2021年6月4日(金)10時30分頃より、外務省にて茂木敏充外務大臣定例会見が開かれた。
冒頭茂木外務大臣から2件の報告があった。
初めに、台湾に対し、日本国内製造のアストラゼネカ社ワクチンを無償で提供することが発表された。日本は、これまでもCOVAXファシリティ(COVID-19 Vaccine Global Access Facility 新型コロナウイルス野感染症ワクチンを複数国で共同購入し分配するための国際的な枠組み)を通じて国際的なワクチン支援を行ってきたが、今般台湾側の依頼に応じての調整が終了し、ワクチン124万回分を無償で、台湾側窓口機関「台湾日本関係協会」を通じて台湾の人々に届けることになったという。このワクチンは、日本時間のこの日16時前、現地時間では15時前に台湾に到着する予定とのことであった。
茂木外務大臣は、このワクチン支援に関して、「2011年の東日本大震災の際、台湾から義援金や支援が多く寄せられ。そういった台湾との友情、パートナーシップなども踏まえたもの」と述べた。
また、6月2日に開催されたCOVAXワクチンサミットにおいて、菅義偉総理大臣は、日本が今後8億ドルをCOVAXファシリティに拠出することと、環境が整ったしかるべき時期に日本製ワクチン3000万回分を同組織などを通じて各国、各地域に供与する考えであることを表明したという。さらに茂木外務大臣は同サミットで、各国のワクチン接種の現場にまでワクチンを届ける、「ラスト・ワン・マイル支援」での日本の協同、技術と物資提供を申し出たとのことである。
次いで、6月9日に日豪2プラス2(外務・防衛閣僚協議)が開催される予定であることが報告された。日豪2プラス2は、今回で9回目、前回からは2年半ぶりの開催となる。茂木大臣は、「日本とオーストラリアは、基本的価値と戦略的利益を共有する特別な戦略的パートナーであり、今回の2プラス2では、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、安全保障、防衛協力を新たな次元に引き上げるための方策等についてしっかり議論したい」と述べた。
その後、質疑応答が行われた。テレビ朝日、朝日新聞、NHKより、台湾へのワクチン提供に関する質問が行われた。
北海道新聞より、稚内市沖のオホーツク海で、底引き網漁船「第172栄宝丸」がロシア当局に拿捕された件に関する質問が行われた。
稚内機船漁業協同組合所属の栄宝丸は5月28日、ロシア国境警備局の臨検を受けサハリン州コルサコフに連行された。ロシア側は栄宝丸がロシアの排他的経済水域(EEZ)内で違法操業していたと発表しているが、日本外務省は関係者からの聞き取りから、船が日本のEEZで操業していたことを確認し、6月3日以前にロシア側に抗議し、乗組員14名の解放を求めている。
茂木外務大臣は、ロシア外務省が3日夜に、栄宝丸がロシアのEEZ内で発見されたという、日本側への反論の声明を出したことについて、「日本の漁船は日本のEEZで操業していたと承知している。ロシア側の抗議は受け入れられない。ロシア側に対し、乗組員と船体の即時釈放を求めている。外務省として引き続き本事案の早期解決に向けて全力で対応にあたりたい」と述べた。
産経新聞記者は、「中国海警局の船が尖閣周辺の接続水域で航行が確認され、これは112日連続の侵入となり、過去最長を更新した。このことへの大臣の受け止めと、日本政府は中国海警局の動きについて深刻な懸念を表明し、領海侵入について抗議も重ねてきたが、中国には態度を改める気配が全く見られない中で、大臣としてこれまでの対応で十分だというふうにお考えになっているのか」と質問した。
茂木大臣は、以下のように回答した。
「本日午前8時の時点で、接続水域内における中国海警局に所属する船舶の確認日数、112日連続となっているわけであります。尖閣諸島周辺海域において、中国海警船によります接続水域航行が継続をし、さらに領海侵入が繰り返されてること、極めて深刻に考えております。中国のこうした活動については、昨日実施されました、日中高級事務レベル海洋協議団長間協議などの外交ルートを通じて、繰り返し厳重に抗議をいたしております。
そしてこの中国の、力による一方的な現状変更の試みは国際社会において、様々な形で懸念の声が上がっているわけでありまして、先日のG7外務開発大臣会合においても、緊張を高める、地域の安定及びルールにもとづく国際秩序を損なう可能性のある、いかなる一方的な行動にも、強く反対する点で一致しましたところであります。
なかなかこの問題だけではなくてですね、様々な問題に対して中国に働きかけを行い、そしてですね、確実にそれがですね、具体的な行動につながるかということについては、ある意味ですね、状況を今後見ていくと言うかですね、今日言ってすぐに明日変わると、そういう性格じゃないのは多分おわかりいただけると思うんですね。それで今の時点で何かについて、すぐに評価をしろって、それは難しい問題ですよ、率直に申し上げて。
そんな簡単に変わるんだったら、苦労しないです、誰も。国際社会全体でそういうことをやってるわけですから。我が国としては領土領海領空を断固として守り抜く、という決意のもとで、冷静かつ毅然と対応していきたい。この姿勢に変わりはありません」。
IWJ記者は、以下の質問をした。
「5月28日の会見で茂木大臣は、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンの外相とそれぞれ電話会談を行い、停戦を通じた緊張緩和への働きかけをし、ガザ地区への緊急支援等についても意見交換を行った旨、報告されました。日本はパレスチナを国家として承認していませんが、将来の承認を予定した自治政府として関係を結んでおり、中東和平問題のパレスチナ・イスラエルの『二国家解決』に向けた当事者間の信頼醸成を継続するよう努めていることがよくわかりました。
ここであらためて、中山泰秀防衛副大臣が5月12日に自らのツイッターに『イスラエルにはテロリストから自国を守る権利があります。私達の心はイスラエルと共にあります』などと投稿し、それがイスラエルの駐日公使や外務次官などに読まれて歓迎をもって迎えられたことについて、外務省としての受け止めをうかがいたいと思います。
現在はこの投稿は削除されていますが、中山防衛副大臣は現在もこのツイッターアカウントで職務上の告知を投稿しており、先のイスラエル側の攻撃に一方的に肩入れする中山防衛副大臣の投稿は到底、私人による個人的な表明とは言えず、防衛副大臣として、日本政府の立場を公式に表明したものと国内外に受け止められかねません。
特にイスラエルは、AP通信やアルジャジーラなど国際的報道機関の入ったビルを狙い撃ちして空爆しており、全世界から非難されています。このプレスの入ったビルへの空爆まで含めて、日本政府はイスラエルを正当化できるのか、ご見解をおうかがいしたい」。
これに対して茂木大臣は、「個人のツイッターでありまして、コメントは控えます」とのみ、回答した。「このツイッターアカウントで職務上の告知を投稿しており、私人による個人的な表明とは言えない」という、IWJ記者の指摘に対して、これでは何も答えていない。
パンオリエントニュース記者より、今年3月の総選挙以降、連立協議が続いていたイスラエルで、現職ベンヤミン・ネタニヤフ首相の退陣につながる連立政権の樹立で野党勢力が合意したことについて、日本の受け止めが問われた。
茂木大臣は、「現地時間の2日から3日に、組閣指示を受けていたイェシュアティド党のヤイル・ラピド党首が大統領等に組閣完了を通知して、今後、議会の信任プロセスが予定されていると承知をいたしております。こういった状況を注視をしていきたいと考えておりまして、日本政府として、他国の内政についてコメントをするということは控えたいと思いますが、引き続き、日・イスラエル関係を推進していきたいと思っております」と回答した。
詳しくは全編動画を御覧いただきたい。