「いまこそこういう議論をしていくべきじゃないんですか」と、日本維新の会松井一郎代表は繰り返し述べた。
2020年7月30日(木)午後2時より、大阪市役所市政記者クラブ会見場にて松井一郎大阪市長の定例会見が開かれた。
大阪市長としての報告と参加記者との質疑応答ののち続けて、日本維新の会についての質疑に答える政務関連の会見も行われた。その席上、朝日新聞、共同通信、フリーランスジャーナリスト横田一氏、IWJが質問を行なった。
それらはすべて7月29日に維新 馬場伸幸幹事長が「れいわ新選組 舩後靖彦議員が尊厳死議論の旗振り役になるべきなのにそれを封じるようなコメントを出しており、それが残念だ」と発言したことと、それに先立ち日本維新の会代表の松井一郎代表が、7月28日にALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者への嘱託殺人事件をめぐり、「人間としての尊厳や尊厳死について議論をすべき」とし、尊厳死の法整備を訴えかけたことに関するものであった。
ALS患者の実態や関連法をよく知る共同通信記者より、この問題に関して日本維新の会と松井代表はどれほどの認識を持ち、対応を行なってきたのかの問い質しが行われた。横田一氏は、「尊厳死議論は予算削減を意図したものであるのか」と問うた。
IWJ記者は、「政治は、まず身体の不自由によって死を考えるひとへのケアをやりきることを志向すべきで、それがなされないうちに尊厳死を議論すべきではないのではないか」、「法的、倫理的に許されない犯罪がこの議論のきっかけなのは問題ではないか。撤回は考えないのか」と松井氏に問うたが、「生きる希望が持てる、持てないはひとそれぞれ」「殺人者側から話してるんじゃない」などの回答がなされ、松井氏に持論を見直す姿勢はなかった。
詳しくは、ぜひ動画をご覧いただきたい。
松井一郎 大阪市長としての会見では、新型コロナウイルス感染拡大防止のための呼びかけと、大阪市における特別定額給付金の支給状況、そしてAIオンデマンド交通の社会実験に関する民間事業提案募集についての報告と告知がなされた。
大阪市における特別定額給付金の支給状況は、現在給付対象の152万世帯のうち149万世帯から申請があり(申請率95%)、129万世帯に支給済とのことであった。また、松井市長は、「以前は申請受付などに滞留があったため急がない方はゆっくり申請を、と呼びかけていたが、滞留は解消されているので、まだの方は受付期限の8月25日までに申請をしてください」とも告げた。
AIオンデマンド交通の社会実験に関する民間事業提案募集は、市民生活向上のために、AIを活用した、定時・定路線を超える自動運転などで交通の利便性改善を目標とするもので、8月3日から31日までの期間に民間より技術やアイディアを募るという。
その後の質疑応答においてIWJ記者は松井市長に2つの質問を投げかけた。
ひとつは、「特別定額給付金に関して、申請の条件である住民票がない、それを準備できないというホームレスの方などがおり、その条件の見直しなどを総務省に求める署名が全国で集められるなどしている。大阪市でもこの件について現在交渉をしている方々がいる。申請にまで行きつかない方が多い中、この条件の見直しや申請期限の延長などの考えはないか」という質問である。
※「ホームレスで住民票のない人にも特別定額給付金を求める署名」(オンライン署名の締め切りは8月2日)
もうひとつは、「4月より新型コロナ感染症専門病院として運用された十三市民病院において、滅菌などを担当する労働者で、衛生知識の研修、防護のための備品や危険手当を要求し、実施を実現させて現場状況を改善させた方がいる。この方は5月11日に松井市長に直訴し、その後に務めていた社から不当な配置転換などを受けて苦労しているが、このことに市長が業者に不快感を伝えたなどの関係はないか」というものであった。
ホームレスの方の特別定額給付金と住民票の問題に関して松井市長は、ホームレスの方々に配慮して現金給付対応をしていると述べたが、詳細に関しては市民局の担当者から諸条件と従来通りの対応を続けると述べた。つまり、従来通り、ホームレスのため住民票がない、最も困窮している方々には10万円の交付金を申請することさえ認めない、というわけである。
重ねて松井市長は、「役所に行って手続きする能力がない、自分の前の居住地がわからんて、そういう人は福祉の対象です。10万円の給付の問題じゃない。福祉の窓口に来てもらいたい」とも述べた。「役所へ行って手続きする能力がない人」は、役所の「福祉の窓口に来てもらいたい」というのはあまりにもブラック過ぎて笑うこともできない。
後者の問いに関して松井市長は、「それはありません。その質問がもう無理矢理の印象操作。その滅菌の事業者がどういう人かも知らないし、そのようなことをうながすなどは一切ありません」と答えた。
詳しくは動画をご覧いただきたい。
(IWJ記者の質問は全編動画57:00より)