2023年8月29日、午前10時50分より、東京・経済産業省にて、西村康稔 経済産業大臣の定例会見が開催された。
会見冒頭、西村大臣より、日本経済の今後の成長を左右する重要技術としての「生成AI」、「価格転嫁(原材料や燃料費などの価格上昇により失う利益を、売値を値上げすることによって得意先や消費者に負担[転嫁]させること)」、「核燃料サイクル」、「北海道・大阪・京都への出張」についての報告があった。
質疑応答では、他社の記者から、8月24日に開始された福島第一原発のALPS処理水排出に反発する中国の動向、そして、今後の経産省の対応方針についての質問があった。
この質問に重ねるかたちで、IWJ記者は、以下のとおり質問をした。
IWJ記者「先ほども質問があったんですけれども、重ねてALPS処理水海洋放出について。
中国の日本産水産品の全面禁輸を受けて、同じくBRICSメンバーのロシアが中国向け輸出を拡大する旨を明らかにしています。また、太平洋島嶼部の国々も懸念を表明するなど、中国の反海洋放出表明の影響が広がっています。
今後、中東の産油国を中心に新規6か国を加えたBRICSが、中国の動きに連動して、日本へのエネルギー資源の輸出を減らす、または、止めるということがあり得ないと断言できるでしょうか。
日本の海洋放出政策への反発がこれ以上広がる前に、海洋放出を少なくとも一旦は止めることが国益にかなうとは考えられないでしょうか。よろしくお願いします」。
西村大臣は、以下のとおり、答弁をした。
西村大臣「まず、2点申し上げたいと思います。
一つは、水産関連の方への支援ですね。私どもの300億、500億の計800億の基金を使った支援がありますけれども、農水省におきまして。さらに加工業界を含めて、様々な支援策(があります)。
経済構造でいいますと、中国に輸出をしてそこで加工されて、ヨーロッパやアメリカに輸出をされる、そうした金額もかなりありますので、その加工を国内でやれないかとか、様々な検討が今なされております。
そして、その仕向地も、それ以外のところへの輸出も含めて、農水省と経産省が連携してそうした対応、そして、もちろん国内消費をしっかり喚起をしていく、拡大に向けた取組。これは引き続き、これは全省庁を挙げて取組を進めていきたいと思っております。
そして、中東の国々とは、私も年末年始訪問いたしましたし、エネルギー大臣会合で、その都度、サウジ、UAEはじめ、関係大臣と連携を確認してきております。中東と日本との結びつきは非常に深いものがあります。
歴史的にも、そして現在も、特に脱炭素が長い目で見て進んでいく中で日本の技術、人材、投資に対する期待も非常に大きいものがありますので、こうした国際的な動きが私どもとして広がらないように、引き続き国際社会、G7、そして同志国、有志国と連携をしながら進めていきたいと考えております。
NPT(核兵器不拡散条約:Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons)の会合、あるいはG20のエネルギー大臣会合でも、日本の取組をしっかり説明をし(ていきます)。
先ほど申し上げたように、NPTの会議では、多くの国々から日本の取組、IAEAの取組に対して支持が得られているところでありますので、引き続き国際社会に対して透明性高く、科学的根拠をしっかりと示しながら説明をしていきたいと考えております」。
西村大臣は、「G7、そして同志国、有志国」との連携を強調したが、問題は台頭するBRICS諸国との関係である。
日本が米国とIAEAの「お墨付き」だけでよしとして、中国の抗議を軽んじたと受け取られては、BRICS諸国の理解を得ることは難しいのではないか。
定例会見の詳細については全編動画をご確認ください。