原発が標的となったウクライナ戦争3週経過、岩上安身が岸田総理の会見で質問! 岩上安身の「武力攻撃に対する原発の防衛について、新法とか法改正が必要なのではないか」という質問に岸田総理は正面から答えず! 2022.3.16

記事公開日:2022.3.23取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(文・IWJ編集部 文責・岩上安身)

 ロシアがウクライナに侵攻して3週間がたった2022年3月16日、岸田文雄総理大臣が開いた記者会見に岩上安身が参加した。

 ウクライナ戦争で、戦時に原発が標的とされることを、誰もが目の当たりにした。しかし日本の現行法では原発への武力攻撃は想定されず、無防備の状態に置かれているため、岩上安身は「ミサイル等本格的攻撃に対処する法整備が必要ではないか?」と質問した。

 しかし岸田総理は「国内の原子力安全の法律と、安全保障の法律がある」とのみ答えて、法整備が必要か否か明確にしなかった。岩上が「現行法で大丈夫ということか?」と念押ししても、肝心の質問趣旨ははぐらかされて終わった。

 だが、NATOとロシアがぶつかれば日米安保を通じ日本も当事国となる可能性があり、台湾有事、北朝鮮の侵攻も危惧される中で、原発防御の問題は現実として迫っている。

▲2022.3.16 IWJ代表・岩上安身質問部分 岸田内閣総理大臣記者会見(2022年3月16日、総理官邸)

 詳しくは記事本文を御覧いただきたい!

▲福井県の若狭湾は関西電力と日本原子力発電の計4原発のほか高速増殖原型炉もんじゅもあり、「原発銀座」の異名を持つ。いずれも沿岸部で、海からは恰好な目標物。写真は関西電力・美浜発電所(Wikipedia、Alpsdake

岩上安身が「原発への武力攻撃に対処する法整備が必要では?」と岸田総理に質問!

 2022年3月16日水曜日、午後7時頃より、岸田文雄総理大臣は総理官邸で記者会見を開いた。

 岸田総理は会見で、激化するウクライナ情勢を巡り、ロシアへのさらなる経済制裁と、難民の受け入れを含めたウクライナ支援を表明した。また、18都道府県に適応されていた「まん延防止等重点措置」の期限を、3月21日をもって満了とすることも発表した。

 岩上安身は会見に出席し、岸田総理に質問した。岩上安身と岸田総理の質疑応答は次の通りである。 岩上安身「IWJというインターネット報道メディアの代表をしております、岩上安身と申します。(岸田総理は)ロシアに対して、大変厳しい措置をとるということを仰られましたが、ロシアから早速反発がありまして、『非友好国』にすると。

 それからロシア軍が極東近辺で大変ロシア軍の活動を活発化させて、挑発をしているのかと思います。

 心配なのは、(NATO)非加盟国のウクライナとロシアが戦争しているという状態ですが、NATOとロシアがぶつかるようなことがあればNATO全体が動くと、そうなると米国も戦争当事国となり、そうすると、その米国と日米安保で結ばれている日本も集団的自衛権行使ということで、当事国となる可能性があるのではないかということが危惧されます。

 台湾有事の問題もあります。北朝鮮の侵攻の問題もあります。そしてロシアが何かしでかすのではないか、という懸念もあります。

 一番心配されるのは原発の防御です。3月14日参議院の予算委員会で、立憲の福山議員が質問されました。

 その時に総理は、原発はサブマシンガンを持った原発特別機動隊が守っているということを仰られたんですけども、これは、少数の部隊などには対抗できるのかもしれませんが、武力攻撃について、更田委員長は現在の原子力等規制法では、求められていないと、武力攻撃は想定されていない、ということでお話は終わってしまっているんですね。

 ですから、これは、本格的な戦争で原発が標的になるということが、今回目の当たりにしたわけですから、原発に対して、ミサイル、空爆、ドローン、サイバー攻撃等の本格的な攻撃に対する対処、これを法律で決めなければ、立法府で決めなければいけないのではないか。

 その上で、これが自衛隊だったり、警察によって守られて、実行されなければならないのではないか、そうしないといろいろな場面場面で、強くでても、その報復に対して、わが国がどうなるかという時に国民の不安というのが非常に、高まるものと思います。

 とりわけ原発のことですね。原発について、新法とか法改正が必要なのではないか、この点をお聞きしたいと思います」。

日本の原子力発電所の現状(2022年2月28日時点)(経済産業省ホームページより)

岸田総理は「原子力安全の法律と、安全保障の法律がある」と答えるのみ!

▲岩上安身の質問に答える岸田文雄総理大臣(2022年3月16日)(首相官邸ホームページより

岸田総理「まず、基本的にウクライナで起こっているような『力』による現状変更、これは国際社会に対する挑戦であると思います。

 ヨーロッパのみならずアジアを含めて世界の秩序や平和に対する挑戦である。このヨーロッパのみならずアジアにおいて『力による現状変更これは決して許してはならない』、こういった意志はしっかり示さないと、これは国際社会全体における大変大きな混乱になってしまうように思います。

 そして最後の原発について、原子力発電所については、国内法において、航空機等によるテロについても、事業者においてしっかりと対応することが定められています。

 国内法においてこの原子力発電所の安全について様々な規制が行われていますが、ご質問は武力攻撃に対する話です。武力攻撃の場合は、これは我が国として武力攻撃事態に対してしっかりと法にもとづいて対応する、こうした平和安全法制の仕組みがあるわけでありますので、それにもとづいてしっかり対応しています。

 ミサイル攻撃等についてもその法にもとづいてイージス体制あるいは『PAC3』等をミサイル防衛体制の下にしっかり対応していく、こうした法体系があります。そして、安全保障体制が整えられているわけです。ですから国内法と、こうした安全保障に関する法制この2本立てで考えていかなければなりません。それによって安全を確保するという問題だと思います。

 いずれにせよ原子力発電所に対する武力攻撃は、ジュネーブ諸条約第一追加議定書違反であります。国際法違反であると言うことを大前提にしながら、そうした国際法違反にどう対応していくのか、そして国内の原子力安全の法律と、安全保障における法律をしっかり連動させることによって、原発の安全を守っていく、これが基本だと思っています」

岩上安身が「現行法で大丈夫ということか?」と質すと、総理は「何が足りないかこれから考える」!

岩上安身「現行法で大丈夫だということですか?」

岸田総理「この法律のもとに対応していく、そして具体的に何が足りないのか、等も含めて特に安全保障において何が必要なのか、国家安全保障戦略の議論の中でしっかりと日本の防衛力の強化、そして日米同盟の対処力、抑止力、これが十分なのかということを議論すると、申し上げています。

 現状、先ほど言いました体制の中で原発の安全を守っていくわけですが、このミサイル等の技術も、毎日毎日進歩しているわけですから、日本の国民の命や暮らしを守るために十分かどうかは、たえず考えていかなければいけない課題であり、そしてこれからは、国家安全保障戦略をはじめとする3文書の見直しの中で、具体的にそれを考えていく、そうした方針を申し上げております」。

▲ロシア軍は2022年2月24日のウクライナ侵攻直後にチェルノブイリ原子力発電所を占拠。写真は2013年6月の同原発。(Wikipedia、Ingmar Runge

現行法では戦時に原発は無防備! しかし岩上が念押ししても、質問趣旨ははぐらかされた!

 ご覧いただければお分かりの通り、更田委員長が、テロ対策以上の対策を、法律で求められていない、と発言した、ということは、原発が武力攻撃を受ける、ということは現行法では想定されていない、ということである。

 その点に関連して、岩上安身が尋ねたのは、テロを超えた、武力攻撃を想定して、それに対する防御を可能にする法律の整備が必要なのではないか、ということである。それに対して岸田総理は、必要か、必要でないのか、判然としない言い方で、2つの法律が整備されている、とだけ述べるに留まっている。

 では、現行法のもとで、日本の原発は有事の際に守られているのか? といえば、まったくそうではない。戦争に突入したら、想定されるミサイル、空爆、ドローン、サイバー攻撃、どれに対しても何の防御もなく、無防備である。PAC3の存在を岸田総理は口にしたが、PAC3は在日米軍など、もっぱら軍事施設の防御中心で、仮に配備されたとしても3月18日にロシアが実践で初使用した「キンジャール」のような極超音速ミサイルの迎撃は不可能であり、原発防御のために配備されてはいないのが現実である。

 そこで、岩上安身は、現行法で守られているとお考えですか? と念を押したところ、その問いにはストレートに答えずに、岸田総理は、原発への攻撃はジュネーブ条約違反である、とお答えになった。

 つまり、敵国といえど、国際法を守ってくれるので、大丈夫だろう、という期待を岸田総理はお持ちのようである。岸田総理は、性善説のようでもある。

 しかし、そこでまた、攻撃も進化しているし、と、話が逸れてゆき、結局、「あのノーガードの原発じゃ、国民は不安でたまらないから、今すぐ武力攻撃に耐えられるようにガードを固めてもらえませんか」という、岩上の質問の趣旨ははぐらかされて終わりとなった。

 お聞きになった人、この書き起こしのテキストを読んだ人、総理の回答に納得がいっただろうか?

 この先、武力攻撃に対してきちんと原発を守れるような法制度や装備をしっかり用意しそうだな、とお感じになっただろうか?

▲ロシア軍は2022年3月4日、欧州最大級のザポロジエ原子力発電所を占拠。写真は2009年7月の同原発。(Wikipedia、Ralf1969

岩上が指名された瞬間、NHKは放送を切った!

 また、会見終了後、ツイッターで「みなとかおる@『忠厚伝』合情記」さんが、岩上安身にメンションをつけて次のようにツイートしている。

 「当たりましたね。NHKのテレビの放送は終わり、QRコードを読み取って視聴しました。とても心配に思うことを質問していただき、ありがとうございます。それに対して、岸田首相のお答えは『?』という感じでした。」

 それに対し、岩上安身は次のようにリプライをした。

 「僕が指名された瞬間、NHKは放送を切りました。いつも通り。RT @minatokaoru: @iwakamiyasumi

 今回の岸田首相記者会見では、岩上さんが指名されてよかったですが、NHKでは、テレビでなく、QRコードの放送になり、アーカイブもありません。

 とても大切な内容なので、たくさんの方に知ってもらいたいです」  総理と記者の質疑がNHKで放映されるのは、事前に質問取りをされている記者クラブだけだ。総理会見を見るならば、テレビではなく、フリー、外国、ネットなど、事前に質問どりをされていない記者の質問が聞けるネットで御覧いただきい。

 岩上安身と岸田総理のやり取りは以下のURLから御覧いただける。ぜひ御覧ください。

  • 2022.3.16【IWJ代表・岩上安身 質問切り抜き】岸田内閣総理大臣記者会見(2022年3月16日、総理官邸) https://youtu.be/KzVyAPhRUAs

 また、岩上安身が岸田総理にした質問の詳細については、下記の日刊IWJガイドにある立憲民主党の福山哲郎議員と、更田原子力規制委員長のやり取りで詳細に解説しているので、是非御覧いただきたい。

 IWJがこれまで報じてきた原発と戦争のリスクについてのコンテンツは下記URLから御覧いただけます。

※これは日刊IWJガイド2022.3.17号~No.3472号に掲載された記事を加筆・修正したものです。

※本記事は「note」でも御覧いただけます。
https://note.com/iwjnote/n/nc74502953817

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です