2021年8月27日(金)10時半より東京・霞が関の文部科学省にて、萩生田光一文部科学大臣による定例記者会見が行われた。冒頭萩生田大臣より4件の報告があった。
まず、この日8月27日に、学校で児童生徒と教職員に新型コロナウイルスの感染者が確認された場合の対応ガイドラインを作成し、発出する旨の報告がなされた。
具体的な内容としては、まず学校で感染者が発生した場合に、保健所が行う濃厚接触者や検査対象者の特定のため、濃厚接触者等の候補のリストの作成に、接触者や学校が協力することが必要な場合があり、その際の考え方を具体的に示すものだとのこと。
萩生田大臣は、「把握された全体像の状況から、感染が拡大している可能性が高いと判断される場合の、学校の臨時休業の考え方も具体的に示す。また、やむを得ず学校に登校できない児童生徒への、ICT(Information and Communication Technology 情報通信技術)を活用した学習指導についても準備しており、非常時にあっても児童生徒の学びを止めないという観点からの取り組みを願う」と述べた。
- やむを得ず学校に登校できない児童生徒等へのICTを活用した学習指導等について(やむを得ず学校に登校できない児童生徒等へのICTを活用した学習指導等に関してチェックリストや実践事例等をお知らせします) (文部科学省)
次いで、新型コロナ感染拡大により、文化芸術活動の自粛を余儀なくされた文化芸術関係団体を支援する、「ARTS for the future!(コロナ禍を乗り越えるための文化芸術活動の充実支援事業)」の予備費措置を決定したことが報告された。
この「ARTS for the future!」は、一次募集において予想をはるかに上回る約5300件の申請があり、8月上旬までに約2700件を採択、約180億円を交付するという決定をし、9月6日より二次募集を実施する旨、周知しているが、二次募集分として総額230億円の措置が可能とのこと。
萩生田大臣は、「国難とも呼ぶべき現状において、人々の心を癒し、勇気づける文化芸術の力は極めて重要です。文化芸術関係者の皆様方に『ARTS for the future!』の積極的な活用をしていただきたい」とコメントした。
三件目の報告は、今年3月北海道旭川市において、いじめにより中学2年の女子生徒が亡くなられた事案についてであった。
大臣は、「旭川市に設置された第三者委員会において調査が進められている。これまで何度か報道でも取り上げられていたが、8月18日に当該生徒の保護者の代理人弁護団が会見を行って、当該生徒の実名や写真、ご遺族の手記を公開され、手記においては事実関係の究明、公平、中立な調査の実施の依頼等について記載されていた。
- 《旭川14歳少女イジメ凍死》“遺族の手記”全文公開「お母さん、死にたい」爽彩さんは2度母親に訴えた(文春オンライン 8月18日)
これまで文科省としても、旭川市及び北海道教育委員会へ事実確認などを行うとともに継続的に指導助言を行ってきたところであり、また先日(8月20日)の定例会見でも本件についての所見を聞かれ、私としては第三者機関が調査をしている最中なので、行政当局とのやり取りは引き続き行うが、加害者の児童等の存在もあるので、丁寧な対応でその行方を見守りたいとお答えしたが、その後市長が任期途中で退任するという報道を受け、このような深刻な事態の中で、まだ中間報告もなされていない中で、首長が退職をするということに対して、私は極めて危機感を覚え、昨日8月26日に文科省の担当課長を旭川市に派遣した。
- 旭川市長が辞職届を提出 立民から次期衆院選出馬へ(産経新聞THE SANKEI NEWS 8月10日)
現地では旭川市の教育長及び北海道の担当局長、第三者委員会の委員長から、現状等をおうかがいするとともに、ご遺族の意向をうかがいながら、調査を迅速かつ適切に進めること、第三者委員会の中立性を担保しつつ、ご遺族の不安感不信感を軽減させるため、ご遺族に対ししっかりと報告を行うとお伝えした」と語った。
その結果、近日中に旭川市で第三者委員会から報告の会見を行うこととなった。文科省は第三者委員会、教育委員会から調査結果と報告を受け、適切な助言を行ってゆくということである。
最後に、この日の閣議で承認を得た、9月1日付の人事について報告があった。
続いて、参加メディア記者との質疑応答が行われた。まず、北海道新聞記者より、「全国で配布される抗原検査キットの運用の具体的なイメージはどのようなものか」という質問があった。
萩生田大臣は、「学校内で感染者が発生した場合に、早期に発見対応する観点から、文科省で教職員や速やかな帰宅が困難であるとの事情がある小学校4年生以上の児童生徒を対象に、抗原検査を簡便に実施できるように、幼稚園、小学校、中学校等に最大約80万回分の抗原検査簡易キットの配布を行うこととしております。
児童生徒については、原則体調不良の場合は速やかに帰宅をうながすことになっております。直ちに機関への受診を指導することを徹底することになっておりますが、例えば保護者の方のお勤めですね、直ちに学校に迎えに来れないか、来れたとしても診療所などの空いてる時間に、その日のうちに病院に行けない、そういう可能性があった場合に、補完的に使用することを前提としている。
検査にあたっては、本人が自ら検体を採取し、例えば検査の結果が陽性になった場合は、速やかに帰宅し、確定診断を行うために医療機関を受診するなど、必要な対応をとっていただく」と回答した。
続けて、北海道新聞記者は、冒頭発言にあった旭川の女子中学生死亡事件に関し、「近日中に行われる予定の会見は、進捗状況の報告であり、結論ではないものなのか」と質問した。
萩生田大臣は、「どういう中身のものかはわからない。これは多くの国民が心を痛めている案件であり、未成年が多く関わっているため、配慮に配慮を重ねるべき。時間がかかるのは当然であるので、単に催促するようなことはしない。しかし、これだけの重大案件の中で、市政のトップが任期満了でもないのに変わるというのだから、旭川市が一度、ここできちんと報告してくれなければいけない」と述べた。
次に教育新聞記者が、学校における抗原検査に関連して、「医療行為にあたらないか、例えば鼻粘膜から検体を取る際にケガをさせてしまうようなことはないか、陽性結果が出た場合に、学校内で隔離するのはどうするのかなど、様々な疑問があるが、それらに対するガイドラインはないのか」と質問した。
萩生田大臣は、「それらは高校生などではなく、小学校低学年くらいの生徒をイメージしている。具合が悪ければ帰宅をうながす、病院に行ってもらうのが原則でありながら、それが遅れる場合に活用してほしい。
検査キット80万回分と言っても、全国に配れば各学校に行くのは限られた数だ。運用方法についてはマストではなく、柔軟な使い方をしてほしい。ひとつの安心を確保するツールとしてお配りさせていただく」と答えた。
毎日新聞記者は、「コロナ対策専門家分科会尾身会長は、部活動の禁止が望ましいと発言している。各地でそれに沿うような活動中止が見られる。また、修学旅行、体育祭、文化祭などについても、感染研が慎重な対応を求めている。萩生田大臣は、これをどう考えるか」と質問した。
萩生田大臣は、「部活動は子どもにとって大切な学びの機会であり、また教育的意義を有するため、私としては、一律に中止するのではなくて、地域の感染状況を踏まえて感染症対策と部活の両立を図って、可能な限り活動できる機会は確保していただきたい。
今現在、これまでに経験したことがない感染拡大の局面にあることから、感染状況に応じて、一口に部活動と言っても、人との接触があるものないもの、様々であるから、活動の中身をしっかり見て、また、活動に付随する場面での対策、狭い更衣室での着替え、おしゃべり、あるいは合宿で集団活動してる場合など、こういったリスクの高い場面について、しっかり学校の管理者、責任者が、感染症対策に取り組んでいただきたい。
スポーツの大会や体育祭の中止はやむをえない状況だが、あらかじめ中止を考えるのではなく、なんとか開催する可能性は引き続き皆さんに模索してほしい。
修学旅行などを延期、中止という動きも同様に出てくる。これは今の感染状況を考えたらやむを得ないが、いつも申し上げているように3月31日までがそれぞれ皆さんの学年であるから、中止という選択ではない考えで、可能性を模索してもらいたい。
例えば修学旅行でしたら、感染が広がっていない、例年行っている行先ではない所を選ぶ、また出発の時期を見直すなどして、出来る限り子供達にとって思い出に残る学習機会だから、何とかしてほしいという気持ちだ。キャンセル料や、交通手段を変更した場合の補填など、文科省としては応援していきたい」と回答した。
また、NHK記者は、「休校や学級閉鎖に関して、陽性者が何人出た場合、というような数字を明示するのか」と問い、萩生田大臣は、「そのようにシンプルな方がいいという思いがあったが、やはりその感染状況が自治体地域によって異なるので、あらかじめその人数で学級閉鎖、学年閉鎖、とはせず、今の段階では状況に応じて判断を柔軟にしてもらうということにしている」と答えた。
IWJ記者は「パラリンピックを児童や生徒が観戦する『学校連携観戦プログラム』について、児童の父兄から感染への懸念による反対の声があがり、実際多くの自治体が観戦を取りやめている。
リスクはなるべく減らすべきであり、そもそも学童のパラリンピック観戦は実施すべきではないのでは。なぜテレビでの観戦ではだめなのか。マラソンや自転車など路上で実施する競技の沿道での観戦自粛を呼びかけ、道路、競技場、選手村周辺の交通規制を行い、無観客にしているのに、会場に学童を集めることは矛盾ではないか。文科省は教育委員会、地方自治体に意見しないのか。
また、東京都教育委員会で委員5人のうち4人が『学校連携観戦』に反対したのに、これが実施されるのはどういう理由か。手続きとして杜撰ではないか?
子どもが感染し、重症化する、後遺症が残る、最悪死亡となったとして、教育行政のトップとして、責任を取る覚悟はあるのか?」との質問を携えて臨み、質問希望の挙手を続けたが、指名されることはなかった。
会見の詳細は、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。