米国を代表する経済学者である、米コロンビア大学のジェフリー・サックス教授が、6月17日、「地球経済学、保守主義、大ユーラシア・イニシアチブを専門とする」グレン・ディーセン氏のYouTube番組に出演し、イスラエルによるイランへの先制攻撃について、「核兵器と地域における独占的な地位を利用して、イスラエルの行動に反対する政府を叩き潰し、殺害し、暗殺し、または転覆させる」こと、「イスラエルの500万から1000万人のユダヤ人が、アラブ世界の約4億人のアラブ人の政治を決定する」ことが、「ネタニヤフの1996年からの、最大の夢」だったと指摘しました。
しかし、サックス教授は、「歴史的に見て、イスラエルと米国のアプローチは失敗するだろう」との見通しを語っています。
サックス教授は、こうしたイスラエルによる「狂気じみた攻撃」が、「本当に私達全員を、破滅に導く可能性がある」と指摘する一方で、その破滅が、「聖書の黙示録に預言された終末の兆し、ハルマゲドンの前兆だと」して、イスラエルの過激主義を支持する米国内の数百万人のキリスト教福音派の存在に言及し、「恐ろしいこと」だと強調しています。
- Jeffrey Sachs: US Prepares to Join War Against Iran(Glenn Diesen、2025年6月17日)
以下に、グレン・ディーセン氏のYouTube番組「米国は、イランとの戦争参加準備を進めている」の、IWJによる仮訳・粗訳を掲載します。
グレン・ディーセン氏(以下、ディーセン氏)「皆さん、こんにちは。
本日はジェフリー・サックス氏をお迎えし、中東情勢の動向について議論します。
トランプ大統領は、『米国第一』を掲げた平和政策で選挙に勝利しました。私は、他の多くの人々と同様、当初は楽観的でした。
しかし、現在では、彼がまたしても、戦争大統領となったことは明白です。
イスラエルによる、イランに対する突然の攻撃。
トランプ大統領は、この対応として、テヘランからの退避を要求しています。また、米国は、地域に軍事力を集結させています。
これについて、どうお考えですか?
米国がイランとの戦争に直接介入する可能性はありますか、それともこれはトランプの交渉戦略の一部なのでしょうか?」
ジェフリー・サックス教授(以下、サックス教授)「まず、私にはわからないと言わざるを得ません。なぜなら、私達は誰も、本当にわからないからです。
イスラエルの突然の攻撃には、驚きました。もしかしたら、驚くべきではなかったのかもしれません。イランへの攻撃を、ネタニヤフは30年間、狙っていたからです。絶対に。ほぼ毎日です。
ネタニヤフの執念は、イスラエルが、米国を、イランとの戦争に引きずり込むことでした。
同時に、イスラエルの攻撃が始まる直前に、米国は、米国とイランとの交渉が、日曜日(6月15日)に開催されることを発表していました。
つまり、現在話している6月17日火曜日の数日前に、交渉が行われる予定であり、進展が見られている、と発表されていたのです。
そして、イスラエルの攻撃は、交渉プロセスが進行中であり、さらに前向きな進展が報告されているという、公の声明の文脈の中で発生しました。
したがって、あなたの質問は、非常に狭い意味で言えば、『すべてが、イランの警戒を緩めさせるための策略だったのか、それとも、ネタニヤフが独自に行動し、その後、米国の外交政策に対するイスラエルの支配的なコントロールのもとで、トランプを引き込んだのか』、ということになります。
私達は、これらのことについて、確かなことはわかりません。私達は、外から推測するだけです。
現在の米国、欧州、イスラエルの政府は、混乱しています。
公に言われていることは、いずれにせよ、嘘です。
何も、明確に説明されていません。
何も、正直に説明されていません。
日頃の言動に、一貫性がありません。一貫性を保つ努力すら、ありません。
イスラエルの攻撃が始まった時、トランプは『驚きだった』とは言いませんでした。彼は、『私達は知っていたが、関与していない』と言いました。
3日後に、交渉が行われる予定だったという事実にも、言及しませんでした。
そこに、一般市民に対して、大人として、または理性的に話そうとする努力は、ありません。
これは、小さなグループ、要するにギャング達が、自分の縄張りを争っているに過ぎません。
私達は、傍観者として、いつ自分の街に爆弾が落ちるのか、どこかで愛する人が殺されるのかと、不安に思っています。私達は、この事態の参加者ではなく、単なる観察者です。
興味深いのは、トランプがG7会議を去った後、マクロンが、『トランプがワシントンに戻って、停戦交渉をするためだ』と述べた際、トランプの回答は、『私が何をしているか、(マクロンは)知らない』でした。
停戦よりも、はるかに大きなことが起こっています。
これは、米合衆国大統領が、先ほど会談したフランスの大統領に対し、公開のSNSの投稿で、直接言及したのです。
失礼ですが、これは、核保有国という特別なサークルの中でも、彼らがギャングのような行動を取っていることを示しています。
彼らは互いに、自分達同士ですら、正直に話しあっていません。
グレン、まず、あなたと皆さんに謝らなければなりません。私は、この件の答えを知らないのです。
私が断言できるのは、イスラエルがイランとの戦争を計画していたことは、非常に長期にわたる計画であり、隠蔽されていなかった、ということです。
それは、ネタニヤフの1996年からの、最大の夢です。
ネタニヤフの哲学とアプローチは、支配です。
中東では、イスラエルの核兵器と地域における独占的な地位を利用して、イスラエルの行動に反対する政府を叩き潰し、殺害し、暗殺し、または転覆させるのです。
このすべての目的は、何でしょうか?
目的は、イスラエルが自らの国境を、望むがままに、どれだけ広げても構わない形で、定義することを許すことのように見えます。
ある人は、言うかもしれないし、私は絶えず書いていますが、イスラエルが自国の国境を定義する方法は、イギリス委任統治下のパレスチナ領土に対する、完全な支配を意味します。
つまりイスラエルは、イスラエル、ガザ、ヨルダン川西岸、東エルサレムに対する、完全な支配権を持つことになります。
しかし、これはナイーブかもしれません。
なぜなら、イスラエルの一部には、宗教的狂信者が存在し、旧約聖書のヘブライ語版の前半部分には、『神が、土地を、ナイル川からユーフラテス川まで、または紅海からユーフラテス川まで(解釈により異なります)約束した』と記されているからです。
しかし、いずれにせよ、その主張は、国連委任統治下のパレスチナよりも、はるかに広範です。
現在のイスラエルは、レバノンの一部、シリアの一部、国連委任統治下のパレスチナの全域を占領しています。そして、その境界がどこで終わるかは、不明です。
しかし、ネタニヤフの基本的な教義は、『それはイスラエルの選択であり、他者の選択ではない』ということです。
そして、いざという時には、米国はイスラエルの選択を支持するでしょう。
なぜなら、米国は基本的に、シオニスト、キリスト教、ユダヤ人、イスラエルのロビイストの支配下にあるからです。
私達は、この状況が驚くべき形で展開されているのを目撃しています。
イスラエルは今年、ガザ、ヨルダン川西岸、レバノン、シリア、イランで戦争を続けています。
これは、作り話ではありません。これは、止まることのない戦争です。
あなたの最初の質問に対する長い回答に、もう一つ、付け加えます。それは、彼らの戦争理論は何なのか、ということです。
戦争の理論は独特です。イスラエルは、小さな国です。人口は、約1000万人です。イランは、9000万人を超えています。
その理論とは何でしょうか? その理論は、暗殺と政権交代です」
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