【IWJ号外】クリス・ヘッジズが、「米国内の新聞9000紙のうち3000紙近くが廃刊し、4万3000人の新聞記者が失職」と米国の既存ジャーナリズムの惨状を報告! 唯一の光明は独立メディア! 2024.4.29

記事公開日:2024.4.29 テキスト
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(文・IWJ編集部)

 IWJ代表の岩上安身です。

 ピューリッツァー賞を受賞した作家・ジャーナリスト、クリス・ヘッジズ氏が、今年2月17日に、『サブスタック』で、米国の既存のジャーナリズム、特に新聞の惨状について語り合った、同じくピューリッツァー賞を受賞したジャーナリストであるグレッチェン・モーゲンソン氏との対談を公開しました。

 クリス・ヘッジズ氏による前文に、米国のジャーナリズムの惨憺たる状況が、鋭く描かれています。「過去20年間で、米国内の新聞9000紙のうち3000紙近くが廃刊し、4万3000人の新聞記者が職を失った」というのです。非常に深刻な事態です。

 「貧すれば鈍する」とよくいわれますが、ウクライナ紛争をめぐって、米国をはじめ、日本を含む西側諸国のメディアが、一斉に米国政府主導のプロパガンダに邁進した背景が透けて見えてくるようでもあります。

 日本の既存ジャーナリズムも、2年余りにわたるウクライナ紛争を、米国政府主導のプロパガンダ一色で塗りつぶし、その「正体」をさらけ出しました。

 米国の「代理戦争」の「捨て駒」にされる、「ウクライナ」モデルは、次は日本で用いられます。ウクライナの惨状、そして真実を踏みにじるプロパガンダがもたらす害悪は、日本人にとって、他人事ではないのです。

 ヘッジズ氏と、モーゲンソン氏の対談は、50分以上に及ぶため、米国の既存ジャーナリズムの崩壊に直接関連する部分を中心に抄録としました。主なトピックスは、以下の通りです。

1)地方紙の崩壊による、ローカルニュースの空洞化

2)地方紙から「海外報道」と「調査報道」が消滅

3)デマゴーグや陰謀論の台頭

4)全国紙の衰退、経験豊富な記者の解雇

 企業のトップの談話ではなく、労働者達に取材してきたモーゲンソン氏も、軍のトップではなく、下士官や伍長に取材してきたヘッジズ氏も、『ニューヨーク・タイムズ』や『ウォール・ストリート・ジャーナル』で修行を積み、「グラウンドアップ方式(草の根取材)」の調査報道を真骨頂としています。

 2人のピューリッツァー賞受賞ジャーナリストが語る、今の米国のジャーナリズムの惨状は、先述のように、日本のジャーナリズムの惨状と非常に似通っています。

 調査報道や海外報道が失われ、ベテラン記者が斬られて、若い記者にノウハウを伝えられず、真のジャーナリズムの継承が困難になっています。新聞もテレビも、広告費が減り、経営陣は、横並びで「お上」に従うことしか考えていません。その結果、米欧日でプロパガンダに徹するまでに「退化」してしまいました。

 『ニューヨーク・タイムズ』や『ウォール・ストリート・ジャーナル』といった、米国の「一流」の新聞社で活躍し、「グラウンドアップ方式」で調査報道を行い、ピューリッツアー賞を受賞した、モーゲンソン氏、ヘッジズ氏も、また、自由な言論を確保するために、組織を離れました。

 ヘッジズ氏は、『サブスタック』に活路を見出しています。これは、日本で言えば最小単位の独立メディアに相当します。シーモア・ハーシュ氏も、同様に『サブスタック』上で、直接市民に支えられるジャーナリズム活動を行なっています。

 ヘッジズ氏やハーシュ氏の決断は、私の歩んできた道と似ています。

 2009年に、まだテレビのコメンテーターをやるなどして、既存メディアの中で活動しながら、その限界を感じていた私は、独立ネットメディアの立ち上げを構想し、一年余りかけて、2010年12月にIWJを設立しました。

 その後、月額会員制を整えたり、ご寄付、ドネーションで運営する独立ネットメディアとしての形を整えてきたわけですが、その結果、10年間、レギュラー・コメンテーターを続けてきたテレビは、2011年に急に理不尽な形で降板となり、出版界を含めて、既存マスコミからは、距離を置かれました。早い話、当時、ネットを敵視していた既存メディアから、「干された」のです。

 今や、テレビや新聞・出版も、個々人も、こぞってネットに進出し、SNSのプラットフォームを通じて、コンテンツを提供していますが、当時は、そのようなことはまったく想定されていませんでした。

 そうした点では、今、シーモア・ハーシュ氏やヘッジス氏のような、米国内のベテランジャーナリストらが、月額会員制の『サブスタック』で、 権力とマネーパワーから独立した報道と言論を展開していたり、ドネーションに活動費を頼る『デモクラシー・ナウ』が、動画の番組を継続していることと、私およびIWJには、期せずして、たくさんの共通点があります。

 IWJは、市民に支えられる独立メディアとして、2010年12月にスタートして、13年4ヶ月となります。

 最初は、ライブ・ストリーミングで、東電会見や大臣会見を中継・実況することだけでも、他に同様のストリーミングを行うネットメディアが存在せず、「パイオニア」的な存在であったと自負します。

 しかし、ご存知の通り、動画やライブ配信コンテンツがあふれかえるようになり、IWJだけがライブストリーミングを行なっているわけではなくなりました。

 ですが、その間もテキストメディアとしてのIWJを時間をかけて充実させ、私が取り組んできたインタビューも、1154回を数えるまで、回を重ねております。

 また、日米欧の「先進国」グループ内だけでなく、グローバル・マジョリティにまで視野を広げて、激動する国際情勢を先取りしてお伝えし続けてきました。「IWJしか報じていない情報」が、いまだにあります。それどころか、戦争を待望する勢力によって、自立した報道へのコントロールが強まり、『IWJしか報じていない情報」は、逆に増えつつありおます。

 どうか、IWJの独立性、独自性をご評価いただき、今後も活動が続けられますよう、IWJの活動へのご支援、ご寄付をよろしくお願いします。

 また、ぜひ、IWJの会員となって、号外のクリス・ヘッジズ氏の前文と、対談の抄録を最後までお読みください。


ピューリッツァー賞を受賞した元『ニューヨーク・タイムズ記者のグレッチェン・モーゲンソンと共に、ジャーナリズムの崩壊、デジタル下水道、そして新たなジャーナリズムの暗黒時代について語るクリス・ヘッジス・リポート
クリス・ヘッジズ
2024年2月17日
https://chrishedges.substack.com/p/the-chris-hedges-report-with-gretchen-morgenson

<前文>

 国、州、地方レベルのジャーナリズム・報道機関の閉鎖や人員削減によって、米国のメディア環境は、崩壊しつつある。

 2005年以降、全米の新聞の3分の1が廃刊となり、新聞記者の3分の2が職を失った。2023年には、平均で毎週2.5紙が廃刊になっているが、2022年には、毎週2紙が廃刊になっていた。

 地方の新聞社の取り潰しは、さらに深刻で、新聞社が閉鎖され、解雇がほぼ常態化している。過去20年間で、国内の新聞9000紙のうち、3000紙近くが廃刊し、4万3000人の新聞記者が職を失った。

 血を流すかのごとき人員削減は、さらに加速している。

 『ビジネス・インサイダー』は、従業員の8%を解雇した。

 『ロサンゼルス・タイムズ』紙は、昨年6月に74人のニュース編集部の職を74人削減した後、最近、ニュース編集部の20%以上にあたる120人のジャーナリストを解雇した。

 『タイム』誌は、差し迫った人員削減を発表した。

 『ワシントン・ポスト』紙は、昨年末、240人の人員削減を行った。

 (文藝春秋社刊の、『Number』誌のモデルとなった)『スポーツ・イラストレイテッド』誌は、潰れた。

 『CNN』、『NPR』、『バイス・メディア』、『ヴォックス・メディア』、『NBCニュース』、『CNBC』、その他の組織もみな、大幅な人員削減を行っている。

 (米国最大の発行部数を誇ってきた新聞である)『USAトゥデイ』と、多くの地方紙を傘下に所有する新聞チェーン『ガネット』は、数百人分のポジションを削減した。

 今回の人員削減は、新型コロナウイルス感染症危機を受けて、約2700人の雇用が削減された2020年以降、ジャーナリズム部門で、最悪の人員削減が行われたことになる。

 デジタル時代における、一般の人々によるニュースや娯楽の消費によって、多くの伝統的なメディア・プラットフォームが恐竜に変わってしまった。

 しかし、それらが消滅するにつれて、ジャーナリズムの中核である報道、特に調査報道も消滅していく。デジタル・プラットフォームは、一部の例外を除いて、民主主義の基本的な柱のひとつである地域レベルの報道範囲や確実性を維持できていない。

 かつてメディア産業を支えていた広告費は、広告主が潜在的な消費者を正確にターゲットにできるデジタル・プラットフォームに移行した。旧来のメディアが持っていた、売り手と買い手をつなぐ独占的な手段は、もうない。

 『グーグル』や『メタ』のようなソーシャルメディアや検索大手が、メディアのコンテンツを無料で収集し、発信している。メディアは多くの場合、プライベートエクイティ(未公開株式)や億万長者に所有されており、彼らはジャーナリズムに投資するのではなく、短期的な利益のためにメディアを収穫し、空洞化させ、デス・スパイラル(死の循環)を加速させている。

 ジャーナリズムは、その最良の場合、強力な責任を生みだす。しかし、メディア組織が衰退し、ニュース砂漠が拡大するにつれて、報道機関はますます貧血化し、政治的デマゴーグやニュースプラットフォームを装ったサイトからの攻撃にさらされてさえいる。

 フェイクニュース、誤報、卑劣な噂、嘘が空白を埋め尽くしている。市民社会は、その代償を払っている。

 ジャーナリズムの危機について議論するために、NBCニュース調査ユニットのシニア金融レポーター、グレッチェン・モーゲンソンが、登壇する。

 彼女は以前、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙と『ニューヨーク・タイムズ』紙に勤務し、ウォール街に関する報道で、ピューリッツァー賞を受賞した。

 彼女の最新刊は『These are the Plunderers: How Private Equity Runs – and Wrecks – America(これらは略奪者だ:プライベートエクイティはどのように運営され、米国を破壊するのか)』である。

<対談の抄録>

 クリス・ヘッジズ氏と、グレッチェン・モーゲンソン氏の対談は、2人のジャーナリストとしてスタートを切った頃、「若い新聞記者だった頃」の話から始まりました。

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