生産可能になった石油・ガスの輸出拡大は期待の星でした。

 トランプ大統領は、2019年、米国は最大で年間1500万tのLNG(EUのガス輸入量の25%)をドイツ・EUに輸出する能力があると述べ、ガスの輸出拡大と欧州市場獲得への野心を明らかにしました。

 しかし、欧州市場には、すでにパイプラインでロシア産天然ガスが供給されており、高価な米国産LNGが「自由で開かれた市場におけるフェアな競争」で入り込む隙間はありませんでした。なんとか欧州市場からロシア産天然ガスを追い出したい米国と、パイプライン通過国特権を失いたくないウクライナは、「ノルドストリーム2」建設阻止で利害が一致したのです。

 「ウクライナ外し」の最後のパイプラインである「ノルドストリーム2」は、2017年以降に米国が立て続けに発動した3度の制裁によって、一度は建設中止に追い込まれました。

 米国の制裁を恐れ、欧米企業が事業から撤退する中、ロシアは単独で建設を進め、当初予定の2019年末から1年9ヶ月遅れて、2021年9月に「ノルドストリーム2」は完工に漕ぎ着けます。

 しかし、完工から1年、2022年9月に「ノルドストリーム2」は稼働することのないまま、爆破されることになります。以下、ウクライナ紛争勃発までの経緯を辿ります。

【バイデン政権が、「ノルドストリーム2」への制裁はもはや米国の国益にならないとして、制裁発動を見送る】

 2021年1月に発足したバイデン政権は、同年5月、「ノルドストリーム2」を建設するガスプロム社のスイス持株会社である「ノルドストリーム2 AG」と、同社のCEOであるマシアス・ヴァルニグ氏が「制裁対象となり得る活動に関与した」と指摘した上で、制裁の発動を見送りました。事実上、「ノルドストリーム2」の完工を容認する措置でした。

 バイデン大統領は、制裁解除の理由を、「ノルドストリーム2」が完工に近づき、これ以上米国が制裁を発動することで、ドイツなど欧州との関係を損ねる可能性があったからだと説明しています。

 『ロイター』によれば、バイデン大統領は、「ノルドストリーム2」によって、ドイツ・欧州がロシア産天然ガスに依存し、エネルギー安全保障が危険にさらされるという米国の懸念を、ドイツは認識しているとして、「今後、彼らがどのように対応するかについて協力できると私がどれほど強く感じ、願っているかを彼らは承知している」と述べました。

 『ロイター』は、「バイデン氏はロシアと中国に対抗する統一戦線を構築したい考えで、トランプ前政権下で悪化したドイツや他の欧州同盟国との関係の修復を目指している」と分析しています。

 つまり、バイデン政権が制裁発動を見送った背景には、米国の制裁によって「ノルドストリーム2」事業が阻止されていることに対する不満や反発が、ドイツ・欧州側から、あったことがうかがえます。

※バイデン氏、ノルドストリーム2への制裁は欧米関係に「逆効果」(ロイター、2021年5月26日)
https://jp.reuters.com/article/usa-biden-nord-stream-2-idJPKCN2D70BN

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■<シリーズ特集! 福島第一原発事故から12年、進む事故への危機感と恐怖の記憶の風化! 他方、急激に高まる原発への武力攻撃リスク!><IWJ取材報告>海渡雄一弁護士「株主代表訴訟の地裁判決で、我々は東電や国の責任を否定する、被害を否定する、きわめて悪辣な工作と戦う決定的に重要な武器を手にしたと言える!」~3.10 集会「控訴審も勝利へ! 東電株主代表訴訟」―登壇:海渡雄一弁護士、甫守一樹弁護士ほか

 2022年7月13日、福島第一原発事故をめぐる東電株主代表訴訟で、東京地裁は被告である東京電力元役員4人の責任を認め、13兆3210億円の支払いを命じました。これに対して双方が控訴しました。

 控訴審を前にした2023年3月10日、東京都千代田区の衆議院第二議員会館で、原告らによる集会が開催され、原告弁護団の海渡雄一弁護士と甫守一樹弁護士による講演が行われました。

 東電株主代表訴訟とは、福島第一原発事故が起きたのは東京電力が必要な津波対策を怠ったからだとして、株主が会社に代わって元役員5人の個人的な過失責任を追及し、会社への損害賠償の支払いを求めた民事訴訟です。

 2012年3月5日に提訴され、被告は事故当時東電役員だった、勝俣恒久元会長、清水正孝元社長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長、小森明生元常務の5人です。2022年7月13日の東京地裁判決で朝倉佳秀裁判長は、小森氏を除く4人の責任を認め、連帯して東電へ損害賠償を支払うよう命じました。

 原告側の資料によると、2002年7月に政府の地震調査研究推進本部(推本)は、三陸沖から房総沖の日本海溝沿いでマグニチュード8クラスの地震が起き得るとの長期評価を公表しました。東電は2008年1月に、この推本の長期評価にもとづいた津波の高さの計算を、子会社である東電設計に発注しています。

 東電設計は2008年3月に、福島第一原発の敷地に最大15.7mの津波が到達するとの計算結果を東電に納入しました。東電の設備管理部は2008年6月に、この津波の高さに対する対策工事の概要を武藤氏に報告しました。

 しかし、武藤氏は2008年7月に、時間をかけて土木学会に津波の検討を依頼するという方針を示し、その間対策を実施しない方針を指示しました。

 こうして、津波対策が実施されないまま、2011年3月11日の東日本大震災で、福島第一原発は津波に襲われ、全電源が喪失し、原発事故が発生しました。

 裁判で認定された、東電元役員の任務懈怠(にんむけたい:過酷事故が起こるおそれを認識していながら必要な措置を講じなかったこと)について、海渡雄一弁護士は、判決要旨から次のような一節を紹介し、「原子力ムラの悪事を暴いてくれた」と評価しました。

 「本件の経緯をつぶさに見ると、東京電力においては、本件事故前、(中略)ほぼ一貫して、規制当局である保安院等との関係で、自らが得ている情報を明らかにすることなく…いかにできるだけ現状維持できるか、そのために、有識者の意見のうち都合の良い部分をいかにして利用し、また、都合の悪い部分をいかにして無視ないし顕在化しないようにするかということに腐心してきたことが浮き彫りとなる」(判決要旨31頁、32頁)

 海渡弁護士は「7月13日の株主代表訴訟の東京地裁判決によって、福島原発事故は東電役員による安全意識、責任感が根本的に欠如していた、そのために起きたということがはっきりわかった」と指摘し、「我々は東電や国の責任を否定する、被害を否定する、こういうきわめて悪辣な工作が行われている中で、それと戦う決定的に重要な武器を手にしたと言えるんじゃないか」と強調しました。

 他方で、この株主代表訴訟と同じ証拠を用いているにもかかわらず、勝俣氏、武藤氏、武黒氏の3人の東電元役員に対する刑事裁判では、2023年1月18日、東京高裁が無罪判決を言い渡しました。この刑事訴訟は、指定弁護士が上告しています。

※東電旧経営陣の賠償責任を認めた株主代表訴訟判決の証拠をもとに、刑事訴訟被害者弁護団が東京高裁に弁論再開の上申書を提出!~7.28東電刑事裁判 弁論再開と最高裁判決等の証拠調べを求める! 報告学習会 2022.7.28
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/509076

※東電旧経営陣が全員、再び無罪! 民事訴訟と正反対の結論に、河合弘之弁護士が「原発事故誘導判決だ」と批判!~1.18「福島原発事故・東電旧経営陣の刑事責任を追求する福島原発刑事訴訟の控訴審」判決後の記者会見 2023.1.18
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/513630

 また、国と東京電力に対して福島第一原発事故の賠償を求めた民事訴訟のうち4件の裁判では、2022年6月17日に最高裁が国の責任を認めませんでした。

※国の責任を最高裁が認めず! 馬奈木弁護士「事故前の対応が適切だったのかという問題に正面から向き合うことなく判断を回避! 到底受け入れられない!!」~6.17 原発事故損害賠償4訴訟最高裁判決後の報告集会 2022.6.17
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/507186

※福島原告団長・中島孝氏「生きる苦難を一身に背負ってしまった人たちに、これでもか、というくらい無責任な判決!」~6.17 原発事故損害賠償4訴訟(千葉・群馬・生業・愛媛)最高裁判決後の第一声、記者会見 2022.6.17
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/507189

※「最高裁の判決で決着済みだと思われては困る。いかに最高裁の判断が誤っているのかを認識してほしい」生業訴訟原告団事務局長 馬奈木厳太郎氏~9.5「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟第2陣 第17回期日 裁判所前報告会 2022.9.5
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/510368

 こうした一連の裁判について、海渡弁護士は、次のように語っています。

 「とても重要なことは、最高裁で(3対1で国の責任を認めなかった判決で、反対意見を書いた三浦守裁判官)三浦意見というのは、一人で書いたものでは絶対ないです。あれは、最高裁の調査官と三浦さんとの合作だと思うんです。ということは、最高裁の事務方に、『国の責任を認めるべきだ』という意見がある。

 そして、多数意見を構成した3人の裁判官は、みんな大手の法律事務所に関連している。菅野博之裁判長はもともと生え抜きの裁判官ですけど、彼はこの事件が終わった直後に、長島・大野・常松法律事務所というところに顧問として入っているんです。長島・大野っていうのは、東電の株主代表訴訟の補助参加人・東京電力の代理人の事務所です。去年の最高裁の判決の裁判長は、あの判決を手土産にして、株主代表訴訟で東京電力の代理人をやっている事務所に天下ったわけですよ。それを許していいかなと、僕は思っているのです。

 それで、ということは、東電の事件も最高裁で見直される可能性が十分あると思うんです。最高裁の中に我々の味方がいると思っています」

 その上で海渡弁護士は、「被害などなかった」「避難するのが間違いだった」という東電側の主張について、東電、その(元)役員個人を含めて、国の明確な過失責任を司法的に確定すること、さらに放射線被害の存在を「子ども甲状腺がん訴訟」など司法の場で確定させていくことを通じてこうしたとんでもない主張の根拠をなくしていくことが重要だと訴えました。

 詳しくは、ぜひ全編動画を御覧ください。

※海渡雄一弁護士「株主代表訴訟の地裁判決で、我々は東電や国の責任を否定する、被害を否定する、きわめて悪辣な工作と戦う決定的に重要な武器を手にしたと言える!」~3.10 集会「控訴審も勝利へ! 東電株主代表訴訟」
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/514652

 それでは、本日も1日、よろしくお願いします。

※日刊IWJガイドのフルバージョン(会員版)は下記URLより御覧ください。
https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230313

IWJ編集部(岩上安身、六反田千恵)

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