5月23日午前10時から12時まで、ウクライナ紛争の停戦を訴える「Ceasefire Now! 今こそ停戦をCease All Fire Now! 8th ウクライナ戦争停戦に関する最近の動き~ジェフリー・サックス教授が日本国会に向けて語る~」が、参議院議員会館特別会議室で開催されました。
サックス教授の講演の後半は、ウクライナ紛争について語った前半とは、ガラッと変わり、ガザ戦争と東アジア情勢について語っています。
東アジア情勢について、サックス教授は、中国は日本の敵ではなく、「自然な友好国であり、同盟国であると思う」との見解を示しました。
サックス教授は、中国はこの2000年間、技術的にも経済的にも軍事的にも日本より優位に絶っていた時期にも日本を侵略することは1度もなかったという事実は、とても興味深いと述べ、もし、中国、日本、韓国の3ヶ国が協力すれば、世界でも最も強力な経済圏を形成することができると示唆しました。
サックス教授は、「日本が、中国から自国を守るために米国が必要だとは思いませんし、米国が本当に日本の安全保障を提供しているとも思いません」と述べ、「米国の存在は、平和へと導くよりも、戦争へと導く可能性が高い」と警鐘を鳴らしました。
以下に、サックス教授による講演の後半の仮訳をお送りします。
ウクライナ紛争について語った前半は、以下で御覧になれます。
ジェフリー・サックス教授講演
「ウクライナとガザの停戦、そしてアジアの平和の確立」(後半)
「ガザの戦争もまた、長い物語です。これは、中東のアラブ人に対する西欧の支配の長い物語です。
その起源は、少なくとも1918年の分割条約(※1917年のバルフォア宣言後、大英帝国はパレスチナの占領統治を始めた)まで遡ります。なぜなら、第1次世界大戦が終わった後、イギリスとフランスは、第1次世界大戦に敗北したトルコ・オスマン帝国に代わって、中東の(支配的な)帝国主義勢力となったからです。
イギリスは、極めて冷酷でした。つまり、帝国主義的でした。非常に冷酷な帝国主義勢力だったのです。私は、現在の世界の多くの問題の根源は、イギリスにある、と断言できます。
なぜなら、大英帝国は、アジア、中東、アフリカでも多大な損害を与えたからです。それは、イギリスが19世紀の支配的な勢力だったからです。第二次世界大戦後のアメリカのように。
イギリスは、中東で多くの損害を与えました。イギリスは、オスマン帝国の領土の大部分を支配し、その中にはオスマン帝国の一部だったパレスチナ州も含まれていました。そして、分割条約にもとづき、イギリスは国際連盟の下で、パレスチナを支配する『委任統治』を付与されました。その文脈で、イギリスは、ユダヤ人がパレスチナに移住するための『故郷』を設立しました。
当時、ユダヤ人は人口のわずか3%から5%程度でした。一方、アラブは、85%がムスリムのアラブ人でした。しかしイギリスは、特にソビエト連邦やロシア、東欧からユダヤ人を移住させるプロセスを開始しました。これにより、既存のアラブ人口と移住してきたユダヤ人口の間で衝突が生じました。かくのごとく、中東における戦争の根は、すでに100年前に始まっているのです。
アラブ人達は、『これは私達の土地だ』と主張しました。ユダヤ人は『いいえ、これは私達の古代の土地だ』と反論しました。そして、2つの民族がこの土地を巡って戦いました。
いわゆるシオニスト運動(ユダヤ人とキリスト教徒の運動)の基本的な方針は、ユダヤ人国家を通じて、アラブ人を支配することでした。この方針は、第2次世界大戦後、イスラエル国家の成立と共に現れました。
これ(シオニズム)は、第2次世界大戦中の、欧州におけるヒトラーのユダヤ人虐殺、ホロコーストによって正当化されました。しかし、アラブの立場からすれば、それ(ホロコースト)はアラブの責任ではありませんでした。
したがって、アラブは、ヨーロッパ諸国と米国が、数世紀にわたってアラブ・パレスチナ人が支配してきた土地に、新しいユダヤ国家を創設するアイデアを拒否しました。
イスラエルは1948年、一方的な独立宣言を行い、その宣言に反対したアラブ諸国を破って独立を勝ち取りました。非常に長い歴史がありますが、ここでは詳細に検討する時間はありません。
しかし、イスラエル国家の創設を目的としたシオニスト運動は、常に地域を支配する目的を持っており、地域を共有する目的をもつことはなかったということを指摘しておきます。
現在も、同じ土地や地域に、ムスリムのアラブ人とユダヤ人の2つの民族が住んでいます。しかし、国家はひとつだけで、イスラエル国家であり、パレスチナ人はその国家の支配下で生活しています。そのため、イスラエルは、南アフリカと同様にアパルトヘイト国家と呼ばれてきました。ひとつのグループが、他のグループを支配しているからです。
私の見解では、これは公正な説明です。正直な説明です。
なぜなら、アラブ・パレスチナ人は、イスラエル国家の力によって深刻な差別と虐待を受けており、政治的権利を剥奪されているからです。
そのため、1947年以来、そして1967年の6日戦争後、国際法にもとづき、イスラエル国家と並存するパレスチナ国家の設立を求める呼びかけが繰り返されてきました。その(イスラエルの)隣に、パレスチナ国家を設立することです。
現在の問題は、イスラエル国家がパレスチナ国家の設立を拒否している点です。これが根本的な問題であり、イスラエル側には妥協の余地がありません。彼らが望むのは、支配だけです。彼らは『パレスチナ国家が存在すれば、安全ではない』と主張しますが、自らの安全保障について交渉しようとはしません。
そして、多くのイスラエルの指導者は『神が2500年前にこの土地を私達に与えたもうた』と主張しています。『だから、私達は妥協する必要はない』。これが、イスラエルの立場です。
私の見解では、これは過激主義の立場です。800万人のユダヤ人が800万人のパレスチナ人を支配し、イスラエルの多くの指導者が、アラブの人々を追放したり、殺害したり、政治的支配とアパルトヘイト体制を通じてアラブの人々を支配しようとしていること、それが戦争が継続する原因となっています。
私の見解では、これは非常に残酷で、非常に、非常に不適切であり、国際法に反しています。ほぼ世界中が、イスラエルの行動は違法で、非常に暴力的なものだということに同意しています。
そして、イスラエルを擁護する国は、(世界で)ひとつだけです。それが米国です。米国は国連安全保障理事会で、パレスチナ国家の承認案を拒否しました。2011年に、パレスチナの国連加盟を阻止しました。
2024年に再び投票が行われた際には、国連安全保障理事会で、(※理事会を構成する15ヶ国のうち)12票の賛成票が投じられました。パレスチナは国家として承認されるはずでしたが、米国の1票の拒否権と、2票の棄権によって、米国がそれを阻止しました。これが現在進行中のドラマです。
イスラエル政府は、パレスチナ国家の設立を拒否しています。この拒否は違法であり、残酷であり、道徳に反する行為だと、私は考えます。なぜなら、それはパレスチナの人々を支配し、殺害し、民族浄化によって追放することを意味するからです。
唯一の公正な解決策は、2つの国家が隣り合って共存することです。国連の193ヶ国中180ヶ国以上が、二国家解決案を支持しています。
私の見解では、二国家解決案の実現における唯一の障害は、米国です。もちろん、イスラエルは反対していますが、イスラエルは、パレスチナを国連の194番目の加盟国として承認する、世界の他の国々を阻止することはできません。なぜなら、イスラエルには拒否権がないからです。
しかし、米国には拒否権があり、その拒否権を、イスラエルのアパルトヘイト支配を守るために使用しています。これが、戦争が続き、これほど暴力的な理由です。妥協が欠如しているのです。
最後に、日本と東アジアの問題に、簡単に触れておきます。当然ながら、皆様は状況をよくご存知でしょう。ですから、1945年以降の歴史について、説明する必要はありません」。
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