「少なくとも2000万人を殺戮した日本が、アジアの一員として生きていけるのは、『二度と戦争をしない』という誓いを立てているからだ。これを覆してはいけない」~「自民党の憲法改正案についての鼎談(ていだん)第8弾」 2013.5.15

記事公開日:2013.5.15取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・久保元)

特集 憲法改正|特集 前夜

 2013年5月15日(水)11時30分、東京都内において、「自民党の憲法改正案についての鼎談(ていだん)第8弾」が行われた。鼎談は、弁護士の澤藤統一郎氏、同じく弁護士の梓澤和幸氏、IWJ代表の岩上安身により、自民党の憲法改正案に関連するテーマで繰り広げられた。

■イントロ

■ハイライト

自民党大西議員による「言論封殺」質問について

 冒頭、岩上から、衆議院総務委員会において、自民党の大西英男議員がNHKに対し、「孫崎享氏を番組に出すのはどういうことか」という主旨の質問をした問題を提起した。岩上は大西氏にインタビューした際、発言は取り消さない。自分自身に言論の自由がある、院内で何を言っても罪に問われない」と大西氏が答えたと述べた。

 さらに、岩上が、「自民党は改憲によって特定の言論を圧殺していくのではないか」と危惧の念を示すと、「公の秩序を害するものを取り除いていくだけだ」と大西氏が答え、「公の秩序とは何か」との岩上の問いには、「国民が選んだ議員が公の秩序だ」と大西氏が答えたことを紹介した。その上で、「確かに、国民が大西さんを選んだのだが、全権委任したわけではない。全権委任では、議会制民主主義からファシズムが生まれることになりかねない。あらゆる人が、発言の場を封殺されていくことがあっていいのか。権力の濫用ではないのか」と岩上が述べた。

 これに対して、澤藤氏は、「とんでもない話だ。大西さんに言論の自由はあるが、他人の言論を封殺する自由はない」と批判した。その上で、「一番の問題は、これをどう是正させるかだ。国民の良識で成り立っているはずのNHKが、政権党のこのような横暴を許すのかどうかが問われている。屈するようなことがあれば、NHKの存立価値はない」と述べた。また、「不適切な発言をする議員がいた場合の、院(衆議院)の自浄作用が問われている。憲法は、不適切な言動をする議員は次の選挙で淘汰されなければならないことを想定している。それによって、民主主義のプロセスがきちんと進行する」と語った。

 一方、梓澤氏は、「国会の総務委員会で取り上げたということは、放送法に関係していると思う」とし、「放送法では、『国民の間で対立している論点は、その見解を公平に紹介しなければならない』と規定している。しかし、NHKでは、政権党の見解が圧倒的に紹介され、政権党の政治家が一方的に見解をしゃべっている」と指摘した上で、「対米従属や、尖閣問題についての孫崎さんの指摘は、政権党にとっては痛い。だから、『放送の公平性』を武器に使って、「けしからん」と言ってきたのだろう」と分析し、さらに「孫崎さんのような人が出て、初めて放送の公平性が保たれる」と述べた。

 澤藤氏は、「自民改憲草案では、『公共』『公の秩序』という論理で、自分達の政策をやりやすいように、人権という面倒なものを斬り捨てる社会を目指している。改憲草案の危険性を自民党の大西議員が明らかにしてくれた」と述べた。

歴史修正主義について

 岩上が、昨今はびこっている「歴史修正主義」について、「こういうことが許されていいのか」と両氏に投げかけた。これに対し、梓澤氏は、「(慰安婦問題や風俗活用についての)橋下市長の発言によって、世界の女性が辱められた。我々も恥ずかしい」と述べた。

 また、「弁護士は単に法律業をやっているだけでなく、倫理規定によって社会的見識とジェントルマンシップが問われている。橋下市長の発言は、弁護士倫理上、問題にしなければならない」とし、さらに、「日本にいる何万の弁護士に問いたい。『あなたはこれを放置するのか。大阪弁護士会、日弁連はこれを放置するのか』ということを訴えたい」と述べた。

 岩上が、「懲戒請求などはあり得るのか」と聞いたところ、梓澤氏は、「弁護士は、弁護士自治権を使って互いに批評しあうという規定がある。表現や言論の自由があるので濫用してはいけないが、弁護士の信用を傷つけるというようなときには、それを放置してはならない」と述べた。

 続いて、岩上が、「侵略の定義は国際的に定まっていない」と安倍首相が発言したことについて、両氏に見解を求めたのに対し、澤藤氏は、「理解しがたい。1974年の国連総会決議で定義されているし、侵略戦争を追及した東京裁判の結論をサンフランシスコ講和条約で受け入れている」と述べた。

 また、「日本は侵略戦争だったことを認めて反省して、戦後出発している。第二次世界大戦でファシズム陣営が民主主義陣営に敗れ、国連の下で平和的民主主義の秩序が生まれた。それを認めないのは歴史修正主義だ」と厳しく批判した。さらに、「外務省のホームページで、『日本は、侵略戦争と植民地支配の歴史を認めて反省し、平和な社会を作り、国際協調路線を採ってきた。これは一貫して変わることはない』と繰り返し言っている。安倍首相の発言は、戦後私たちが築き上げてきたものを真っ向から否定するものだ」と指摘した。

 梓澤氏は、「(政治学者の)原彬久(はらよしひさ)という人が岩波新書で書いた岸信介の評伝に、『戦争中の行動への反省の弁が一度もなかった』とある。岸信介という祖父の膝に抱かれた人(安倍氏)が、いま総理大臣を務め、岸信介の戦争観を引き継いでいる」と述べた。また、「いま、『アジアが欧米列強に対抗するためには、必要な戦争だった』というように、歴史観を変えていくような動きが起きているのではないか。歴史修正主義という点から言えば、今回の橋下氏の発言は、保守政治本体の本音を表現している」と指摘した。

 澤藤氏は、以前、シンガポール出身のジャーナリストが語った、「日本がアジアで殺戮(さつりく)したのは、少なく見積もっても2000万人。毎日5000人亡くなるということが10年続くというような数字であることを覚えておいてほしい。その日本が、アジアの一員として生きていけるのは、『二度と戦争をしない』という誓いを立てているからだ。これを覆してはいけない」という言葉を紹介した。

 その上で、「海外から見れば、天皇を神とし、『1億総マインドコントール』の国だと見られていた、好戦的な軍国主義だった国を、『国際社会に迎え入れていいのか』という疑問のハードルを越えたのがサンフランシスコ講和条約だ。そのことの重さをもう一度噛み締めなければならない」と述べた。

 梓澤氏は、「国際社会の中で、貿易などを通じ、ようやく日本という国が成り立っている」とした上で、「安倍氏や橋下氏は、『国際的にどう受け取られるか』『各国の女性がどう思うか』というような、常識的な国際感覚が必要だと思う」と述べた。

 また、澤藤氏は、「尖閣問題における、これまでのアメリカの態度は、『日中間の紛争はアメリカの利益』ととらえていたと思う。しかし、いまのアメリカの世論は、『日中が事(こと)を荒立てると、かえってアメリカの国益を損ねる』というものに変わってきている」とし、「アメリカは、『日本が憲法を改正し軍事力を強化するのは危ない』と思い始めたのではないか。アメリカ頼みだが、改憲論にブレーキが掛かるのではないか」と述べた。

自民党改憲草案の分析

 その後、自民党改憲草案について、現行憲法と対比しながら、分析を加えていった。自民党改憲草案64条の2において、「政党」という項目を新設し、「活動の公正の確保及びその健全な発展に努めなければならない」と規定していることについて、澤藤氏は、「公正や健全は多数派の都合である。『与党に盾つく政党は健全ではない』とされてしまう懸念がある」と述べた。

 また、「政治的な行動の自由は、一般の表現の自由とは区別され、憲法が考えている『民主的な政治サイクルの健全さ』を確保するために、最も大切なものとされている。当然、政党結社の自由も含まれる」と述べたほか、「政党助成法は憲法違反であると確信している」と述べた。その理由として、総額320億円(国民一人当たり年間250円)もの助成金が、「自分自身が全く支持していない政党にも配分されてしまうのはおかしい」と説明した。

 自民党改憲草案における国旗・国歌の定義について、澤藤氏は、「これは単なる物の好き嫌いではない。歴史をどう理解するか、国家と自分との関係をどう理解するかという、思想の根幹に関わる問題である。自分の思想良心と異なることを強制するのは、憲法19条違反だと思う」と述べた。

 これに関連し、澤藤氏は、いわゆる「南九州税理士事件」を紹介した。これは、ある税理士が、自民党への政治献金を目的とした臨時会費の支払いを「私は自民党支持でないので応じる義務はない」と拒否したことで、税理士会の会員資格を剥奪されたことを不当だと訴えたもので、最高裁で税理士側の勝訴が確定している。これについて、「政治的思想を踏みにじることを許さない立派な判例だ」と澤藤氏は述べた。

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  1. 今関和子 より:

    「自民党の憲法改正案についての鼎談」シリーズがあることを偶然知り、先週より見始めました。拝見していて、感動のしどおしです。まず岩上さんが、必要な情報を非常によく準備され、はっとするような質問をお二人の専門家に用意されていることに。 そして、 梓澤和幸弁護士、澤藤統一郎弁護士両専門家からの憲法に対する考え方、憲法をとらえる目というようなものを学べることに。こういうことが日本の学校教育においてなされていたら、日本で生まれ育った我々一般庶民が今のような無批判、無防備、無責任な愚民に成り下がることもなかったのではと考えます。

    私は1973年に静岡県教員採用試験を受けましたが、このときに「政治的中立」ということが試験の要になっているなあと感じました。この「政治的中立」というものこそが、実は学校教育において、政治的な事柄や考え方を一切教えない、学ばせないことの口実に使われているのです。新聞の切り抜きを使って授業をした社会科の教師が処分を受けたりするのがそのいい例です。まるで教師が政治的な考えや意見を持っている一人前の成人であってはいけないかのようです。教師が自分の考えを押し付けて生徒を煽動するのを防ぐという口実で、実は、何も自分の頭で考えられないようにする「愚民養成教育」をしているのです。

    私自身もそういう中で育ち、「自民党の憲法改正案についての鼎談」を見る&聴くまで憲法に関して何の知識もないままきてしまいました。 遅まきながらこのシリーズで憲法について学び、軍国主義に突っ走る輩から日本国憲法を守るために知識で武装したいと考えています。 こういうチャンスを与えてくれた岩上さん、 梓澤和幸弁護士、澤藤統一郎弁護士に心から感謝しています。

    2013年 6月 17日

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