2021年8月20日(金)、午前10時50分頃より、東京・厚生労働省庁舎にて、田村憲久厚生労働大臣の定例会見が開催された。
冒頭、田村大臣より、新型コロナウイルスワクチンについて、2022年初めから、米ファイザーと1億2千万回分の追加供給を受ける前提で協議していること、また、22年初めにも米モデルナ社から5千万回分の追加供給を受ける契約を結んだこと、そして、米バイオ製薬ノババックスのワクチンについても交渉を進めていることの報告があった。
大臣からの報告に続いて、各社記者と大臣の質疑応答が行われた。IWJ記者は、新型コロナ感染拡大防止のためのとりくみ、および、デルタ株について、以下のとおり質問した。
IWJ記者「中国は、ファクターXを突破したデルタ株による感染拡大を『検査の拡充』と『隔離の徹底』により収束に導きました。中国の人口は約14億人ですが、8月18日の新規感染者数は全土で28人で、100万人あたりに換算にすると、0.02人です。
同じく8月18日の日本の新規感染者数は2万3917人と過去最多で、世界ワースト8位となっています。100万人あたりに換算すると190人となり、中国との差は歴然です。
中国が採った手法は何も特別なものではありません。たとえどんな変異株が発生したとしても対応可能な普遍的なものです。これが『正解』なのだと、もう答えが出ているのではないでしょうか。つまり、『検査の拡充』と『隔離の徹底』です。
政府が現行の方針を変更しないのであれば、それは、大げさな話ではなく、我々国民が政府に殺される可能性があることを意味します。我々国民の命がかかっています。秋の総選挙で、国民は自分たちの命を守ってくれる政党に票を投じるでしょう。方針を再転換するのか? 『しない』なら『しない』と明確なお答えをお願いします」
この質問に対し、田村大臣は、以下のとおり回答した。
「検査の拡充」という言葉しか使っていないIWJ記者の質問を「強制的に全国民に検査をさせるという意味か?」と歪めたうえで「日本では、憲法上できないなど」と詭弁を弄した。
田村大臣「それは、強制的に全国民に対して、検査をさせろということですか? そういうことは、日本では法律上、憲法上、できないという形になっていると思います。
中国は、体制が違っておりますので、欧米を見ても、強制的に検査をやっている国は少ないと私は思っておりますが。
もちろん、一部、オーストラリアとニュージーランドはやってるのかな? 今ちょっとわかりませんが、とにかく、全国民を、罰則を含めてかどうか、ちょっとよくわかりませんが、強制的に検査させるというようなことは、ちょっと、やはり、自由主義体制では、なかなか難しいというふうに思います。ちょっと体制が違う国なので、私からはコメントのしようがないわけであります。
なおですね、いずれにしましても、この『デルタ株』というのは、何度も申し上げておりますが、これまでとは状況が変わってきているというのは、皆さんもご理解されていると思います。
基本再生産数が8とか9。と言いますか、本当だとすれば、インフルエンザよりも感染力が強い。そういうような、ウイルスであります
ということは、活動をある程度、広く動き出せば、感染は当然広がり、そういうウイルスでありますので、我々、実は、これ、一昨日のアドバイザリーボードでも、一定程度行動を制約しても、ウイルスが急激に減ることはない、というようなデータも見せて頂きました。
ということは、今の感染者がですね、急激に減るということはなかなか難しいのだというふうに思います。
そう考えたときに、やはり、病床をどう確保するかという時にですね、臨時の医療施設、これを全国的にですね、必要な自治体では確保いただくということも、検討いただかなければならない。
つまり、呼吸科の重症者の方は難しいのですが、中等症の2の方ですかね。酸素吸入が必要な方々をですね、しっかりと対応できるような、そのような、臨時の医療施設というものを確保していくことが非常に重要だと思っております。
各自治体、都道府県にですね、国のほうからも、そういう旨のですね、通知等をさせていただく中において、しっかり、感染者が、また季節性の部分もありますから、仮に、今回のが運良く、これから収まっていったとしても、冬場になると、どうしても、換気が滞ってまいりますから、感染する可能性もあるわけで、そういう意味からすると、またウイルスの変異の可能性もります。
そのような場合も踏まえた上で、しっかりとですね、中等症、呼吸が非常に苦しくなられた患者の方々に対応できるような体制というものをですね、やはり早急に、整えていただくということが重要だというふうに思いますので、そういうことも国のほうから、各都道府県に、まあ、国も協力させてもらいながら、体制整備に向かって協力いただいて参りたいというふうに思っております」
IWJ記者が質問で口にしたのは「検査拡充」という言葉である。検査を拡充し、多くの国民に検査の機会を与えて無症状感染者を割り出すことと、「強制的に全国民に検査を受けさせる」ことはまったく異なる。田村大臣の答えは、問題のすり替えに過ぎない。
また、日本と中国とでは、社会体制が違うから、比較できないかのように田村大臣は言いうが、日本の検査回数は、2040万6145回で、人口100万人あたり16万2902回で世界で143位という低さである。資本主義と共産主義の違いなのではなく、日本がただただ、ダントツで検査をしていない。