【第661号-662号】岩上安身のIWJ特報! 1994年の政治制度改悪が裏金作りを生み「米国の利益のための戦争をする国作り」に直結した!岩上安身による神戸学院大学法学部・上脇博之教授インタビュー 2024.12.1

記事公開日:2024.12.1 テキスト独自
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(文・IWJ編集部)

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 「本当に、きちんとしたカネなのか。国民が『変だよな』と思っていることを、ひとつひとつ氷解させていかなければならない」。

 これは2024年9月27日、自民党総裁選挙で新総裁に選出されたばかりの石破茂氏が、NHKの『ニュースウオッチ9』に出演した際の言葉である。

▲石破茂内閣総理大臣(首相官邸HPより)https://bit.ly/3BZbvUh

 石破氏は、自民党の裏金問題に関して国民の信頼を回復する必要があるとし、党から議員に支給される「政策活動費」のあり方を議論したいと述べた。

 10月1日、石破内閣が発足。そのわずか8日後、戦後最短のタイミングで石破総理は衆院を解散し、10月27日に総選挙が行われた。これは裏金事件発覚後の最初の大型国政選挙であり、言うまでもなく、裏金問題が最大の争点だった。この問題で重い処分を受けた自民党の前衆院議員ら12人は、非公認となった。

 ところが、その選挙戦も大詰めの10月23日、共産党機関紙『しんぶん赤旗』は、衆院選の公示後、自民党の非公認候補8人の政党支部に「党勢拡大のための活動費」の名目で、2000万円が振り込まれていたことをスクープした。公認候補の政党支部には「公認料」と「活動費」の名目で1人当たり計2000万円が支給されており、自民党はそれと同額を非公認候補にも支給していたのである。

※明日27日は第50回衆議院選挙投開票日! 小選挙区の半数近くが大接戦! 自公与党は過半数ラインが微妙に!? 最終盤で自公失速、過半数割れの予測続出! それでも裏金議員が「Aランク」当確!? 議員が何をやらかしても支持し、票を入れる「懲りない日本人」が政界の腐敗を助長する! 自民「非公認候補に2000万円支給」について、上脇博之教授「裏金政党が裏金議員を裏公認した形」だと憤り! 最終盤に来て、2000万円裏公認問題が自民党にトドメをさす?(日刊IWJガイド、2024年10月26日)
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 自民党の森山裕幹事長は、「政党支部の活動費として支給したもので、候補者に支給したものではない」とコメントしたが、政党支部の代表は候補者自身であり、野党は公認同様の待遇だとして批判を強め、国民からも疑問の声が上がった。

 「国民が『変だよな』と思っていること」が、氷解どころか、追加で上積みされた感がある。

 結局、衆院選で与党は215議席(自民191、公明24)と、選挙前の279議席から大幅に議席を減らし、過半数の233を割り込むことになった。与党が過半数を割り込むのは、民主党政権が誕生した2009年以来である。

 自民派閥の裏金事件に関わった候補者は、46人(非公認含む)中、28人が落選した。旧安倍派幹部で非公認の下村博文元文部科学大臣、党公認だが比例重複が認められなかった丸川珠代元五輪大臣、「ヤンキー先生」こと義家弘介元文部科学副大臣、武田良太元総務大臣らである。一方、非公認だった萩生田光一元政調会長、平沢勝栄元復興大臣、西村康稔元経産大臣らは当選し、自民党を離党した世耕弘成元経産大臣も当選した。

 そればかりか、自民党は10月30日、萩生田氏、平沢氏、西村氏、世耕氏を含む、無所属で当選した6人の会派入りを発表したのである。

※自民「裏金候補」は18勝28敗 旧統一教会との接点候補にも大逆風 丸川珠代氏、高木毅氏、山本朋広氏は(東京新聞、2024年10月28日)https://www.tokyo-np.co.jp/article/362923

※世耕氏ら6人、自民会派入りへ 与党過半数は届かず(時事ドットコム、2024年10月30日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024103001091&g=pol

 自民党の派閥裏金疑惑が明るみに出たのは、2022年11月。やはり『しんぶん赤旗』の報道が発端だった。最大派閥の安倍派を含めた自民党の5派閥で、政治資金パーティー券の大口購入者が政治資金収支報告書に不記載だったという内容だ。

 これに呼応する形で、神戸学院大学法学部の上脇博之(かみわき ひろし)教授が綿密な調査を重ね、5派閥で計約4000万円の不記載があったとして、会計責任者らに対する政治資金規正法違反容疑の告発状を東京地検に提出。2023年11月、東京地検特捜部が派閥の事務担当者らへ任意の事情聴取を進めていることが判明し、裏金疑惑は政権基盤を揺るがす事態へと発展した。

 岩上安身は2024年4月18日、上脇教授にインタビューを実施した。その中で上脇教授は、「『政治とカネ』の問題は選挙制度に大きな原因がある」として、次のように語った。

▲神戸学院大学法学部上脇博之教授(2024年4月18日)https://bit.ly/47Je4W8

 「衆議院の小選挙区制って、4割の得票で8割近い議席が取れてしまう。仮に『政治とカネ』問題が発覚しても、この選挙制度のもとだと、候補者個人の責任にしちゃえば、ほかの選挙区の人は安泰なわけです。

 だから、今の選挙制度でいくと、自民党の自浄能力は回復できない」。

 岩上安身が、「完全な比例代表制であれば、『政治とカネ』問題が起きれば政党全体に影響して、他の議員も落選するということですね?」と聞くと、上脇教授は、「それがあって初めて、議会制民主主義になり得る」と話した。

 さらに上脇教授は、以下のように説明した。

 「選挙は結果だけを報道されるじゃないですか。たとえば、小選挙区のおかげで、自民党と公明党で3分の2(議席)を取った。その結果を見て、『あ、3分の2も、国民が支持しているのか』と勘違いするんです。

 ところが、比例代表の得票率を見ると、過半数を取ってない。そういう意味で、数字のマジックですよね。

 過半数の得票がなくたって、自民党・公明党政権が続くように、小選挙区が導入されている、ということなんですね」。

 戦後の日本の選挙制度は、中選挙区制だった。有権者は、候補者1名のみに投票し、得票数の多い順に、定数分の候補者が当選する仕組みだった。

 ところが、候補者の個人支援組織を作る必要から、政治と財界の癒着が生まれやすく、特にバブル期の80年代半ばから90年代にかけて、佐川急便事件やリクルート事件などの贈収賄事件が社会問題化した。

 その後、「金権腐敗政治からの決別」を掲げて政治改革が進められた結果、1994年3月4日に公職選挙法が改正され、衆議院選挙に小選挙区比例代表並立制が導入されたのだった。

 上脇教授は、1994年に行われた政治改革の本音は、「アメリカの戦争に日本が協力できるような国家作りをするためには、中選挙区制はダメだ」というものであり、「実際は政治改悪だった」として、「だから、その時の、『金権腐敗政治をなくす』という建前に戻って、政治改革をやり直すべきです。その思いで(裏金事件などの)告発も、ずっとやってきた」と語った。

※「憲法改正のための資金をためこんでいる自民党?!」~5.31 改憲は憲法記念春のつどい 2024「裏金問題と改憲問題」―講演:上脇博之 神戸学院大学教授 2024.5.31
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/523310

※「自民党は議員個人に責任を取らせて、党はいつも安泰。選挙制度を改革しないと変わらない」上脇博之教授~4.27 自民裏金問題とメディア ―講演:上脇博之氏(神戸学院大学教授)ほか 2024.4.27
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/522802

記事目次

選挙が完全な比例代表制なら自民・公明は過半数を取れないが、小選挙区制で投票率が低ければ、後援会や統一教会に頼って「まだ勝てる」と考えている!?

▲「政治とカネ」問題の大きな原因は選挙制度にある https://bit.ly/3UmjCQU

岩上安身(以下、岩上)「『「政治とカネ」の問題の大きな原因は選挙制度にある』と」

上脇博之教授(以下、上脇教授)「衆議院の小選挙区制って、4割の得票で8割近い議席が取れちゃうわけですね。

 実は、これ、『政治とカネ』の問題が仮に発覚しても、この選挙制度のもとだと、党の責任じゃなくて、政治家個人、候補者個人の責任にしちゃえば、ほかの選挙区の人は安泰なわけです」

岩上「なるほど」

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