2020年11月13日(金)午後5時30分頃から、東京都千代田区霞が関の外務省会見室にて、茂木敏充外務大臣の定例記者会見が行われた。
この記者会見の前日、11月12日(金)、菅義偉総理とバイデン次期大統領との電話会談があった。会談の内容は、外務省のホームページに掲載されている。
- 菅総理大臣とバイデン次期米国大統領との電話会談(外務省、2020年11月12日)
外務省のホームページ上の発表では、日米安保条約について、「バイデン次期大統領からは、日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットする旨の表明があった」との記述があり、この発表を読む限り、バイデン氏が「尖閣への適用」を言い出したように読める。
しかし、バイデン氏の「政権移行チーム」の公式サイトには、以下のように書かれており、「尖閣諸島」という文字は出てこない。
「The President-elect underscored his deep commitment to the defense of Japan and U.S. commitments under Article V, and he expressed his strong desire to strengthen the U.S.-Japan alliance even further in new areas.(次期大統領は、日米安保条約第5条にもとづく米国の深いコミットメントを強調し、新たな分野で日米同盟をさらに強化していきたいとの強い思いを表明した)」
- Readout of the President-elect’s Foreign Leader Calls(BIDEN-HARRIS TRANSITION、2020年11月11日)
日米安保条約第5条とは、次のような条文である。
「第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない」
IWJ記者は、この点について茂木大臣に質問した。以下がIWJ記者と茂木外相の質疑応答の内容である。
IWJ記者「昨日の菅総理とバイデン次期米大統領との電話会談についてお聞きします。
外務省は『バイデン次期大統領からは、日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットする旨の表明があり』と発表していますが、バイデン氏の政権以降チームの公式発表には『日米安保条約第5条の下での米国の深いコミットメントを強調し』とあり、『尖閣諸島』にはひとことも触れられていません。
外務省の発表では、バイデン氏側から尖閣の話題を持ち出したように読めます。
確認したいのですが、実際は日本側があとから、バイデン氏に対して尖閣諸島について追加確認しただけ、ということはないですか?
『尖閣諸島』の部分について、バイデン氏が何と言い、菅総理が何と言ったのか…」
茂木外相「あの。あの、すみません。違います」
IWJ記者「はい。…正確に…」
茂木外相「違います」
IWJ記者「違う?」
茂木外相「はい。答えです」
IWJ記者「違うというのは?」
茂木外相「あの、あなたの言っていることは違います。まあ、そういうことです(嬉しそうな笑顔)」
IWJ記者「それが回答ということで?」
茂木外相「はい」
司会「よろしいでしょうか?」
IWJ記者「…はい。わかりました。ありがとうございます」
続いて、IWJ記者は米大統領選にともなう、米中関係について、質問した。IWJ記者と茂木外相との質疑応答の内容は以下の通りである。
IWJ記者「残り任期70日もないトランプ政権で、エスパー国防長官に続き、国防総省高官3人も辞任したと報じられています。
中国のグローバルタイムズはこの報道以前に『トランプ氏が中国との関係の中で「最終的な狂気」に陥る可能性がある』と指摘しており、台湾や南シナ海などをめぐる米中の緊張がさらに高まる可能性が高いと分析しています。
これについて外務省がどのように分析しているのか、お聞かせください」
茂木外相「あの、日本とアメリカの間、トランプ政権においてもそうでありますが、まあ、次期政権におきましてもですね、えー、地域の様々な情勢について、意見交換、すり合わせをおこない、認識の共有、そして、対処にあたっての方針、のすり合わせをしっかり行っていきたいと思っております」
茂木外相の答えは、記者の質問の内容とはまったくことなるものであった。