2025年6月20日午後3時15分より、東京都千代田区の外務省にて、岩屋毅外務大臣の定例会見が行われた。
会見冒頭、岩屋大臣より、今国会会期末にあたっての自身の外交活動の振り返り、6月24日から26日まで予定されている岩屋大臣のオランダ訪問について、そして、6月23日に予定されている岩屋大臣の沖縄県訪問についての報告があった。
- 石破総理大臣及び岩屋外務大臣のNATO首脳会合等出席(外務省、2025年6月20日)
- 岩屋外務大臣の沖縄県訪問(外務省、2025年6月20日)
続いて、各社記者と岩屋大臣との質疑応答となった。他社の記者からは、日韓関係、岩屋大臣の沖縄訪問、そして、イスラエル・イラン情勢についての質問があった。
IWJ記者は、イスラエル・イラン情勢をめぐる、G7のイランに対する不公平な責任追及について、以下の通り質問した。
IWJ記者「イスラエル・イラン情勢について、うかがいます。
G7は『先制攻撃』をしたイスラエルの自衛権だけを認め、攻撃を受けたイランの自衛権は認めず、核兵器を作ろうとしていたとして、イランを責めています。
しかし、イスラエルは既に核兵器を保有しており、IAEAの査察も拒否しています。であるにもかかわらず、IAEAの査察も核合意も受入れたイランだけを、G7は責めています。
2002年、ネタニヤフ首相は、イラクが大量破壊兵器を保有していると主張し、翌年、米国はイラク戦争を始めました。しかし、大量破壊兵器はなかった。これは、その繰り返しではないでしょうか。
日本政府は、なぜ、G7の不平等な姿勢に迎合するのか、お聞かせください」
岩屋大臣「これについては、先ほど来説明しておりますように、先般のG7サミットでは、中東地域全体における平和と安定に対するコミットメントを強調し、その文脈において、イスラエルには、自国を守る権利はありますよね、ということを言っただけであって、同時に、やはりこの問題は、協議によって解決をされなければならないということを、G7として発しているわけです。
したがって、法的評価は、この段階では控えたいと思いますが、我が国の立場としては、あくまでもこういう軍事力による解決ではなくして、交渉・協議によって、この問題が解決されるべきだということを、すべての関係者にしっかりと求めていきたいと考えております」
他社記者からも、イスラエル・イラン情勢に関する質問が、2件あった。
ひとつは、「今回のイスラエルによるイランへの攻撃が、自衛権の行使に当たるのか、国際法上どのように評価されるのか」。
もうひとつは、「イスラエルがイランに対して核兵器を使用し、この戦争が核戦争に拡大した場合、日本と日本経済に、どのような影響が及ぶのか」という質問であった。
しかし、岩屋大臣の答弁は、以下の通り、いずれの質問に対しても、質問の意図からずれたものだった。
国内大手新聞記者「中東情勢に関して、おうかがいします。
今日で、イスラエルとイランの交戦が始まってから1週間となります。
まず、日本政府の立場を確認させていただきたいのですが、この間出たG7の声明では、イスラエルの自衛権について言及されました。今回のイスラエルの攻撃が、自衛権の行使に当たるのかどうか、国際法上、どのように評価しているのか、日本政府の御見解をお聞かせください。
あわせて、イランの自衛権については、どのように評価されているのか、これもお聞かせください」
岩屋大臣「イスラエル・イラン情勢については、我が国としては、事態の沈静化に向けた外交努力が、何より重要だと考えております。
G7サミットでは、イランの核兵器開発は決して許されないということ、そして、協議を通じた核問題の解決が重要であることなどが、首脳間で確認をされたところです。
これを受けて発出された声明におきましては、中東地域全体における平和と安定に対するG7のコミットメントを強調し、『その文脈において』=『in this context』という、その文脈において、イスラエルは、自国を守る権利を有していることを確認しているところです。
したがって、今般のイスラエルが行った行為全般をもって、自衛権として確認しているという意味ではございません。
その上で、イスラエルによる今般の軍事行動、及びその後のイスラエル・イラン間の攻撃の応酬につきましては、事実関係の十分な把握が困難である中、確定的な法的評価を申し上げることは控えたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、冒頭に申し上げたように、我が国としては、すべての当事者が国際法に従って行動すること、交渉協議によってこの問題を解決することを、改めて強く求めたいと思います。
今後とも、G7各国はもとより、国際社会と緊密に連携して、事態の沈静化に向けた必要なあらゆる外交努力を行ってまいりたいと思います」
中東独立メディア『パン・オリエントニュース』記者「(以下は英語にて発言)中東で起こり得る核戦争について、うかがいます。
イスラエルによるイラン攻撃に、米国が加わるのでは、との報道が、世界中で出ています。トランプ大統領は、2週間後に決断すると述べましたが、そのようなことがいつ起こるかは、誰にもわかりません。
イスラエルとその同盟国の政府関係者の中には、イランに対する核兵器の使用を公然と求める声もあります。
日本とG7は、イランの核開発計画のみに懸念を表明する一方、イスラエルの核兵器保有については、支持しているとまでは言わずとも、黙認しているように見受けられます。
このような戦争が、核戦争に拡大した場合、日本と日本経済に、どのような影響が及ぶとお考えですか?」
岩屋大臣「先ほども申し上げましたけれども、イスラエル・イラン情勢については、我が国としては、事態の沈静化に向けた外交努力、これが最も重要だと考えているところです。
G7サミットでは、イランの核兵器開発は認められないということを、声明として発表しております。また、同じく協議を通じた核問題の解決が重要であるということも、G7では発信をされているわけです。
イスラエルによります今回の行動については、先ほども申し上げましたが、事実関係の十分な把握が困難であって、確定的な法的評価は控えたいと思いますけれども、いずれにしても国際法に従ってしっかり行動すること、協議によってこの問題を解決することを、強くこれからも求めていきたいと思っているところです」
日本政府にできることは、言葉だけで、協調という名の、同調しかないとなると、深刻である。自立した主権国家として、統治能力はあるのか、という問題にもなる。
石破茂総理もサインしてしまったG7の声明では、国際法に違反して、先制攻撃をしたイスラエルの「自衛権」は認めるものの、先制攻撃をされ、核施設まで攻撃されたイランの「自衛権」の存在には言及していない。
「自衛権」とは、攻撃を受けた側の反撃の権利であり、すべての国に認められる権利である。何の権限があって、G7は、国際法違反のイスラエルの肩をもち、イランの「自衛権」は認めない、というのだろうか? G7は国際法の上位に位置する存在に、いつのまになったのだろうか?
イスラエルとイランの違いは、核保有国と、核兵器を保有していない国という違いだけである。
核を保有してしまえば、イラクや、リビアや、シリアのように国家が破壊されなくてもすむ、というのは、北朝鮮の例をみれば明らかだ。
また、核兵器は保有していないが、もとうと思えばいつでもできるように、その準備はできている、という「寸止め」の状態でも、核抑止力が働く、という日本の一部でささやかれる言説も、「核保有一歩手前」という状態は、イランのように攻撃の口実を与えてしまう、という点で、逆に危険であることが明らかとなった。
プルトニウムを蓄積している日本にとって、本当は、途方もなく危険な状態である、ということが明確になったのに、それに気づいていないのは、おそろしく愚鈍であると言わざるをえない。
まして、我々は、米国の大統領とイスラエルの首相が祈った「神」と同じ神をいただく「聖書」の国ではない。米国が、近代民主主義国家とは言えなくなるにつれ、「共通の価値観」による絆は失われていく。真剣に憂うる必要があるだろう。






























