2013年05月08日(水)17時30分より、東京都千代田区にある参議院議員会館にて、「『憲法96条改正』の是非を論じる公開討論会」が行われた。冒頭で、ジャーナリストの今井一氏が「今回の討論会では、憲法9条に絡めて96条を議論するのは止めよう」と断りを入れた。映像作家の想田和弘氏は「9条の話になると、この国の安全保障の議論になり、ここで論じたいものと混じってしまう」と、今回の討論の趣旨を説明。「96条改正が、時の政権や権力者の都合のいいようにされるのは、国民がふり回されるだけであり、あまりにも危ない」と96条改正に疑念を呈した。慶応大学の小林節氏は「民主主義というのは、間違いを起こすこともある。だからこそ、多数決民主主義と立憲民主主義との2つが、相互の歯止めとしてあるのだ」と解説した。
- 登壇者 小林節氏(慶應大学教授)、桜井充氏(民主党政調会長)、想田和弘氏(映像作家)、井坂信彦氏(みんなの党 衆議院議員)、高橋昌之氏(産経新聞記者/電話参加)
冒頭、司会を務める今井氏が、今回は反対・賛成の双方から意見を聞く討論会であることと、憲法9条とは切り離して考える、という2つのルールを説明した。最初に、護憲派の想田氏が「なぜ、96条改憲に9条をからめないか」ということを説明して討論会が始まった。想田氏は「憲法9条を持ち出すと、安保の問題をどうしてもはずせなくなり、96条改憲と一緒にすると、議論が混乱する。なぜなら、96条は憲法全体の改正にもつながるので、単独の議論が必要だ」と述べた。
桜井氏が続けて、「同感だ。96条は入り口で、手続き上の問題となるので、単独の議論に」と話すと、電話参加した産経新聞の高橋氏は「現状、改憲は国会内の机上の空論にすぎない幻想で、96条でいう、3分の1の反対議員の拒否権になっている。それをまず、96条から改憲し、手続きを現実的にすることで、発議しやすくする。それで、はじめて憲法が国民の手に委ねられ、もっと身近になる」と話した。
それに対して小林氏が「高橋氏は『改正しやすくする』のではなく、『発議しやすくする』と言う。しかし、99条には、為政者たちは『この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ』とあり、発議しやすくすることは、そもそもアウト。また、国民のためと言うが、おためごかしで、為政者の都合の良いように改悪するトリックであり、国民に対して失礼な話である。歴史的な意志が憲法の土台であって、3分の1拒否権のための、国会議員の憲法ではない。一番の問題は、改憲政党であった自民党が、今まで逃げ回っていて風化させたことに他ならない」と意見を述べた。