11月の米大統領選、「もしトラ」から「ほぼトラ」へ!?「トランプ2.0」に「安倍流外交」は通じない! 日本が試されるのは「自立の道を行く覚悟」!! 岩上安身によるインタビュー 第1151回ゲスト 東アジア共同体研究所・須川清司上級研究員 第1弾 2024.3.21

記事公開日:2024.4.2取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

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 岩上安身は2024年3月21日と25日に、東アジア共同体研究所の上級研究員、須川清司氏に連続インタビューを行った。

 2024年11月の米大統領選では、民主党はバイデン大統領が、共和党はトランプ前大統領が、本選で戦うことになった。

 3月21日に行われたインタビューで、須川氏は、「去年(2023年)の年末から、トランプがぐっと差を開けたという調査がありましたが、今年に入ってからは、ちょっとそれが縮まって来ている」と述べ、「トランプは4つの刑事事件のほかにも、民事訴訟も抱えている。トランプが有罪になれば、バイデンがリードするという世論調査もある一方で、質問の仕方を変えると、有罪になってもトランプが有利だという調査も出て来ている」と明らかにした。

 さらに須川氏は、「全米ではバイデンがリードしているが、激戦州ではトランプがリードしている。全米でいくら勝っていても、激戦州を取らないと勝てない」と述べ、「(世論調査では)『トランプに投票しない』と答えながら、本当は投票する人が、一定数はいる」と、結果について「予断を許さない」との見方を示した。

 須川氏は「今回の大統領選挙が、まず、平和的に行われるのかどうか」と、ショッキングなことを冒頭に述べた。

 「すでに米国では、日常茶飯事として、州務長官など、州の選挙関係の役人に対しての脅迫が行われている」と、物騒な現実を明らかにした。

 「トランプは、自分が大統領になれなかったら流血の事態が起きると言っていて、あれは(2021年の)米連邦議会議事堂襲撃事件を念頭に言っているんでしょうけど、(投開票の)その前の段階から、支持者同士の武器すら持っての対立を起こしたり、や、支持者が暴徒になるといったことは、起こりかねない」とのことである。

 トランプ支持者の考えについて、須川氏は「トランプは単なるデマゴーグではなく、閉塞感を抱えた多くの米国人にとっては救世主のような存在。ワシントン・インサイダー(既得利権の支配階級)のバイデンには絶対できない改革をやってくれる(という強い期待がある)。そこには、ワシントン・中央のエスタブリッシュメントに対する、反感や憎悪がある」と述べ、「日本人のメンタリティでは、このトランプ人気がいまいち理解できないところがある。だけど、これが米国の現実」だと語った。

 一方、任期終了時には86歳になるバイデン大統領について、須川氏は「民主党支持者は、任期の後半は、カマラ・ハリス副大統領が執務することをセットで、バイデンを支持している」と述べた。

 これに対して、岩上安身が「カマラ・ハリスというのは、バイデンとふたりセットにすると、トランプひとりよりも強くなれるのですか?」と、疑問を呈すると、須川氏は「能力と選挙対策は別だと思うんです」と述べ、次のように答えた。

 「バイデンは、歳はお召しになっているけど、白人でしょう。カマラ・ハリスは、女性で、かつカラード(有色人種)なんです。そういった意味では、ほかに取り替えるというのは、大変だと聞いています。

 そもそもカマラ・ハリスを副大統領に選んだこと自体が、前回の大統領選での選挙の目玉対策だったわけですから。今回もそれ(選挙戦の状勢)は、全然楽勝じゃない、厳しいぐらいなので。

 トランプも実は、副大統領が女性かカラードになるんじゃないかと言われています」。

 須川氏は、トランプ氏が大統領になった場合を「トランプ2.0」として、「世界に与える衝撃は、『1.0』(前の任期)の比ではない」として、次のように述べた。

 「トップが『白だ、黒だ』と言ったからといって、行政の仕組みというのは、一気には変わらない。

 これまでだったら、民主党政権の間、共和党のシンクタンクなどに行っていた上級官僚が、共和党の大統領になれば、政府の上級ポジションに着く、ということを繰り返してきた。そうすると、官僚機構の使い方がわかっているような人たちが、行政のトップに着く。

 だけど、トランプの1期目の時は、共和党のシンクタンクの人たちが、選挙戦の結果が出る前に『今までの米国の外交政策をぶっ潰すような、とんでもない候補だから、支持しない』と表明しちゃったんです。

 ヒラリー・クリントンが勝つと思っていたんでしょうけど、実際にはトランプが勝っちゃった。

 その点、トランプは根に持つというか、はっきりしているので、そういう(不支持を表明した)やつらは(共和党系のシンクタンクの人間であっても)政権に入れないと。

 そうすると、ポストがガラ空きになったんです。そこに、あまり経験のない、素人みたいな人たちが、どんどん登用されたんですね。

 マティス国防長官や、ティラーソン国務長官などは、伝統的な共和党の穏健派・良識派とも関係が深かったし、行政機構の上の方の人たちも、トランプが『ここを、こうするぞ!』と独断的なことを言っても、どこをどうすれば行政の組織がその通りに動くかわからなかった。

 結局トランプも、不動産王としては、やりたいようにやってきていたけど、合衆国政府になると、思い通りには動かなかった。議会との関係も、もちろんありましたから。

 そういった意味では、はちゃめちゃになったようでいて、本当のトランプのはちゃめちゃさというのは、1期目はあれでもまだ、本領発揮されていなかったんですね。

 ですが、今度は、1期目でやった人たちがまた帰ってくる。さらに、本当にトランプに対して忠誠心のある人を条件にして閣僚を選ぶと、トランプ本人は言っているみたいです。

 1期目は、不動産王がいきなり大統領になったわけですから、わからなかったので、マティスやティラーソンといった人たちを選んでいたんですが、今回は『俺はもう4年間やったから、だいたいわかってる』と。『とにかく俺に対して忠誠心が高いかどうかを基準にする』と」。

 さらに須川氏は、「トランプ外交の4つの癖」として、「(1)取引(ディール)を重視する」「(2)物事の良し悪しを金に換算して判断する傾向が強い」「(3)価値観にまったくこだわらない」「(4)マルチ(多国間)を嫌い、バイ(二国間)を好む」と列挙し、次のように述べた。

 「上川(陽子外務大臣)さんが、『力による現状変更は許さない』とか、岸田(文雄総理)さんが『法の支配が』どうのこうのとか、ひたすら力んできたけれども、(西側の対露制裁同盟が、『自由と民主主義』を奉ずるイデオロギー同盟であるかのようなことを、実利を重視する)トランプに会って言っても、『カエルのツラにしょんべん』みたいなもので、『俺とどんなディールをする気があるんだ?』『俺に何をくれるんだ?』という話なので、たぶん相手にされないと思う」。

 須川氏は、「一般的な予想だと、日本経済は2030年代に0からマイナス成長になるんじゃないかとの見方があるんですが、トランプが大統領になると、それが2020年代後半にまで早まるんじゃないか」と述べ、次のように語った。

 「日本の人口動態は、労働人口が減っていき、生産性も低い。イノベーションが起きていないですよね。一部いい会社は、業績がいいけど、それ以外の大半の会社は、(低金利だから何とかもっている)ゾンビ化しているところも含めて、厳しい。

 低生産性と人口減といった状況の中で、『トランプ2.0』となったら、トランプというのは自分のことを『タリフマン、関税男』と言っていまして、1月の末に発表した経済政策では、全輸入品に関税を一律10%かけると。

 たぶん、日本の外務省や経産省は、トランプが1期目で鉄鋼・アルミに関税をかけた時に、日本はなんだかんだ言って、除外措置のようなことを交渉して入れてもらったりした。一律10%にはしないようにできるだろうと、タカをくくっているところがあると思うんです。

 僕ら日本人は、まだ『自由貿易教』に腰まで浸かっているんですけど、トランプは完全に風呂から出てるんですよ。

 中国に対しては60%とか、メキシコで作った中国の車には100%とか、めちゃくちゃ言っているわけです。

 もちろん彼はトランズアクショナリスト(取引・ディールを重視する)ですから、吹っかけておいて、実際はなんぼ、みたいに引っかき回してくると思うんですけど、いずれにしても、何らかのことはやります。

 そうすると、日本の対米輸出が減るのも問題なんですけど、中国とか世界全体の経済も悪影響を受けちゃいます。そうすると、中国市場が冷え込むのが、対米輸出が減るよりも、もっと効くでしょうね、日本経済にとっては」。

 インタビューの終盤では、台湾有事をめぐり、「原発を攻撃され、海上封鎖でエネルギー輸入を止められれば、日本はひとたまりもない。ウクライナのように米国の『代理戦争』の駒にされるのは避けるべき」との懸念を示す岩上安身に対し、須川氏は「米国が戦わないのに日本だけが中国と戦うほど、日本の外務省も防衛省も意気地はない」「米国が参戦するのであれば、中国の軍事力を過大評価しすぎ」と意見の相違を示し、お互いの見解の違いを披露した。

■ハイライト

  • 日時 2024年3月21日(木)16:30~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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