ジェフリー・サックス教授は、2025年2月19日、欧州議会で講演を行い、ウクライナ紛争を含む米国の外交政策を強く批判するとともに、1989年の冷戦の終焉から現在に至るまでの、米国の単独覇権を求める真の歴史を語りました。
サックス教授の演説は、YouTubeなどでも数多く紹介されています。ここでは、『タイムズ・オブ・インディア』がYouTubeにアップした動画をご紹介します。
- Jeffrey Sachs Roaring Ukraine Speech At EU Parliament; Blasts U.S., Says ‘Not Putin’s Puppet’(Times of India、2025年2月25日)
サックス教授の講演の仮訳・粗訳を、【IWJ号外】<ジェフリー・サックス教授講演「平和の地政学」>(その1)、(その2)、(その3)でお伝えしました。
サックス教授は、講演の後、会場からの質疑を受けています。サックス教授の回答は、講演本体に劣らず、興味深いものとなっています。以下に、質疑の前半部分を(その3)でご紹介しました。
(その4)で、質疑の後半部分をお送りします。
質問4「NATOの東方拡大について。それは、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキアなどの国々が、ソビエト連邦との歴史的背景のために、NATO加盟を望んだから起きたのではないでしょうか?」
サックス氏「ハンガリー、ポーランド、チェコ共和国、スロバキアがNATOに加盟したかった理由は疑いようがありません。
問題は、米国が平和を築くために何をしているか、なのです。なぜなら、NATOは、ハンガリー、ポーランド、チェコ共和国、スロバキアの選択肢ではなかったからです。NATOは米国主導の軍事同盟です。問題は、どのように信頼できる平和を確立するか、なのです。
もし私が当時、その決定を下す立場にあったなら、1991年にNATOを完全に解散していたでしょう。
それらの国々がNATOへの加盟を要請した際には、彼らに、私達の国防長官ウィリアム・ペリー(※1)が言ったこと、私達の重要な見識者であるジョージ・ケナン(※2)が言ったこと、そして駐ソ連大使であったジャック・マトロック(※3)が言ったことを説明したでしょう。
彼らは『あなたの気持ちは理解するが、それは良い考えではない。なぜなら、それはロシアとの新たな冷戦を招く可能性があるからだ』と言ったのです。
私だったら、最初の(NATO加盟の)波で、それらの国々が加盟した時に、そう回答したでしょう。実際、それが大きなプロジェクトの一部だったということを除けば、それほど重大なことではなかったと思っています。
そのプロジェクトは、1994年に既に明確に示されていました。ハーバード大学出版局から出版された、ジョナサン・ハスラムの『傲慢』(※4)という非常に優れた本があり、段階的に、何が起こったかを詳細に記録しています。読む価値のある本です。
現在の問題として、私が本当に言いたいのは、ウクライナとジョージア(のNATO加盟という挑発)は、あまりにもやりすぎだったということです。これは、核枠組みの完全な崩壊の文脈の中にあります。これは、米国がロシアの国境にミサイルシステムを配備した文脈の中にあるのです。
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