ウクライナ危機の裏で着々進む憲法改正準備! 衆院憲法審はCM規制等置き去りに、国民投票法改正案審議!! 立憲民主の「改憲のアリバイ作り」批判に、自民、維新はCM規制不要と主張! 戦時体制構築へ一直線!? 2022.7.12

記事公開日:2022.7.12 テキスト
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(文・IWJ編集部 文責・岩上安身 2022年7月5日加筆・アップ)

 2022年参議院選は「物価対策」が争点とされるが、改憲による緊急事態条項導入が懸念される「憲法」問題は、それにもまして重要なもう一つのテーマだ。

 自民党の茂木敏充幹事長は、参院選後、早急に憲法改正原案を提出して、改憲の発議を目指す考えを表明した。

 憲法記念日前日に、共同通信が報じた世論調査では、「改憲機運は高まっていない」が70%なのに、「緊急事態条項に賛成」が76%と矛盾する結果だった。

 これは、コロナ禍やウクライナ危機に便乗して、緊急事態条項の必要性を主張するプロパガンダの繰り返しを、国民が鵜呑みにしてしまった現状を表す。

 衆議院憲法審査会では、改憲手続きを定める国民投票法の改正案が審議された。

 前年の法案成立の際は、立憲民主党がCM規制や運動資金規正等の措置を条件とする附則を付けた。

 2022年の憲法審でも、自民党や日本維新の会が「CM規制は民放連が自主規制している」などとして法案推進を主張するのに対し、立憲民主党が「CM規制が含まれないので憲法改正は発議できない」「改憲のためのアリバイ作り」と批判するなど、対立が続いた。

 一方、NHK『憲法記念日特集』での与野党党首の主張では、各党首の考えがより直接的に表明された。

 例えば、れいわ新選組の山本太郎代表が「憲法議論の前提である現行憲法が守られてない」、日本共産党の志位和夫委員長が「9条生かした平和外交を」と主張した。

 しかし彼らはそこで、なぜあと一歩踏み込んで、緊急事態条項の危険性をアピールしないのか? 9条を含め、現行憲法を丸ごと無化して、内閣独裁を実現する緊急事態条項を阻止しなければ、意味がないはずだ。

 そうした中、ロシアへの経済制裁に関しては、れいわの山本代表のみ「10年間ウクライナを危険にさらすのか?」「日本自身が停戦のカードになるべき」として、「慎重な立場」を表明したことは特筆に値する。

 同じく山本代表の「日本が核配備し敵基地攻撃能力を持つことは、国連憲章の旧敵国条項に反する妄言」「ロシアは旧敵国条項で日本を牽制」との主張は、戦争のリアリズムを踏まえたものである。日本の核武装や中距離ミサイル配備は、実現する前段階の、準備レベルの段階で、日本の隣国であり、核を保有したミサイル大国である「中露」と戦うサインであると受け取られかねない。

 そして緊急事態条項は、米国の傀儡の軍事独裁政権を可能にして、上記のような軍拡を推し進め、日本列島を「極東のウクライナ」へと導くものである。

 詳しくは、記事本文を御覧いただきたい!

記事目次

「改憲機運は高まっていない」が70%なのに、「緊急事態条項に賛成」が76%とは?

 憲法記念日前日の2022年5月2日、共同通信が報じた世論調査によると「岸田文雄首相が自民党総裁任期中に目指す改憲の機運は、国民の間で『高まっていない』が、『どちらかといえば』を含め計70%に上った」。

 しかし一方で、記事は「大規模災害や感染症の爆発的まん延時の緊急事態条項として国会議員任期を延長できるようにする改憲は賛成76%、反対23%だった」と報じた。

 「改憲機運は高まっていない」といいながら、「緊急事態条項に賛成」が76%もいるというのはどういうことか?

 コロナ禍やウクライナ危機に便乗しながら、緊急事態に対応するためには、憲法に緊急事態条項を書き込む必要がある、という虚偽のプロパガンダが繰り返され、国民の多くが鵜呑みにしてしまっているという現状を表すものだろう。

 緊急事態条項は、国権の最高機関である国会から、立法府としての権限を奪い、内閣の独裁を許すものである。戦時の国家総動員体制を一挙に作り出すことを目的としており、災害やコロナに緊急対応できるわけでも、そうした災害や感染症の対策に役立つわけでもない。

 自民、維新、公明、国民民主などの、国民を騙すような言い分に対し、マスメディアが冷静で論理的な分析・反論や批判を展開することが、あまりにも少ないと痛感させられる。

立憲民主党は、国民投票法に施行後3年でのCM規制等追加を条件とした!

 2022年の第208回通常国会(会期1月17日~6月15日)で、衆議院では毎週木曜日に憲法審査会が開催された。4月28日に開かれた憲法審では、憲法改正の手続きを定める国民投票法改正案が審議入りした。

 国民投票法は前年の2021年6月、一般の選挙の手続きにあわせて、投票所の設置場所や、投票所に入場できる子どもの年齢制限など、7項目についての改正案が可決・成立した。

 その際、CM規制に関する規定がないまま、改正国民投票法が成立することに、立憲民主党は強く反対していたが、最終的にテレビCMやインターネット広告、運動資金の規制について、「検討を加え、施行後3年をめどに法制上の措置、その他の措置を講じる」という附則を加えることで採決に合意した。

 以下、その時の状況について、小西洋之参議院議員にインタビューを重ねている。公益性に鑑みて、フルオープンにするので、特報とあわせ、御覧いただきたい。

自民は「CM規制は民放連が自主規制、法案を速やかに進めるべき」と主張、立憲民主は「CM規制が含まれないので憲法改正発議できない」と批判!

 2022年4月28日に衆院憲法審で審議入りした改正案は、自民党や公明党、日本維新の会らによって衆議院に提出されたもので、投票立会人の選任要件緩和、開票立会人の選任要件緩和、FM放送で憲法改正案が広報できることの3点が盛り込まれている。

 4月28日の憲法審で、議案提出者の自民党・新藤義孝議員は、「国民投票法において整備すべきとされているのは、一つはCM規制などの投票の質に関する事項、もう一つは投票の環境整備に関する事項だ」と述べた上で、「CM規制については民放連が自主規制をすでに準備しており、今後議論すべきは広告の出し手である各政党の取り組み方だ」と主張した。

▲自民党・新藤義孝議員(2022年4月28日、衆議院インターネット審議中継より)

 その上で新藤議員は、提出した法案について、「成立した公選法改正と同内容のもの」だとして、「速やかに手続きを進めるべき」だと訴えた。

 これに対して立憲民主党の奥野総一郎議員は、この法案が憲法審の前に開かれた議院運営委員会で、「我が党の反対を押し切って可決され、憲法審に付託された」と抗議した上で、昨年成立した改正国民投票法の附則4条のCM規制についての措置が、改正案に含まれていないことを指摘した。

▲立憲民主党・奥野総一郎議員(2022年4月28日、衆議院インターネット審議中継より)

 奥野議員は、「今回の投票環境向上のための措置は、公職選挙法に平仄を合わせるだけに過ぎず、この3項目の改正は、次(憲法改正発議)の準備ができたというアリバイ作り、パフォーマンスではないのか」と批判した。

 奥野議員は、「(昨年の改正法で)附則が設けられた趣旨から、CM規制の何らかの措置が講じられるまでは憲法改正発議は当然できません」と訴え、この日審議入りした改正案について、投票環境向上のための一部の措置だけを講じても発議できないことを念頭に「なぜ今日このタイミングであるのかということは、まったく意味がない」と批判した。

 奥野議員は、インターネット広告を含むCM規制と運動資金規制の必要性を訴え、「投票環境の向上だけに絞った法改正をするというのは、拙速だ。全体としてパッケージできちんと議論をして、良いものを作っていくべきだ。パフォーマンスで進めていくべきではない」と、強く抗議した。

維新は「民放連の自主的取り組みほかで十分、ネット広告は規制困難だから逆に不公平に」と主張、国民民主はネット広告や外国人寄付の規制を訴え! 共産は国民投票法の審議自体否定!

 一方、日本維新の会の三木圭恵議員は、「民放連は冷静な判断を行うための環境整備を確保するため、賛否の意見表明のための広告放送についても投票14日前から取り扱わないとの基本姿勢を示している」と指摘し、「国民投票運動のための広告放送は、民放連の自主的取り組みに加え、政党の紳士協定、国民投票広報協議会による公営放送の充実や指針の策定などで対応は十分だ」と主張した。

▲日本維新の会・三木圭恵議員(2022年4月28日、衆議院インターネット審議中継より)

 さらに三木議員は「ネット広告について規制をかけることは非常に難しい」と述べ、「テレビ・ラジオに規制をしているのに、ネットは規制ができないということは、公平性の観点から非常に問題だ。よって、テレビ・ラジオに、民放連が示している今のガイドライン以上の規制を行う必要はない」との考えを示した。

 三木議員は「CM規制の件で国民投票法案が膠着状態のままなのは問題です。この事を理由に(憲法の)本体議論ができないということは本末転倒です」と述べ、早急に結論を出すよう求めた。

 このほか、国民民主党の玉木雄一郎議員は、ネット広告や外国人からの寄付に関する規制の必要性を訴えた。

▲国民民主党・玉木雄一郎議員(2022年4月28日、衆議院インターネット審議中継より)

 外資による改憲CMの規制などは、本来ならば規制すべきである。日本の憲法は、主権者である日本国民によって練り上げられ、選択されるべきものだ。そこに外国政府や外資の思惑が入っていいはずがない。

 例えば中国やロシアや北朝鮮、あるいは米国や欧米の要求などによって、改憲による緊急事態条項の導入を認めるのかどうかの、大事な国民政策の行方を左右されてはならない。しかし、現在の国民投票法案には、外資規制すらないのだ。

 また、日本共産党の赤嶺政賢議員は、「国民が改憲を望んでいないもとで、改憲のための手続きを作る必要はない」と批判し、憲法審での国民投票法の審議自体を否定した。

  • 憲法審査会(衆議院インターネット審議中継、2022年4月28日)

与野党党首が主張! れいわ・山本代表「憲法議論の前提である現行憲法が守られてない」! 共産・志位委員長「9条生かした平和外交を」! なぜ緊急事態条項の危険性をアピールしないのか!?

 他方、5月1日には、NHKが『憲法記念日特集』で、与野党の党首による「議論」を録画放送した。「議論」とは言いながら、その実は司会者との一問一答である。

 収録されたのは4月27日で、出演者は、自民党総裁の岸田文雄総理、公明党の山口那津男代表、立憲民主党の泉健太代表、日本維新の会の馬場伸幸共同代表、国民民主党の玉木雄一郎代表、日本共産党の志位和夫委員長、れいわ新選組の山本太郎代表の7人である。

 番組最後の、「国会では、衆議院、参議院の憲法審査会で議論も進んでいます。今後、憲法をめぐる議論にどうのぞんでいきますか」という質問に対し、各党代表の答えは、要約すると、以下のようなものだった(発言順)。

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