11月8日夜8時からIWJ事務所で行われた、岩上安身による立憲民主党・小西洋之参議院議員インタビューを生中継、公共性に鑑みてフルオープンで配信した。小西議員は、新たに憲法審査会の野党側の筆頭幹事に就任、引き続き外交防衛委員会の筆頭理事も継続している。
冒頭、岩上が「今後、憲法改正の議論を行う憲法審査会で筆頭幹事、外交防衛員会でも筆頭理事ということで、今後小西さんはキーパーソンになってくるわけですね」と小西議員を紹介した。
まずは、保守系ツイッターアカウント「Dappi」問題である。小西議員は10月6日に、同じ立憲民主党の杉尾秀哉議員とともに、「Dappi」を運用していたウェブ関連会社を相手取り、名誉毀損として、880万円の損害賠償などを求める訴訟を東京地裁に起こした。
小西議員「『Dappi』というアカウントが行っていたツイートはどのような問題を持っていたのか。普通の一般の方が行えるようなものではなく、組織的なものなので。
野党議員の国会での発言を改変してツイートするという、民主主義を破壊する行為ですね。特に私が安倍総理に質問するために、発言内容を改変して、私の人格を攻撃するということを繰り返しやっていました」
岩上「しかもそれが法人によるものなんですよね。それによって利益を得ていた。とんでもないことです」
「Dappi」は、国会中継動画を編集して野党を貶めるフェイクニュースを発信していた。その内容は、野党批判、マスコミ批判、自民・維新を擁護するツイートが多いものであった。
例えば、台風などの災害対策として、家屋にブルーシートを張ることが家屋を守る要諦になる。そうしなければ、木造の家屋は屋根の破損部などからさらに次の雨などが入って傷んで腐朽し、莫大な損害につながってしまう。
2年前千葉県を大台風が襲った時のこと。小西議員は、2000人の自衛隊派遣を要請、自衛隊にブルーシートを屋根にかける作業をしてもらうように動いたが、森田健作知事(当時)の下、千葉県はなかなか動かなかった。
小西議員「災害時の国会議員の役割について、あまり知られていません。
当時は森田県政で、抵抗する人が多かった。東日本大震災の時は良かったんですが、森田県政の間に行政もすっかり変わってしまったんですね」
小西議員は町と一緒に増派要請を成功させたが、県は災害弱者を優先すると屁理屈を捏ね、自衛隊に一般家屋にシートをかけさせなかったと指摘した。
小西議員「(Dappiがツイートした)『自衛隊の災害派遣の仕組みが理解できずに批判を繰り返す小西』などというのはまったく事実無根です。むしろ、私は普通の議員よりもよく理解しています。千葉県と内閣府の官僚が動かなかったんですよ。
(ブルーシートを張るように要請する小西議員を揶揄したDappiのツイートは)私にとっての名誉毀損でもありますが、千葉県の人々を切り捨てるようなツイートですよ。絶対許せないこと」
※参議院災害対策特別委員会(第百九十九回国会)会議録第一号(令和元年10月1日、pp.5-7)
- 第199回国会 参議院 災害対策特別委員会 閉会後第1号 令和元年10月1日(国会会議録検索システム)
また別の件で、2020年、賭け麻雀でやめた黒川弘務検事長を懲戒処分にすべきなのに、そうすると任命権者の安倍総理(当時)に責任に及ぶため、安倍内閣は訓告でごまかそうとした。
当時、小西議員が懲戒処分の根拠法(国家公務員法)は何かと質問したら、安倍総理は答えることができずうろたえるばかりであった。安倍総理は根拠法を知らなかったのである。
後から安倍総理は官僚から「カンニングペーパー」を差し入れてもらい、まるで最初から「国家公務員法」だと知っていたかのような答弁をし、小西議員が聞いていなかったのだと開き直った。
「Dappi」は、安倍総理が回答できなかったことを隠し、まるで小西議員が「逆ギレ」したかのようにツイート。これに対し、小西議員は「Dappi氏の指摘は事実に基づかない私への誹謗中傷に当たる」と法的措置を警告した。
※参議院予算委員会(第二百一回国会)会議録第二十一号(令和2年6月11日、pp.17-25)
- 第201回国会 参議院 予算委員会 第21号 令和2年6月11日(国会会議録検索システム)
しかし、「Dappi」はさらにエスカレート。野党合同ヒアリングを「【深夜の質問通告・アポなし訪問・ 大人数で公開リンチの野党ヒアリング・国会で恫喝】」だとツイートした。
「Dappi」は、2020年10月25日に、門田隆将の記事を引用し、「門田隆将『近財職員は杉尾俊哉や小西洋之が1時間吊るしあげた翌日に自殺』」とツイート。小西議員は、赤木さんに会ったこともなく、明らかな事実無根であると反論、ついに訴訟に踏み切った。
岩上「自殺した近財職員って誰が見ても赤木俊夫さんですよね。1時間吊し上げて殺したなどというまったくの虚偽が流布されるとは。メディアもちゃんと取り上げないと」
小西議員「昼間から国会中継を見て、議員の発言を改変していく。これは普通の市民ができる人ではない。相当作り込んでいます。言葉を変えて動画も編集して。国政に関わった人でないとできない。組織でないとできないですよ。
(門田氏はDappiの動画を)『客観映像』というが、改変されたものですよ。良識、良心の届かない人なのかもしれませんが、届いて欲しいですね。Dappiを庇うとは」
小西議員や野党議員を攻撃していたアカウントは「Dappi」だけではない。もうひとつのアカウント「黒瀬深」は、作家の室井佑月氏が名誉毀損で提訴、発信者情報開示を東京地裁に申し立て、開示が認められた。室井氏は、開示された個人に対し550万円の損害賠償を求め、2021年6月に東京地裁に提訴した。「黒瀬深」のアカウントは現在、非公開になっている。
小西議員「Dappiも黒瀬深も、野党議員の国会質疑をまったく別のものに仕立て上げるなどして意図的に貶めています。こうした違法な『ネット工作』と、私たち立憲民主党もやっていますが、法令の範囲内の活動を一緒にするような発言は問題です」
岩上「ところが、さらに驚きの事実が明らかになりました。『Dappi』はなんと法人、民間企業だったんですね。そこが誹謗中傷を行うツイートを行なっていたと。こんな報道が出てきて、どう感じましたか?」
小西議員「Dappiは、ある程度国政に関わっていた人でないとできないツイートをしていました。なんらかの組織的な活動だと感じていました。
誰が何の目的で何の資金で、こうした攻撃や工作をしていたのかということは知らないといけません。それは裁判でやっていくつもりです」
岩上「そして、なんと、この企業が自民党関係者と取引をして利益も得ていた、ということも明らかになってきました」
小西議員「ツイートしているだけでは一円にもならないですよね。2年間にわたってツイートし続けたのはどうやって(どんな資金で)、と」
岩上「さらにワンズクエストは、『元宿さんの親戚』だと赤旗が報じました。
『元宿さん』とは、自民党本部の事務方トップである事務総長の元宿仁(もとじゅく ひとし)氏のことです。自民党の事務局長を務め、その後、新設された事務総長に就任しています」
小西議員「元宿さんってすごい人なんですよ。選挙や政治資金など全部を統括している、ほんとうに自民党の要、裏舞台を仕切っている方です。
議員が不祥事を起こした場合、その政党の方が総務省の政治資金課に相談に来るんですが、自民党の、元宿さんの場合は、総務省の官僚のほうがいくんです。自分たちの不祥事で官僚を呼びつけることができるくらい、力があるんです。
歴代の自民党の幹事長を支えてきた人です。こういうすごい人が事務方にいて、自民党がある。こういう事務方がいない野党は弱いですね。もともとは橋本派の金庫番だった人です」
岩上「さらに、しんぶん赤旗がスクープ、Twitterでもツイートしています。
『#Dappiの投稿に関係する会社の社長と政界とのつながりが新たに判明。この社長が利用していた国会内の銀行口座開設には所属名や顔写真が掲載され個人が特定できる国会通行証の提示が必要。社長が提示したのは国会議員の私設秘書か政党事務員のものだった疑いが=赤旗日曜版11月7日号』。
なんと、このワンズクエストの社長さんが国会内の銀行口座を利用していたと。国会内の銀行口座を利用するには、国会通行証を持っていないといけないんです」
小西議員「国会が発行する通行証を持っている方というのは、本当に特別な方。国会議員は何枚か割り当てがあるんですが、それを本当に必要な方にお渡ししている。そのほかは、記者クラブ、議員秘書、省庁など。ごく一握りの人です」
岩上「これ、大変な話じゃないですか? 何らかの法に抵触しませんか。
さらにもっと驚きの事実が。『デイリー新潮』が、ワンズクエストの主な取引先に『システム収納センター』という会社があったと報じています。『システム収納センター』の歴代役員には、福田康夫元総理や岸田文雄総理、甘利明前幹事長らの名が並んでおり、2017年以降の3年間で総額1億2千万円以上が自民党本部から支払われていると。
ここまで闇が深いとは。国会を招集してやるべきですよね」
小西「自民党はずっと国会を開かないままにして、憲法違反です。自民党はそうやって権力を維持しているんですよね」
岩上「岸田さん、臨時国会で森ゆうこ・立憲民主党副代表のネット工作に関する質問にたいして『公職選挙法などに定めがある、ルールに従って発信をし、選挙運動を行い、政治活動を行うべき』などと述べています」
小西議員「まったく答えていませんね。『Dappi』の問題は私だけではないですから。あれだけの誹謗中傷をやっていて、他の野党議員も被害にあっているので」
岩上「だけれども国会が閉じていて追及できないまま選挙に入ってしまった。情報の開示の上で問題がありますよね。この後絶対に突き上げていただきたい」
「Dappi」問題の後、休憩に入った。休憩に入る前に、岩上安身から聴衆の方々に、ご寄付とカンパのお願いをした。IWJの赤字は四半期ですでに500万円を超えている。
小西議員も、NHKがまともな公共放送としての役割をちゃんと果たしていない今、きちんと真実を報じているIWJのような独立メディアに支援が必要だと応援してくださった。小西議員は「政権を取ったら、NHKの資金を基金として、独立系のメディアにも分配できるようにしたいと考えています」と述べた。
小西議員は、8月のコロナ禍のときもNHKは東京五輪ばかりを報じ、立憲民主党が自宅療養の問題への対処を政府に迫っていたことなど一欠片も報じなかったことや、自民党総裁選や、今回の衆議院選挙の報道を見ても、公共放送として異常であり、仮に訴訟が起こればNHKが負けるのではないかと指摘した。
休憩の後、衆議院選挙に話が及んだ。衆院選に関する報道の異常性、日本維新の会が自民党を上回る改憲派であるといった話題にもなった。小西議員は、維新は自民党と対決するかのような姿勢を見せていても、「モリカケサクラ」や自民党議員の不祥事や不正疑惑などには触れないというのは「卑怯ではないか」と指摘した。
公共性に鑑みて、小西議員のインタビューはフルオープンにしている。生中継を見ることができなかった方もぜひ御覧ください。