2021年9月3日(金)11時半より、外務省にて、茂木敏充外務大臣定例記者会見が行われた。
冒頭、茂木外務大臣より、タイ、ベトナム、そして台湾へのワクチンの供与についての報告があった。現地における感染状況に加えて、在留邦人の要望を踏まえて9月上旬にタイ、ベトナム、及び台湾に合計44万回分のアストラゼネカ社製ワクチンを供与する予定であるという。
その後、会見参加記者との質疑応答が行われた。TBSキャスターの金平茂紀氏はアフガニスタン情勢と邦人の退避について、以下のように質問した。
「アフガニスタンの政権崩壊に伴う邦人保護と、それから現地職員及び家族の保護についての政府の対応、外務省としての対応についておうかがいしたい。
自衛隊機派遣については、大臣がもう既に8月31日の会見で、決して遅かったとは思わない、とお答えになっていますが、その後も、与野党、何よりも国民の側から、遅かったんじゃないか、という、問題視する声があります。
もう一つは、運び出した邦人の、その数についても、少ないんじゃないかというような見方があります。大使館の現地スタッフが、今のところ、まだかなり残っていらっしゃるという現実があります。
今回、国外退避をさせられなかった最大の原因は何だと、大臣はお考えになっていらっしゃいますか。
他の国、例えばフランスなんかでは、現地スタッフについて、かなり早い段階でビザを発給して、退避をうながしていた例があり、もちろんそうじゃない国もありますが、日本がそういうことができなかった理由をおうかがいします」。
これに対して茂木外務大臣は、次のように回答した。
「これはアフガニスタンに限らず、海外に在留する邦人の方々、更に関係する方々の安全の確保や、更には出国を希望する方に対して、安全に出国をしてもらうと、こういったことは、外務省にとって最も重要な責務の一つだと考えておりまして、例えば昨年1月、武漢で新型コロナが発生した時、800人を超える邦人、またそのご家族の方が、中国の武漢そして湖南省にいらしたときに、いち早くチャーター機を派遣したのは日本であります。
ですから、日本だけが上手くいったと、こういうふうなつもり、ありませんけれど、それぞれの置かれている状況によって、どういう対応策をとるか、これは変わってくると思います。
例えば、フランスだけではなくて、NATOの国々、これは実際にこのカブールの陥落前から、アフガニスタン、カブールに軍がおりました。そういった意味で、軍を中心にしたオペレーションというのは非常に早く始められると、こういう状況にあったということで、全てが同列にはとらえられない部分はあると思います。
いずれにしても、邦人、そしてまた関係者の安全の確保、更には希望する方々の退避の支援、これは引き続き最大限重要な責務だと考えております。
難しいのは、カブールがたった11日で陥落をしてしまう、そういったことを予想された方というのは、非常に少なかったんじゃないかな、バイデン政権も含めて、であります。
更には8月26日に、空港周辺で170人、これを巻き込むテロ事件が発生すると、テロの危険というのはありましたが、具体的にこの日に、何時に発生するということを予測するというのは不可能だったと思います。
米軍の撤退の期限は分かっておりました。その中で、どのような時期に、どのような方法で退避をしてもらうのが、最も安全で迅速であるか、こういったことを考えたオペレーションを行ってきましたが、結果的には邦人の方については、もう8月下旬の時点では、かなりカブール、アフガニスタンに残っている方は少数でありました。
そして、そのすべての方について、すぐの出国を希望するかというお問い合わせもさせていただきました。一度だけではなくて、何度か、切迫する状況の中で、9月に入ると難しくなる、という話もさせていただいて、その中で希望される方は1名でありました。その1名の方については、自衛隊機を使って出国ができたわけです。
残念ながら、現地の職員の方、JICAの関係者の方、多く残っております。引き続き、一番安全な、迅速な形での退避の支援、これは続けていきたいと思っております。
振り返ってみて、26日に、ああいう事件が起きなければという思いはありますけれど、残念ながらあのテロが起きて、市中、更にはタリバンの検問所、相当な混乱が起こる中で、そのままオペレーションを続けることは危険であったと、私は思っております。
残念ながら、そういった形で期限内に退出が出来ていない。まだ多くの大使館現地職員、更にはJICAの関係者等の方が残っているというのは事実でありますから、これにつきましては引き続きどういった方法が一番安全なのか、またどういった方法が一番早いのか、こういったこともしっかり考えながら、支援策を検討していきたい」。
これに重ねて金平氏は、以下のように質問した。
「そうしますと、今現在も、大使館の関係者が現地にとどまっている。日本が退避させたのは14人。14という数と他の国を比べてみて、何故少ないのか。
例えば韓国なんて、もっと多い。もっともっと桁違いに多い国もある。それはさっきおっしゃったような、8月26日のテロというのは同じように、みんな他の国も阻害要因としてあったわけですから、なぜ日本に限って少なかったのか。
これは非常に平たい言葉で言うと、国民感情から言うと、大使館で働いてた人たちに対して冷たいんじゃないかと。プライオリティがあるというのは分かります。邦人保護と、それから関係者の保護というのは、もちろんプライオリティがあるというのはもちろん分かりますけれども、他の国と比べた場合に、結果的に何故こうなったのか、国民の理解が、得られるとお考えなんでしょうか」。
これに対して茂木大臣は、次のように回答した。
「まず、米国等におきましては、まだ米国籍の方、こういった方もアフガニスタンに残っております。このことはご存じですね。
まず、邦人保護とそれに最優先で取り組むということは、これまでもやってまいりました。今回のアフガンに限らず、そういった中で、少なくとも希望される邦人、結果的に1人でしたが、そのことについては、安全な出国というのができたわけであります。
残っている大使館の現地関係者、JICAの関係者の方々、他国もいろいろな方々がいらっしゃいます。人数的にもっと多くの方が残っている国もあります。逆に、多くの方が出国された国もあります。
それは、個々の状況であったりとか、そこで取った対応策、例えば、実際にそこに軍が既にいたかとか、オペレーションできる状態であったかによります。更には、どういうルートを取って空港に向かっていくかと、それが完全に安全な方法だったか、そうではなかった、いろいろそれは判断がある。
かなりの危険を伴いながらも、出国を実施した、結果的にうまくいったということについて、結果的にうまくいけば、すべて良いということではなくて、本当にそれが安全だったかどうかと、最も迅速なタイミングであったかどうか、それは個々の事例ごとに検証する必要があると思っております。
ただ、今、大使館の現地職員、そしてJICAの方々、まだ多く残ってらっしゃるわけですから、その安全確保、更には希望される方の出国につきましては、引き続き様々な形での支援策というのを検討していきたいと思っております」。
IWJ記者は、以下の質問をした。
「タリバンは、日本と外交を開きたいという意思を示しております。日本独自の判断でアフガニスタンのタリバンを正当な政権として承認するのか、それとも米国などの姿勢に追随するようになるのでしょうか?
今後のアフガン内の邦人、及び退避を希望する日本への協力者の保護や救援などは、どのようになっていますでしょうか? 意思疎通や関係構築についておうかがいしたい」。
茂木外務大臣はこれに対し、以下のように回答した。
「今後のアフガン情勢を見ていく上で、出国を希望される方が安全に通行できる、また国内の治安状況がどうなっていくか、そして恐らくタリバンが新政権を作る、この新政権において、どういった政策が取られていくのか、かつてのイスラムの非常に厳格な体制に戻ってしまうのか、それともタリバンが今言っているような国際社会の期待に応えるような、女性であったり、小さな女児をも含めた人権等が更に尊重され、自由が尊重される、こういう社会になっていくのかと、これはまさに、言葉ではなくて、行動を見なければいけない。
実際のタリバンの行動を見て判断していきたいと思っております」。
会見の詳細は、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。