「高市政権は、中国と台湾の統一問題は『一つの中国』の内政問題であると考えているのか、または台湾の併合を阻止するためならば、我が国が米国とともに軍事介入すべき問題であり、中国との戦争も辞さないと考えているのか?」IWJ記者の質問に「二者択一で答えられない問題もある」と茂木外相~11.28 茂木敏充 外務大臣 定例会見 2025.11.28

記事公開日:2025.12.2取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

特集 台湾問題で米中衝突か?!
※25/12/7テキスト追加

 2025年11月28日午後5時55分より、東京都千代田区の外務省にて、茂木敏充外務大臣の定例会見が行われた。

 「北京政府が戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだと私は考える」。

 11月7日の衆議院予算委員会での高市早苗総理による「存立危機事態」に関する発言がもたらした影響は、12月1日、中国の傅聡国連大使が、高市総理の国会答弁の撤回を求める2度目の書簡を国連のグテーレス事務総長に送るなど、収束するどころか、各方面へとますます拡大している。

 11月25日、元外務省情報局長の孫崎享氏が、東京都千代田区のたんぽぽ舎にて、『国際情報と外交、そしてスパイの物語』と題する講演を行い、その講演の中で、1972年の日中共同声明をキーワードに、高市総理の「存立危機事態」発言について解説した。

 IWJはその講演の模様を、録画収録している。以下の記事を、ご確認いただきたい。

 IWJ記者は、孫崎氏の講演内容から引用する形で、以下の通り、質問した。

IWJ記者「日中共同声明についてうかがいます。

 元外務省情報局長の孫崎享氏は、日中共同声明について、『台湾問題での中国の立場を日本が「十分理解し尊重する」ことを明記する代わりに、中国側が戦争賠償請求を放棄するという因果関係がある。

 日本はこの重い約束を無視し、「尊重」の部分を捨てることで、信義違反の国になりつつある』として、また、『本来外務省が、高市総理にその約束を説明すべきである』とおっしゃっています。

 孫崎氏のこの指摘、また田中角栄内閣始め、自民党の先達の方々が、日中の協調関係構築のために、非常に困難な交渉の末に合意に達した日中共同声明の意義について、大臣の認識をお聞かせください。

 また、高市政権は、中国と台湾の統一問題は『一つの中国』の内政問題であると考えているのか、または台湾の併合を阻止するためならば、我が国が米国とともに軍事介入すべき問題であり、中国との戦争も辞さないと考えているのか、二者択一でお答えください。よろしくお願いします」

 茂木大臣は、次のように答弁した。

茂木大臣「なかなか、二者択一で答えられない問題もあるということを、ぜひ御理解いただきたいと思っております。

 それから、例えば、今、外務省の現役の局長であったりとか、幹部、もしくはいろいろな方々、もしくは大使、こういった人達の発言については、私の下で、しっかりと統一的な見解を示したいと思います。

 もう既にお辞めになった方も含めて、それは評論家の方もいらっしゃいますし、いろいろな方がいらっしゃるわけでありまして、いろいろな発信、それは毎日のように、雑誌も新聞もSNSもいろいろなところで発信というのはなされているわけでありまして、その一つ一つの発信について、また発言について、コメントするということは控えたいと、思っておりますが、我が国の台湾に対する基本的な立場、これは1972年の日中共同声明の通りであります。

 そして、台湾をめぐる問題というのが、対話により平和的に解決されることを期待するというのが、我が国の従来からの一貫した立場であります」

 茂木大臣の答弁は、現在の政府のスタンスに与する者以外の「外野」からの情報はいちいち相手にしない、と言っているようにも聞こえる。茂木大臣は、OBは論外で、現役の官僚達は誤ることはないと考えているのだろうか。

 また、「日中共同声明についての意義の認識」は、「我が国の台湾に対する基本的立場」という言葉に替えられている。二者択一の、ごく基本的な質問には答えず、質問をかわしたい、という姿勢は伝わったが、それでも最後には、「72年の日中共同声明の通り」と言っている。

 ということは、「一つの中国」という中華人民共和国の認識を認め、台湾(中華民国)と国交を断絶し、中華人民共和国政府のみを合法的な政府として国交を回復する、ということが日本政府の姿勢になる。

 そして、「サンフランシスコ平和条約で(日本は)すべての権限を放棄しており、台湾の法的地位を認定する立場にはない」という、11月26日の高市総理の国会での発言とあわせ、日本は、台湾と中国の関係について、72年の日中共同声明にある通り、何も関与はしないし、できない、ということに帰着するはずである。

  • 高市早苗総理の「存立危機事態」発言によって生じる日本の損失額は、観光業だけで年間約2.2兆円にのぼる!! 日本映画上映停止! 日本人アーティストの公演にも影響! さらに日本の海産物の全面輸入停止へ! 日米中関係のそもそもの火種は、サンフランシスコ講和条約にあった! 高市総理も、日本の外務省も、御用学者も、アメポチ右派論者も、台湾問題の原点にある、米国の政策の戦略的曖昧さ、そして米国に追従すると、敗戦後の日本の対中外交と矛盾をきたしてしまうパラドクッスを、根本から批判することができない!(日刊IWJガイド、2025年12月2日)
    会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20251202#idx-1
    非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/55267#idx-1

 茂木大臣が言われたように、「72年の日中共同声明の通りであり、口も手も出さないが、日本としては、交渉によって両者が平和的に問題を解決することを期待したい」と答えておけば、「期待」を述べただけなので、中国からとがめられることはなかっただろうと思われる。

 高市総理の発言の「存立危機事態」という発言は、この茂木大臣の発言の線で、早期に訂正すべきであろうと思われる。

 会見の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。

■IWJ記者質問シーン

■全編動画

  • 日時 2025年11月28日(金)18:05〜
  • 場所 外務本省会見室(東京都千代田区)

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