【IWJ号外】<ジェフリー・サックス教授講演「平和の地政学」(その1)>ソ連崩壊後、米国の一極覇権プロジェクトが始まり、2003年のイラク戦争後、「欧州は完全に発言力を失った」! 冷戦後、今に至るまでの35年間のすべての謎が解ける!東京大学松里公孝教授が推薦! 2025.3.19

記事公開日:2025.3.19 テキスト

(文・IWJ編集部)

 ジェフリー・サックス教授は、2025年2月19日、欧州議会で講演を行い、ウクライナ紛争を含む米国の外交政策を強く批判するとともに、1989年の冷戦の終焉から現在に至るまでの、米国の単独覇権を求める歴史を語りました。

 マイケル・フォン・デア・シューレンブルク(Michael von der Schulenburg)氏が主催するイベント「平和の地政学」に登壇したサックス教授は、米国の一極覇権主義を強く批判し、ウクライナ紛争は米国による「代理戦争」であり、「欧州には、現実にもとづいた独自の外交政策が必要」だと訴えました。

 欧州は米国の従属国になっている、という現実をも突きつけ、欧州の指導者らには、苦い講演となったはずですが、IWJを御覧になってきた方にとっては、随所で、我々がかねてより報じてきたことと、重なる部分があることに、気づかれると思います。

 サックス教授は、皇太子(現在、今上天皇)との御成婚前、ハーバード大学に留学していた時の雅子皇后の指導教官であり、世界屈指の経済学者として知られています。

 彼は、実際に世界各国の政治経済の政策決定にも関わってきました。ソ連解体前後の、東欧・旧ソ連・ロシアで各国の社会主義経済から民営化への移行の政府アドバイザーを務めてきたことは、よく知られています。

 欧米諸国だけではなく、南アメリカ、アジア、アフリカ、中東の数十人の世界の指導者に経済戦略について助言を行ってきました。

 2001年から2018年まで国連事務総長特別顧問を務め、現在は、アントニオ ・グテーレス国連事務総長のもとで、「持続可能な開発目標SDGs」の顧問を務めています。

 岩上安身によるインタビューを受けていただいた松里公孝東大教授が、「非常に世界的に評判となっている講演なので、ぜひ御覧になってください」と、アドバイスをいただいてもおります。

 我々だけでなく、読者・視聴者の方々にも、広くお伝えしたいと思い、翻訳を行いました。

 冷戦後、一極支配を目指してきた米国が、何をしてきたか、その過程があますところなく、しかもシンプルかつ明晰に、語られています。

 世界の政治経済事情、とりわけ旧ソ連のロシア、ウクライナの現地の生の情報に通じているサックス教授の主張を凝縮したようなこの演説は、注目を集め、YouTubeでもフルヴァージョンや切り出しが数多く出ています。

 ここでは、『タイムズ・オブ・インディア』がYouTubeにアップした動画をご紹介します。

 講演の主催者であり、司会・紹介者でもあるシューレンブルク氏は、元国連事務次長で、現在はドイツの「急進左派」とされるザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)所属の欧州議会議員です。

 シューレンブルク氏は、サックス教授を、国連事務総長の顧問、コロンビア大学教授で地球研究所の創設者、持続可能な開発ソリューションセンターの所長と、その多彩な経歴を紹介しました。

 シューレンブルク氏は、「サックス教授ほど、国際的に人脈のある人物には会ったことがありません。宗教分野でも、政治分野でも、ジェフほど人脈のある人物はいません」「ジェフは世界中どこへ行っても知られています。中東でも、中国でも、モスクワでも、またキエフでも、そしてアフリカやラテンアメリカでも」と述べました。

 「ジェフが特別」なのは、と、シューレンブルク氏は続け、「彼が常にアドバイザーであり続けていること」「独立性を保っていること」であり、そのことが信頼性を高めている、と評価しました。

 シューレンブルク氏は、「ジェフは世界中で平和のために声を上げる人物」であるからこそ、「平和の地政学」について話してもらうために、ウクライナ紛争で揺れている欧州議会に招待したと、サックス氏を招いた理由を説明しました。

 IWJは、サックス教授の講演と質疑を、全文文字起こしし、仮訳・粗訳を進めています。(その1)では、以下の小項目(IWJによる)をお送りします。

1)米国は、ソ連崩壊以降30年以上、他国の意見に耳を傾けることなく、多くの戦争を主導し、引き起こしてきた
2)2003年のイラク戦争後、欧州は完全に発言力を失った
3)1994年、米国による一極覇権を意味する、NATOの東方拡大をクリントン政権が正式に決定した
4)「NATOは1インチたりとも東方に拡大しない」と無数の文書に記載されている
5)「NATOの東方拡大」は、33年にわたる米国のプロジェクトである
6)ロシア封じ込め政策を、米国は英国から引き継いだ
7)米国の政治システムは、メディア操作による『イメージのシステム』である
8)コソボ紛争も、南スーダンの反乱も、NATOの東方拡大も米国のプロジェクトである
9)9.11の後の7つの戦争は、ネタニヤフの戦争である

 どうぞ、IWJの会員となって、全文をお読みください。


ジェフリー・サックス教授、2月19日「平和の地政学」EU議会での講演

1)米国は、ソ連崩壊以降30年以上、他国の意見に耳を傾けることなく、多くの戦争を主導し、引き起こしてきた

サックス教授「マイケル(司会のシューレンブルク氏)、(紹介を)どうもありがとう。そして、皆さん、こうして一緒に集まり、一緒に考える機会をいただき、どうもありがとうございます。

 私達は今、実に複雑で、変化の速い時代に生きています。そして、非常に危険な時代でもあります。だからこそ、私達は思考を明晰に保つ必要があります。

 私は、特にこの演説に関心を持っているので、できるだけ簡潔かつ明晰に話すように努めます。

 私は、東ヨーロッパ、旧ソ連、ロシアで、過去36年間、起きた出来事をとても間近で見てきました。

 1989年にはポーランド政府、1990年と91年にはゴルバチョフ大統領、1991年から93年まではエリツィン大統領、1993年から94年まではウクライナのクチマ大統領のアドバイザーを務めました。

 私は、エストニアの通貨導入を手伝いました。旧ユーゴスラビアのいくつかの国、特にスロベニアを手伝いました。私は36年間、非常に間近で出来事を見てきました。

 『マイダン(※2014年の、ウクライナにおける、ユーロマイダン・クーデターを指す)』の後、私は新政権からキエフに来るよう要請され、『マイダン』を案内してもらいました。

 そして、非常に多くのことを直接に我が目で学びました。私は30年以上、ロシアの指導者達と、連絡を取りあっています。

 私は、米国の政治指導者達を知っています。51年前、当時の財務長官(※第62代財務長官ジョージ・シュルツ氏)は、私のマクロ経済学の先生でした。彼または彼女らは、ある思想を伝えていました。ですから、私達は、半世紀にわたって非常に親しい友人でした。

 私は、これらの人々全員を知っています。私が言いたいのは、私の見解は、二次的な情報によるものではない、ということです。

 それは、イデオロギーではありません。私が、この期間に自分の目で見て、経験したことです。

 私の理解では、ヨーロッパで起こった出来事には、多くの側面があります。ウクライナ危機だけでなく、セルビアでの1999年(※コソボ紛争)、イラク、シリアを含む中東での戦争、スーダン、ソマリア、リビアを含むアフリカでの戦争なども含まれます。

 ここには、あなたが驚くような、非常に重要なものがあります。

 おそらく、私がこれから話すことについて、非難が起こるでしょう。

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